第8話「代茂枝さんのお友達、」

 教室に入ると柚夏が丁度席に着いた所だった。


美紗「美術室で食べたの?」


柚夏「うん。先輩達と一緒に

   それで今丁度、帰ってきた所。

   美紗はもう食べた?」


美紗「ううん、先生の手伝いしてたから

   今から食べる」


柚夏「あと15分くらいしかないけ

   れど・・・」


美紗「まぁ15分あればいけるでしょっ」


 自分の席の椅子を下げて、机の上で

お弁当を広げる。


美紗「・・・お腹減ったねぇ。あー…」


美紗「いただきますー、」


 甘辛ベースのお母さんが作った唐揚げを食べようとすると


 私の事をきょろきょろと見詰めてる柚夏に気づいた。

   

 どうかしたのかなと思っていると・・・、


柚夏「…そういえば、美紗、朝制服着てた

   よね?制服は?」


 もぐもぐと唐揚げを食べ終わってから、喋る私。


美紗「ん?いやー、落としちゃって。

   あははー」


美紗(やっぱり突然制服が無くなると

  気付くよねー…)


柚夏「制服なんて普通落とす?

   どこかで脱いだとか?」


柚夏「まぁ制服には名字があるから

   大丈夫だと思うけど」


美紗「あはは、本当にそう、だ…よ、

   …ね…?」


 柚夏になんて言い訳するかを考えながら、食べようとして持ち上げた最後の唐揚げを箸の上から落とした


柚夏「どうしたの?」


…見間違いなんかじゃない。紫の髪の毛、

サイドテール、人形の様な白い肌。


美紗「古池さん…?!」


古池さん「…あの、もしかして・・・

     此方は貴女のお召し物…

     でしょうか?」


と丁寧に畳まれた私の制服を古池さんが両手で抱き締めていた。


古池さん「…寝ている私に掛けて下さった

     のですね。ご親切にどうも

     ありがとうございます。」


美紗「いや、そんな!!」


美紗(わざわざ持ってきてくれたん

   だ...、古池さん///)


古池さん「クリーニングにお掛けして

     必ずお返し致しますので…。」


美紗「え・・・?!そこまでしなくても

   良いよ!!お金も掛かっちゃうし

   そんなことしなくて、全然!!」


古池さん「...杏里さんはとても心の

     お優しい方なのですね」


  と笑顔で微笑む古池さん。いつ見ても綺麗な顔・・・///


美紗「いや、たまたま寝てるのを

見かけたから...、」


美紗(隠そうとおもったのに…なんか、

  私が仕向けたようでちょっと

  恥ずかしいかも…///)


古池さん「明日までにはお返し致します

     ので、制服を少々お借りしても

     よろしいでしょうか…?」


 とおずおず聞く古池さん。


美紗「え、あっ、別にそのままで」


柚夏「返すって言ってるんだから

   それで良いんじゃない?」


柚夏「・・・そのままじゃ、

   話が中々進まないよ。」


 と柚夏が横から声を掛けてくる。でもなんか柚夏、・・・古池さんに対してちょっと警戒してない?


美紗「えっと…じゃあ、お願いします…?

   でも、本当にそのままでいいん

   だよ・・・?」


古池さん「お心遣いに感謝致します、」


 と最後に古池さんは微笑んでから帰ってく...。


美紗「あー!!!…柚夏、今の見た!?笑顔も

   お姫様みたいだったよね!!

   すごい!!これって、もう奇跡だよ!!」


柚夏「・・・美紗って、はぁ」


美紗「え?急に酷くない?」


柚夏「あそこは、『ありがとうござい

   ます。』で終わるとこだよ」


美紗「えー、でも。クリーニングするのも

   お金が掛かるし...」


柚夏「それはそうだけど…、そういうの

   が礼儀なんだよ。一般常識的

   にはね...。」


美紗「それにめんどうじゃない?

   クリーニングって」


柚夏「お金持ちはめんどくさい事をしない

   と安心出来ないからね。・・・美紗

   は良いかもしれないけど、人に

   よっては」


柚夏「「あの人大手企業の娘なのにそんな

   こともしないの?」って思う人も

   いたりするから、気をつけた方が

   いいよ。」


柚夏「気に入られたいなら尚更...

   ね・・・。」


 と、柚夏は複雑そうな顔で目を逸らしながらそう答える。


美紗(確か前に、離婚したお父さんが

   お金持ちだったって話を柚夏が

   してた事があったっけ...。)


 だから、なのか柚夏は古池さんのことをあまりよくは思っていないみたいだった。


美紗「学校でもそんな気を使わなきゃ

   いけないなんて。古池さんって

   ほんとにすごい人なんだね…」


柚夏「だから、ああいう時は美紗の為にも

   相手の為にも有難うございますって

   言った方が賢明だよ。」


美紗「・・・うん。分かったよ。」


 お金持ちの人と私みたいな普通の人って、そんなに住む世界が違うのかな…と一瞬だけ思った。


美紗(難しいことはよく分かんない

   や・・・)


 因みに制服は後日の朝、新品かと見間違える程ぴっかぴかになって古池さんの手から帰ってきたのでした。


※スライド


先生「はーい、以前もお話ししましたが

   2つの課題を別々に提出して

   下さい。下書きだけで構いません

   ので」


先生「学校内での自分の好きな場所の

   風景画と、ペアの生徒の人物画を

   書いてきてくださいね。」


 先生の話が終わると皆思い思いの場所を目指して、そのまま教室から立ち去ってく


 前回の授業から以前のペアのままで描く人が多いようで、あっという間に美術室からは人がいなくなってしまっていた。


美紗(私も古池さんを誘わなきゃ、)


美紗(って...、あれ・・・?)


 また古池さんと絵を描きたいと思ってたんだけど...、お姫様はいつの間にやら教室からどこかに行ってしまったようだった。


美紗(居ない...、)


美紗(・・・古池さんは学内の一番の

   人気者だもん。きっと他の人に誘わ

   れちゃったかな、)


美紗(・・・うん、古池さんはとても

   優しいから。その気持ち分かる

   なぁ・・・。)


 彼女がスケッチブックを拾ってくれた時のあの光景を今でもはっきりと思い出す。


 ・・・あの、彼女と会えた夢のような一時の光景を・・・。


??「そこの、可愛いツインテールの方、

   方!!」


美紗(・・・。・・・えへへー///)


??「うーん、あまりお耳が聞こえない方

   なのでしょうか?」


??「そこの、可愛い茶色の髪をしたツイン

  テールの方ッーー!!!」


 耳元で急に大きな声で話しかけられて、う"ぅ...、耳が痛い・・・。


 私は耳を押さえながら、声を出した張本人の方を見る


 いつのまにやら私の前では黄緑色の髪にアイドルのような印象を持つ活発そうな少女が私の前で仁王立ちしていたのだった。


美紗「・・・わ、私?」


 可愛いだなんて初めて言われたから、てっきり違う人だとばかり思ってた・・・。


??「ふふ・・。縁蛇はやりました!!

   やっと気づいていただけましたよっ

   !!やりましたね!!代茂!!」


代茂技「・・・縁蛇ちゃん、もういいよ

    ぉ・・・。私は気にしてない

    から・・・。迷惑だよぉ・・、」


美紗「あっ、代茂技さん?・・・あれ?

   お話してる・・・」


代茂技「・・・・・、」


 ・・・熊さんのイメージが凄く強かったので意外だ。すごく綺麗な声。・・・あれ?でも、・・・どこかで聞いたことあるような。


 どこだっけ・・・。うーん・・・思い出せない・・・。


??「そうなんですっ!!可愛いツイン

   テールのお方っ!!」


美紗「あっ、はい、」


 ・・・それにしてもこの子があまりにも可愛い可愛いと連呼するから、教室に残っている人達の視線が明らかにこちらに向いてしまっていた。


美紗「考えごとしてて、き、気づかなくて

   ごめんね?でも、その・・・

   いくら、人が少ないからって」


美紗「そう何度も可愛いと連呼されると

   恥ずかしいよ...///」


??「そうなのですか?高校生になったら

   可愛い人に可愛いと言ったら

   駄目っぽいのですかっ?!」


代茂技「縁蛇ちゃん・・・。」


??「とにかく、縁蛇達は少し位置をずれ

  てくださると大いに助かるのです!!

   ご協力お願いしますなのですよ?」


美紗「あ、絵を描く邪魔してたな・・・?

   ごめんね?代茂技さん。また何か

   迷惑掛けてたら遠慮なく言って

   ね、」


美紗「私そういうの言われてないと気づ

   けないから、助かるよ。教えてくれ

   てありがと」   


美紗「えーと・・・、縁蛇さんもありが

   とね。」


??「はいっ!!縁蛇なのです!!

  ご協力感謝しますなのですよっ!!」


美紗「ううん。こっちこそごめんね。」


縁蛇「良かったですね、代茂。」


代茂技「・・・・うん。縁蛇ちゃん、

    伝えてくれてありがとう。

   優しそうな人で良かった・・・。」


 私は恥ずかしさから逃げるように教室から移動して、下駄箱から靴を履き替える...。


美紗(・・・私何しちゃってるんだろう、

   人に迷惑は掛けちゃ駄目だよ

   ね・・・。今度からちゃんと気を

   つけないと・・・。)


※キャプション

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る