第10話「誤解とすれ違い、」

※キャプション


 夕焼けが照らす赤い空の下、私は自転車を漕ぐ。


店員「ありがとうございましたー」


 家に帰ってすぐ近くの文房具店に行くと、私は便箋付きの手紙を1枚選んで店を出る。


 勿論、手紙を買ったのは古池さんに宛てて手紙を書くためだった


美紗「告白と言えば、やっぱり手紙

   だよね…///、」


美紗「…んー、どんな文章が良いかな。」


 シャーペンをくるくると回しながら、考えを膨らませる私。


美紗「貴女の事をずっと見てました、

   は...なんかストーカーっぽいかな?」


美紗「じゃあ、愛しています…////...とか?

   ...は、ちょっと直球過ぎる気も

   するし...」


 結局、何時間も悩んだ末に簡潔な文になっちゃったけど...


美紗(うん。これぐらいの方が私らしい

   かな)


「…いきなりの手紙でごめんなさい、この間スケッチブックを拾ってもらった杏里です。


 一目、見た時から貴女の事が忘れられなくて、気持ちを伝えられたらなって思って手紙を書きました。


 初めて会った時もそうだったんですけど仕草の一つ一つが丁寧で、凄いなって思いました。


 古池さんは同性の私から見ても格好良くて、とても素敵な人だと思います。古池さんさえ良かったら私とお付き合いして下さい。           杏里 美紗」


 私は次の日の朝、古池さんの下駄箱にその手紙を入れて古池さんの下駄箱を閉じた


※スライド


 その日の私は一日中ずっとドキドキしっぱなしで、古池さんの返事を心待ちにしていた。


美紗(・・古池さんはどんな字を書くん

   だろ、やっぱ凄く綺麗だよね、

   もっと上手に書けば良かったか

   な、)


柚夏「で、この間の飴が残ってるから

   それを使ってお菓子にしたいと

   思ってるんだけど、美紗?」


美紗「・・・」


柚夏「聞いてる?」


美紗「うん、あっ。飴のお菓子ならクッキ

   ーが良いな」


柚夏「そこはちゃんと聞いてるんだ

   ね・・・。」


 最後の授業のチャイムが鳴って、柚夏はバイトがあるからって先に帰っていった。


柚夏「じゃー、また、」


美紗「またー」


柚夏「車に気を付けるんだよ」


美紗「柚夏も急ぎすぎてひかれない

   ようにね」


美紗(さて、下駄箱の中を確認しに行こう

   かな)


美紗(流石に一日で返事が来るとは

   思ってないけど・・・)


・・・でも、少しだけ、期待してもいいよね?


美紗「・・・嘘、手紙?」


 ドキドキしながら下駄箱の中を覗いてみると、その中には高そうな手紙の便箋が入ってた。


・・・勿論差出人は古池さんからだった、、


美紗(古池さん・・・手紙、読んでくれた

   んだ///)


 すぐに開いて読みたい気持ちを抑えながら、家に帰って、そっと荷物を置く。


 そしてごくり…と唾を飲み込み、ゆっくりと開けてみると…


そこに書かれていたのは、


古池さん「お気持ちは大変嬉しく…。申し

     訳ないのですが、貴女とお付き

     合いさせて頂くことは出来ませ

     ん・・・。」


というこちらもまた簡潔な内容だった...。


美紗「・・・・。そうだよね、」


美紗「…急に告白されても、

   ・・困るよ・・ね…。」


…涙が手紙を濡らす。


 古池さんから貰った手紙なのに...、汚さないようにしないと、...ちょっと字が霞んじゃった、、


 人生はそんな甘くないっていうのは分かってたけど…、


 今だけは、泣いて...良いよね...?


 私は少しの間無言で涙を流してた、普通の人なら多分此処で諦めるんだろうけど...


 私はどうしても直接古池さんからその言葉を聞くまで、納得、できなかった。


 そんなの当然なんだって…、「仕方無いんだ…」で諦められれば良かったんだけど...、


美紗「…多分、そっちの方が諦めもつく

   だろうし...」


美紗「これで振られても、私にはくゆと

   ゆずかーさんもいるし...、」


 それに、この手紙には具体的な理由が書いて無いからなんで振られたかも分かんないんだよね...。


美紗「性格が無理ですとかだったら積む

   けど、取り敢えず謝って宛先

   間違って下駄箱入れたとか...、」


美紗「でも、古池さんってがっつり書い

   ちゃったし...、素直に謝まろ

   う...。」


 次の日、書いた手紙を古池さんの下駄箱の中に投函する。


美紗「12時10分、茂みの先の白いベンチ

   で待っています。」


※キャプション


 午前の授業が終わり、手紙に書いた通りに12時10分に向かうと


 古池さんはいつもと変わらない様子でベンチの上に座ってた。


古池さん「…私に何か御用でしょうか?」


 と目を瞑りながら私に問いかけるお姫様、…心臓がばくばくする。


美紗(まずは手紙の事を謝まらないと、

   急に変な手紙送っちゃってごめん

   ねって、)


美紗「ふぅ…」


と...私は深く深呼吸して、


美紗「好きです…付き合って下さい

   っ…!!」


 私は思い切って彼女に言った。


雪音「.....。」


美紗「.........、」


 時が止まったような沈黙が私の緊張感を募らせる。冷や汗がだらっだらっだった。


古池さん「...茶番はもうおやめになりま

     せんか?」


古池さん「私はただ貴女の事が知りたい

     のです。」


古池さん「貴女が私に対して一体、何を

     お望みになられているかを、」


古池さん「安定した企業との繋がり、私の

     側にいる事で色々な恩恵を得

     たい方、」


古池さん「...人は図星を言われた場合

     ある程度の反応はします。」


古池さん「ですが貴女はそのどれにも

     当てはまらない...」


 彼女の目が、凍った氷のように鋭い目付きに変わってく...元からそういう瞳をしていたかのように古池さんの表情は一気に...消えた。


美紗「・・・古・・池・・さん?」


古池さん「...私は欲にまみれた人間が一番

     嫌いです。これで分かって頂け

     ましたでしょうか?」


 グサッと古池さんの言葉が心の奥まで付き刺さる、


美紗「....。」


美紗(古池さんは・・・ずっと私のこと

   、うっとおしいって思ってたのか

   な・・・、、気持ち悪いって...、)


美紗(欲にまみれた人間....、一回振った

   のに何で私はまた来てるんだろ、

   そういうとこが嫌われるんだよ

   ね...、)


美紗(帰りたい…、もう…帰ろう…。)


 足元がふら付く。でも・・・ちゃんと、歩かなきゃ・・・。


 踵を返して...歩き出そうとしたその瞬間...、古池さんの声が聞こえた、


古池さん「...古池の娘だからといって

     近付く方が多い事この上

     ありません」


古池さん「やはり一度対策をすべき

     でしょうか」


美紗(古池の、娘だから...。)


ちょっと待って...、古池の娘だから ?


 って事は、別に私が生理的に無理とかそういうのじゃない...?


 私は帰ったふりをしながら、壁の方に行って電話をする古池さんに聞き耳を立てた。


古池さん「終わりました、」


古池さん「先程申し上げました通りです、

     何故先生はあのような事を私に

     させたのでしょうか?」


古池さん「...彼女が私に手紙を書いた

     理由、ですか?」


古池さん「やはり将来のためではないの

     ですか?彼女にとって父親の

     存在はとてもネックでしょう

     から...」


美紗(お父さんの事...?)


美紗(もしかして、・・・古池さん、

  凄っい誤解をしちゃってるんじゃ

  ・・!!)


美紗「…ふ、古池さんっ!!、」


古池さん「いえ、彼女が戻って話し掛けて

     きただけです」


古池さん「...此処で切りますか、」


古池さん「...盗み聞きとはあまり良い趣味

     とは言えませんね。」


…蹴落とすような低い口調、・・だけど、古池さんの瞳は空っぽだった。


美紗(・・・それは冷たい、氷の茨。

   触れてしまったら、飲み込まれて

   しまいそうな・・。)


美紗「・・・氷のお姫様、貴女は私を

   誤解しています。私は貴女の敵では

   ありません。」


 まさかあの状況から此方を見てくるとは思ってなかった古池さんの、ポーカーフェイスが一瞬だけ崩れる。


古池さん「...では、貴女は私にとっての

     何ですか?」


美紗「私は...」


 古池さんの氷の棘のような瞳が私を見詰める、その時私は昔読んだ何故か絵本の事を思い出した。


美紗(なんで・・・私は古池さんを怖い

   なんて思ったんだろう・・・。)


 私は白く細長い、両手を握ぎり古池さんの顔をまっすぐに見つめて言った。


美紗「「私は貴女の味方です、」」


 私が子供の時からずっと好きだった氷のお姫様にもう一人のお姫様が言った言葉、


美紗「古池さんみたいな綺麗な人に貴女は

   本当に無能ですね、無農薬ですか?

   とか言われるのが好きだから、」


美紗「そういう利用したりお父さんの

   経歴をどうにかしたいって言うのは

   ないから安心して。」


古池さん「...少し、前半部分の仰って

     いる意味がよく、」


美紗「地位とかお金とか関係なく、ただ

   純粋に古池さんに恋をしたんだよ」


・・・私は再度、私は古池さんの両手を握る。


古池さん「……貴女は本当に不思議な方

     なのですね。先生が手紙の返事

     をしろと仰ったのも頷けま

     す、」


古池さん「良い意味で期待を裏切って

     下さった貴女に、私から何か

     贈れるものはありますか?」


美紗「・・・古池さんの、返事を...聞き

   たいかな」


古池さん「付き合って欲しい、では

     なく・・・お返事のみで

     良ろしいのですか?」


古池さん「それだと私が拒否してしまえば

     貴女のその努力は全て無駄に

     終わってしまいますが、」


美紗「そこは古池さんが決めて良いよ。」


古池さん「法律上では男女が付き合うのが

     一般的とされていますが、」


古池さん「確かに世間一般ではない女性

     同士の恋愛というのも興味は

     ありますね。」


古池さん「そもそも恋愛という物自体、

     私には理解しかねますが」


美紗「・・・やっぱり・・・駄目かな。」


雪音「晴華さんに相談してからでも良い

   ですが、」


雪音「...それでは貴女に対してあまりにも

   誠意がないように思えます。」


雪音「私には恋愛というものはよく分かり

   ませんが、貴女が望むというのなら

   私はその誠意にお答え致しましょ

   う」


美紗「って、事は付き合ってくれるって

   事...?」


雪音「...私の方でも恋愛について色々勉強

   してみますが」


雪音「貴女の望む恋愛が出来るのか

   どうかはあまり期待なさらないで

   下さい。私も恋愛という物は初めて

   ですから」


美紗「・・・ゆ、夢じゃないよ

   ね・・・?」


古池さん「・・・確認しますか?」


美紗「・・・じゃ、じゃあ」


 と言うと、古池さんは私の頬をぐにーっと引っ張る。


美紗「か、かくにんほうほうって…、

   そ、そーひゅう確認?」


 ・・・手加減してくれてるのか、そこまで痛くはないけど、ちょっと痛い...。


美紗「・・んぅぅぅ。やったぁっぁぁ

   ぁ!!!」


 少し驚いたのか、マフラーを軽く掴む古池さん。


美紗「あっ、怖がらせちゃってごめん、

   でも、嬉しくて…まさか、返事して

   くれるって思ってもなくて…、」


 緊張がなくなって嬉し涙が出てきた。


古池さん「・・・お使いになられます

     か?」


 と白いハンカチを取り出す古池さん。


美紗「ありがと…。ねぇ、これから雪音

   って呼んでも良い?」


雪音「・・・貴女がそうお望みでしたら。

   ご自由にどうぞ」


美紗「えへへ・・、雪音。」


雪音「・・・本当に変わったお方ですね、

   素の私を見ても驚かないのですか?」


美紗「んー。それよりも、雪音の事が知れ

   て良かったって気持ちの方が大きい

   から」


雪音「・・・。・・・私には理解

   出来ない感情ですね。」


 そうして私達は愛でたく恋人同士となったのでした・・・。


美紗(雪音・・・、はぁぁぁ///私、幸せ

   過ぎて死にそうかも・・)


※キャプション


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る