『一緒に遊ぼ?』
マリンはシャナをここから出してあげたいと思った。いや、そんなのは思い上がりだ。
自分から出てきて欲しかった。
外の世界に興味を持って、楽しいことを知って、美味しいものを食べて、幸せになって欲しかった。
一緒に遊びたかった。
友達になって欲しかった。
だから、ここから出てきて欲しかった。
「外は確かに怖いかも知れないけど、それ以上に楽しいこともあるよ?」
シャナを見つめたままでマリンは説得しようと語り掛けた。
このままこんなところで朽ち果ててもらいたくない。マリンならば、幸せにしてあげることはできなくても、楽しいことも美味しいものも沢山教えてあげることができる。
だがシャナは無言でジッとマリンを見つめると、また、否定するように静かに頭を左右に振った。
「傷付けることしかできないから……」
シャナは視線をマリンから逸らすと無気力に吐き出した。
今までそう言った類のことでしか外に出してもらえなかったのだろう。
それで彼女の頭の中では、外に出ると言うこととは誰かと戦い撃ち滅ぼすこととなってしまったのだ。
ぶらりと町に出て洋服を見ることも、甘いものを食べることも、相撲を見に行くことも、そんな当たり前の生活も許されずに、今も傭兵か軍隊のような日常を強いられている。
マリンよりも年下の少女がそんな生き方をしているなんて、とても胸が苦しかった。
「もう、そんなことしなくてもいいのよ」
マリンがシャナを見つめて微笑み掛けながら頷くと、シャナは不思議そうに首を傾げた。
戦闘以外で外に出ることに疑問を抱いている顔だ。大きな二つの瞳が、戦わないのならなにをすればいいのと問い掛けてくる。
「私と一緒に遊びましょう」
「遊ぶ……?」
シャナは意味が分からないと言う風に、呟くように洩らした。彼女の境遇を考えると、これまで遊んだことなどないのだろうと安易に予想が着いた。
「うん。一緒に買い物に行ったり、甘いものを食べたり、お相撲を見に行ったり……。
こんなところに閉じ篭ってても楽しくないでしょ?
外には面白いことが沢山あるわよ? そりゃあ嫌なことも色々あるけど、それも人生を彩るエッセンスだと思えば乗り越えられるらしいわよ。
だから、ここから出て一緒に遊ぼ?」
マリンはシャナから視線を逸らさず、瞳を覗き込むように見つめて誘ってみたが、シャナはどこか釈然としない顔でぼんやりと見返してくるだけだ。
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