第27章「ん?今なんでもって、」【みさゆき】

 

 ...柚夏も無事に海に誘い終わって、屋上の階段を降りながら


 私は特に目的地もなくただゆっくりと階段を歩いていた。


美紗(これで雪音と海に行くビジョンも

   凄くリアルな物になってきたん

   だけど、)


美紗「....うー、ん」


 ...これで、本当に良かったのかな


 何か足りなかったりしてないかなって、なんとなく不安になってくる。


美紗(...けど、柚夏と流雨さんの邪魔も

   したくないし。私一人で考えなきゃ)


美紗(雪音に逆らったら駄目ってなる

  気持ちはもう多分どうしようもない

  から...)


カタン、カタン※階段降りる音


 煙草を押し付けられてる訳でもないのに...火傷の傷が疼く、殴られてないのに、身体があの時の光景をまだ覚えてる。


 怒ってる人を見るとお父さんの事を思い出して何もされてないのに...、身体が勝手に動かなくなる


美紗(...けど、雪音にとっては

   それが生きていく術(すべ)

   だったのかな。)


美紗(...私が物語に逃げたみたいに。雪音

   もそうやって周りから遠ざかる事

   で、自分の身を守ってきたんだよね)


 私には、人の命令に逆らってまで自分の意思を貫いていく自信なんてない...


だって、私はただの女子高生で。


 物語の主人公みたいに神様に選ばれた訳でも。大切な誰かを守れるようなそんな強い力を持って生まれた訳でもない


 ...私は柚夏みたいに一人じゃ、生きられない弱い人間だから。


 だから、雪音の言葉には逆らえないって...話してなくても 何となく分かってしまう...。


美紗(けど...、本当にそれでいいの...、)


 雪音と向き合うのが怖くないって言ったら嘘になる、このまま逃げ出してしまいたい...、雪音の言うとおり...。


 このままお互い気まずくなって他人として関係を終わらせるのも一種の手なんじゃないのかなって...


 そう思ってしまっている自分が何より嫌いだった。


美紗(簡単に投げ出せれば楽

   なんだろうけど、でも...本当

にそれが【正しい答え】なの...?)


??《その子の事はもう忘れなさい。》


??《そもそもその子の家族もお前にとって

  も仲良くする価値に値しない連中

  だったんだ。》


??《その子の姉は●●学校に入学した

  そうだが、とんだ低学歴高校じゃない

  か、私がその子の親だったら恥ず

  かしくて外にも出れん。》


??《むしろ良かったじゃないか、そんな奴

  と縁がきれて》


??《お前は今後の将来の為にも、もっと

  身の丈にあった子と仲良くしてれば

  いい。》


??《塾にいたあの子なんてどうだ?なかなか

  利発そうな子だったぞ》


美紗『はい...お父様。』


 けど、あの瞬間から私は子供のままで居て良いんだって知った。


 くゆが手を私にさしのべてくれてくれた、あの日から


 ありのままの自分でいて良いんだって、くゆが私に教えてくれたから。


美紗(私は私の好きなままの自分で

   ありたい...、どんなに自分に得が

   なくても)


美紗(『諦めたくない』って気持ちを

   大事にしたい、、)


美紗(今の私はお父さんのものでも、

   誰のものでもないからっ)


美紗(このまま終わりだなんて、絶対

  やだ!!折角、雪音と仲良くなれたと

  思ったのに...、)


 関係がこのままなくなっちゃって。手放したくなくて。それで諦めが悪い、って


 我慢して折れるのが それが大人っていうんなら、


美紗(私はずっと、、子供のままで良いもんっ...!!)


 それに私、中学生の時は学校に深夜まで

居た不良だったし...!!うん、きっと大丈夫だよっ。


美紗「...大丈夫、きっと、」


美紗(大丈夫って言うと本当にそんな

   気がしてくるから、不思議...)


 ...まぁ、真相はお父さんに殴られたくなくて中々帰れなかっただけなんだけど...。


 お父さんの場合は、近所に噂が流れるのが嫌でほんとの鬼に捜しまわられてるような捕まったら最後のリアル鬼ごっこだったけど


美紗(今はそんな心配もないし、それに

   比べれば存外楽だよね...雪音なんて

   まだ可愛い猛獣、、)


美紗(まぁそれでも恐い物は恐いんだけど...、)


美紗(...最終的に殴られる回数、そっちのが

  少なかったから、思い出しただけで

  嫌な記憶だわ...。)


美紗「私は、も、元から不良だし...!!

   普通は暗くなったらお家に帰ら

   なきゃいけないの分かってて、外に

   居たし...!!」


 ...友達。前は沢山いたはずなんだけどなぁ、中々帰らない子だってご両親に不良って思われちゃって...


 最終的に友達皆消えていっちゃったけど、


 最終的には学校に居るようになって、警備の先生から逃れるの大変だったなぁ...。


なーんて、思い出しつつ...、


美紗「だから、雪音の命令も聞かなくて

   も...!!平気でいられますようにっ!!」


美紗「雪音っ...!!」


※スライド


 と、意気込んだのは良いけど...


 何故か雪音は生徒会室に居なくて...。


美紗「柚夏を捜してる間に帰っちゃったの

   かなぁ...」


 その日は一旦、捜すのを諦めて、私は家に帰って雪音に教えて貰った暗記方法でテスト勉強に専念した...。


美紗(こんな気持ちじゃ、シナリオも思い

   付かないよね...。...おもちさんの

   ブログ、そろそろ最新きてるかな?)


 気分転換にスマートフォンのシナリオ作業用のアプリを閉じて「おもちさん」でウェブ検索する...。


 ブログでベストセラーになった「森になった少女」の作者、おもちさんの最新ブログを閲覧しながら内容を見ていると...


 どうやら、新しいシナリオを書いてるみたいだった。


美紗「え!?、おもちさんの最新作っ!?」


 食い入るように、おもちさんのブログ内容に目を通しながら。内容を確認する...、


美紗「今度はどんなお話なんだろ。

   楽しみだなぁ...、」


 森になった少女もそうだけど、おもちさんが書く物語はファンタジーの恋愛物で。凄く人間味に溢れてて...!!


 こう、人を掴み寄せる文章を書く人で...本当にその世界があるようなそんな世界が見えてる人だから。


美紗「...新作、凄く楽しみにしてます!!

   っと」


 確定ボタンを押して、ブログにコメントを書き込んだ後。私はスマホの電源を消して


 そのまま布団に入って安らかに目を閉じたのでした...。


※キャプション


 そして...、


 ...何故か、それからというもの私は雪音とまともに話す事すら叶わずに


 あれから二日間の時が経とうとしていた...。


美紗(...そもそも、雪音と会う事すら

 出来ないという...あれぇ?)


 普通に声掛けても返事はしてくれるんだけど...。授業が終わったら生徒会室にずっと閉じこも...、居るし...、


 シーウェでも『生徒会の用事で忙しいので』って会ってすらくれない...。


美紗(...それ以前にも増して何か私、

   雪音から露骨に避けられてない?)


??「美紗ちゃぁぁぁぁあんっ!!!」


 背中にふにゅっと、柔らかい感触が当たると...////、、...薔薇の香りがふわっと鼻に広がった。


美紗「ぴゃっ...///?!」


瑞撫「よしよし~///、」


美紗「・・・書記、さん?」


 生徒会書記の瑞撫さん、以前柚夏と仲直りするために調理教室に誘ってくれた人で途中で会計の雀さんと二人で出て行っちゃったけど...。


 ...あの後、雀さんと一緒に行ったきり結局帰って来なかったんだよね。...雀さん大丈夫だったかな...?


瑞撫「聞いてくれる~?、美紗ちゃんー、

   最近、古池の娘さんが生徒会の仕事

   の受け持ちが激しくなって

   お姉さん凄ーーく大変なの~...。」


 と、本当に疲れた様な声で瑞撫さんは背後から私に頬ずりし始める...、


美紗「雀さんは今日は居ないんですか...?」


瑞撫「えぇ、美紗ちゃんは心配しなくても

   大丈夫よ。今はあの子、元気

   だから」


美紗「...今は、ですか...?」


瑞撫「そんなに綺麗な目で見られちゃう

   と、私照れちゃうわ♥️」


 と、瑞撫さんは恍惚な表情を浮かべながら頬に右手を寄せて妖艶の笑みで微笑む。


美紗(これ以上は色んな意味で、私の身が

   危なそうだし、、)


美紗(つつくなって事かな...。...瑞撫さん

   が言うなら大丈夫だと思うけど...、)


瑞撫「それにしても。テスト週間中に毎日

   生徒会会議って」


瑞撫「古池の娘さん、何を企んで

   いるのかしら...?本っ当つまらない

   雑用ばっかりで」


瑞撫「もうっ、ストレスでローストビーフ

   ガッツリ食べちゃって~、お陰で

   体重がましましなのよ~~っ!!」


美紗(それは、食べなければ良い話では...、、)


 と、興奮したようにうがーっと、尖った犬歯を見せて唸る瑞撫さんはまるでライオンのようにも見える。


美紗「瑞撫さん、お肉好きなんですね」


瑞撫「そうよー、丸焼きの奴をガブガブ

  食べるのが大好きなの~///こう、

  誰も居ないときは素手で食べちゃうくらいっ♪」


美紗「あ、それ美味しそう~...。私も

   食べてみたいなぁ...、でも1人で

   食べられるかな...?」


 その時、私の中に閃光が走ったのだった。


美紗(あっ、...瑞撫さんだったら、

 雪音と毎日会ってるはずだよね...?)


美紗「...そういえば、瑞撫さんって

   生徒会の人だから、雪音と毎日

   会ってるんですか...?」


瑞撫「ええ、勿論。そうよ?」


 と、はぁはぁと荒い息が耳に掛かってくすぐったいのもあって


 後ろを向いてガッ、と、瑞撫さんの両肩を掴んで、真剣な眼差しで私は瑞撫さんを見る。


瑞撫「もしかして、、これは愛の告」


美紗「雪音とお話がしたいんですっ!!

   なんでもするので、お願いしますッ!!」


瑞撫「...ん?今、なんでもって」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る