第7話「私の白雪姫、」


 チャイムが鳴り、古池さんとのお絵かき

タイムが終わりを告げる。・・・けど、


 来週と2日間あるから、古池さんともっと仲良くなれるチャンスは絶対にあるはずだよねっ!!


美紗(次の授業のお誘いもしなくちゃ

   。・・・よーしっ)


先生「杏里ー、いるかー?」


美紗「あ、はい。」


 ガラガラと音を立てて、科学を教えてる科学部顧問兼、生徒会顧問の豆雲(まめくも)先生が入ってくる。


 先生曰く、生徒会顧問は押し付けられたらしいけど...


先生「お、杏里。居た居た。」


 私は部活も何もしていないはずなのに

どういう訳か、何故か豆雲先生だけはとても気に入られていた。


美紗「まめくも先生?」


美紗(うぅ、今から古池さんを次の授業で

   誘おうと思ってたのになぁ...)


古池さん「では、私はお暇させて頂きます

ね」


美紗「・・う、うん。今日はありがと、」


古池さん「では、また。」


 ・・・古池さんは会釈をして帰ってしまう。それがなんだか少しだけ・・・寂しく思えた。


美紗「ふ、古池さん・・!!」


美紗「あの!!、・・・古池さんが

   良かったらまた・・・その、

   お話しして下さい!!」


古池さん「・・・えぇ、こちらこそ、」


 優しく微笑みながら、お姫様は私に軽く手を振ってくれた。


美紗(あー・・・、もっと古池さんと

   お話ししたかったなぁ...。)



まめくも先生「おー...、青春だな。」


まめくも先生「杏里。今空いてるか?」


美紗「空いてますよ、今先生のお陰で

   凄く暇になりましたから」


まめくも先生

 「まぁまだチャンスはあるだろ、

  高校生活は三年あるんだから」


美紗「他人事ですけど、元はといえば

   先生のせいですからね?」


 授業後すぐに、私はある先生に呼び出しを食らってお手伝いをしていた。


美紗「でも何で私なんですか?」


まめくも先生

「なんだ?まだ気にしてるのか?」


美紗「いや、そうじゃないですけど・・・

   他に生徒はいるのにどうして私なの

   かなーって」


まめくも先生

「それはな・・、お前が暇そう

 だからだ。」


美紗「...酷くないですか?」


まめくも先生

「ま、杏里は数少ない頼みやすい

 生徒でもあるからな。」


美紗「あれ?私って先生専用のパシリに

   なってません・・?」


まめくも先生

「このくらいしておかないと

 選考先に書く事なくなるぞ、」


まめくも先生

「お前、部活も何にもしてない

 だろーが事情があるとはいえ」


まめくも先生

「やっぱりその辺、何かしてない

 と後々進学に響いてくるからな」


美紗「わ、割と真剣な理由だった

   んですね。」


まめくも先生

「...という建前でも案外使える

 もんだな。」


美紗「結局使いたいだけじゃない

   ですか!!」


※キャプション


美紗「・・・よいしょっ、」


美紗「先生、プリントは此処で良いです

   よね?」


先生「すっかり仕事が板についてきたな、

   杏里。」


美紗「いや、これ私の仕事じゃないん

   で...先生の仕事ですよ。」


 ざっと500枚はあるプリント達を先生の机の上に置く。


美紗(先生ってこんな数のプリントを

  いつも見てるのかな…)


先生「…杏里、」


美紗「はい…?まだ何かありましたか?」


先生「いや、そうじゃなくてだな…いつも

   頼ってばかりですまない。」


先生「…だが、お前がいると本当に

   助かるよ。杏里、いつもありがと

   な」


美紗(先生・・・。)


美紗(えへへ・・人に頼りにされるの

   ってなんか、嬉しいな。)


美紗「いえ、いえ。そこまでめんどうな

   事でもないですし」


美紗「それに、先生はいっつも褒めて

   くれますから。嫌じゃないですよ、

   ・・・では、そろそろ失礼します

   ー」


 先生のお手伝いも終わって、私は職員室から出る。


 雪音「それに杏里さんの描く絵の方が

    魅力的ですから、」


 職員室から教室に帰る途中、私は古池さんが言っていたあの言葉の意味について考えていた。


美紗「古池さんの絵の方が上手なのに…

   魅力的、かぁ…」


 古池さんの事を考えていると、不思議と足がひとりでに動いていく・・・そう、あの場所へと、


・・・気付けば私の足はそこで止まってた。


美紗「ここで、古池さんと初めて出会った

   んだよね。」


 左を向けば薄暗い、茂み。古池さんと初めて出会った切っ掛けのあの場所がこの先にはある…


 強い何かに引き付けられるように、私は体の向きを変えて茂みの中へと入っていった。


美紗「・・・古池さん。」


 茂みを抜けると、そこで古池さんが眠ってた。


 昼当たりのよい木漏れ日の中、ベンチの上でまるで人形の様にお姫様が寝むっている光景、


その光景にどうか、このまま目を覚まさないで欲しいと願ってしまうと同時に、・・・目を開けて。


 ...自分を見て欲しいという感情さえ芽生える。まぁそれはそれで焦るんだけど...、


美紗「・・・少し、肌寒いなぁ。

  これじゃ、古池さん風邪ひいちゃう

  よ…」


…何か、掛けてあげるもの。


美紗「…よしっ、これで良いかな」


美紗(起こさないようにそーっと…)




※イラスト


美紗「うん。これで少しは暖かいはず

   だよね…?」


 自分の上着を彼女の膝にかけてあげる。


美紗(ちょっと寒いけど、これで古池さん

   が少しでも温かくなると良い

   な…、)


美紗「それにしてもいつ見ても綺麗な

   寝顔…」


美紗(まるで古池さんの周りだけ世界が

  違うみたい…もうちょっとだけ

  見てたい気もするけど、)


眠り姫を起こしてしまわないように退散、退散。


古池さん「.....、」


古池さん「…これは?…上着でしょうか?」


古池さん「・・・一体、どなたの…、」


古池さん「制服でしたら…お名前がある

     はずですよね。…安里…みさ

     様…。」


古池さん「あぁ、あの時の…。…スケッチ

     ブックのお方…ですね」


古池さん「眠っている間に借りを作る

     形になってしまいましたね。」


古池さん「…こんなこと誰もお頼みして

     おりませんのに、」


※キャプション


 

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