⑭美紗の覚悟【みさゆき】


晴華「...私、一度受けた恩は一生

   忘れないから、何かあったら

   いつでも呼んでねー。」


晴華「料理、洗濯、家事、セールス勧

   誘御断り、寂しい時の話し相

   手、暇潰し、何でも良いよー♥️」


美紗(多い多い、)


美紗「私はただ縁蛇さんに電話した

   だけですから、」


晴華さん、こんな強引な人だったっけ...?


美紗(もしかして悪夢を見なくなって、

   すごいテンション上がってるのか

   な...、)


晴華「ほら、早く、早くっ。車に乗ろー、」


晴華「朝作ったお菓子の材料が余ってる

   から、なくなっちゃったから

   もう一度作らないとねー。」


雪音「ちゃんと休めているのですか?」


晴華「今日は凄い調子が良いから、大丈夫。

   私も皆で食べたかったし、楽しいから、」


 雪音はスマホを見たかと思うと、こっちにメールを送ってたみたいで


 雪音からシーウェが飛んできた。


雪音「「...こういう人なのです。」」


美紗「「こういう時は、倒れたら心配

    だからって言うと良いかも?」」


雪音「...貴女の身体が心配なのです

   よ。」


晴華「鍛えてるから、ゆっきーが心配

   しなくても大丈夫だよー、」


雪音「「そういう問題ではありません。」」


朝乃「晴華さんに無茶して欲しくない

   んですよ。晴華さんの事が大事

   なんです。」


雪音「「中々良いことを言うじゃない

    ですか。」」


美紗(なんで此処に書くん?)


晴華「...ありがと、でも本当に無茶

   してないから、大丈夫だよ。

   昨日は久々にぐっすり眠れたから、」 


縁蛇「これが高級スウィ~トという

   やつですね、縁蛇は今、超幸せ

   なのです...」


美紗「縁蛇さん、私のお菓子全部

   食べたでしょー?、」


縁蛇「御馳走様でしたっ!!美味しかったです。」


美紗「なんて潔い返事っ、」


美紗「私も食べたかったなぁ...、」


晴華「また、お屋敷についたら作るから、

   朝乃ちゃんも一緒に作る?」


朝乃「作ります"!!」


晴華「朝乃ちゃんには

   特別の、作ってあげるね♥️」


朝乃「本当ですか///!?」


縁蛇「えー、縁蛇も特別の欲しいのですよ~!!」


朝乃「人の全部食べきっておいて、まぁ...

よく言えるわね...、驚きを通り越して

   ビックリよ...。」


縁蛇「また作れば良(い)いのですから!!」


朝乃「それ晴華さんの台詞」


雪音「....。」


雪音「「賑やかですね。」」


美紗「よかったね、雪音」


雪音「...そうですね」


美紗「縁蛇さんもありがとね。食べた

   のは絶対許さないけど、」


縁蛇「こっちも今月食費がピンチだった

   ので、、許して欲しいのですよ。

   仕事の依頼なら、全然、いつでも

   バッチコイなので!!」


縁蛇「豪華なタダ飯も貰えましたし!!」


美紗「言い方...、面白いけど...、」


雪音「...そろそろ着きますね。」


美紗「あ、本当だ」


 車から降りると 和風の大きな庭を越えて、その先のエンテランスに向かって歩いてく。


美紗(相変わらず大きいお家だよね

   ...、何回見ても全然広いって

   思っちゃう。)


晴華「美紗ちゃんはこっちー、」


美紗「え?、」


雪音「何かあるのですか?」


晴華「美紗ちゃんにちょっと

   お礼をねー、」


晴華「すぐに戻ってくるからゆっきー

   はゆっくりしてて。」


美紗「すぐ帰ってくるから、」


雪音「....紅茶が冷めないうちに、

   帰ってきて下さいね。」


雪音「晴華さんもですよ、」


雪音「....。」


雪音「...晴華姉様も、でしたね。」


晴華(了、解♥️)


晴華「え、可愛い」


美紗「心の声漏れ出てますよ」


 雪音とわかれて、もっと奥に進んでいく。


美紗(ほんと広いよね...、何処まで

   いっても部屋がある...)


晴華「美紗ちゃんに会いたいって人が

   いるから、出来るだけ短めに

   お願いするね。」


コンコン...


美紗「それ、って...、」


??「この子があの手紙を送って

  来た子かぁ...、なんかそんな顔してるね。」


 無地の服を着た、髪の短い女性が紙を束ねながらそう話す。


 向こうは私の事知ってるみたいだけど...、この人って...。


晴華「ゆっきーが早く帰って来て欲しい

   って言ってましたよ、」


??「あの子も可愛い事言うよう

      になったねぇ。」


美紗「えっと、」


晴華「この人が霙お婆様のたったひとり

   のお弟子さんで、ゆっきーの先生

   をしてる"冬将軍"さん。」


美紗「冬将軍...?」


冬将軍さん「始めまして、というのも

      冬将軍は先生が付けてくれ

      たペンネームなんだけ

      どね。」


美紗(なんか、どこかで聞いた事あるような...)


美紗(...あっ、『雌犬のおいぬ様』を

   書いた絵の先生...!?!?、雪音に

   女子高生の好きそうな恋愛本

   (れんあいほん)渡した、)


 机の上に散りばめられた、沢山の絵がどれも まるで生きてるみたいな絵で。海が好きなのかな...、海の生き物が沢山かかれてる。


美紗「すごい...、...生きてるみたい。」


冬将軍さん「話は晴華ちゃんから聞いてるよ?」


冬将軍さん「経った一日で描いた絵を

      プロのコンテストに出したいん

      だって?」


冬将軍さん「凄いことするね。」


美紗「急だったんで、今はもって

   ないんですけど...」


美紗「スマホの中に写真が入ってます...。」


 事実なんだけど...、そうはっきり言われちゃうと...。この人に絵を見せて良いのか分からなくなる...


美紗「....。」


美紗(別に悪い事は

   してないんだけど...、)


 こんな言い方する人が...雪音の絵を見て、良い風に言うとは


どうしても思えなかったから...。


冬将軍さん「雪ちゃんがこれを?」


美紗「はい、上手いですよね。」


冬将軍さん「....。」


冬将軍さん「...ふぅ~ん、」


冬将軍さん「....そうだね、」


冬将軍さん「美紗ちゃんはこの絵を見て

      "どう"思った?」


どう、思ったって...。


美紗「凄く、上手だと思い...ました...。」


冬将軍さん「これ、今まで描いた

      雪ちゃんの絵。」


 そういって。冬将軍さんから受け取った絵は


その全てがまるで写真から切り抜かれたかのような...、本物そっくりの凄く綺麗な街並みの絵だった...。


美紗「......。」


冬将軍さん「美紗ちゃんも分かってるんでしょ?」


冬将軍さん「これはあの子の"本気"じゃない」


冬将軍さん「見て貰った方が早いかなっ

      て、見て貰ったけど...」


冬将軍さん「私は...この絵で金賞を

      狙うのは難しい。って

      思った。」


冬将軍さん「理由は、...分かるよね?」


冬将軍さん「古池の娘として出して予選

      敗退。なんて真似したら、」


冬将軍さん「あの子が周りからどんな

      目で見られるか分かる...?」


冬将軍さん「きつい事言うけど、

      ...それが現実なんだよ。」


冬将軍さん「...それが最終的に

      "雪ちゃんの為"になるの、」


美紗「.....」


美紗「.....。」


冬将軍さん「私だって何度も優勝逃してる

      コンテストだからね。」


冬将軍さん「期待して、入選落ちみたい

      な事も結構あったんだよ」


冬将軍さん「....。」


冬将軍さん「...雪ちゃんも、そろそろ

      待ってるんじゃない?」


美紗「....。」


 ...この絵を皆に見てもらいたいって


美紗(思うのは...、そんなにおかしいこと、

なのかな...。)


美紗(...雪音の絵は、上手じゃないと

   皆に見せちゃ... いけない絵なの...?)


分かん ないよ...、


美紗(本当に...、上手く描けた絵だけを

   コンテストに出し続ける事が...、

   雪音にとって"良いこと"なの...?)


 私が提出したせいで...、雪音が馬鹿にされる可能性だって、...それは分かってるけど


美紗(...絵が上手くなきゃ、雪音は絵を

   見せるのすら許されないなんて...、)


美紗(本当に...、それが雪音の為なの...?)


美紗(本当に上手い絵じゃなきゃ

   誰にも見て貰う価値がない

   なんて...、そんなの...)


美紗(悲しいよ...。)


美紗(...そんな決まりなんて、どこにも

   ないのに...)


 ...この絵は、絵が描けなくなった雪音が一生懸命私のために描いてくれた絵で。


 世界に一つしかない、雪音と過ごしてきた大切な記憶で...。


 それを今までの絵よりも"上手くない"っていう理由で、


 雪音と過ごした、大事な時間も、この絵が出来るまで頑張った雪音の気持ちも...、全部...、、


 そんな絵は見せられないの一言で終わってしまうのが...、今の私にはどうしても...納得、できなかった。


美紗「.....そんなに、」


美紗「駄目...、なんですか」


冬将軍さん「別に駄目とは言ってないよ。

でも、それが最終的に雪ちゃんの

      ためになるって。」


美紗「...確かに 」


美紗「今まで描いてきた絵に比べたら

   この絵は酷い出来かもしれ

   ません、」


美紗「雪音と話します、出しても良いか

   って、それで駄目だったら...、

また、...違う方法を捜します。」


美紗「でもこの絵は、私にとっても、

   雪音にとっても。とても大切な絵

   なんですっ、、」


美紗「出してもないのに、最初から

   優勝出来ない。って、否定から

   始めないでください...!!」


美紗「この絵が愛情じゃないって言う

   なら、愛なんて所詮、ただの"言葉だけ"の

   紛い物でしかない」


美紗「 ほんとに...。 」


冬将軍さん「......。」


晴華「美紗ちゃん...、」


冬将軍さん「...」


冬将軍さん「...いいよ、...ほんと

      いいね。」


冬将軍さん「...君、最高、」


冬将軍さん「流っ石ー...、雪ちゃんが

      惚れた女の子なだけあるわ、、」


冬将軍さん「久々にこんな青春見た、って感じ。

      やっぱ、若いのはこうじゃ

      なきゃね。うん」


美紗「え?」


冬将軍さん「その気持ちが一番大事なん

      だよ、」


冬将軍さん「先生がよく言っててね。

      諦めた瞬間、その未来に

      なるんだ。って」


美紗「でも、描いた本人じゃないと...」


冬将軍さん「そう思うでしょ?これ、

      コンテストの内容なんだけど」


冬将軍さん「よく、読んでみて」


冬将軍さん「参加者は一人じゃなきゃ

      駄目、なんて書いてある?」


美紗「採点方法はテーマに沿った内容の

   絵画を提出し、まず始めに面接、」


美紗「作品者氏名、年齢...」


美紗「禁止事項。著作権に、のとったもの。

   コピーなど」


美紗「色紙の形式は問いません...、」

※前回のやつ見て余力があったら大晦日の紙用紙みたいな形で書いて欲しい...(懇願)筆者さんは衰退しました。


 本人が描いてないものを自分が描いた。って提出するのは駄目だけど


 雪音の名前が入ったタイトルなら...、


丁度、...持ってる!!、


美紗「...!!」


冬将軍さん「気が付いた?」


冬将軍さん「...そう、本人が描いてない物

      の提出が無理だっていうのなら...」


冬将軍さん「二人の合作にしちゃえば

      いい。合同作品じゃなくても、

      その辺は"抜け穴"ね」


冬将軍さん「...流石に4人5人とかなってくると

      まずいけど、2~3人なら単体の

      範囲内だと思うよ」  


冬将軍さん「単体(ひとり)とか書かれてないし」    


冬将軍さん「障がい者の人で、一人で出したく

      ても出せない人もいるしね。中々

      そういう風に書けないんだよね」


冬将軍さん「そしたら、面接は美紗ちゃん。

      絵は雪ちゃんってなるでしょ?」


冬将軍さん「"愛がテーマだから"って

      言えば、納得せざる負えない。

      それも含めて"作品"だからって」


冬将軍さん「実際それで過去提出して

      金賞取った人もいるし...、」

   

冬将軍さん「次年度からそれが主流に

      なっちゃって、今では言う

      ほど効力ないんだけどね。」


冬将軍さん「まぁ、無言の了承っていうか」


晴華「意地悪しないで先に言っちゃえば

   良かったのに...、そういうところが

   良くないんですよ。」


冬将軍さん「ごめんごめん...。この子が

      "奇跡を作れる"だけの覚悟が

      あるか見たくなっちゃって」


冬将軍さん「あまりにも先生にそっくり

      だったから、つい、」


冬将軍さん「でも...、私が言った事もあながち

      間違ってないよ」


冬将軍さん「普通に出しただけなら

      予選敗退するのがオチなんだ

      よね、」


冬将軍さん「さっきの絵を見たとおり、

      コンテストの連中はこんな

      レベルのばっかだから...、」


冬将軍さん「...絵っていうのはね。実際

      画力が無くても」


冬将軍さん「人の心を鷲掴み出来れば

      "勝ち"なとこあるんだよね。」


冬将軍さん「有名なピカソの絵だって、

      素人から見たら何も理解

      出来なくても、」


冬将軍さん「美術会ではちゃんと評価

      されてるでしょ?」


冬将軍さん「問題はそこ、」


冬将軍さん「例えば...、今回は【愛情】

      がテーマじゃない?」


冬将軍さん「それこそ、これが愛情を絵にした

      絵だ!!って...。皆が皆、納得するような...」


冬将軍さん「そんな『何か』があれば、

      可能性は0じゃないんだ

      よ。」


冬将軍さん「それを考えるのが美紗

      ちゃんの課題かなー、」


美紗「良いんですか...?」


美紗「私が雪音の絵を...、出しても...。」


冬将軍さん「出したいんでしょ?」


冬将軍さん「だったら。もう出すしか

      ないんじゃない?」


冬将軍さん「...だって絵って本来、そういうもの

      でしょ。」


冬将軍さん「見せたいから描いて、

      伝えたいから...、魅(み)せる、」


冬将軍さん「私はそんなあの人に憧れて

      弟子になったんだか

      ら。」


冬将軍さん「実際、不可能を可能にして

      きたとこ。いっぱいこの

      目で見てきたからね、」


冬将軍さん「はい、これ。意地悪しちゃ

      ったお詫び、」


 と、冬将軍さんが差し出したのは


一枚の原稿用紙だった...。


冬将軍さん「頑張れ、高校生」


※キャプション


晴華「一時はどうなるかと思ったけど、」


晴華「先生から良いアドバイスが貰えて

   良かったね。美紗ちゃん、」


美紗「...はい、」


 最初は怖い人と思ったけど...


 話してみたら普通に良い人だったし...、...ちゃんとアドバイスもしてくれた。(それに、作文用紙も。)


美紗(金賞は...、難しいって言われちゃ

   ったけど...)


 でも。それでも皆が【愛情】だって、認める『何か』があれば、可能性は0じゃないって...、


 冬将軍さんはそう言ってくれたから。


美紗( 皆が皆...。これが【愛情】だっ

   て...、納得、...出来るもの...。)


美紗(難しいけど...、絶対何かあるはず。

   雪音の事を皆にもっと知って

   貰う、そんな方法が...)


美紗(.......、)


美紗(.....。)


 ...今は頭がうまく回らなくて、何も思い浮かばないけど...、


 誰も思い付かないような事を考えるのは好きだから。やれることは...全部やる。


 ...絶対に良い文章を書いて見せるからね。雪音...、


美紗(他の人には真似出来ない、雪音の

   絵だからこそある『愛情』を

   上手く伝えられれば...、)


美紗(金賞は難しくても、0じゃない

   んだ。...0、じゃない)


  それが知れただけでも、私にとっては大きな前進だった。


美紗(例えそれで、優勝出来なかった

   としても。やる前から諦めて出さないで

   後悔するより)


美紗(出して後悔した方が絶対良いに

   決まってるもんね。)


 ...どんな絵でも思いのこもった絵は凄いんだって...、雪音に自信をもって欲しい。


 例え上手に出来なくても。その絵じゃ優勝出来ないって、言われても...。それを信じてくれる人が必ずどこかにいるから。


美紗(雪音はもっと自分の

   絵に自信を持っていい、)


美紗(だって、とっても 素敵な絵だから。

   ファンが出来るくらいに、ね。)


美紗(....)


美紗(でも...何を書くべきか...。

   雪音の絵が他の絵と違うこと...)


美紗(私が審査員なら見たい内容...。)


美紗(コンテストまでそんな

   時間もないし...、)


 今日が月曜日だから...今週の土曜日まで、大体...5日? 

※↑コンテストは第3土曜日

(この世界では1月の月曜日は第二が

  祝日です。※威圧)曜日はおk


 それまでに出すとしたら、すぐ書かないと...。


晴華「作文用紙は後で運転手さんに

   渡しておくね、」


美紗「え、あっ...」


 晴華さんは私の持っていた作文用紙を

まるで親が子供から玩具を取り上げるかのように取り上げると...、


 作文用紙をクリアファイルの中に入れる。


美紗「.....」


美紗「えっ、と...」


美紗「晴華、さん...?」


晴華「さっきからずーっ、と...。

   その用紙見てるから...」


晴華「歩き作文は危ないよ?」


晴華「美紗ちゃんはあの絵の事が本当に

   良い絵だって、信じてるんだよ

   ね?」


晴華「だったら...美紗ちゃんが一番に

   信じてあげなきゃ、」


晴華「...その絵なら大丈夫だって。」


美紗「....。」


晴華「実際、何も思い浮かばなかった

   んじゃないかな?...どう?」


美紗「...雪音の絵が好きだって言うのは

   本当なんです。ただ...、頭が追い

   つかなくて...」


晴華「それはね、愛がないから

   浮かばないんじゃなくて...」


晴華「...単純に疲れてるから思い付か

   ないだけ。」


晴華「それだけ、なんだよ」


美紗「.....。」


晴華「...私も、そうだったから。」


美紗(...焦ってても良い作品は出来ない、か...、)


晴華「今美紗ちゃんに必要なのは、考える

   時間より休憩かな。」


晴華「焦る気持ちも分かるけど、

   休める時に休まないと...」


晴華「昨日の私みたいになっちゃう

   よ?」


美紗「凄い...ブラックジョーク

   言いますね。」


晴華「これでも凄い反省してるんだよ

   朝乃ちゃんにも随分叱られ

   ちゃったし...、」


晴華「過去を嘆いても何も変わらない

   から。ちゃんと休んで、進まないと

   人は前に進めない」


晴華「それに、疲れてる時はイライラ

   しがちだから」


晴華「冷静さも失っちゃうでしょ?」


晴華「焦ってる時こそ。落ち着いて 冷静に対処

   すれば 少なくとも大きなミスには

   繋がらないはずだから」


 モデルをやってる晴華さんの言葉だから

こそ、芯から感じる説得力がそこにあった。


美紗「...晴華さんは、優しいですね。

    私も、その優しさを見習いたいです」


晴華「それに私にあれだけ休めーって

   言っておきながら。」


晴華「自分だけ休まないというのは

   ちょっーと、ズルいとは思わない

   かね?」


美紗「...ズルい?、ですか」


晴華「つまり、頑張り過ぎだよ。」


晴華「って事が伝えたかっただけ

   なんだけど...」


晴華「そっちの方が美紗ちゃんは分かり

   やすいかなって。」


美紗「...雪音ですか?」


晴華「ううん、なんとなく。そういう

   言い方の方が好きかなって」


美紗「...え、なんで急にそう思ったん

   ですか??」


晴華「え?」


晴華「....、」


美紗(凄い考えてる...、)


美紗「あ、やっぱいいです。言わなくて」


美紗「....。」


美紗「あの...さっきはありがとうござ

います。お礼...、言っておきたくて」


晴華「ん?」


美紗「冬将軍さんにあんまり意地悪しないで

   言ってあげればいいのに、って言って

   ましたよね...?」


 冬将軍さんに色々言われた後。冬将軍さんに対して『意地悪しないで先に言ってあげればいいのに、』って言ってくれたから。


晴華「美紗ちゃんは充分雪ちゃんのために

   色々してくれたし、もう試す必要も

   ないと思って。」


晴華「ゆっきーが好きな人が気になるん

   だろうけど...、もう散々ひどい目に

   あってるもんね...。美紗ちゃん...」


晴華「誘拐未遂事件とか...今回の事とか」


晴華「それに、私もゆっきーの絵が悪く

   言われるのは嫌だったからねー」


晴華「...ちょっと大人げなかったけど、

   私も美紗ちゃんの活躍に期待、

   してるから」


晴華「取り敢えず今は没収するけどっ、

   後でちゃんと返すから安心して

   ね。」


美紗「....」


美紗(ん...?)


美紗「ちょっと待って下さい、

   今から雪音のとこに戻るんです

   よね?」


なに颯爽と帰ろうとしてるの、、この人


晴華「片方居れば、いいかなーって、」


美紗「いいかなー、じゃないんですよ。」


美紗「私が居たのになんでって、

   雪音に怒られますよ、、」


晴華「いやー...、私が居たら二人

   っきりになれないよ?」


美紗「あれ!?、朝乃先輩いますよね?!」


晴華「朝乃ちゃんはやれば出来る

   子だから...、大丈夫だよ、」


美紗「時と場合とタイミングを考えて

   考えて下さい、絶対私が居たのに

   何逃がしてるんですかの方が、」


美紗「言われる可能性、高いんですよ、、」


晴華「ゆっきーなら許してくれるから、

   お茶を入れてくるだけだよー。」


晴華「大丈夫、すぐ戻るからー」


※スライド


美紗「あれ、縁蛇さん...?」


朝乃「用事があるからって、さっき。

   お帰りなさい、」


美紗(流れ星みたいな人だよね...)


雪音「....行きましたか、」


雪音「....」


美紗「行きましたね...。

   止めたけど...、駄目でした...」


雪音「...仕方ありませんね」


雪音「彼女は動いていないと落ち着か

   ないタイプですので、仕方ないと

   言えば仕方ないですが...。」


朝乃「また倒れられても心配です

   から、何か休めざるおえない

   状況があれば良いんですけど...」


朝乃「あんまり強引じゃない手段で。」


雪音「そうですね...」


美紗「ごめん、雪音。考え事してるとき

   に悪いんだけど...、」


美紗「ちょっとお願いしたい事があって...。」


雪音「先程 杏里さんが先生のお部屋に

   行かれていた件ですね。...申し上げて

下さい」


美紗「え、なんで知ってるの?」


雪音「...向かわれた方角と言語から逆算

   すれば大体分かります。慣れ

   れば杏里さんにも出来ますよ。」


美紗「でも...私難しい事考えるの苦手

   だから、」


雪音「...それに 人の目を伺うのは貴女

   らしくもないですからね。」

 

雪音「言ってみただけですよ、

   あまり気にする必要もない

   かと」


 飲みかけの紅茶を飲みながら。雪音は謳うように瞳を閉じてそう語る。


美紗「金曜日に貰った雪音の絵を

   コンテストに出したいなって、

   思って...。」


 断られたら断られたで、もうその時は諦めるしかないけど...、その時はその時で色々説得して許しをこおうかな...。


美紗「良い...?」


雪音「...金賞は夢のまた夢ですよ。」


雪音「それでも、貴女には私の描いた

   "あの絵"を出す意味があるというの

   ですか?」


美紗「優勝とかは別に関係ないよ、ただ私が

   雪音の描いたあの絵を凄い気に入った

   から。個人的に出したいだけ。」


美紗(まぁ、そりゃとれたら良いと

   思うけど...)

※美紗は断られないために軽い感じで"優勝と

 関係ない"と言っています。自信ないと

 言っている雪音にプレッシャー掛けない

 ように


美紗「雪音が私のために描いてくれた

   絵だから、その気持ちが嬉しかったん

   だよ。」


美紗「思いの込められた絵に

   上手いも下手もないから」


雪音「...エミール=オーギュスト・

   シャルティエ、」


雪音「『幸せ論』ですね。」


雪音「....」


雪音「...良いでしょう。杏里さんが

   そこまで仰るなら」

   ※朝乃ちゃんの手前敬語


雪音「晴華さんは兎も角...、杏里さんは

   紅茶が冷める前に戻って来れましたから

   ね。」


雪音「...提出を許可します。愛する隣人

の達っての頼みですから...今回は

   特別ですよ、」


晴華「私からも椿様に言っておくねー、」


雪音「...然り気無く戻ってきても

   許しませんよ。」


晴華「冷める前に戻って来たよ?」


雪音「挙げ足をとらないで下さい」


 と、冷める直前のお茶に新しい紅茶を注ぐ晴華さん。


晴華「愛するが故、美味しい紅茶を

   飲んで欲しいなーって。駄目...?」


雪音「...お母様は私の"あの絵"を見たら

   どのような反応をなさるの

   でしょうか。」


美紗「皆違って皆良いのに、

   なんで皆上手いか下手かで物事を

   決めるんだろ...、」


美紗「その絵が好きな人だっているのに。」


晴華「無視は酷いよー、クッキー作る

   の我慢して来ただけ 評価して

   欲しいのにー...。」


朝乃「まぁ、まぁ...」


雪音「栄誉、名誉、達成感...。人に

   よってそれらは違うと思います

   が...」


雪音「ですが...その全てにおいて、

   "その先に終わりがない"という

   点については同じです。」


雪音「一位をとれば、順位を落とさないよう

   精進しなければなりませんし、」


雪音「...二位以降となれば一位になる

   ために切磋琢磨していく。」


雪音「本来、順位とは己を磨くために

   あるべき姿が理想的な形である...

   といえますが、」


雪音「それがいつから"義務"のような物に

   なってしまったのか。」


雪音「今となってはもう、"誰も知りようが

   ありません"」


美紗「最初に順位を決めた人はもう

   死んじゃってるもんね、後の世代の

   人についても考えて欲しいよ」


朝乃「悪いのはルールを作った人じゃ

   なくて、意味がちゃんと伝わらなかった

   事に問題があると思うけど...。」


美紗「どっちにしても、皆仲良く一位が良い

   なぁ...。」


朝乃「それなのに 某(それがし)ら人間は」


美紗「どうしてこうも、比べたがる。」


朝乃「ひとりひとり違うのにその中で」


美紗「一番になりたがるうー?」


朝乃「そうさ」


雪音「...怒られるのでやめてください。」


【※注意】掲載されている内容はすべて美紗の世界でのお話であり高校生の間で流行っている女性カバーの曲で、実在の人物・団体等とはなんら関係ありません。ゲームではこのシーンはカットで...


朝乃「...でも現実はそう甘くない

   ですよねー...。世知辛い

世の中ですから、」


美紗「うーん...、」


美紗「人生ってしんどい...、」


美紗「...どんな事、書いたら良いと思う?」


雪音「それを本人(わたし)に聞くの

   ですか...、」


美紗「雪音の意見も聞いておきたい

   なって、文字を書くときの参考

   にもなるかもしれないし」


美紗「ねっ、お願いっ、」


雪音「...貴女も中々難しい事を仰います

   ね。」


雪音「そもそも、杏里さんがあの絵を

   そこまで気に入るとも思って

   ませんでしたから...。」


雪音「お二人はどう思われますか、」


 私は急いでスマホの電源を付けると、朝乃先輩に雪音の描いた写真を見せる。


朝乃「普通に、すごい良い絵だと思います

   けど...」


美紗「ほら、朝乃先輩だって良い絵だって

   言ってるよ?」


雪音「そもそもラフ画ですので...、」


朝乃「ラフ!?これで...!?」


雪音「本当はそのような絵をコンテスト

   に出す事自体、...信じられない事

   なのですが...。」


雪音「私としては、コンテストの事よりも。

   杏里さんが"それで納得出来るなら"...」


雪音「という感じですね。」


雪音「...本来、絵というものは

   もっと時間を掛けて丁寧に

   塗っていくものです。」


雪音「それくらい この絵は相当、酷い

   出来なのですよ」


雪音「それは、描いた本人が一番

   分かっています...。」


『もっと素敵な絵を贈りたかった、』


 あの時...、雪音の本音を聞いてしまったからこそ。冷静な雪音の中に 感情が芽生える...。


雪音「『私が描いてくれた絵だから』という、

   たった"それだけ"の理由で。」


雪音「こんな酷い出来でも...。本気で好き

   だと言って下さる方がいた、」


雪音「それだけで、」


雪音「...この絵は私にとって」


雪音「金賞よりも。何より価値のある物へと

   変わっていったのです。」


雪音「それだけで...、私はもう充分

   なのですよ」


雪音「これ以上は何も望みません。」


雪音「コンテストに出してしまえば、

   端から見れば...貴女のせいで"古池

   の娘の絵が描けなくなった"と」


雪音「思われかねない状況です。勿論

   その事に関しては否定しますが、

   ...椿様がそのように発言されたら、」


雪音「そうなってしまう可能性がある。

   それが例え、事実でなくても...、」


雪音「その絵を貴女が無理やり出す

   "必要"はないのですよ。杏里さん」


雪音「....。」


雪音「...それでも"出したい"と

   言うのなら、私は止めませんが」


→A.出す

→B.出さない

※出さないのみ美紗のツッコミが入る


→B.出さない

美紗(いや、何ひよってるの私、、

   実質選択肢一個しかないでしょ)




美紗「...出すよ。だって事実は

   そうじゃないんだもん」


美紗「...言いたい人には言わせておけばいい。

   それくらいしかやることがない人達だから」


雪音「...貴女はそういう人ですからね。」


雪音「ですが、途中でやめてしまっても

   本当に文句は言いませんよ」


雪音「そのような義務など初めから

   ないのですから。」


美紗「雪音ももう、分かってるでしょ。

   私は諦めが悪いって、」


美紗「そういうのより、『良い文章書いて

   よね』とかの方が嬉しいんだけど」


雪音「私ならそのような真似...

   出来ません。勝つ見込みのない

   勝負なんて...」


雪音「...貴女は、何故そこまで私の絵に

   "拘る"事が出来るのですか?」


雪音「描いた本人さえ、自信を持てて

   いないというのに...。」


美紗「それは...」


美紗「...私がこの絵のファン...、

   だから...かな?」


雪音「....。」


雪音「...お婆様と同じ事を仰るの

   ですね、当人の事なのに、まるで他人の事のよう。」


美紗(雪音、今ちょっと...

   笑った...///?、)


美紗「それだけ雪音の絵が凄いって

   事だよ、」


美紗「私はそれくらいしか出来ないから。」


美紗「...それに、上手いとか下手とかで物事を

   決められるのって悲しいじゃん。」


美紗「私はそういう人に抗いたい、」


美紗

「そういう人に"こういう人もいる"んだって事を、自分の意見を通したい。私達にも感情があるんだって。知ってほしい」


美紗(お父さんにはまだ難しいけど、私は

   私なりの方法でそれを伝えてみせる。)


雪音「...貴女は強いですね。私より...

   ずっと、」


美紗「そんな人を惚れさせた雪音も、

   相当だけどね。」


雪音「人脈の深さは貴女に敵いませんよ。」


美紗「例え金賞が取れなかったとしても、雪音の

   絵は絶対にお母さんに認めさせて見せる

   から。見てて、」


雪音「...心強いですね。」


美紗「別に戦争をしに行くんじゃない

   から。そんな不安そうな顔しない

   でよ、」


美紗「ただ文字書いて面接する

   だけだし。筆記がないだけ、新入

   試験よりもずっと簡単だよ」


雪音「私は、...不安を感じているの

   でしょうか」


美紗「誰だって幻滅されるのは怖いし、

   自信のない絵なら...尚更。不安に

   なるよ」

   

美紗「でも、上手くいかなかった時は

   上手くいかなかった時でさ。」


美紗「...それは、それで 良いんだよ。」


雪音「皆(みな)の期待を裏切るような

   事であっても。ですか」


美紗「する事に意味があるから。」


美紗「例え、それが間違いだったと

   しても...」


美紗「そんな生活、疲れちゃう

   でしょ?」


美紗「たまには息抜きしないと。やれる事

   には限りがあるんだから。」


美紗「私達は"完璧"じゃない」


雪音「.....」


雪音「.......。」


雪音「...昨晩、醜態としては。

   もう充分にお見せしているん

   ですけどね」


朝乃(昨晩、何(ナニ)をお見せ

   したんだろう...。)


美紗「酔いどれゆっきー以外にも、皆が

   見えるとこでギャップ萌えを

   狙ってこう。」


美紗「自分の思ってる事を口にするのは

   凄い勇気がいる事だけど」


雪音「...貴女が言うと、説得力が

   ないですね。」


美紗「でも、嫌な事は嫌(や)だし、

   それは言わないと伝わらない」


美紗「だから反論するんだよ。雪音は

   引っ越したくないって」


雪音「反論...、ですか...。」


美紗「自分の意思で考えて、自分の

意思で行動する...。今の私には

   それが出来るから、」


美紗「だから"後悔"はしないよ。

   それがどんな結末だったとしても」


美紗「だって、それが『私の選んだ道』

   だから。」


美紗「文章を書くのは得意だからね、

   絶対に良い文章に仕上げて

   みせる」


美紗「だから、そんな心配しないで」


美紗「それくらいあの絵を貰ったとき

   嬉しかったんだよ。」


 ...誰がなんと言っても。私は雪音の描いたこの絵の事が大好きで...、例え雪音自身が今はそれを認められなくても


私は、私の"思い"を信じる。


※キャプション


美紗「柚夏ー、おはよ、」


柚夏「え、」


柚夏「美紗っ!?」


 いつも校門の前に立ってる先生がまだ来てない時間...、私はというと。自分の教室の中に居た。


美紗「そんな驚く...?」


 結局、あの後あんまり寝れなくて...


 思い出がありすぎて何書こうって、ベットの上で横になりながら雪音のことを色々思い返してたんだけど


 思い出してる内になんか、懐かしくなってきちゃって。


 もう一度、あの場所に行ってみよって


 たまには、こういう時間に学校に行くのもいいのかなーって来たんだけど...それを見たゆずかーさんのこの驚きようだった。


柚夏「いや、こんな時間に来るのって。

   かなり珍しいなって...まだ

   始まるまで時間あるし」


 そう言いながら柚夏はショルダーバックに手を掛けて。そのまま机の横に置く。


 アルバイトの服も一緒に入ってるのか少しバックの中が膨らんでいた


美紗「柚夏っていつもこんな時間に

   来てるの?」


柚夏「まぁねぇ...、」


柚夏「...もう習慣みたいなものかな、

   夜中に色々してるし 朝は暇だし。」


柚夏「学費も稼がないといけないし、

   学校に居る方が何かと勉強も

   捗る(はかどる)から」

   

柚夏「美紗は?」


美紗「...最近あんまり寝れなくて、

   たまにはこういうのも良い

   かなーって」


美紗「行きたい場所があったから。

   そのついでに朝から学校探検

   でもしようかなと、」


柚夏「...古池さんの事、やっぱり気に

   なる?」


 柚夏は眠れない原因が雪音の引っ越しだと思ったみたい。


 まさか、その後スランプだった雪音が私のために絵を描いてくれて...、


 その絵を今まさにコンテストに出そうとしてるなんて...普通は、想像出来ないよね...。


美紗(まぁ....、それも辛いけど...。)


柚夏「急だもんね...。引っ越し」


美紗「学校で会えなくなるだけだか

   ら、毎日スマホも送れるしそんな

   重苦しい感じでもないし。それ

   に...」


美紗「覚悟は、もう...してるから。」


美紗「大丈夫だよ、時間もいっぱい

   あったし。後は悔いを残さない

   ようにするべき事をするだけ、」


 そう言って、机の上に置いたバックに覆い被さるよう身体を乗せて柚夏と話す。


美紗(中に入った教科書がちょっと

   固いけど....、)


美紗(でも、少しだけなら...良い

   よね。教科書が痛まないくらい...。)


美紗「それに、ただで諦めるつもりも

   ないから」


 スマホの待ち受け画面になった雪音の絵を柚夏に見せると 柚夏は席を立って、こっちに来る。


柚夏「画面、変えたんだ。」


柚夏「って...、これ...」


美紗「うん、雪音がくれたの。」


美紗「...これが日本で描く最後の絵

   なんだって」


 すると急に、柚夏は背後から肩を組むように私に寄りかかる。


美紗「どうしたの?」


柚夏「...なんで神って奴は こんな良い

   人ばかり試練を与えるんだろう、

   って」


柚夏「思って、」


柚夏「もっと罰せられなきゃいけない

   人間だって 五万といるはずなのに...」


美紗「...んー、逆に今までが人に恵まれ

   過ぎてたんだよ。」


美紗「こんな心配してくれる親友も

   いるし」


柚夏「大事な友人が無理してたら

   そりゃ...心配もするでしょうよ。」


美紗「...可愛いゆずかーさん。」


柚夏「普段はイケメン、イケメン

   言ってる癖に...。」


美紗「それだけ柚夏が頼りに

   なるってことだよ。」


柚夏「...良いようにはぐらかされた

   気もするけど。」


柚夏「...でも、美紗も...この一年で

ほんとに古池さんと仲良くなった

よね。」


美紗「...うん、最初は雪音の見た目に

   惹かれて。仲良くなりたいだけ

   なのかなって、思ってたけど」


美紗「今は雪音が居たから。学園生活が

楽しかったんだなって思う」


 誘拐の事とか、お菓子の事とか。色んな事があったけど


それを含めて。 全部良い思い出だった。


雪音『...成程、貴女の言っていた意味が少し

   は私にも理解出来そうです』


雪音『とても美しい光景ですね。』

   ※京都編で見た花火の時の台詞


雪音『貴女が私を受け入れて下さった


   ように...、私もまた、貴女の事を


   受け入れたいのです。』

   ※お風呂の台詞


雪音『...杏里さん』


雪音『貴女と、逢えて良かったです。』

   ※お泊まり編寝る前


↑※こっちの方が印象に残ってる(好き)って

  言う雪音の台詞があったら感想で

  教えて下さい。そちらの方が良いと

  思ったら、そっちを採用します


柚夏「美紗...、泣いてるの...?」


美紗「ちょっと不安になっちゃって。」


美紗「...まぁ、雪音の方はほんとの意味

   で許してくれるか分かんないけ

   ど...」


美紗「結構実力主義な人だから。本当に

   美味しい料理と思ったら許してくれると

   思うよ。」


柚夏「一応...本気で作るけど、普段

   食べてる物が違うから...普通

   ので良いのかなぁ...」


美紗「柚夏の料理なら大丈夫じゃない?」


美紗「あと雪音は甘いの食べると性格が

   変わっちゃうから、持ち運び用のに

   してあげてね」


柚夏「...励ますつもりが、なんか知らな

い間にこっちが励まされてる

   感じ...。」


柚夏「...お菓子より、料理メイン、っていう

   方が良いのかな?」


美紗「だね。」


美紗「お菓子は個人的に作っておくといいよ」


柚夏「美紗も作りに来る?今丁度試作

   作ってるんだけど、」


美紗「いや、今日はちょっと...」


美紗「...コンテストの事で頭がいっぱい

   だから...、」


柚夏「コンテスト?」


美紗「雪音から貰った絵なんだけど、

   コンテストに出そうと思ってて。」


美紗「雪音は自信なさそうだし、」


美紗「色々あって...、代わりに私がコンテスト

   の作文と面接する事になった。」


柚夏「えっ。面接しに行くの?」


美紗「うん、だって気持ちのこもった

   絵に上手いも下手もないって

   いうのを証明したいし...。」


柚夏「だからって...。すぐ面接しようって

   なれるのが凄いよ...」


美紗「まぁ文章書くのが得意っていう

   のもあるけどね、」


美紗「雪音より書けるんじゃないかな。

   それ以外では、全部負けるけど...」


美紗「...自分の得意な事で好きな人の

   ためになれるなら、それ以上の

   幸せはないよ。」


美紗「私はこの絵が良いと思った、...

   だから金賞を取るのが難しいって

   言われたのを後悔させたい」


美紗「面接したら、少なくとも

   その絵にはそれだけの価値が

   あるって事になるから。」


美紗「そう思うだけでも楽しいよ」


美紗「でも...、雪音が...。」


美紗「雪音自身がっ、この絵の良さを

   まったく理解してないの...っ!!、」


美紗「無理してまで出さなくて良いって、、」


美紗「本人には言えなかったけど、、

   私が言って欲しかったのはそんな

   ちゃっちな言葉じゃなくて...!!、」


美紗「『私の友人なら、貴女の文で金賞を

   見事取ってきて下さい。』『私の事が

   好きならそれくらい出来ます

   よね?』」


美紗「って、感じのを...期待してたのに...、」


柚夏「願望が叶わなかったようで

   何よりだよ。」


美紗「あ"〜...」


美紗「そうすれば絶対に良い文を

   思い付くのになぁ、、最近シリアス

   続きで...疲れてて。」


美紗「良い文を書くのに必要なアドレナ

   リンが足りてないんだよね...。」


柚夏「美紗、...後でジュース奢るから。」


美紗「え?ほんとっ?」


美紗「でももっと自分の絵に自信を

   持って欲しいっていうのは本当だよ?」


美紗「だって上手いし。」


美紗「少なくともこの絵がちゃんと

   凄い絵だって、自信をもって

   雪音が言えるような文章を書き

   たい」


 それで誰にも文句を言われないくらい、雪音の絵が凄いって事を私が証明してみせるから。


 だから、待ってて 頑張るから私。


美紗「でも...ありがと、柚夏。」


美紗「なんか色々口走ったらスッキリ

   したよ、最近真面目な事ばっかり

   考えてたから。」


美紗「色んな人に見て貰いたいし、

   作文、頑張るね。」


柚夏「あんまり無理しないこと、」


柚夏「もう手遅れかもしれないけど...」


美紗「はーい、」


柚夏「....、」


柚夏「...何か。手伝える事があれば

   良いんだけどね」



※スライド


 柚夏と別れた私は雪音と出会った時のことを思い出しながら。学校の中を歩いてく


美紗(んー...先にどこから見てまわろうかな)


『雪音の地』巡回参り


 下駄箱が見えると同時に、二人の生徒とすれ違う。他のクラスの人かな。


生徒T「で、昨日のホラーがさー、」


生徒M「あのシーンマジで怖かった

    よね。」


生徒T「そこなー。分かる、」


生徒M「夏じゃなくて冬に見るホラー

    こそ本当のホラーっぽくて

    良いよね。」


美紗(テレビとか映画のホラーって

   そういや最近全然見てないなぁ。

   お化けとかくゆが苦手だし、)


美紗(昔はお父さんがそういう映画

   見てた気もするけど...。あんまり

   覚えてないなぁ...。)


美紗(ホラーかぁ...、)


美紗(私の方がホラー映画だよ。実の父親が

   『お前は俺の子じゃない!!、』って、怒りに

   震えながらある日突然刃物持ってきたり...)


美紗(荷物を運んでたら、急に白いフード

   を被った人に殺されそうになった

   り)


美紗(ホラー映画っていうか...、...もう

   ここまでくるとサスペンスだよね。)


美紗(だとしたら私は被害者役?)


美紗(現実の方がよっぽどサスペンスだよ)


美紗(主役は嬉しいけど...、あんまり

   嬉しくない役だなぁ...。)


 もう見慣てしまった景色も。そう思いながら歩くとまた違った感じに見えるから


 本物に、人って不思議な生き物だなって思う。


美紗(雪音の下駄箱を見ると振られた

   時の事思い出すなぁー...、あの時

   は誤解だったけど)


美紗(振られた時の絶望感っていった

   ら、今となってはもう終わった

   話なんだけどね。)


 まるで、その場所自体が一枚のフレームように思い出としてちゃんと記憶に残ってて、


 それがつい最近あった事のように雪音を近くに感じる。


美紗(恋をしたのも初めてだったし、

   あの時の私はよくめげずに

   頑張ってたよね。)


美紗(普通は恋人が出来ればもっと

   明るくなるのに、)


美紗(雪音の目には最初から私なんて

   映ってなくて。雪音はずっと

   先の未来しか見てなかった、)


美紗("お金持ちだから利用してる"

   とか、"地位が欲しいから"とか...)


美紗(...そういう理由がないと実際人

   と付き合うのって 難しいよね。)


美紗(人間不振なら尚更、そんなの

   当たり前。)


 私の知ってる愛は人とどこか違ってて。


 このままずっと何も変わらない生活で、いつか実の父親に刺される日が私の一生だと思ってた。


 でも、私の運命は一人の女の子の手によって支えられた。


 沢山の大人が見てみぬふりをした中で、自分より小さな子が私の為にいっぱい泣いてくれた。


 "絶対に変わる訳がない"と思ってた世界に光を照らしてくれた。


 その時 私は初めて生きてて良いんだって、心からそう思えた


美紗(...あんな小さなくゆが私を救って

   くれたんだもん。世界は変えられる

   って、)


 それを今度は私が雪音に伝える番、あの時の事を私は今でも忘れない。


 くゆから誕生日に貰ったモルモットのフェルトを握って、元気を出す。プイプイ、※美紗の誕生日は10月11日。みさくゆルートで


美紗(ありがとう、くゆ...。私もくゆ

   みたいに恐くても誰かを守って

   あげられる人になりたい。) 


美紗(そのためにも色々まわって

   雪音との思い出をまとめないと。)


※スライド



美紗(雪音と付き合えたのは良かった

   けど、それと同時に柚夏の元気

   がなくなってて)


美紗(樹理先輩に相談したらお菓子を

   作ろうって話になって、)


美紗(本当に急だったけど...。)


美紗(奈実樹さんと樹理先輩に作り方

   を教えてもらいながら、一緒に

   お菓子を作ったんだっけ)


樹理「ちょっ、縁蛇ーーーー!?!?」


 調理室で料理をしてるのか樹理先輩の叫び声が聞こえてくる。


樹理「鍋の中見ててって、あー...今から

   いじれば何とかなるかな!?」


樹理「ナミにバレませんように...ナミに

バレませんように...」


美紗(何があったのか此処まで聞こえて

   るけど...、相変わらず皆楽しそう

   で、素敵な部活動そう。)


 料理は少し怖かったけど お菓子作りは大成功で、柚夏ともちゃんと仲直り出来て。本当に良かった


美紗(そういえば、あの時も不思議な夢

   を見たんだっけ...。)


美紗(柚夏の声がする魔法少女の女の子

   の夢、)


美紗(結構前に見たから内容はそんな

   はっきり覚えてないけど...)


美紗(髪を切った人形の女の子が

   流雨さんにちょっと似てたなって、) 


美紗(ステッキへし折ったとことか。

   結構前に見た夢なのに。面白かった

   から印象に残ってるのかな、)


 それからお詫びにって 雪音に柚夏がクッキーをあげて、それを食べた雪音が酔っ払っらちゃって...。


美紗(.....、)


美紗(...あの時は流石に、もう駄目だと

   思ったよね、手汗で汗びっちゃ

   びちゃだったし)


 キスして怒った雪音に謝り倒して、何度も謝って許して貰って、


 あの時は許して貰う事に必死で何言ったのかあんまり覚えてないけど...


美紗(でも、流石に雪音も私がもう諦め

   ないって分かったのか、それから

   少し信頼してくれるようになってきて)


 律儀に約束を守ってくれた雪音は海でお婆さんの描いた特別な絵を見せてくれた。


 初めて見た絵なのに、心の何処かでその絵の事を知ってる気がするほどに。見ただけで愛が伝わってくる絵。


 雪音がどれだけ愛されていたかも、その絵を通して全て伝わってきた...。


美紗(絵だけでそれが伝えられるんだ

   もん、雪音のお婆さんは最後にあの絵を

   雪音の為に残したんだって。)


美紗(いつかあの絵のように雪音が

   心から笑顔で笑える日を信じて)


 あの日。雪音と一緒に見た絵はそれだけ

印象に残ってるし、私は多分あの絵を見るために生きてきたんだろうなって


 そう思わせる"何か"があの絵の中にあった。


美紗(文化祭が終わって、正式に雪音と

   友達になれたと思ったら、)


美紗(急に引っ越しが決まって...、)


美紗(......、)


美紗(...そっか、)


美紗(あれから まだ一年も

   経ってないんだ...。)


※キャプション




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