『ごめんねぇ……』
「あんた、本当に大丈夫? 辛いだろうけど立って。取り敢えず岩場まで行くわよ。
体力が回復するまで体を隠せる場所が必要でしょう?」
戦闘機が空中で体制を立て直すと、マリンが破壊した、今も黒煙を上げている機銃を切り離し、マリンの身長ほどありそうな大きな黒い銃が、激しい破砕音を響かせて岩場に激突した。
あんな大きな銃から撃ち出された銃弾を弾いていたのだと思うと、クレオの波動の密度の濃さを改めて驚かされ、それと同時にクレオがここまで憔悴しているのも頷けた。
戦闘機はマリンたちをいたぶるように空中を旋回すると、今度は下部が開いて爆弾を落とし、空襲を仕掛けてきた。
雨のように爆弾が降り注いで、岩盤や岩山を容赦なく爆撃していく。
クレオはどうにか自分の足で立ちはしたが、膝が笑っていて今にも座り込んでしまいそうである。あの爆撃をかわしながら岩山まで走るのは無理だろう。
とはいっても、流石にマリンにはクレオを抱えて走るのは無理だ。なにか良い方法はないかと周囲を見回しながら思考を巡らせたが良い案は浮かばなかった。
「私は大丈夫だからさぁ、マリンは避難して。あれはちょっとヤバイから、直撃しなくても大怪我しちゃう」
今マリンが離したら、その場に座り込んでしまいそうなくらいに足を小刻みに震わせながら、額には脂汗を浮かべ、それでもクレオは笑顔を浮かべて強がって見せた。
このままでは二人とも助からないと悟り、マリンだけでも避難させようとしているのだ。
そんな彼女を見つめ、マリンは思わず溜息が漏れた。マリンたちが気にせず避難できるように虚勢を張っているのも、やせ我慢をしているのも明白だ。
意地もここまで貫ければ大したものだ。だけど、それが無理をしているのだと分かっているのに、置いて逃げることなどマリンにはできない。
「そんなことできるわけないでしょう。ほら、肩を貸してあげるから! ちゃんと走るのよ?」
マリンはクレオに有無を言わせない強い口調でぴしゃりと言い放つと、クレオの腕を肩に回して自分に寄り掛からせた。
「ごめんねぇ。ありがとう」
「いいから!」
横目で上空の戦闘機の動きに注意を払いながら、マリンとクレオがゆっくりと歩き出した。
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