『相性いいつもりなんだけどな』

「はい。そうです。波動を相手の生命力程度にまで高めて、ゆっくりと流し込んでいくんです。相手がそれを受け取ってくれると波動は体に浸透して、体力の回復と少しくらいの傷なら治癒することもできるんですよ。

 まぁ、相性にもよりますが、良ければ最大、骨の皹くらいなら治すことができます。

 この人が相手では、せいぜい擦り傷までくらいでしょうけどね……」

「えぇ~? 私はゆ~りんと相性いいつもりなんだけどなぁ……」

 ユーリは優しく微笑みながらマリンに優しく教えてくれるも、最後は再び冷ややかな笑みでクレオを見て付け加えた。

 クレオが不満そうに唇を尖らせて抗議するが、ユーリは視線さえ向けようとしない。

「へぇ。そんなこともできるんだ。凄いのね。波動って……」

 傷を負ってしまったり、蓄積した疲労で動けなくなってしまったりしたら、戦闘では致命的だ。まさにまな板の上の鯉になってしまう。そんなときに体力を回復させてもらえたら、動ける程度でも傷を癒してもらえたら、これほど心強いことはない。

 マリンは改めて波動の万能さを目の当たりにし、子供の頃から習っていながらも、いまだに会得していない自分の無能さを歯痒く思った。

「それでさぁ、ゆ~りんの言ってた有効な手段ってなぁに?」

 ユーリに癒され、表情を弛めた締りのない顔でユーリを見ると、いきなり切り出した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る