第三部「半額が貼られた商品ってつい買っちゃうよね」【ゆずるう】


柚夏「お先に失礼します。」

パートさん

「柚夏さんお疲れー!!柚夏さんの料理、

 今日も凄い美味しかったですよ」

柚夏

「いえいえ。全然そんなことないですよ...。

 シェフの腕には到底及びませんから...」

パートさん

「謙遜しないで下さい。此処の子は

 柚夏さんの賄い料理が目的で入ってる

 子も多いんですよ?」

パートさん

「勿論、『柚夏さん目的』の人も。私も

 その中の一人でー 期待の新人エース様は

 やっぱり違いますねー」

パートさん

「ほぼ同時期なのに何が違うんだろ?」

柚夏「...。」

パートさん「どうかしました?」


柚夏「...いえ、今月の新作何にしようかなぁ

   と。はは...でも、店長も急ですよね」

柚夏「新人に行き成り"魚の新作レシピを

   作ってくれ"だなんて。」


パートさん

「それだけ頼りにされてるって事ですよ。

 私はごめんですけど♥」

柚夏「そう言わすに手伝って下さい。

   アルバイトなんですから」

柚夏「...というか私、入って2ヶ月も経って

   ないのに普通に厨房とか担当してます

   けど...大丈夫なんですかね...?」

柚夏「此処の仕事って確か、皿洗いとか配膳

   だったはずでは...」


パートさん

「それは柚夏さんが凄いからですよ。コミュニ

 ケーション能力もあって、イケメンで、

 皆から慕われててー、」

パートさん

「シェフからも「芽月さんには是非ともうちに就職して欲しい!!」とお聞きしてます。あの人のお陰で集客数も上がったと。」

パートさん「本人に直接言えばいいのに」

パートさん「やっぱり顔かなぁ。」

柚夏「顔ですか...」


柚夏「...シェフにはいつも

   注意されてばっかりなんですけどね」

柚夏「たとえお世辞でも嬉しいですよ。

   励まして下さってありがとうござい

   ます。」

柚夏「...バイト、これからも一緒に

   頑張りましょうね。」

パートさん

「もー、ですから"お世辞"じゃないん

 ですってばー」


※スライド


 制服を着替え、飲食店の店内から出てから大きく伸びをする。


柚夏「んーーーっ!!!っと......今日は何が

   安いかな。魚が安かったら嬉しいけど、

   料理の試作とかもしたいし」


 バイト帰り、お昼の作り置きもしていないので明日のお弁当を買いにスーパーに入る。


 退勤するのが20時近いため、スーパーにつく頃には"丁度半額の時間帯でお弁当が買える"という訳だ。


 この時間帯の品揃えは本当に微々たる物しか残ってないけど、一人暮らしの私にはとても助かっていた


柚夏(というかこれ前も食べた気がするな...)


柚夏(まぁ、手作りが一番良いんだけど

   ね...。栄養的にも、惣菜弁当は

   あんまりよくないし...。)


柚夏(...けどバイトしてると中々時間が

   とれなくて...。飽きたら冷凍食品だな、

   日持ちするし惣菜を買うより普通に安い)


 いつもの半額コーナーを真っ先に覗いていると、ふっ、と飴玉のパッケージが目に入った。


すぐさま、カートを引いて引き返す。


柚夏(...飴だね)


柚夏(前のハロウィンの時にかぼちゃの

   スカートにロリポップを握ってる子が

   いて可愛かったなぁ...。)


 苺キャンデーとホップなデザインで文字が書かれているのだが、


 まるでその文字を打ち消すかのように大きな半額というラベルが貼られていた。


柚夏(....時々変な所にラベルが張ってあるのは

   なんでなんだろう?目立つように

   わざと貼ってるのかな)


 半額の飴が沢山入っている袋を持ち上げて、裏表示を見る。


柚夏「賞味期限は...大体、1ヶ月くらいか。」


柚夏(...飴だけだと飽きるし、どうしよう

   かな。あー、でも溶かしてお菓子に

   使うのとか ありかもしれない)


流雨「...飴、...美味しい...」


 ほんの一瞬だけ。あの少女が笑った顔が頭の中に思い浮かんだ


柚夏(....あの子、抱っこしてた時以外

   ずっと無表情だったもんな...。)


折角美人な顔してるのに勿体ない。


柚夏「......買うべきか?」


柚夏(いや、でも...待てよ?そもそも、

   あの子...飴好きなのかな......?)


 ...子供じゃないんだから 飴玉ひとつで喜ぶかなんて分からないのに...。


 それでも買ってしまうというのは、私の意志が弱いのだろうか。というか半額だとそんなに欲しい物じゃなくても買っちゃうよね


...あの少女は受け取ってくれるだろうか。


柚夏(いやいや、そもそも私は...『あれ』を

   買うためにバイトを頑張ってるのに)


柚夏(...塵も積もれば山となる。こんな所で

   無駄使いしてる場合では...。)


ガチャガチャン♪


店のお会計店員「ありがとうございましたー!!」


...結局、買い物袋の中には半額の飴の袋が入っていた。


柚夏「はぁ...、会ったばかりの女の子のために

   飴玉を買うなんて...、本当に、お人好

   し...。買いたい物もあるのに」


柚夏「でも...、喜んでくれるかな...。」


 お金は主に水道代や電気代。光熱費や家賃で消えていくけれど。


 心だけは裕福でありたいな...。...と心から

そう、思った


※キャプション


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