「そんなに危なっかしいかな?」
「マリ~ン」
地を這うようにしてクレオの造った横穴から出て、ユーリが掘った地上へと続く防空壕へ出た頃、背後からクレオが声を掛けてきた。
手の中に、手のひらよりも一回り大きいくらいの球体の波動の塊を生み出して、何かを企んでいるかのように口許に笑みを浮かべている。
「なによ?」
なにをしでかすつもりでいるのか見当が付かず、マリンは眉を潜めてクレオを見つめた。
「このまま入ったところから出たら、狙い撃ちにされるからぁ……」
「そんなこと言ったって……。あぁ……」
そこでようやくマリンはクレオがなぜ、今、波動の塊を作り出している意図に気が付き、納得して頷くと、マリンも魔道具を取り出して波動を展開させた。
中から波動を放って岩盤に多くの穴を開け、外で待ち構えている戦闘機を撹乱しようと言うのだ。うまく行けば飛び出すのと同時に戦闘機を真っ二つに斬り飛ばすことができるかもしれないが、穴が少なければ特定され易く逆に狙い撃ちにされてしまう。
しかし、だからと言って闇雲に穴を開ければ洞窟が崩れ、生き埋めになってしまう。
加減をしながらも相手の裏をかかなければならない。
「やりすぎないでくださいね? 特にそっちの人……」
ユーリも手の中に波動を作り出すと、能面のような全く感情の籠もっていない見るからに作った笑いを浮かべてクレオに釘を刺すと、手のひらを岩盤に向けて翳した。
「そんなに危なっかしいかな? 私……」
クレオが困ったように苦笑を浮かべながらぼそりと洩らすと、ユーリとは全く別の方向に向けて手のひらを翳した。
敵を欺くために、少しでも多く手数を増やすのが撹乱の常套手段だ。
「一人三発ってところね。行くわよ」
「はい」
「うん!」
マリンが二人に一声掛けて、魔道具に込めたカプセルから波動を閃光にして放つと、二人も三秒ほどの僅かな時間を空けて波動を解き放った。
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