第十一部「"悪いこと"と"当たり前の事"」【ゆずるう】

流雨「やっぱり嫌...?」

柚夏「...普通に授業に間に合わない」

流雨「それは仕方ない...」


 なんとか流雨の膝枕から脱出して、提出までなんとか絵の進み具合は間に合った。


柚夏(あまりにも進んでないとおかしい

   もんね)


柚夏「私の方は、これくらいでいいかな。

   流雨はうまく描けた?」

柚夏(...時間的にはもうちょっと余裕ある

   けど。そろそろ帰らなきゃ)


 12時50分には教室に戻りなさいって言ってたから、...あと15分くらいか。と腕時計を見ながら時間の確認をする。


 今日の授業であんまり終わらなかったら また次の授業までに描くつもりでいたけれど


その必要はなさそう


流雨「もう少しで完成する...。

   これが終わったら膝枕...」

柚夏「もうそんな時間ないよ」

流雨「授業中寝ながらやれると思ったのに...

   残念...もう橋の上で良いかな」

柚夏「良くない。汚れるから、」


 と、猫のように胴体を持ち上げて、流雨を立ち上がらせる。ほんと軽いな!!!、、


流雨「ん?」

柚夏(そして、全く嫌がらない...)


ぶらーんと持ち上がる姿は猫みたい... だけど流雨は人間なので、早く降ろさなきゃ


柚夏「制服って結構洗うの大変なんだよ??」

柚夏「制服って結構高いから、そんな何着も

   買えないし」

柚夏「乾燥したらシワ伸ばしとか。陰干し

   じゃないと色落ちするし 卒業するまで

   に着れとくようにしないと」


柚夏「洗濯するたび形整えないとすぐ

   ぐちゃぐちゃになるし 変に形良い

   からそのまま変な方向に癖付いたり」

柚夏「座るときも気をつけなきゃいけないし、

   一回変なところに跡が付くとその後

   めちゃめちゃ大変...」


流雨「まぁ確かに洗濯は大変...」

流雨「.....」

流雨「分かった。ごめん...」

流雨「制服があんまり汚れないよう

   気を付ける」

柚夏「流雨はお母さんがいるから

   別にそこまで気にしなくて良いと

   思うよ?」

柚夏「ただちょっと 私だったら後が

   大変だなぁ...って」


柚夏(ちょっとめんどくさい人だと

   思われたか...??、)

柚夏(普通の人はお母さんとかに任せてる

   もんね...。こんな風だから中々

   『友達』が出来ないんだぞ。)

柚夏(お節介は迷惑だから、もうちょっと

   楽しい話しないと...、、)


柚夏「流雨はどういうの描いたの??」

柚夏(流雨の興味ある話)


流雨「あぁ、これ...」

柚夏「えっ、、うまっ...、」


 お世辞とかじゃなくて 本当にめちゃめちゃ上手いのだ。色使いとか絶対高校生レベルじゃない まだちょっと魚が大きいけど


 このくらいなら先生も許してくれるだろう。もうちょっとカメラの遠距離視点だったら(※距離が遠かったら)百点満点だったのに


柚夏(まぁそれでも"充分"上手いんだけど...)


流雨「柚夏が褒めてくれるならもっと

   描いても良いかも...」

流雨「まぁ...背景塗るのはかなりめんどくさ

   いんだけどね...一人ならもっと描けてた

   と思うけど」

流雨「柚夏が居たから楽しかったよ」

流雨「誘ってくれてありがとう」

流雨「誰かに誘われて絵を描くなんて」

流雨「リア充みたいな体験出来た」

柚夏(確かに人が居たら集中出来ない

もんね...)

柚夏「というか流雨なら引く手あまただと

   思うけど」

流雨「顔が良いだけでは人は寄ってこない」

柚夏(そういうものなのかなぁ...)

柚夏「それを言うなら私もだよ」

柚夏「皆が好きなのは『外面』だけ」


 私より絶対流雨のが寄ってくる見た目してるけどな。アイドルのセンターでクール系幼女は普通にモテると思う


 歌って踊れるアイドル、素晴らしい...。


 流雨のスケッチブックには...赤い尾ひれに美しく泳ぐ金魚がそこに描かれていた。


流雨「もっと褒め称えて欲しい...」

柚夏「...どうしたらそんな上手く描けるの?」

流雨「時間と観察力と努力と根気...?」

柚夏「結構色々居るね...」

流雨「....。」

流雨「....」

柚夏「何か言いたいことあるの?」

流雨「私も 此処まで描くのに結構、

   時間掛かったから...」

流雨「もうちょっと"仲良くなったら"

   教える」

柚夏「そんなの言わなくていいのに...」 

柚夏「教えるのが嫌なら別に言わなくて

   良いんだよ」 

柚夏「流雨がそれだけ頑張ってきた証なんだ

   から。それを『一瞬で取られるのが

   嫌だ』って思うのは」

柚夏「当たり前の事だよ」

柚夏「"別にそれくらい教えてくれても良い

   じゃん"とか思ってないから」


 正直な性格なんだろうなぁ...。隠し事できない。なんて純粋で素直な性格なんだろう


 鬱病の人を詐欺に引っ掛けたり、ゴミみたいな思考をする人もいるというのに


流雨のは人を"思いやった"罪悪感だ


 教えてあげれない自分が冷たいとか思う必要はない。むしろ『タダ』でそういう事を知りたいと思う方がおかしいのだ


柚夏「流雨の技術を盗んで何かに利用しよう

   とは思わないし、それに自分でうまく

   なった方が嬉しいでしょ?」

柚夏「確かに一瞬で覚えた方が楽だけど」

柚夏「そんな人生に絶望してないよ

   流雨みたいな人にも会えたし」


流雨「...」

流雨「柚夏ってよく勘違いされるって

   言われない?」

柚夏「えっ」

流雨「今の台詞は勘違いされてもしょうが

   ないよ...。柚夏が人気な理由が分かった

気がする...」

流雨「柚夏は普通に顔は格好良いんだから

   そういうとこ注意しないともっと

   人寄ってくるよ...?」

柚夏「でも私はそんなつもりないし...、」

流雨「まぁ良いけど...。私とは別の意味で

   柚夏は凄いね」

柚夏(凄い嫉妬されてる、、私に対して

   じゃなくて"男友達"みたいな嫉妬だけど)


 ジト目可愛いね。デートしたら拗ねた女の子みたい


 私にもそんなところが1mmでもあったらもっと可愛げがあったんだろうか。というかさっきから別にそうでもないよとしか言ってないな、、この人(自分)


柚夏(なんか自慢っぽくなるから話を

   逸らそう)

柚夏「ただどの辺を直したら上手くなるの

   かなって」


柚夏「そんなに絵が好きって訳でもないし、

   時間があれば描きたいと思うけど...」

柚夏「どっちかというと、"授業で良い点

   取りたいだけ"」

柚夏(美術の評価も内申点には関わってくる

からね...。なるべく良いところに

   就職したいし)

柚夏「それに...時間があるなら

   『絵』じゃなくて」

"料理"が作りたい...。


柚夏(よもぎのパンとか、ローストビーフとか

   時間が掛かるやつ。サラダチキンとか

   トマトとチキンのオリーブチーズ和え

   も良いし)

柚夏(自家製で作るチーズはまろやかで凄い

   口答えが良いんだよね〜...、レモン

   とかでも美味しいし)


流雨「時間があるなら?」

柚夏「"絵"じゃなくて、『料理』かなって」

流雨「おぉ、料理。柚夏は趣味まで女の子

   っぽい。私のお母さんは基本的に

   料理を作らないから 凄い」

柚夏「別に普通だよ。 料理が好きな

   男性だっているし」

流雨「サンドイッチとかもいいよね。作るのは

   時間掛かるけど美味しい」

柚夏(流雨と一緒に料理...)


 テーブルに居て、パンにハムとか卵乗せてるお手伝いするだけで"可愛い"というイメージしかない。なんだ『この一緒に作る』というだけで


親子クッキングみたいな光景は...


柚夏「そんなに欲しいなら今度何か作った時

   何かあげるよ」

柚夏「余り物で良かったらだけど」


 いっぱい作りすぎて同(おんな)じ物消費するのは結構キツイし、だからといって作るなら一気に作りたいからいっぱい作るんだけど


どうしてもキツいときは美紗にあげていた


柚夏(フランスパンのサンドイッチとかも

   良いな)

柚夏(まぁそれでも結構具材余るから良いん

   だけど...残り物は酢漬けに。酢漬けは

   本当に腐りにくくて良いよね)

流雨「それは普通に嬉しい。柚夏と組んで

   良かった」


 ぎゅっ、とくっつかれる。...、、人に嫌われてるというのに、そういうこと普通にする


 だからと言って勘違いしてはいけない。流雨がやる分にはいいけど 私も好きーとか言ったら確実にヤバい奴だから、


柚夏(私は出来ないというのに、、

   出来るとすれば手を繋ぐまでだ)

柚夏(というか、キャラ的に合わない...)


流雨「そろそろ時間」

柚夏「...大分話しちゃったけど。走れば間に

合うかな」


※キャプション

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