第二部「保健室って消毒液の匂いするよね」【ゆずるう】

(後姿がお隣さんの麻弧ちゃんが追いかけっこする時に似てる...。本当に高校生...?)


 少女が走って行った先...。小さいのに早いなぁ...と思いながらそのまま様子を見ていると、少女は唐突にヨロける


柚夏「ちょ、ちょっと...!!」


急いで彼女の身体を支えてやる。


??「...ん。...有難う...」

柚夏「いや、有難うじゃなくて。大丈夫なの?」


 ...少女はそのまま歩こうとして


??「...へっくちっ」


と可愛らしいクシャミをしたのだった。


柚夏「...か、かわ...じゃなくて。もしかして、

   風邪?だから昨日風邪ひくよって

   言ったのに...」


 おでこを少女に当てて熱を見る。...少しだけ熱い。微熱ぐらいだろうか...。


柚夏「んー、熱いね...。熱出てる」


柚夏(子供は熱が出やすいからね。小さい

   この子もそんな感じなのかな...)


 私は少女を軽くお姫様抱っこして、立ち上がる。...それにしてもこの少女、本当に...軽い。ちゃんとご飯を食べているのだろうか...?


??「...どこ...行くの?」

柚夏「保健室。...辛いでしょ?」


と足で体勢を整える。


??「...いい。...行かなくて良い...。

   ...おろして」

柚夏「いや、駄目でしょ。熱出てるし、

   ヨタヨタしてるし」

??「...病院はいい...。」

柚夏「...病院じゃなくて、保健室だよ。」

??「.....、...人は すぐ怒る...」

柚夏「...別に怒ってはないんだけど」

柚夏(どっちかというと心配してるって

   いうか...顔か??顔が...怖いのか???)


 廊下を抜けると、朝早くから来ていた生徒達がこちらに注目しているのが分かる。


柚夏(まぁ 女の子をお姫様抱っこしてれば

   気になるか)


 そんな中、ひそひそと女生徒は小言で話をしているのが聞こえた。


 私が見つめると生徒からさっと目線を逸らされる。流石にお姫様抱っこは目立つだろうか...。


目立つのはあまり好きじゃないんだけど...。


生徒D「ねぇ...あの人、...やっぱり美人

    じゃない?私、あの人に会うために

    毎日学校早く来てるの。」

生徒E「今日も会えて幸せだわ。あのクール

    な視線がたまらないのよねぇ///」


柚夏(この子も来るの早いのか)


生徒D「そうそう。結構有名な人みたいなの。

    あの人のファンクラブもあるみたい

   で、私も入ってみようかな...。」


 下を見てみるとお姫様抱っこが恥ずかしいのか、視線を逸らした少女が腕を引っ張っていた。


柚夏「...ぐっ、、」


 熱のせいもあって頬が微かに赤く、少し膨れっ面なのが...その、とても...可愛いです...//。


柚夏(...う///、はぁぁぁーー///抱きしめたい

   ぐらい、可愛いーーーーっ////)


柚夏(庇護欲ぅぅぅーーっ////!!!、ちっちゃ、

   可愛い////!!!、...なにこの可愛い

   生き物?!///)


柚夏(...だ、駄目だ。見ちゃいけない。私が

   気持ち悪くなる前に、、早く保健室に

   行かないと)


柚夏(...にちゃにちゃしながら、頬擦りするの

   を、我慢出来そうに無いッ!!)


??「......?」


 表情が完全に崩れてしまう前に急いで、保健室に入ると 扉に赤字のメモ書きで保健医不在とだけ書いてある紙が張っていた。


柚夏「...先生居ないね。...なんのための

   保健の先生なんだろう...」


両手が開いてないので少し行儀が悪いけれど扉を肩で開け、中に入る。


...保健室特有の薬剤の匂いがする


 さっきと同じような赤い字で文字が書かれた白い紙が目立つように壁に貼られている...。


 すぐさま少女をベットの上に寝かせて、私は紙に書かれた内容を読んだ。


柚夏「...風邪薬などは紙に書いてあります

   ので、緊急の際は説明を読んだ上で

   使って下さい。か、」


柚夏「ちょっと雑過ぎない...?」


 私は少女をベットの上に寝かせ、戸棚から紙コップを取り出す。


柚夏「...まぁ、水はあるから...」


ジャー...


軽く蛇口をひねり、水を出す。


柚夏「水、飲めそう?...もしかして、

   ミネラルヴォーターしか飲めない

   とかある?」


柚夏(お湯の方が良かったかな、でも暑い時は

   水の方が良いよね。というか本当に

   あげて良いの...?)

   

 一人暮しの私には考えられないが、この世には蛇口の水を飲めない人がいるらしい。たかが水でお金を出すなんて...

 

柚夏(私には絶対考えられないけど...。)


 冷蔵庫の中を開いて見てみると、ミネラルヴォーターと風邪薬らしきものが入っていた。


柚夏「...あ、ミネラルヴォーターもあった。

   ...これも自由みたいだね。...使うか。」


柚夏(というかほんと何処に行ったんだ

   先生...)


 説明書を読み ペットボトルから水をコップに7割ほど注いで、少女の元へと持っていく。


柚夏「はい。飲める?」

??「...ん。」


 と少女はコップを受け取ってから、薬を飲み込んだ。


??「...ぅぅ」


 苦そうに瞳を閉じる少女。まるでそれが、薬が嫌いな子供のようで...本当に可愛い


柚夏(病気の人相手にそう思うのはどうかと

   思うけど、)


柚夏(子供は本当に可愛いよね...。子供は

   大人みたいに嘘つきじゃないし、お世辞

   とかそういうのもないから めんど

   くさくないし)


柚夏(何より『分かりやすい』。ちっちゃくて

   可愛いし、純粋で素直だし...。妖精

   みたい。イタズラっこなところもね)


 ...あと、一応念のために言っておくけど私は別に"ロリコン"と呼ばれる存在ではない。....よく美紗に言われるけど


柚夏(子供好きなのは別に悪いことでは

  ないし...。天使を愛でるのは当然。ん?

...そういえば、この子。)


柚夏(なんて名前なんだろう?)


柚夏「...あー、そういや自己紹介して

   なかったよね。私は芽月 柚夏

  (めづき ゆずか)。...柚夏で良いよ。」

??「...静谷 流雨(しずたに るう)」

柚夏「...流雨だね。覚えとくよ。」

柚夏「...流雨ももう、風邪引かないようにね?

   無理したら駄目だよ?」

流雨「...なんで?」

柚夏「なんでって...、...風邪引いてる

   から?病人を心配するのは

   当たり前だよ」

流雨「...なんでそんなに

   優しくしてくれるの......?」

流雨「私"なんか"に」


ガラガラ...。


保健医「......誰かいるの?」


 ...やっと、保健の先生が帰ってきた。


 あとは何も知らない私よりも専門の先生に任せた方が流雨にとっても良いだろう。


保健医「あら、ごめんなさい。人が来てた

    のね。ちょっと用事があって外出

    していたの。...その子は?」


柚夏「微熱と風邪の症状があったので、

   風邪薬を勝手に使わせていただき

   ました。すみません。」


保健医「分かったわ、...まずはお礼ね。

    ありがとう。薬の方は大丈夫そうね。

    後は私が見ておくから」


保健医「あなたはもう教室にお帰りなさい。

    そろそろ授業も始まるでしょ」


柚夏「...はい、行ってきますね。先生あとは

   お願いします。...それじゃぁ、また。」


 少女に軽く手を振ってから、私は保健室から去る。


ガラガラ......


部屋から出ると同時に美紗と目が合った。


美紗「あれ?柚夏保健室行ってたの?」

柚夏「まぁね。...風邪引いてた子がいたからさ

   連れていってあげてたんだよ。優しい

   でしょ?」

美紗「柚夏って結構イケメンだよねー」

柚夏「そこは否定して欲しかったけど...。

   ...軽い冗談だよ。というか、」

柚夏「それは私がイケメンというより

   美紗が子供っぽすぎるのが

   問題じゃ...」

美紗「いや、私子供じゃないよ?!もう立派な

   高校生なんだし!!」

柚夏「...そう。もう高校生になっちゃったん

   だよね。年齢が追いついてない感

   が...」

美紗「ゆ、柚夏が大人すぎるんだよ!!」


 美紗はいつも目ぶり手振りに否定してくるのでそれが逆に子供っぽく見えてるっていうのはまぁ、黙っておこう...。


柚夏「...ねぇところで美紗って『親切』って

なんですると思う?」

美紗「哲学?」

美紗「どうしたの急に?......んー。自分が

   したいからじゃない?冷たい人間に

   なりたくないから」

柚夏「ま、そうだよね。美紗はね。そういう

   子だよね...美紗にはそのままで

   いてほしい」


 ...正直、なんで"優しくしてくれるの"って聞かれても上手く答えられないところがある。


 まぁ...心当たりはないわけではないけれど...。


美紗「...?」

柚夏(空が赤い...って、もう夕焼けか。

   今日もアルバイト頑張るか...。)


キャプション。


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