第28章「最後はやっぱこんな感じ、」【みさゆき】

※スライド


瑞撫「...なるほどねぇ。確かにクオリティを

   あげるためにもう文化祭の話を切り出し

   ていたり、」


瑞撫「以前と予定が全く違うから何事か

   とは思っていたけれど...」


瑞撫「...はぁ、職権乱用なんて...巻き込まれる

   身にもなって頂きたいものですわね。」


 ..というかそんな完全な私情的理由でしたの?と瑞撫さんは色々溜まってるのか、遠い目をしながらぼそぼそと呟いてる。


瑞撫「お陰様で私の寝る時間も減って

   しまって、ふわぁ...、」


瑞撫「いい睡眠妨害ですわ...。深夜

   アニメは放送時間に見るからこそ

   真の価値があるというものですのに」


瑞撫「同士と姉妹愛を語ってこそ、人生

   って事をお宅のお嬢様にはご理解

   頂けないのですわよねー」


 瑞撫さんはふぅっと溜め息を付いてから、楽な姿勢なのだろうか


 まるでモデルがポーズを取るように腰を手に当てて立ってる。


美紗「...ごめんなさい。」


瑞撫「あーん、その反応が可愛いのぉ~...///」


美紗「多分...生徒会の仕事が増えてるの、

   私が雪音を怒らせたせいだと思う

   ので...。」


瑞撫「まぁ、ほんとに嫌になったら

   理由付けてサボるだけだから

   大丈夫よ♥️」


瑞撫「彼女には色々お世話になってるし、」


瑞撫「気紛れに付き合うのは別に良い

   のだけれど」


瑞撫「あまり面白いものでもないし、

   私としては美紗ちゃんと会長には

   早く仲直りして欲しいのよねー。」


美紗「私としても、早く仲直り

   したいんですけど...」


美紗「雪音と会うのすら難しくて...。」


瑞撫「あぁっ、可哀想な美紗ちゃんっ!!!!

   そんなに落ち込まないで!!」


瑞撫「大体、仕事を押し付けられるのは

   会長のせいなんだから、、美紗

   ちゃんが謝る必要なんてどこにも

   ないのよっ!!」


 よしよし、と頭を撫でる瑞撫さん。


 頭を撫でられるのってほんとに小さい頃以来だから...、どうして良いか...。反応に困る...。


美紗「録画は駄目なんですよね...?」


瑞撫「そう!!録画は邪道なのよっ、

   邪道....!!新のファンはちゃんと

   放送時間に見ないとっ!!」


瑞撫「それが妹ちゃんへの愛ってものよ!!」


 と、自信満々に笑いながらガッツポーズで決めてる瑞撫さんを見てると


 不思議と、どんな事でも何とかなっちゃうような そんな気持ちになってくる。


美紗「ありがとうございます...、、

瑞撫さんと話してたらちょっと

   元気が出てきました、えへへ...、」


 瑞撫さんが凄い自信に満ち溢れてる人だからなのかな。


 この人が右と言えば本当に右になってしまいそうな、そんな易しさがそこにはあった。


美紗「愛の道は険しき故ですねっ!!」


瑞撫「...ま、それに美紗ちゃんの好感度を

   大幅に上げるフラグイベント

   だもの」


瑞撫「フラグ無視なんてまず有り得ない

   わよね!!」


 普段は変なお姉さんのイメージが強い瑞撫さんも、今この瞬間だけは本当に心強い。


美紗「あ...。...でも、...雪音に嘘つくのは

   かなりまずいですよね...?」


 瑞撫さんは雪音と長い付き合いって言ってたけど


 雪音は凄いお偉いさんの娘さんだから、私のせいで、もしお家に影響がでっちゃたりしたら...


瑞撫「美紗ちゃんの最初の悪印象を消し

   去る為だもの、それに勝るもの

   なんて」


瑞撫「どこにも無いわ。」


 どこにも無いわの声のトーンが素で断言してて...、


 ちょっとキュンとしたけど...、、...う、うん。


美紗「...でも、瑞撫さんが...」


 瑞撫さんは私の唇に人差し指を当てて、にかっと笑う。それ以上の言葉は、もう必要ない、と


瑞撫「美紗ちゃんは何も心配しなくても

   良いわ。...ふふ、お姉さんがどう

   にかしてあげる、」


瑞撫「舞台を作るだけならなんとでもなるわ。」


瑞撫「でも、それから先は主人公の美紗

   ちゃんのお仕事ね。だから今は

   自分の心配だけして頂戴♥️」


瑞撫「それに、私はどうなったって

   平気だから。家の事なんて、...もう

   うんざりですもの」


 そういってくるっと、瑞撫さんは後ろを向いて 上を見上げる。


瑞撫「それに彼女も早いうちに予想外の

   事もあるってことを知っておくべき

   だわ」


瑞撫「...世界は自分中心には回  

   ってない、彼女もそれは分かって

   いると思うけれど...」


瑞撫「引っ掻き回したいっていうのも事実

   なの、」


瑞撫「彼女の今後の未来の為にも、ね。

   その鼻をへし折ってあげるわ」


瑞撫「ふふ、それにしても楽しみね。今日の生

   徒会、彼女。嘘を付かれるなんて、微塵

   も思っていないでしょうし」


瑞撫「責任者同士の話し合いがしたいと私と

   古池の娘さんの二人で...そうね、場所

   は」


瑞撫「13時、30分。警戒されないように

   2-Aの教室にしようかしら」


美紗「あ、あの...!!」


瑞撫「...遅刻、しちゃだめよ?」


 と、瑞撫さんは楽しそうに喋りながらそのまま歩いて行ってしまったのだった


美紗「...行っちゃった」


美紗「...13時、30分に

   2-Aの教室、だよね...。」


※キャプション


 カチッ、カチッ...と時計の針が時を刻む音が聞こえてくる...。



 ...私の手の手汗が、凄いくらい手汗していた。


美紗(あぁ...、、緊張する...っ!!そろそろ

   時間だし、ううん!!柚夏も朝乃

   先輩もせっかく海に誘ったんだもん...!!)


美紗(絶対に仲直りして、雪音と海に行くん

   だっ!!というかもう避けられ

   始めてるから、これ以上雪音と

   関係が悪くなることはないし)


美紗(...大丈夫、...大丈夫)


誰かの。足音が聞こえてくる...。


美紗(大丈夫...っ!!)


 ガラッと、時間通り 


 扉を開けて出て来たのは鼈甲色の美しい瞳をしたお姫様だった。


雪音「.....」


雪音「すみません。どうやら部屋を間違えて

   しまったようです...、では」


美紗「待って!!、雪音!!」


 そのまま雪音はドアを閉めようと手をドアに添える。


 此処で雪音に逃げられたら、折角瑞撫さんに作って貰った時間も全部無駄になっちゃう!!


美紗「...私が瑞撫さんに頼んだの。...だか

   ら、...その、...約束した部屋は間違っ

   ていない...です、、」


 ...一時の無言の沈黙の後


 雪音も状況を理解したのか...瞳を閉じてふぅ...っと小さな溜め息が聞こえた。


雪音「...成る程、やられました、ね...。

   ...まさか、恩を仇で返されるとは

   私も思っていませんでした。」


美紗(大丈夫...、大丈夫...)


雪音「私の時間を止める程の価値が今の

   貴女にはあるんですか?」


美紗「...っ」


美紗(...目が合って無くても、見られてる

   って...分かる、...怖い)


 ビシッと、冷たい雪音の獣のような黄金の瞳が私に突き刺さる。


雪音「用がないのなら教室から出ていって下さい」


...私は、私はっ!!雪音と海に行くっ...!!


美紗「...ぃ、やだ」


美紗「嫌だ!!私はっ、此処に残って!!

   雪音と仲直りするっ!!」


 ブルブルっと、首を左右に揺すって息を深く吸い込んだ。


 真っ直ぐに。雪音の瞳を見つめる。


 私の今の目的は、雪音と海に行く事!!正直、それ以外の事は今は何も考えなくていいっ!!


美紗(言うんだっ、、私...ッ!!!)


雪音「....、....まさか」


雪音「この状態で仲直りが出来ると

   思っているのですか」


美紗「...今すぐにでも、...怖くて、逃げ

   出したいよ、...でも、...私は雪音の

   真夏の水着姿だけはっ!!」


美紗「どうしても、、諦めきれませんでした...ッ!!!!!」


雪音「もう一度言います...教室から

   出てお行きなさい。」


美紗「私は、雪音から逃げたくないっ!!

   逃げない...!!!そして、....言うん

   だ!!」


美紗「...出来れば水着はっ!!!

   ...白がっ!!良いですっっ!!、、」


 雪音は、あまりにも予想外な出来事に落ち着かない様子で辺りを見回しながら首もとのマフラーをぎゅっと掴んだ。


美紗「マフラー掴んでる雪音も凄いっ、

   好きっ!!いつも可愛いなって思って

   た!!本当、大好きっ!!」


雪音「...え、えっと、...少し待って

   下さい。」


雪音「私の声を聞いて何故逃げ出さない

   のです」


雪音「...私の声が怖くはないのですか?」


雪音「...いえ...私は、今の美紗さんの方

   が...、余程...怖いのですが。」


雪音「...そして何故、性癖暴露大会に

   なっているのですか。私に

   今すぐ説明して下さい。」


美紗「雪音の、白い水着が!!凄く、見た

   いからです!!」


 雪音は困惑したようにマフラーを首もとに押し付けてぎゅーっと握ってる。


 正直自分でももう、雪音に対してなにいってるのか分からなくなっていた。


雪音「...貴女は何故そこまでして私に

   関わろうとするのですか」


雪音「今の態度をとってしても私に

   関わる理由はないはずです。」


美紗「雪音、愛してるよ」


雪音「...お願いですから私と対話を

   して下さい...。」


雪音「理解不能過ぎて逆に怖いです...。」


美紗「うん、...分かった。雪音好き」


 ぶっちゃけ、何も分かっていなかった。


雪音「私は古池家の娘です。誰もが家系

   を敬い...その理想である事を誇りに

   今まで生きてきました」


雪音「その中でも、貴女のような諦めの

   悪い方とは一度もお会いした事が

   ありません。」


雪音「私(わたくし)には貴女の行動が

   一切読めないのです、」


美紗「こんな人間何人もいたら怖いよ」


雪音「あなたがそれを言うのですか...。」


雪音「貴女の目的が分からない...、貴女の

   底が知れない...。貴女は今まで

   会った人とは明らかにその...、」


雪音「...異常な方です、、」


美紗「...確かに、それは言えてる。」


雪音「仮に貴女が私に対して仇をなす存在

   だと分かれば...どのように対処

   すべきか考え様もあったのですが」


雪音「...なんですか、それは。」


 雪音の反応はごもっともだった。


美紗「...ね、雪音から私が離れるような

   事、私が...雪音にすると思う?」


雪音「いえ...。知らないです...」


美紗「正解は、しない。」


雪音「...意味が分かりません。」


美紗「雪音はキスしたくなかったら、私

   謝るよ。...ごめんなさい。だから

   仲直りして、海で水着見たいです」


 と、雪音の片手を取って私はスマイルで微笑んだ。これぞ私のごり押し戦法だ。


美紗(...私、何言ってるんだろ...、)


雪音「...そうではなく、その...勝手にキス

   された後のお話です」


雪音「あの時、私は私の中にあった

   何かが音を立てて崩れ去っていく

   【焦燥感】のようなものに襲われ

   ました。」


雪音「自分が自分で無くなってしまう、

   そのような感覚に独断にてこれ以上

   貴女に近付かない方が良い

   と判断させて頂きました。」


雪音「感情を取り戻したいと謳っておき

   ながら...、その感情がいざ戻ると

   なると今までの自分が無くなって

   しまうような気がして...」


 雰囲気も少し良くなって来た感じがするので、私は落ち着くために深く深呼吸する。


 雪音にちゃんとアドレス出来るように。


雪音「...焦り、を感じました。恐怖...、

   不安。...私は怖かったのでしょうか」


雪音「ただの女子高生に私が不安を

   ...?」


雪音「...そんなはずはありません。」


美紗「じゃぁそれを証明するためにも、

   私と仲直りしてくれる?」


雪音「....」


雪音「まぁ...良いでしょう。此方に損

   がなければ」


雪音「...私も貴女に対して、随分大人気

   ない真似をしましたからね」


雪音「私は神ではありませんので

   人を信用するにはそれ相応の対価が

   必要になります。」


雪音「それでも貴女は私の事が好きなの

   ですか」


美紗「好き」


雪音「...即答、ですか」


雪音「晴華さんに弱いもの苛めなどと

   言う資格は...私にはありません

   でしたね。」


美紗「雪音がしたことは間違ってない

   から大丈夫だよ、誰だって人を

   信じるのには勇気がいるし」


美紗「それに。私がもっと強くなれば

   良いだけの話だしね、」


美紗「雪音の気持ちが知れて嬉しかったよ」


雪音「今更、格好つけても遅いですよ。」


雪音「...杏里さんは私の水着が見たい

   のでしたよね。...白いのを、

   ...ラインが透けるからでしょうか...?」


美紗「なっ...///!?あれ///!?」


雪音「...図星ですか?」


と、ジト目で雪音は私の顔を見る。


美紗(あ、可愛い...)


雪音「もう、良いです。...深く考えていた私

   が愚かでした。...貴女が私より

   上に立つ事なんて、有り得ません」


美紗「ゆ、雪音」


雪音「...海に行くのでしょう。日付くらいは

   考えておいて下さい。」


 と、雪音はスマートフォンを取り出した。どうやら予定を立ててくれるみたい...。


美紗「良いの...?」


雪音「...ずっと説得し続けて来たのは貴女

   ではないのですか。」


雪音「...それとも、杏里さんはそのままの

   方が良かったですか?」


美紗「や、やったぁ...。良かったぁぁぁ...」


ふっと、力が抜けて...。


美紗「えへへ...」


雪音「...どうして、笑ってられるのですか。

   私は貴女に辛い事を沢山させてしまい

   ました。何度も、貴女に幻滅されるよう

   な事を、」


雪音「...自ら知りながら行いました。

   ...それなのに、何故...杏里さん。

   貴女は」


雪音「...それでも私を選ぶのです」


 差し出された、白い雪音の右手を握りながら私は心の底から思っていることを口にした。


美紗「雪音の事が、大切だからだよ。」


雪音「...」


美紗「...今回は、何も言わないんだね」


雪音「体調が優れないようですから

   ...少し、身体が熱いので。...夏、

   風邪でも引いたのでしょうか」


美紗「ストレスかな?...クーラー効き過ぎ?

   生徒会室にずっと居たからだよ」


雪音「...そうでしょうか?」


 私がその中々治らない雪音の夏風邪の原因を知るのはもっと先のお話で...。


 こうして、無事。勝手にキスしてしまった事を雪音に許して貰えて...、


 夏休みと共に私と雪音との距離はもっと縮まっていったのでした。


雪音「ところで、お二人の罰則はどういたし

   ましょうか...。虚偽の報告、私の時間を

   奪ったのはいただけません...」


美紗「...えっと...その、その件に

   つきましては...出来ればお手柔らか

   に...お願いします。」


※キャプション


→①海編に続く


体験版END

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