『なんでもない』
突然切り出したクレオに、この流れでその話に入るかと疑問に思ったが、そもそも本題はそっちだったはずだ。マリンもユーリの言葉を待つ。
「大鎌になった私とイングヴァイさんが接続すれば、あの装甲でも断ち切ることもきっと可能でしょう」
「あんた、さっき弾かれてたじゃない」
断言するように強く言うユーリに向けて、マリンは瞳を細めて呆れて言った。さっき、あれだけ簡単に斬撃を弾かれて、よくもまぁ、そこまで自信満々に言えたものだ。
「さっきのは私一人の攻撃だったじゃないですか。確かにタイミングも威力も申し分ない一撃でしたので、弾き飛ばされたのは正直ショックでしたが、それでも私の波動は確実に当たりました。
それで確信したのです。あれは波動を無効化しているのではなく、ただ強くて硬い外装で覆われているだけなのだと。
それなら簡単な話です。相手の装甲の強度を上回る斬撃を放てば断ち切ることは不可能ではない。
私とイングヴァイさんになら十分に可能です」
接続の力はマリンも身を持って知っている。確かにあの戦闘機の装甲が硬いだけならば、あの力で切り裂くこともできるだろう。
だが、接続をすることにマリンは抵抗があった。接続をする度に、まるでガラスに皹が入るような高い音が響いているのをマリンは何度も聞いている。もしもあれが大鎌になったユーリから発せられた音なのだとしたら、マリンが武器として扱うたびに目には見えない傷が広がっていて、大技を使った瞬間に折れてしまうかもしれないのだ。
「んぅ? どうしたの、マリン。なにか心配事?」
考えが顔に出ていたのか、クレオが目敏くそれを見抜き聞いてきた。仮にここで心意を言葉にしたところでユーリが大丈夫だというのは目に見えている。
さらにはそれしか有効手段がない以上、例えユーリに負担を掛けてしまったとしても、その案に乗るしかなかった。
しかし、もしもまた皹が入ってしまったとしても、今のマリンには打開策もあった。
ここはユーリの案に乗るのが最善であり、それしか現状を打開できる策はないだろう。
「ううん。なんでもない。それじゃあ行くわよ? ユーリ」
「はい」
マリンは覚悟を決めてユーリに声を掛けて入ってきた穴へ戻っていくと、ユーリもマリンの後を追い掛けてくる。まだここでは鎌にならないのは、柄も刃も長い鎌になってしまったら、洞窟に引っ掛かってしまうからだ。
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