第11話「新しい物語の始まり、」

 そろそろ夏休みが近くなる7月の中旬の朝。


 学校に通ってる皆が夏休み前のテスト範囲の多さに驚くこの季節・・・、


 私は下駄箱で昨日貰ったテスト範囲表を見ながら、余裕の笑みに浸っていた。


美紗(これが、強者の余裕...、)


美紗(ふっ、今までテストとかほんと

   苦痛以外のなんでも無かったけ

   ど...。)


 テスト何点だったー?って見せ合う日本の悪しき謎文化、「勉強してないからそんな点数良くなかったー」って言われて、


 80点台だったりする時のあの虚しき、社交場...それこそが、期末テストの夏の風物詩だと思ってたけど...


 それに対して、今の私はとても心穏やかだった。


美紗(...なにを隠そう、今の私には皆が

   羨むくらい超っ絶、美人な

   彼女がいてくれるから!!)


美紗(もう、むしろそれだけでテストの

   点数が上がるというかっ、)


美紗(そんな頭良くないけど、私雪音の

   為に頑張るから、良い点取ったら

   何か言って貰お...!!)


美紗(...下心から出てきた意欲でも、

   最終的にテストの点が上がるなら

   それは、それで、)


美紗(こんな勉強が楽しみに感じる事とか

   初めてかも、)


 だから、私は辛いテスト習慣でも、乗り越えることが出来る。


美紗(彼女がいるとこんな違うんだな

   ぁ、...雪音がいるだけで)


美紗(あんな嫌だった勉強もいや

   じゃなくなるんだから)


 こう、「こんな簡単な問題も分からないんですか?」「折角私が教えているのに覚えられないなんて...それでも本当に私の恋人の自覚あるんですか、」


美紗(って、一度で良いからあの綺麗な瞳

   で、言われたい....///、、)


美紗(頼んだら言ってくれるかな?)


 ...でも、夏休みになったら、雪音と会える機会も減っちゃうんだよね・・・。


それはちょっとやだな...、


ガララ、


 教室に入ると、柚夏と目が合う。柚夏は机を背もたれにして生徒手帳を見てたのか、私に気付くとすぐ胸ポケットにしまった。


美紗(何か予定でもあるのかな...?)


 それにしても、胸ポケットに生徒手帳を入れる柚夏の姿は中々様になる。流石イケメン、っていうか...


 時々クラスの子から柚夏が格好いいって相談されることあるんだけど、やっぱりこういう仕草とかが人気なのかな・・・?


美紗「おはよー、柚夏っ、」


柚夏「おはよう。美紗」


美紗「あ、柚夏。昨日の数学の課題、

   ちょっとわかんないところあった

   から教えてー」


柚夏「教えるのはいいけど...数学そんな

   駄目だっけ、」


美紗「理数系は全然駄目。何の呪文なのか

   分かんないし....」


柚夏「呪文...?かどうかは分からない

   けど、数学も解けたらクイズみたい

   でわりと面白いよ。」


美紗「勉強に面白さを感じるなんて...

   流石、柚夏さん...優等生だね...」


柚夏「まぁ、家に帰ったら勉強とバイト

   くらいしかすることないからね。

   携帯もないし、」


柚夏「教材や制服とかで先月結構お金

   飛んでいったからなぁ...、教科書

   も値段の分だけちゃんと使わない

   と」


美紗「柚夏はいつも大変そうだね...、」


美紗「でも本当に5位以内取り続けられる

   のって凄いよ。私じゃ絶対入れ

   ないし・・・平均点でもギリギリ」


柚夏「美紗はもうちょっと勉強しよう

   か...、」


 ちょっと意地悪な時もあるけど...、


 実際柚夏は頭も良いし、お父さんが離婚しちゃってお母さんに負担を掛けないように一人暮らししてて、


 面倒みも良いから(根も真面目で優しいし、)そんな柚夏を憧れの目で見ている人も結構いたりする。


美紗(でも、皆私を通じて柚夏と仲良く

   したがるんだよね...、確かに目付き

   はちょっと悪いかもしれないけど)


美紗(話してみれば結構良い人なのにな)


美紗(おかーさんみたいで、)


 そんな柚夏と親友でいられる事が私はとても誇らしかった。


柚夏「それに私の場合、5位以内に入って

   ないと結構死活問題だから...」


柚夏「勉強は真面目にしている

   つもりだよ。モヤシ生活とかは

   コスパは良いけど普通に体調崩す

   からね・・・」


美紗「柚夏はお母さんからお金借り

   ないの?」


美紗(そうすれば、柚夏のプレッシャーも

   少し減ると思うけど・・・。)


美紗(やっぱり言いづらいのかな・・・?

   柚夏は結構プライドが高い方だか

   ら、お母さんに心配掛けないように

   してるとか?)


美紗(そういうの、芯があって良いなぁ)


柚夏「.....」


 その瞬間、柚夏の瞳が深い哀しみの色に染まっていく。


美紗「...聞いちゃまずい話だった?」


柚夏「...あ、いや。学費は自分で出すって

   決めてるし....それに、あの人は

   私の事なんて顔も見たくないと

   思う...から、さ...。」


美紗(お母さんと喧嘩でもしたのか

   な・・・、凄い聞いて欲しくなさ

   そうだし...此処は話を変えよ、)


美紗「...本当にお金に困ってたら何か

   持ってくよ?」


柚夏「バイトもしてるから別にそこまで

   じゃないよ。美紗だってそんな友達

   嫌でしょ、」


柚夏「美紗は気にしなくて良いんだよ。

   これは私の問題だから」


柚夏「でも気遣ってくれてありがとう。

   本当に困った時はそうするよ、

   多分ないけど」


美紗「本当に困ったら普通に言ってよ」


柚夏「今はまだその時じゃないし、ね。」


柚夏「ところで、美紗は古池さんとは

   どう?上手くいってる?」


美紗「うん。私、雪音とお付き合いする

   ことになった」


柚夏「・・・は?」


 柚夏は本当に鳩が豆でっぽうを喰らった直後みたいな顔で口を開けたまましばらく思考停止した。


美紗「柚夏...、いくらなんでもそれは

   ちょっと...驚き過ぎじゃ...、」


 やっと思考が追い付いた柚夏は、切羽づまった表情をしながら私の机に両手を置いて、質問する。


柚夏「...美紗、...彼女に何したの、、」


柚夏「古池さんって…告白してきた人達

   全員振ってるって超有名な人だ

   よ…?分かってる...?」


柚夏「それで...告白が成功、したっ

   て...、」


柚夏「・・・マジで言ってる?」


美紗「…マジで言ってる。でも、柚夏が

   マジって言うの珍しいね?」


柚夏「というか、なんで逆に断られな

   かったの...?美紗と付き合って特する

   事なんて別に向こうにないでし

   ょ...、」


美紗「え、それは...分かんない...

   けど...」


柚夏「え…嘘でしょ?あの古池さんが…?

   超大手の芸術家の資産家、お嬢様に

   告白して・・・OK?…って」


柚夏「確かに…、美紗がそんな大

   それた嘘を付けるはずもない

   し…、、」


美紗「相変わらず酷いなぁー。…けど、

   私柚夏のそういうとこ嫌いじゃな

   いよ」


柚夏「今は別に美紗の趣向をカミング

   アウトしなくてもいいから、」


 柚夏は必死に言葉を選んでて、少したってから口を開いた。


柚夏「…まぁ、一気に就職有利になった

   ね。美紗の将来は安泰って訳だ」


美紗「ううん。就職先は自分で捜す、

   雪音の力は借りない。地位で好きに

   なったわけじゃないから」


…そう、私は地位やお金に関係なくただの『古池雪音』っていう人が好き。


 本気で彼女を幸せにするのなら、自分の力で就職先を見付けるのが筋だって私も思うし


美紗「でも、私なんかが雪音と付き合える

   だなんて…なんか、幸せすぎて…、

   ちょっと恐いけど、」


柚夏「...美紗はさ、」


柚夏「...今、本当に幸せだって。

   思ってる?」


美紗「幸せだよ。」


柚夏「...よく考えて、古池さんが美紗と

   付き合う理由なんてない。美紗

   だって分かるでしょ?」


柚夏「遊んでるだけかもしれない可能性

   だって、他に良い人が見付かったら

   美紗なんてすぐ捨てられるかも

   しれないんだよ...。」


美紗「それはそれで私の見る目が悪かった

   だけだよ、」


 あの時。…私が去っていたら。動揺して、雪音の声が聞こえていなかったら・・・。


・・・あの時、諦めてたら...私にこんな未来は無かった。


 本当に彼女に告白して良かったって思う、


・・・まだまだ、告白したばっかりだけど、彼女のことをもっと知っていけたら嬉しいなって。


 雪音のこと、自分からもっともっと知っていきたい・・・。これが、心から『人を好きになる』って事なのかな・・・。


美紗(・・・初めての雪音も見れたし、

  でも、クールな雪音も可愛いかった

  なぁ…)


美紗「私は人を見る目には自信がある

   から、柚夏だって私にとっては

   大事な友達だよ。」


柚夏「…..、」


美紗(柚夏の反応も気になるけど、

   どうしようかな・・・?)


「今は自分の幸せを強く感じたい」

→杏里 美紗 & 古池 雪音 ルート 


「柚夏の言葉も気になるなぁ・・・」

→芽月 柚夏 & 静谷 流雨 ルート 


※キャプション

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