古池さんの激励会パーティ【ゆずるう】

美紗「よし、準備、出来たー!!」


くゆ「これは何のパーティなの??」


美紗「激励会パーティ。私の友達が絵画

   コンテストやるからそれの頑張ったね

   っていうパーティ」


くゆ「これからやる会なのに頑張ったね

   なの?」


くゆ「後でやった方が良くない??」


美紗「それだと時間がないんだよ。向こう

   も凄い忙しいみたいでさ、今日しか

   休みが取れなかったの」


柚夏「くゆちゃんには教えても良くない??」


美紗「...私の大事なお友達が遠い所に行っちゃう

   かもしれないから、その歓迎会。遠い

   所に行ってもお友達だよって」


くゆ「そんなに重い事情だったの。」


流雨「話は聞いてたけど...まさかその事

   だったとは...。」


流雨「私は来ても良かったのだろうか...。

   一応プレゼントは持ってきたけど...」


美紗「勿論良いに決まってるよ、大きなパーティ

   はまた別にやると思うし」


美紗「...こういう家庭的なパーティの方が印象に

   残ると思うんだよね。」


美紗「雪音の誕生日も近いし、誕生日もあり

   だと思ったけど やっぱり当日じゃ

   なきゃね」


 そういう美紗の顔は少しだけ強張っていた。多分裏で泣いてたんだろう。そういうとこ中々見せない人だからな...。


美紗「コンテストの日が近いから」


美紗「その激励会。」


美紗「そろそろ来るよ」


 パパーン、と玄関でクラッカーを開けると晴華さんも隣りにいた。


美紗「新しい門出に、カンパーイ」


古池さん「何かの歓迎会ですか」


美紗「こういう方の方が趣があると思って。」


美紗「ただの激励会だよ。これからコンテスト

   頑張ろうっていう」


古池さん「頑張るのは貴女なんですけどね...」


美紗「完璧な面接にしてみせるよ」


古池さん「はい...。」


晴華「私も入っちゃって良かったのかな。

   一緒に祝われちゃったけど」


古池さん「晴華さんにも関係ある話ですから、」


古池さん「まだ迷っているのでしょう?」


晴華「うん。日本に残るかゆっきーに付いて

   いくか」


晴華「夢を諦めなきゃいけないから。お母さん

   とお父さんの事も大事だし、...ゆっきー

   の事も本当に大切だから凄く迷ってる」


晴華「優柔不断だよね...。」


古池さん「そんな事ありませんよ」


古池さん「...貴女は自分の夢を叶えて下さい。

     お屋敷はいつでも空いているので」


晴華「そんな事言っても選べないよ。」


美紗「そうすると、朝乃先輩も呼んだ方が

   良かったかな」


晴華「お呼ばれしてないのに呼んでも良かった

   の?」


美紗「呼ぶべき人だと思いますから」


晴華「もしもし、朝乃ちゃん」


と、スマホを取り出してその場で朝乃先輩に連絡する晴華さん。


晴華「多分、数分で来ると思う。即答だった

   から」


晴華「『這ってでも行きます』って」


美紗「なんかゴキブリみたいですね。」


柚夏「ゴキブリみたいって...、」


 少し経つと言われた通りピンポーンという音がした。


※スライド


古池さん「ジュースやお菓子がいっぱいですね」


古池さん「まるでハロウィン祭の時のよう...。」


美紗「ハロウィン祭の時はもっと山の様にあった

   けどね」


古池さん「流石にあれは多すぎるので、これ

     くらいが丁度良いですね...。」


美紗「雪音の分は後で取っておくね。

   家でゆっくり食べて」


古池さん「...そうですね」


流雨「これ、プレゼント...」


古池さん「私(わたくし)にですか」


流雨「あの時助けてくれたお礼...。あなたの

   お陰で私は苛めから解放されたから...」


古池さん「あれは、当然の事をしたまでで...」


流雨「...それを当然だと思える人は少ない。

   先輩の立場から言わせて貰うと、もっと

   胸を張っても良いと思う...。」


古池さん「...ありがとうございます。」


流雨「お茶菓子。抹茶が好きだから選んだけど

   お口に合う??」


古池さん「お菓子は好きなので...そうですね。」


美紗「...お話するのも良いけど、そろそろ柚夏

   とお母さんが作った料理を運ばなきゃ」


古池さん「凄い料理を作ると仰っていました

     が、さてはてどのような料理を楽しま

     せて頂けるのでしょうか」


キッチンの方に向かうと凄い良い匂いがする。


美紗「かーさんエプロン姿めっちゃ似合うね」


美紗「板に付いてるというか」


柚夏「なんか年取ってるって言われてる感じ

   するからやめてよ」


お母さん

「あらあら。良い感じにお母さんしてる

 っていう意味よ」


お母さん「母性があるというか」


柚夏「ありがとうございます...。」


柚夏「美紗のお母さんってなんか凄いね」


美紗「私も"お母さん"には敵わないから」


美紗「わぁ、唐揚げ美味しそう♡」


お母さん

「揚げ物は最強よね。1人暮らしの時揚げ物を食べすぎて太り始めちゃったもの」


お母さん「美味し過ぎてチキン南蛮とか

     うずらの卵とかアジフライとか」


お母さん「とにかく揚げまくったわ♡」


柚夏「コンロベタベタになりますけどね」


お母さん「洗い物の事も気にしてるなんて

     出来た子ねぇ...。うちの娘なんて

     そんな発想すらないのに」


くゆ「悪かったね」


お母さん「お母さんが死んだらこの子達は

     どうなることやら」


柚夏「安心して長生きして下さい。私1人暮らし

   なので...、私が美紗にゴミ出しとか徹底的

   に教えますから」


お母さん「あら、頼もしいわ〜。柚夏ちゃん」


柚夏(柚夏ちゃん、か...)


※スライド


朝乃「激励会かぁ。なんか奈実姉ぇ(ねぇ)の

   試食パーティみたいでテンション

   あがるね」


朝乃「こんなにずらーっと食事があると」


お母さん「たまにはこういうのも良いわ

     よね。女子会みたいで」


 テーブルの上には味噌カツやチキン南蛮、鰺フライやムニエルなど美味しそうな家庭料理が沢山並んでる。


 中にはスパゲッティやパエリア、ピザなど幅広く。エビチリや餃子卵スープなど中国エリアも用意されていた。


お母さん「ん〜♡美味し」


古池さん「これが芽月さんの作った料理

     ですか、」


古池さん「...家庭的な味がして、美味しい

     ですね。"懐かしい味"と言いますか」


柚夏「口にあったようで良かったよ。

   これで少しは恩返しが出来たかな」


古池さん「静谷さんの事なのに、まるで自分

     の事のように仰るのですね。」


柚夏「好きなら当たり前だよ」


古池さん「"好きなら、当たり前"ですか」


古池さん「私は一体どうすれば...」


 ジュースを飲みながらそっと先輩に近づく美紗。


美紗「朝乃先輩は大丈夫なんですか」


朝乃「本音を言うと"大丈夫じゃない"かな。」


朝乃「...人事(ひとごと)じゃないから。私は

   晴華さんがどっちを選んでも後悔

   しない。そうやって決めてるの」


朝乃「"決めるのは晴華さん"」


朝乃「あの人の事は全力で応援するし、海外に

   行っても晴華さんなら上手くやっていける

   と思うから」


朝乃「あの素晴らしい美貌でね。晴華さんは

   絶対海外でも成功する。」


朝乃「英語も喋れるし」


美紗「...大人ですね。」


朝乃「...そんな事ないよ。家に帰ったら

   泣きじゃくるし」


朝乃「ただ、本人の前では 困らせたくない

   だけだから」


朝乃「一ファンになるだけでも幸せだった。

   それなのに...私は彼女を愛してしまった」


朝乃「それが元に戻るだけだよ」


朝乃「連絡も取るし、DVDもグッズも買うし

   それは変わらない。ただ教室から

   居なくなるだけで」


朝乃「今までの私は幸せ過ぎたんだ」


美紗「....。」


美紗「...戻りましょう」


※キャプション


 料理もあらかた片付け終わって、本当に古池さんは行ってしまうのだろうか。


柚夏「美紗もいるのに」


古池さん「...お母様がそれを望んでいますので」


 もし、私が突然流雨が遠い所に行ってしまうと聞いて黙っていられるだろうか


柚夏「お母さんが言うからってそれに黙って

   従うの」


古池さん「....。」


古池さん「...本当は従いたくありません。」


古池さん「ですが、椿様の言葉は"絶対"

     なのです。たかが1人娘に拒否権

     なんてありません...。」


古池さん「色んな方がお母様と関わっていて、

     私1人では"変えられないん"ですよ」


古池さん「...イタリアに行ってもいつか

     必ず帰ってきます。」


古池さん「私が大きくなったら。」


古池さん「...何年掛かっても、必ず」


※キャプション

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