『もう、私で遊ばないでよ』
「ねぇ、ユーリ。あんたがこの家に入るとき女の子見なかった?」
何はともあれ、まずはあの女の子に会わなければならない。家を出た後に向かった方向を目撃したものがいたとしたら、入れ違いで入ってきたユーリだけだろう。そう思い、家を出たところでユーリに訊ねてみた。
「ああ、あの小さな女の子ですね? イングヴァイさんって幼女趣味なのですねぇ」
「そんなわけないでしょう! この誰もいない町にあの子だけがいたのよ?
それに私は学園でもあの子を見ているの。あの子は絶対に何かを知っている。
話を聞かなきゃ……」
「分かってますよ。冗談じゃないですか。イングヴァイさんってば真面目なのですから。
大丈夫ですよ。あの人がちゃんと追っています」
ユーリは小さく肩を竦めてわざとらしく溜め息を吐くと、喉を鳴らすように高い声で笑った。始めからマリンが彼女を探す理由が分かっていながら面白半分に搔き立てただけなのだ。
それを分かっていながらも否定せずにいられない自分がいやだった。
「クレオが? それなら安心ね。今、何処にいるか分かる?」
「私では安心できませんか?」
ユーリがなにかを含んだ笑みを浮かべて小首を傾げて聞いて来た。
「誰もそんなことは言ってないでしょ。誰もあの子を追ってないんじゃあ見失っちゃうじゃない!」
「分かってますよ。イングヴァイさんがあまりにも素直な反応を示してくれるのですもの。面白くて、ついつい余計なことをいってしまいます」
「もう! 私で遊ばないでよ!
ばかなこと言ってないで急ごう。あの子の力はまだまだ未知数だからクレオが心配!」
「はい。今は町の南へ向かって進行しているみたいですね。こっちですよ」
ユーリはにこりと笑うと先導して走り出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます