『元凶はあなたじゃない!!』
まるで鼠をいたぶる猫のようなその表情に、マリンは嫌悪と怒りを覚えて鞭を振るった。
「いけしゃあしゃあとなにを! 全ての元凶はあなたじゃない!」
だが、やはり彼女が立ちはだかり、マリンの鞭を簡単に叩き落す。
「元凶? 心外だな。私たちは人類の進歩に貢献しているのだよ?
君の中和能力で、人類はまた新たな一歩を踏み出せるかもしれない。私の研究に協力してくれないかい?」
彼女の後ろから、どういう神経をしていれば出てくるのか分からない言葉を平然と言い放つ青年を睨むと、眼前に立ち塞がる彼女を見上げた。
青年の言う通り、悔しいが彼女をどうにかできないことには事態は一向に進展しない。
彼女の瞳には知性の欠片もなく、威嚇する獣のように鼻に皺を寄せて牙を剝いている。
その姿に、金髪の無垢だった少女の姿が重なり、マリンは言いようのない辛さと悲しみ、困惑と青年に対する怒りが入り混じった複雑な感情が胸の中で混濁した。
「聞いてたでしょう!? あなたはそれでいいの?」
無駄だとは思いつつもマリンは彼女を見上げて問い掛けた。
「ぐぅがぁぁああああ!!」
怪物と化した少女は狼のように吼えると、熊のように鋭い爪が生えた太い手で殴りつけてきた。マリンが反射的に後方へ飛んでかわすと、勢い余ってそのまま地を殴りつけた。
少女の攻撃は恐るべき破壊力で、一撃で岩盤が砕けて地を抉った。直撃していたら、マリンなど即死であっただろう。
背中に冷たいものを感じながら彼女が砕いた地面を見つめると、倒さなければと少女に視線を移したが、どうしても怪物と化した姿に、町で出会ったいたいけな金髪の少女の姿が重なってしまい、迷いが生じて眉を顰めた。
怪物と化した少女はなおもマリンに近付き、殴りつけてくるが、威力こそ凄まじいものの動きは鈍く、かわすことはそれほど困難でもない。
中和の効力が光と一緒に引いて行き、ホワイトアウトしていた視界が回復するように、辺りの景色が晴れてはっきりと見えるようになってきた。
ユーリもクレオも戦闘体制を取って待機していてくれているのが確認できた。
二人はマリンを見ると一瞬小さく微笑みかけてくれるが、すぐに視線を彼女に向けて顔を引き攣らせた。
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