第9話「私の憧れの人、」

ガサッ、ガサッ・・・・


薄暗い茂みを抜けて行き着く、その先・・・・。


美紗(私の好きな場所...。)


美紗(...古池さんと会って一番印象に

   残ってるのは...やっぱり、ここ

   だよね)


 茂みを抜けると、そこに古池さんが居た


美紗(あれ...?古池さん!?)


咄嗟に戻る私。


美紗(てっきり誰かともう先に行っ

   ちゃったと思ったけど...、)


美紗(めっちゃいる...、、)


 ベンチの上に座って無言で筆を走らせてる古池さんの横顔にドキッとする。


美紗(これは...、古池さんを誘う絶好の

   チャンスだよね?)


美紗(気楽に挨拶すれば良いだけ...、うん

   っ。よしっ...!!)


 古池さんはこっちにはまだ気付いていないのか、透き通った瞳でキャンパスを見ながら絵を描き続けてる。


美紗(古池さん絵にすごく集中してる...)


美紗(話しかけるの、緊張するな...、、)


 意を決して、私は茂みからでてお姫様の元に近づいた


美紗「...古池さん、この場所で描いても

   良いですか?」


古池さん「・・・・・・・・。」


美紗「古池さん・・・?」


古池さん「・・・・・・・・・。」


美紗(反応がないけど・・・どう

   しよう・・?)


→A.大きな声で名前を再度呼んでみる


→B.キスをしてみる






→A.大きな声で名前を再度呼んでみる


美紗「・・・古池さんっ!!」


古池さん「・・はい?あっ、・・えーと」


 突然話掛けられて、びっくりしたのか古池さんは目を一瞬だけ右に泳がせた後すぐに私の方を見る。


 それからお姫様は何時もの様に微笑んで口を開いた。


古池さん「...何のご用でしたでしょう

か?」


美紗「いえ、その・・古池さんと一緒に

絵を描いても良いて良いかなっ

て...。」


古池さん「勿論構いませんよ、」


 とにっこりとした笑みで古池さんは微笑む。






→B.キスをする。


美紗「…チュ、」

  

 私は古池さんのあまりの美しさに見とれて、彼女のその美しい手にキスをしてしまった。


古池さん「……!?、杏里さん…?」


 当然驚く古池さん。驚いた顔も凄い可愛いなぁ…、って、流石にキスは…!!不味い

でしょ?!なんとかして言い訳を考えなきゃ…!!!


 身振り手振りで...、我ながら怪しすぎる///!!


美紗「…がっ、外国の挨拶です//!!」


美紗「私のお母さん外国の人で、偉い人

   とかにする時あって///!!」


美紗「外国の人って言っても実際外国

   人じゃないんだけど、そっちのが

   よく居るから...、、」


美紗(我ながら良い言い訳!!実際は写真

   とかでそういうの見ただけだけ

ど...。)


 ・・・あっ、でも男性から女性だけだったりしたらどうしよう…!!


美紗(嘘ではないけど、外国での

   お母さんの事、知らないし...、、)


古池さん「…そ、そうなのですか?

   確かに手の甲にキスをするのは

   親愛のご挨拶でよく拝見いた

   します…。」


美紗(ありがとう!!外国の挨拶有難う…!!

   女性同士でもしててありがとう…!!)


古池さん「……。」


美紗(なんとかごまかせて良かったぁ...、

   取りあえず笑っとこ、、)


古池さん「この間の制服での一件ですが

     。一度貴女にお礼を申し上げ

     たいと思っておりまして...」


古池さん「良ければ杏里さんの欲しい物

     など用意致しますが何か欲しい

     物などありますでしょうか?」


美紗「えっ...、」


 眉ひとつ動かさずにそう言う古池さん。お金持ちの人にとってそういうのって当たり前なのかな...?


美紗「別にキスしたのはそういう意味

   じゃないよ。古池さんは他の人

   にもそう言ってるの?」


古池さん「可笑しな事でしたでしょうか?」


美紗「うーん...私達の間ではそういうのは

   あんまりないかな、だから古池さん

   もそんなに気にしないで良いと思う

   よ?」


美紗「古池さんがほっこりしてくれたら、

   私はそれで」


古池さん「....ほっこり。ですか?」


美紗「うん、ほっこり、」


古池さん「.......。」


古池さん「...杏里さんは私がこの場に一人

     で居る事について、言及は

     なさらないのですか?」


美紗「一人で描く方が集中出来る人も

   いるし、そういうのも私は勉強の

   うちだと思ってるから」


古池さん「まるで偉人のような事を仰る

     のですね。」


美紗「あはは...、ただ考え方が古いだけ

   だよ、」









 そうしてまた筆を描き進める古池さん・・・。少し経ち、邪魔するのもあれなので立ちながら描こうと鉛筆を走らせたその時、


古池「お隣に座りますか?」


と古池さんが言った。


美紗「・・・えっ?」


 お姫様のあまりに突然な提案に驚いて、鉛筆を落とす私。


美紗「あ、」


 それを見ていた古池さんは私が拾うより先に鉛筆を拾ってくれた。


美紗「ありがと、」


古池さん「ずっと立っているのもお辛い

     と思いますから。私の隣で良け

     れば是非座って下さい」


 と、白のマフラーをぎゅっと握って俯く古池さん。


 ・・・確か白豹って、不安になったとき尻尾を噛んで落ち着くんだっけ。


 ・・・一度そう思ってしまうとすごく可愛く見えてくる。...いや、そうなると私が隣に座って古池さん不安になってる事になるんだけど


美紗(まぁ、そんなに知らない人が普通

   座ったらちょっとは不安になって

   当たり前だけど、)


美紗(でも隣座って良いって、許可

   貰っちゃった、これは古池さんに

   とって好印象って事だよねっ。)


美紗「嫌じゃないです///!!いや、むしろ

   嬉しくて、ちょっと緊張して...///」


古池さん「・・・どうぞ、」


 と立ちあがって、端に座る古池さん


 私はおずおずと古池さんの隣に座る。


古池さん「遠慮なさらないで良(よ)い

     のですよ。」


 古池さんの声に驚き、ビクッと肩をあげる。


美紗「へっ・・///?!」


古池さん「今のままではほとんど

     空気椅子ですから」


と困ったように古池さんは微笑む。


美紗「いや//、その古池さんみたいに

   美人な人の隣だとなんか、緊張

   しちゃって…」


古池さん「美人…?・・・私がですか?」


 鼈甲色の彼女の宝石のように美しい瞳が

私だけをハッキリと見詰める。


古池さん「・・び、美人です…///!!」


美紗(古池さんが・・・。近い、近い////

   近いです・・・///)


 私は彼女から目をそらし、俯きながらそう答えるけど、なにこの空気・・///!!


古池さん「……そうですか。」


 と彼女はそうとだけ言って絵を描き始めた。


美紗(美人は言われなれてるのかな…?

   うーん、美人より可愛いの

   が良かった?)


美紗(...まぁ褒めてはいるから大丈夫

   かな。うん、)






※スライド


美紗(…私、違うよねぇ!?)


 スケッチブックにはベンチに座っている古池さんの絵が描かれてた。


美紗(今日のテーマは風景だよおおおおお

  ぉぉぉ。どうすんのこれ!?…古池さん

  を消して、背景だけ残す…?)


美紗(でも、これ消すの勿体無いし…

   …素直に次のページに描くしか・・

   ないかぁ・・・。)


と次の白紙のページを開く。


古池さん「実は安里さんに謝罪しなけれ

     ばいけない事がありまして…」


美紗「へ!?」


美紗(…急なカミングアウト!?私に、

   謝らなくちゃいけないこと・・?)


 スケッチブックに急いで背景の下書きを描きながら私はポジティブに事を考えていた。


古池さん「私ずっと…杏里さんに・・…」


美紗「...私に?」


 時間がないので急いで絵を描き直しながら古池さんの言葉を聞く私、


美紗(全力で間に合わせるしかない!!)


 課題を間に合わせなければいけないドキドキと、古池さんと一緒にいるドキドキとが混ざって私の心臓が大変なことになっている。


美紗(あー、時間、間に合うかな...、)


古池さん「…杏里さんと初めてお会い

    した時の事ですが」


古池さん「杏里さんのスケッチブックが

     開いていたとはいえ、…黙って

     拝見してしまったのです。」


美紗「あー…」


 その事…。ねー…、薄々もしかしてとは思ってたけれど…。


まぁ開いてたら悪いのは完全に私だし、


古池さん「…申し訳ございません、杏里

     さんにはずっとお伝えした

     かったのですが...。」


古池さんか「中々言い出せずに…はした

      ないことをしてしまいまし

      た...、」


 此方を向き、頭を下げる古池さん。きっと言いづらい事なのに、謙虚だなー...と思う。


美紗「良いよ、良いよ。落とした私も

   悪いんだし、開いてたら見ちゃう

   よねー・・・。」


美紗(開いてたページがあのページだった

   ら凄っい恥ずかしいんだけど...///)


古池さん「許して下さるのですか…、」


美紗「許すも何も・・・元はと言えば

   こっちが悪いし…、」


古池さん「その点に関してすればそう

     なのですが・・・」


美紗「…あははー、そうだね」


美紗(……あれ?なんか凄い丁寧な

   言葉で正論を言われたような…)


古池さん「私も杏里さんの絵を見習いたい

     と思いました。私の目指す絵は

     貴女の描くような絵ですから

     ね。」 


古池さん「そろそろ時間ですね、教室

     に戻りましょう」


 とその疑問はデッサンの時間と共に一緒に消えてしまったのでした。


※キャプション


美紗「で、気付いたら古池さんの絵描い

   ちゃってさー。授業の絵も全然

   描けてないし、」


美紗「先生に怒られちゃったよー。・・・

   反省はしてるけどでも、後悔は

   してないよね。」


柚夏「…ねぇ、それ何のノロケ話?」


美紗「ノロケ…?」


柚夏「そんなに古池さんのこと好き好き

   言われてもって事、」


美紗(…そんなに言ってるかな、古池さん

   は確かに私の憧れだけど…)


美紗「んー?」


柚夏「美紗って本当に古池さんの事

   好きだよね・・・。最近その話

   ばっかりだし...」


美紗「好きだよ?優しいし、丁寧だし。

   それになんと言ってもお姫様

   みたいだし、」


柚夏「…はぁ。そうじゃなくて、・・・

   恋愛として、ね。」


美紗「恋愛として…?…私が?」


柚夏「そう。美紗、が」


美紗「古池さん…のこと…?」


柚夏「好きなの?」


古池さんの顔を思い浮かべる。にこっと微笑む古池さん・・・。


ボっと全身が急に熱くなった。


美紗「……っ///!?」


身体中に熱がこもり、顔を両手で押さえる。


美紗「…ゆ、柚夏は急に何、言い出すの//!?

   そもそも私達っ、女同士だよ?!」


柚夏「・・・別に恋をするのに性別なんて

   関係ないでしょ、」


柚夏「たまたま好きな人が女性だったって

   人もいるだろうし」


柚夏「それに私は男の人より女の人のが

   信頼出来るかな。まぁ...私の場合

   父親があれだったのもあるから

   ね...、」


柚夏「・・・だからと言って依存しすぎ

   もどうかと思うけど」


美紗「…………////」


…思えば、ここ最近古池さんの事ばかり考えてる。・・・気がする。


美紗「だって古池さん凄い美人なんだ

   もん…、これが好きだって

   言うのは私にも分からないよ…。」


柚夏「そこまで顔を赤くして何を言ってる

   のやら…でも美紗は本当に古池さん

   で...」


美紗「ごめん、、暑いから、ちょっと顔

   洗ってくるっ///!!」


と柚夏から逃げるように私は教室を出た。


柚夏「・・・私は反対なんだけれどね。」


 全力で廊下を掛けて、走る。


美紗「…はぁ、はぁ///、」


  柚夏は急に何てことを言うの・・?!

私が古池さんのこと好きだなんて・・・、、


美紗(あの気持ちは憧れで、あんな綺麗な

   人を私が告白とか、そんなあれな

   気持ちで、)


美紗(でも...、あの顔はほんとに反則...

   なくらい好みなのは否定出来な

   い...、けど...///)


美紗(まさか私が女の子を好きに

   なっちゃうなんて...////)


 この気持ちが恋なのか私にはわかんないけど、でも...古池さんならそうなるのも仕方ないってどこかで思ってる私がいた、


 体温の暑さに、手扇をして呼吸を落ち着かせていると廊下を歩いている古池さんと目が合う


美紗「…古池さん」


 此方に気付いた古池さんがふっと微笑んだ


 その瞬間、まるで私は古池さんに心臓を掴まれたかのように胸の奥がぎゅっ、と…、苦しくなった..、


美紗「・・あぁ…、そっか…」


 そうなんだ・・・、


私…古池さんのことが…、


美紗「…好き、なんだ。」


 目を閉じて。深く深呼吸した後、私は彼女に向けて笑顔で手を振った。


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