『ちょっと試してみるだけだから……』
男は船首の機銃から弾丸を乱射させて三人を強襲してくる。弾丸は岩山を穿ち、岩盤を抉り、三人を肉塊に変えようと辺りを飛び交っている。
「凄く自慢していたけど、本当かな?」
「あの傲慢な鼻っ柱を叩き折ってやりたいですよね」
弾丸の雨が降りかう中、クレオが直立不動で立ち戦闘機を見上げてにんまりと笑って言うと、ユーリが冷たい笑みを浮かべて同意し、自分とそっくりの大鎌を出現させた。
二人は戦闘機を叩き落とすつもりでいるらしい。確かに二人なら鋼鉄くらい簡単に破壊できるだろうが、あの戦闘機は科学者が開発した特別製だ。
思い通りに破壊できるか少し不安になったが、それができれば全て解決だ。
マリンは岩山にできた亀裂にシャナを隠すように寝かせると、必要なら協力しようと太腿から魔道具を引き抜いて二人に合流した。
「それは分かるけど、仮にも波動を研究している科学者があれだけ得意になって自慢しているのよ? そんな簡単に行くかしら?」
鳥のように飛び回る銀色の戦闘機を見上げながら疑念をぶつけた。
科学者とは日夜一つのことを研究し続ける職業である。
対象となるものを様々な観点から観察し、全てを解き明かそうと励む人たちだ。
あの男が波動を研究しているのだとしたら、もしかしたら術者でさえ把握できていない、波動を無効化できる方法を知識として持っているかもしれない。
一説に寄れば、人の体に波動と言う力があるのを発見したのは、科学者とさえ言われている。弱点や欠点を認知していても不思議ではない。
「心配性だなぁ、マリンは……。大丈夫、大丈夫。ちょっと試してみるだけだから」
クレオが視線は戦闘機に向けたまま、糸目でにんまりとした笑みを浮かべた。だが、その表情は自信に満ちていて、倒せると確信を持っている表情だった。
「どうも科学者と言うの方々のことは好きになれないのですよねぇ。
世の中の全てを自分たちは知っている、みたいな顔をされると、異を唱えたくなってしまいます。
今回は分からせてあげることができるみたいなので、あの人に教えてあげます。
あなたの研究で解き明かせるほど、波動は容易いものではないのだと……」
ユーリも銀色の戦闘機を見上げながら冷淡な笑みを浮かべて言うと、両手で大鎌をくるくると回し、刃を下に向けて柄を脇に挟んで身構えた。
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