第26章「そうだ。海に行こう、」【みさゆき】


 ワンちゃんのような先輩はなんとも言えないような


 変な顔をしたまま私に握られた両手に抵抗することなく視線を横に反らしていた。※コミュ障顔してる


??「...え、えっと?だいぶ...急...、

   だね。晴華さんのモデルショーの

   日と被らない日なら私は全然

   良いけど...」


 確かに急にこんな事言われたら、私もそんな顔になると思うけど...、


 ...んー。...うん、やっぱり、ならないかな...?


美紗(先輩の困った顔、なんか凄いジワ

   ジワくる...。じゃなくて...!!そんな

   事よりも、今は!!)


美紗「雪音から逃げられないように

   したくて!!そのためには、雪音と

   仲良くなる前提の舞台から作って

   行かないといけないんです!!」


??「...、」


??「...えっと、つまり」


??「...こういう事であってるかな。

   古池様と喧嘩してしまって...?」


美紗「はい...。...キスしちゃって、

   怒らせちゃって」


??「キス...?えっと喧嘩の経緯(いきさつ)

   はよくわからないけど、私を海に

   誘ったのは...」


??「古池様と仲良くなった後の状況を

   整えて、そうせざる負えない状況に

   自分を追い込みたいって事?」


美紗「難しい事はよく分かんないです

   けど、怒り狂った猛獣状態の雪音の

   機嫌を取り戻すにはそれしか

   ないんです!!」


??「猛獣状態?」


??「でも、それで古池様と仲直り出来

   そうっていうのなら、私は喜んで

   協力するよ」


??「それが芽月さんのお友達って

   いうのなら尚更、ね。」


美紗「えっと...、」


 先輩の藍色の瞳と目が合って、私はすぐに反らした。いけないいけない...感情を読んだら駄目だよね。...気をつけないと


美紗(先輩の名前...)


??「...朝乃、篠崎朝乃。一応この学校の

   2年生だよ。...えっと、美紗ちゃん

   で良いのかな?」


美紗「はい、美紗で大丈夫です!!杏里

   美紗って...、朝乃先輩は私の名前

   知ってるんですね...?」


美紗(柚夏が私の事何か話してたの

   かな?)


 ...でも先輩、柚夏を味方してた時と全然印象が違ったっていうか


 初めて見た時はこう、なんかビシッとしてて格好良いイメージだったんだけど...。


美紗(...先輩、普段は思ったよりも

   ずっと謙虚な人?)


 先輩のポシェットに付いているピンク色の髪と同じく先の白いファーがふさふさと揺れる。


朝乃「芽月さんがそう言ってるの聞いてた

   からね、でも合ってて良かった

   よ。ニックネームって場合もある

   かもしれないから」


 ずっと先輩の手を握っていた事を思い出すと私は、あ、すみません...。と離す、


美紗「朝乃先輩は名前を覚えるのが得意

   なんですね。でも名前を一回

   聞いて覚えちゃうって凄いなぁ...、」


美紗「人の名前って中々覚えられなくて、

   柚夏とかすぐに覚えちゃうから

   すごいなーって思うんです」


朝乃「まぁ...、私は元々人付合いが少ない

   方だっていうのもあるから」


朝乃「それに委員長だから。少しは覚え

   ておかなきゃねって気持も

   あるんだよね、」


朝乃「名前を覚えてたっていうのは、ただ

   それだけの単純な理由だよ。」


美紗「学級委員長さんだったんですね。

   だから生徒会室に...?でも、委員長

   って凄いですね...!!」


朝乃「皆やりたがらなくて、じゃんけんで

   負けちゃっただけだよ。」


朝乃「殆どクラスの雑用みたいな物

   だから。人によっては凄い人も

   いるんだけどね」


美紗「ふえー...」


朝乃「それにしても...、」


朝乃「芽月さんは色々すごくしっかりして

   る良い子だよね。私も芽月さんを

   見習わないといけないなって思うと

   きがよくあってね、」


朝乃「まだ若いのに彼女は凄いしっかり

   してるよ。委員長の私よりよっぽど

   彼女の方が向いてると思うんだけど

   な」


美紗「あ、それ分かります。柚夏、頭も

   よくて、いつも5位以内をキープ

   してるんですよね」


朝乃「...へぇ、そうだったんだ。

   それは凄いね。バイトと両立してて

   それは普通に凄いよ」


美紗「他に趣味がないだけだって。

   いっつも言ってますけど、私は時間

   があったらついついパソコンとか

   弄っちゃってますね...、...あはは」


朝乃「私もよくスマホで遊んだりするわ

   ねー、テストの時も気になちゃって

   少し覗くつもりだったのに」


朝乃「気付いたら、いつの間にか

   そっちの方に夢中になっちゃうの

   分かるわ。あるあるよね」


と、朝乃先輩は楽しそうに話している。...あれ?先輩、急に凄いラフなお嬢様口調になったけど...。


美紗「よね...?」


朝乃「...あ、ごめんね。母親が職業柄

   普段はこういう口調なんだ。だから

   時々出ちゃうの、気にしないで、

   方言みたいな感じだから」


美紗(へぇ...、家での朝乃先輩はこんな

   感じなんだ...。色んな先輩ー)


美紗「...あ、でも雪音はもっと凄いん

   ですよ。雪音の順位を見てたら

   全教科1位取ってて。見たら、

   殆んど満点で」


朝乃「...あの人と比べられたらそれは、

   芽月さんが可哀そうだよ。今までの

   学年トップも上回る成績優秀者の

   超お嬢様って学校内で噂になってる

   くらいだから」


朝乃「晴華さんと同居している人だから、

   凄い人だなって言うのは痛いほど

   知ってるよ。ネットでもわんさか出てくるし」


 と、先輩は雪音が記事に乗っているサイトをスマートフォンをスライドさせて見せてくれた。


美紗「そういえば前に妹が調べてて、雪音の

   事すごい驚いてた覚えが」


美紗(あれ...、でも...)


美紗(先輩...私と同じで雪音と橘さん 

   が同居してるの知ってるんだ...、

   そういえば...)


美紗「先輩って橘さんの事、好きなんですか?」


 ロック画面がまず、橘晴華ちゃんだし...。ホーム画面も可愛い格好をした晴華さんが凄い、微笑んでいる...。


朝乃「そうだよ。晴華ちゃんのファン

   だからね、グッズを趣味に集めてる

   くらいには好きかなぁ...。」


美紗「ファンとして...だけですか?」


 その言葉を聞いた瞬間、朝乃先輩は、何かを悟っているように笑顔で微笑んだ。


朝乃「はは、モデルさんって言うのはね、

   皆を愛して愛される存在だから」


朝乃「晴華さんに恋人が居ないからこそ、

   晴華さんの愛を沢山の人が受け取れ

   る。それを壊したら、ただの厄介

   ファンだよ。」


朝乃「...」


美紗(あ...そっか...。)


 ...確か、橘さんがモデルを始めた理由って...。...記憶がないから有名になって、お母さんとお父さんに見付けて貰うためなんだっけ


美紗(そしたら、その夢も、叶えられなくなっちゃうんだ...。)


朝乃「...別に、私は晴華さんの特別な一人

   になりたい訳じゃないの」


朝乃「一緒の学校に通って、友達として

   話してたり、普通の生活を送ってる

   晴華さんの姿を見れるだけで凄い

   幸せだから」


朝乃「...私はあの人の笑顔を見てるのが

   好き、それだけで本当に満足なのよ。」


美紗(笑顔...。)


美紗(...朝乃先輩、...強い、な。私だったら、

   そんなの絶対辛くて切ないのに...)


 それに対して私は、何をしているんだろう...。...好きだって言ったのに、雪音を愛してるって誓ったのに...。


 捨てられる恐怖に怖がって怯えて。...怒った雪音を心が拒絶してるからって遠ざけた、


 ...私の愛は朝乃先輩のものと違ってちゃんと伝えられるものなのに。


...なんて、...自分は情けないんだろう。


朝乃「...古池様と話してる晴華さんは

   すごく幸せそうってそう、思って

   たんだけどね...。」


美紗「...え」


朝乃「古池様が感情的になれない分、私が

   笑顔でいなきゃって。無理して笑っ

   てた時あったんだよね...晴華さん」


朝乃「...いつも、晴華さんは誰かの為に

   自分の身を犠牲にしてるの。

   ...だから私も美紗ちゃんの事、

   協力出来たらなって」


朝乃「晴華さん、二人のこと凄く気に

   してたみたいだから」


朝乃「海の日付が決まったら教えてね。」


美紗(...晴華さんがやけに、雪音とイチャ

  イチャしてたのってそういう...?)


美紗(...私、凄い嫉妬しちゃっ

  てたけど...。...橘さん)


美紗(やっぱり凄い、良い人だったん

   じゃ...!!)


 よくよく考えれば、普通にシーウェでは仕事中にも関わらず相談に乗ってくれたし...、、メールもちゃんと返してくれるし...。


美紗(...今度、橘先輩に会ったら警戒しない

   でちゃんとお礼言わなきゃ...もう、す

   る必要もないだろうし)


朝乃「あ、あとこれ。シーウェ」


 と、スマートフォンを急いで差し出して

私は朝乃先輩と早速シーウェのアドレスを交換した。


美紗「...因みに朝乃先輩って、橘さんの

   何処が好きですか?」


朝乃「全部...?」


美紗(よくあるやつだ...)


美紗「あー...、海行くの8月3日くらいに

   して良いですか?柚夏携帯持ってない

   んで最初に決めてた方がいいかなーっ

   て」


朝乃「あれ?今どの辺(へん)が駄目だった?」


※キャプション


 

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