古池雪音×杏里美紗【みさゆきルート】

①海編【みさゆき】

 雪音に勉強を教えて貰えた事もあって


 無事、私は追試からも免れる事が出来、家族皆でお出掛けをしたり、と


そんな、青春の夏休みも沢山堪能した私は...


美紗「...えへへ、楽しみだな///」


 雪音と海に行く前日の朝、私はカレンダーの前に立って赤い文字で「海に行ってきます」と自分で書いた文字を眺めて見ていた。


美紗「明日...、雪音に会えるんだ...///」


 学校が夏休みになってから、雪音と会う機会もかなり減っちゃってたけど...。


美紗「...可愛い水着、選んだし。忘れ物も

   チェックしたから、大丈夫だよ

   ね?」


 終業式が終わってからはお互いに用事があったりなんかして、まだ雪音と一度も会ってなかったから...。


美紗「シーウェはしてたけど...、実際会って

   喋るのとは違うもん。早く明日にならないかなぁ...///」


 なんだか、ムズムズしちゃって...。スマートフォンの電源を付けて、シーウェを開き雪音にメールを送る。


「「雪音に会えるのすっごく楽しみ。

 ヾ(☆´3`)ノシ⌒chu♪」」


雪音「「先日の件、お忘れですか?」」


「「すみません。雪音と海に行くのが

  楽しみで、少し調子に乗って

  いました」」


 一方の雪音は相変わらずで、変わってないけど...。何というかあの日から以前より雪音の返事が事務的じゃなくなった気がする。


美紗(...前まではこういう時、必ずスルーしてたもんね

   。今ではちゃんと返してくれるように

   なってくれて嬉しいんだよ?)


美紗(...嬉しいんだけど、...なんか。私こんな

   幸せで良いのかなぁ...、)


ブブッと、返信の通知が鳴る。


雪音「「では、別荘の地図の場所をお送り

   致しますね。私はヘリで向かいますの

   で、当日は此方でお待ちしております

   」」


 どうせ海に行くのなら綺麗な環境にしませんか?と雪音の提案によって


 雪音の別荘の近くの海に行く事が決まったんだけど...。


※キャプション


美紗「おはよー、柚夏」


 待ち合わせの集合の時間の15分前。


 柚夏と柚夏の恋人の流雨さんがとても仲が良さそうに手を繋ながら駅のホームに近付いてくるのが見える...。


一方、私は当然一人です、はい。


柚夏「おはよう、早いね」


美紗「私の方が先だったね。ゆずかーさん」


柚夏「...ゆずかーさん?」


美紗「自分の中で流行ってる。ゆずかーさん」


 柚夏って、世話好きだし。中々いいセンスだと思うんだけど...どうだろ?


柚夏「そうなんだ...、...まぁ、別に良い

   けど

   ...。美紗の中で流行ってるのそれ...?」


美紗「え?別にそうでもないけど」


柚夏「今してた会話は一体...、」


流雨「....」


 柚夏の隣で寄り添っている流雨さん。


 流雨さんはまるで子供のように柚夏に手を繋がれながらぼーっとしてる


柚夏「流雨、...駅だよ。」


と柚夏が流雨さんを揺すって起こす。


 ...流雨さんここまで寝ながら歩いてきたのかな?


美紗「流雨さんも、おはよう」


 それにしても、背の高い柚夏とピッタリとくっ付いてる流雨さんはまるで親子みたい。


流雨「...ん、おは...」


 まだ眠たいのか、流雨さんはうとうとと目を閉じたり開いたりしながら柚夏にもたれ掛かる。


 その姿はまるで、猫さんのようで凄くほっこりした...


カンカンカン....。※SE


美紗「...それにしても、折角海に行くのに

   電車って凄い現実的だよね。ぱっ、

   っとアニメみたいに行けたら楽なの

   になー」


 ゴォォォッと電車の通り過ぎていく音を聞きながら、柚夏とお話する。


 大体此処から雪音の教えてくれた別荘まで一時間位は掛かるらしいから...


美紗(そしたら、海でもっと遊べる時間も

   増えるのに...)


柚夏「現実なんだから、...当たり前。という    

   か、実際そんな能力持ってる

   人がいたらその人を洗脳して

   も欲しがる人多いと思うよ」


柚夏「他国に行くと困るから集団の中の

   一人に助け役を作って、その人に

   依存させたり」


美紗「...うん、やっぱり今のままが一番幸せ

   だよね。電車に揺られながら皆とお話

   するのも楽しいしっ!!」


 柚夏さん、なんかより現実的になってません...?以前よりファンタジーに対して少し肯定的になったけど...


 やっぱ、柚夏さんは柚夏さんのままだった。


柚夏「というか、美紗は古池さんと

   一緒じゃないの?」


柚夏「あの人の事だから、もう来てても

   おか

しくないと思ったのだけど...」


流雨「....」


美紗「ヘリ」


柚夏「え?」


美紗「ヘリだよ、」


美紗「...ヘリコプターで来るって、昨日

   メールで初めて知った...。...辛

   い」


柚夏「...あの人、美紗と恋人の自覚がある

   のかどうかさえも疑問だけど...。何と

   いうか...そういうのもっと」


柚夏「口に出しても罰は当たらないと

   思うけど」


美紗「んー、雪音は結構効率重視する

   タイプだから...」


美紗「それに私も急にヘリで移動する

   って言われたら正直落ち着かないと

   思うし、雪音にとっての電車も

   多分」


美紗「そうなんじゃないかなって。」


美紗「ただ、ヘリで行くのは別に良い

   んだけど...」


美紗「正直...もっと早く言って欲しかった

   なぁ...って」


柚夏「楽しみにしてた分ね...、」


 私と一緒に居るのが嫌とかじゃなくて、もう雪音はそういう性格なんだなって


こういうの殺伐系女子って言うんだよね、確か。


美紗「でも雪音のそういう人に流されない

   ところが好きだから」


美紗「自分の意志がしっかりしてる人って、

   格好いいよね///誰にも曲げられないっ

   てこう、クールで...///」


柚夏「...んー、恋人と一緒に居たいって思わな

   いのかな。...あの人の考えは私には一生

   理解出来なそう」


流雨「柚夏は...、...居たい?」


 流雨さんは顔を上げて、柚夏の顔を見詰めている。


 じーっと流雨さんに見つめられている柚夏は気恥ずかしそうに目を逸らしてしまった


柚夏「...、...まぁ、」


美紗(柚夏は押しに弱いっと。...うん、覚えと

   こう。何かどっかで使えるかもしんな

   い...!!お菓子ねだるときとか)


 と、二人のいちゃラブを見ていると遠くから樹理先輩と奈実樹さんの姿が見えた。


美紗「えーっと。確か今日来るのは、柚夏の知

   り合いの先輩2人に、私は樹理先輩、奈実樹

   さん、朝乃先輩と橘さんは雪音と一緒

   でヘリで行くのかな?」


柚夏「わりと人数来るね...」


美紗「折角だから大人数で行った方が

   いっかなって、」


 ...瑞撫さん達も誘えれば良かったんだけど、雪音に頼んだら用事があって行けないって。


あと縁蛇さん達も実家に縁蛇さんは帰省中で代茂技さんは委員会のお仕事。...少し残念だけど、仕方ないよね。


奈実樹「美紗ちゃん、今日はほんま誘ってくれ

    ておおきになぁ。樹理も海に行ける

    言うてはしゃいどったんよ」


樹理「だって、海だよナミ!!ロマンチック

   な恋人と二人っきりになれる空間!!

   sweetじゃないかなっ?」


柚夏「どうも」


と、柚夏は奈実樹さんに頭を下げて挨拶をする。その後私も同じように挨拶をした。


樹理「ありがとね、美紗ちゃん!!。あ、その

   人が美紗ちゃんの言ってたfrendさん

   かな?すごく、クールな人だね」


柚夏「あはは...、それはありがとうござい

   ます。」


と、柚夏と樹理さんが話していると後ろから凄い目つきの悪い銀髪の人が深い溜め息を尽きながら歩いてくるのが見える...。


??「はぁ...」


 ...この人も、柚夏と仲の良い先輩だと思うけど...


 恋愛相談を受けていた時に柚夏と慌てて走って行っちゃったんだよね...。


美紗(凄い眠そうだけど...、大丈夫かな)


??「...ん。あぁ。やぁ、また会ったね。

   子猫ちゃん」


 先輩は私の事を覚えてくれてたみたい。


 この先輩とは前に少しだけお話しした事があるんだけど、この人の事は凄く印象に残ってた。


美紗「おはようございます、私もまた会えて嬉しいです」


 でも隣の綺麗な人とは初めてかも...、大人っぽい雰囲気の人で、大学生の人って言われても全然違和感ないけど...。


??「始めまして、一年生の子かしら?」


 優しそうな笑顔でなんか、凄い大人って感じでドキドキする...。同じ高校生...、なんだよね...?


??「自己紹介がまだだったね。僕は雨宮狛、 

   僕の隣に居るのはムッツリスケベの

   育代小栗君だよ。僕のフィアンセさ」


美紗(ムッツリ、スケベ...?)


美紗(...それって、えっちな人って事で合って

   るのかな...///!?お、大人な人だから

   そういうのも...///)


美紗「えっ、えっと...///」


小栗「初対面の子に嘘を教えないで頂戴。

   狛、タチが悪いわよ...」


狛「...タチが悪い。つまり、攻めである僕

  が悪いとは...、ふふ、考えたね小栗君」


小栗「貴女は本当に、...何でもそっち

   へ持っていくわよね...。」


と、女性は呆れた眼差しで銀色の髪をした人を見ている。


狛「...ふふ、...君は海は好きかい?」


美紗「え?はい」


 すると、銀色の髪をした先輩は、穏やかな瞳で私の方を見て急に話し掛けてきた


 ...この瞳は「懐かしい」時の感じだ。...隣の人との、思い出なの...、かな?


狛「...それは、良かった」


小栗「...随分。...その子の事が気に入って

   るのね?」


狛「...ふふ、嫉妬かい?」


小栗「別にそういうのじゃないけど...。ナンパ

   も大概に、ってだけよ。純粋そうな子

   なんだからからかうのは良くないわよ」


狛「大概に、抱けよ。だ、なんて...、つまり

  ほどほどに抱けよと言うことだね。以外と

  随分男前なお誘いをするんだね。小栗君

  は」


小栗「...発音が全っ然、違うわね?」


狛「ふふ、...君と性格が似てたから。つい、ね。」


小栗「私と...?」


美紗「えっ。...私って、そんなに大人っぽい

   かな?」


と、隣に居た柚夏に話す。こんな大人っぽい人と似てるだなんて...///

かなり、嬉しいかも!!


柚夏「何時もの雨宮先輩の冗談でしょ、」


美紗「別に嘘ついても、良かったんだ

   よ...?」


 ゆずかーさんは、とても正直者だった。


朝乃「芽月さん、美紗ちゃん。おはよう、」


美紗「あ、」


 ピンクの髪が特徴的な朝乃先輩が、最後に現れる。生徒会室で会ったワンちゃん先輩、


...先輩の私服、スッゴいお洒落だー。


美紗「朝乃先輩、おはようございます」


朝乃「...えーっと、...それ、と...。晴華さんは

   お仕事で来れないんだって...。...私、

   一人で何か本当、...ごめんね」


美紗「そんな事ないです!!私は朝乃、先輩

   が良いんですよ。私もヘリで来るって

   雪音に言われちゃったんで!!」


 お仕事なら仕方ないよね...。橘さんもモデルさんのお仕事で忙しいと思うし...、それに、以前朝乃先輩には凄いお世話になったから。


美紗「先輩も元気出して下さい!!」


朝乃「美紗ちゃん...、...ありがとう、」


美紗「同じハードルの高い恋人同士頑張って

   行きましょう!!」


※スライド


美紗「うん、これで全員、かな。」


柚夏「だね。私が誘ったのは小栗先輩と雨宮

   先輩だけだから」


 最後に人数確認をして、雪音に何人集まったかの連絡メールを送って...。


美紗「じゃぁ、皆で海へレッツ、ゴー!!」


 そうして私達は長い時間電車に揺られながら、雪音の別荘に向かっていったのでした。


※キャプション


 見渡すは一面、青い海。


 海が透き通ってて、此処からでも海で泳いでる魚の姿が見える、凄く綺麗な場所...。


美紗「海だーーーーッ!!」


樹理「Seaーッ!!」


 樹理先輩と手を握って両手をあげて、喜んだ。貝殻も沢山落ちてて、本当に凄く綺麗!!


奈実樹「元気やなぁ...。若いってえぇね」


柚夏「綺麗な海ですね、今でもこんな綺麗

   な海なんてあったんだ...」


朝乃「本当ね。実際、行ってみると海面が濁

   ってて写真と違った。だ、なんて、よく

   雑誌の書き込みに書いてあるのを見掛け

   るから私もそうとばかり思ってた

   けど」


 私達は一時間程、電車に揺られながら雪音の別荘に向かってた訳だけど


 樹理先輩達とお喋りしてたら、あっと言う間に目的地に着いてしまっていた。


樹理「何処で着替えたら良いのかな?」


 すぐ近くに目立つ大きな宿泊ホテルがある意外に特に別荘らしき物はないけど...。此処で合ってるよね...?


美紗「んーと、雪音の別荘は...」


ブブッ...。


雪音からのメール!!


雪音「「其方にホテルがあると思いますの

   で、ホテルの中の使用人に此方の

   画面をお見せ下さい」」


雪音「「我が家の別荘ですので、完全なプライ

    ベートビーチです。なので安心して

    下さいね」」


美紗「うっそ!?あれ、全部別荘!?」


 メールの文章と、豪華そうなホテルを交互に見ながら...。雪音が本物の超お姫様という事が凄いよく分かった瞬間だった...、


美紗「宿泊ホテルかと思った...。私、そんな

   人と付き合ってたんだ...」


柚夏「....」


 流石の柚夏さんも、開いた口が塞がらないようだ。分かる。


流雨「...暑い。...柚、夏」


 ぐいぐいと、流雨さんはぐったりとした様子で。柚夏の裾を掴む...


 流雨さんは特に暑いのが苦手なのか、首筋が汗でびっしょりだった。


柚夏「...そ、そうだね。先に行って、待ってるよ」


美紗「確かに暑いもんね、了解ー」


美紗(画像はシーウェのグループラインで

   拡散しときます、っと)


 柚夏達は先に歩いて日陰で待っているようだ。正直私も凄い暑いし...、でも、体力はなるべく温存しておきたいかも


奈実樹「...流石、古池嬢は格がちゃうわぁ」


朝乃「本物のお嬢様って感じよね...」


 私達はゆっくりと、歩きながらホテルを目指す。...流石、8月。...じわじわと照りつける日の中、歩いていくのは結構しんどい。


美紗(冬生まれだから、夏には弱いんだよ

   ね...。ホテルに着いたらクーラー、

   ホテル着いたらクーラー...)


小栗「でも本当凄いわね、パパの提携の病院と

   同じくらいあるわ」


狛「あぁいう所が君は好みかい?君が

  幸せになれるなら、貯金するけれど...」


小栗「普通の家で十分よ、掃除が大変じゃない」


狛「雇うって選択肢もあるよ?それに、

  埃は君の身体に良くないだろう?」


美紗(凄いなぁ...、なんていうか、こういう

   細かい所に労れる人って本当にその人を

   心から愛してるからこそって感じがす

   る)


小栗「大丈夫よ。埃が出る前に掃除するし、

   マスクもちゃんと付けているわ」


狛「...心配なんだよ、僕は...君の事が」


小栗「...ありがとう。その気持ちは受け

   取っておくわ、でも一人で出来る事は

   させて頂戴」


小栗「私だって走ったり、はしゃいだりしたい

   もの。...他の子よりは体力はないかもし

   れないけど、けど。私は誰よりも充実し

   て生きてる」


美紗(先輩、重い病気とか?だったのか

   な...?)


狛「子猫ちゃんは、何が一番幸せだい?」


美紗「え?」


 急に私に話が飛んできた。何も考えてなかったから、急に言われるとびっくりする...。えっと...。一番の、幸せな事...。


小栗「幸せは人によって違うから、私とその子

   が違うように望みも違うわ。あまり

   可哀想な質問を...」


美紗「今、ですかね、」


美紗「幸せな事って言われたら、やっぱり

   それしか出なかったです。優しい家族

   に、皆さんと一緒にこんな綺麗な場所

   でいっぱいお話出来て」


美紗「凄く、毎日が楽しくて。一秒一秒が

   愛しいんです。...だ、なんて、当たり前の

   事しか言えなくて」


小栗「...狛がこの子を気に入る理由が分かった気がするわ。...こんな純粋過ぎる子、

  今の時代

   珍しいものね。」


狛「...着いたよ、子猫ちゃん達も

  暑いだろう?早く中に入った方が

  良いよ」


小栗「貴女から始めた会話でしょう...」


と、先輩は中へと入っていった。


美紗「....先輩、」


小栗「ごめんなさいね...。気難しい性格してる

けど、悪い子じゃないの。...あまり気に   

   しないであげて欲しいわ」


美紗「あっ、...はい。私は大丈夫、

   なので...」


美紗(...そっか。先輩にはあの瞳の意味が

   分かってないんだ...、)


??「いらっしゃいませ、お嬢様の御友人の

  方々ですね、お待ちしておりました。」


 雪音が事前に手配してくれていたのか、大きなホテルの中に入って案内人の人がすぐに更衣室に案内してくれた。


美紗「先輩は良いんですか...?」


 壁に背も垂れて、スマートフォンを握りながら先輩は誰かとメールで会話してる。


狛「あぁ、僕は後で着替えるよ。女性の裸

  体を見るの

  は犯罪の匂いしかしないからね」


美紗「あ、そうなんですね...。先輩は男性

   だから...」


狛「ふふ、本当かい?嬉しいよ。

  有り難う子猫ちゃん」


美紗「?」


柚夏「一緒に入れば良いじゃないですか、」


と、後ろに居た柚夏が先輩に話掛ける。


狛「君は胸がないから心配する必要はない

  のは分かるよ、けど僕はそういうのを気にするんだ」


柚夏「...自分も同じような物じゃないですか」


狛「兎に角、僕のポリシーに反するからね。

  特に小栗君は僕のフィアンセだから、

  女性はそういう目では見られたくないだろう?」


小栗「...どの口が、そんな事を言ってるのかしら」


美紗「え?え...」


柚夏「はぁ...。美紗、私達が通ってるの女子高

   だよ。こんなナリだけど先輩一応女性」


美紗「え、あっ...!?そうなんだ、ご、ごめん

   なさい」


 更衣室入るの犯罪って言ってたから、男性の人かと思っちゃった。


狛「僕は男でも全然構わないけどね、

  性別を気にする輩が多すぎるんだよ。

  まぁ、だからと言って性別を変える訳にも

  いかないのだけれど」 


美紗「心は男性って事ですか...?」


美紗(だから更衣室で着替えるのはNGなのかな...?)


狛「どうだろう、僕はただ理想の旦那様に

  なりたいだけだからね。愛しいフィアンセ

  の君、のね」


と、白銀の髪をした先輩は隣の先輩を見て優しい顔で微笑む。何これ、凄い!!格好いい...///!!物語みたい///!!


美紗(...これが、愛、、)


美紗「お二人はラブラブなんですね!!」


小栗「...そう、なのかしら?」


狛「さぁ、早く着替えておいで。

  折角の時間が無くなってしまっては

  子猫ちゃんも辛いだろう?」


美紗「...あ、確かに!!早く着替えよ。

   柚夏」


 そうして、先輩達を残して私達は更衣室で先に着替える事になった


※スライド


柚夏「下に着替えてると思った」


美紗「流石に高校生になってからそれは

   卒業したよ。」


柚夏「去年まではしてたんだ...」


 柚夏はもう着替え終わったようで、個別に用意されているカーテンの外から声が聞こえてくる。


奈実樹「朝ちゃん、水着は忘れてへん?」


朝乃「忘れてない。ちゃんとあるわ」


奈実樹「モデルさん誘えんくて残念やった

    ねぇ...久々に何かするか?朝ちゃん

    は何かしたい事とかあるか?」


朝乃「奈実姉ぇも、過保護過ぎよ...。また

   樹理さんに嫉妬されちゃうよ?私は

   スマホで遊んでるから、大丈夫」


奈実樹「折角、海に来たんやし遊びたない?」


朝乃「ごめん、奈実姉ぇ...。ほんとそんな

   気分じゃないの...、二人で遊んで

   来て...」


 朝乃先輩はやっぱり、かなり落ち込んでいたようで...。奈実樹さんに対しての誘いを断っているみたい。


樹理「むぅ....、ナミぃ!!朝乃さんが良いって

   言ってるんだから。...義理の従姉妹だからっ

て世話焼き過ぎ!!」


奈実樹「樹理はうちが居るからえいけど、

    朝ちゃんは寂しいんやよ?」


朝乃「奈実姉ぇ、めっちゃ刺さるからそ

   れ...。お仕事だから仕方ないわよ、

   それに海も綺麗だから平気なの...」


美紗「三角関係かな?」


 着替え終わって、カーテンから出てみると樹理先輩が奈実樹さんを引っ張りながら。朝乃先輩が落ち込んでいるという...


なんか凄いコトになってた。


樹理「ナミと付き合い長いからって、

   渡さないんだからね!!ナミは私と

   結婚するの!!」


朝乃「晴華さん...、、」


 ガルルと、全然怖くない威嚇をしてる樹理先輩とまったく相手にしてない朝乃先輩を気遣う奈実樹さん...。先に行ってて良いのかな...?


美紗「なんか、カオスだね。」


柚夏「まぁ、すぐに終わるんじゃない

   かな...」


 流雨さんは海に早く行きたいのか、部屋の外をしきりに眺めているみたいだけど...。


流雨「....」


美紗「流雨さん、海行きたそう...」


柚夏「先輩。早く、海行きませんか?

   流雨が行きたがってますので、

   どうしても、したいのでしたら...」


柚夏「...物理的に止めましょうか?」


 剣道全国大会優勝者が言うと、迫力が全然違うね!!目がもう、すっごい。完全に人ヤってる目してる...。


樹理・朝乃「あ、はい」


ゆずかーさんはやっぱり、強かった...。


※キャプション


着替えも終わって、私は柚夏とお喋りしながら先輩達を後ろに私達はホテルの出入り口へと向かって歩いていた。


美紗「...来た時も思ったけど、...本当

   すごいよね...」


 ロビーこそホテルのような外見だったけど、奥に進んでみると個室が並んでるんじゃなくてちゃんとスペースもあって...、


 ホテルよりも一部屋一部屋が大きい分。兎に角尋常じゃないくらい距離があった、


 もうそれだけでも部屋の中がかなり広いって事が分かる...。


美紗「...柚夏さんや、」


柚夏「...。」


柚夏「...どうしたんだい、美紗さんや」


美紗「今、映画館見えたんだけど...、此処

   って雪音の別荘で合ってるよね...?

...映画館、じゃないよね...?」


 図書館なんかでもよく見かけるような、取っ手をひぱって開ける形のガラスの扉から大きなスクリーンと赤いシアタールームが...。


柚夏「私も見えたから、見間違いではないと

   思う...。さっきから先輩達の凄いって言う

   声も聞こえるし...」


美紗「最新の映画とかも見れたりするの

   かな?」


柚夏「...いや、流石に順応早くない?」


 教科書で見たことある有名な絵画とか、生け花やら、観葉植物なんかがロビーまで続いてる広くて長い廊下に主張し過ぎない様に置かれてる。


美紗(...やっぱりプロの人とかがこういうの

   って考えて、置いてるんだよね?)


美紗(こんな豪華なお花でも...広い廊下の中の

   一部なんだ...。きっと普通のお家にあっ

   たらもっと華やかになるのに...)


...雪音は、寂しくはないのかな。


柚夏「なんというか、住んでる世界が違うんだ

   なっ、て。...思う、実際こういうの目の

   辺りにすると、ね....。」


柚夏「学力とかもそうだけど、本当にあの人が

   私達と同じ世界で生きてるのかが時々、分

   からなくなってくるよ...」


 ふぅっと、溜め息を付く柚夏。悩むと幸せ逃げちゃわない?大丈夫?


美紗「...確かに雪音と私達が住む世界は違う

   とは思うけど、雪音も同じ人間だよ?」


柚夏「同じ人間とは思えないくらいに、

   ...スペックが違い過ぎるんだよ。

   彼女と私達では、」


柚夏「特に頭の出来、とかね」


美紗「あは、はー...まぁ、頭は...。」


 私は平均点を取れればそれで満足なんだけど、柚夏とか頭良い人から見たら目の上のこぶみたいな感じなのかな...?それにしても...


美紗「案内してくれた人はご自由に御寛ぎ下さ

   いって、言ってたけど...。雪音って普段

   はこういうとこに居るのかな」


美紗「こんなに広いと、どの部屋が何の部屋と

   か覚えるの大変そうだよね...。これで別

   荘なんだから、雪音のお家。お城か何か

   なのかな...?」


柚夏「確かに、こんな豪邸なビルが別荘だと

   どんな家に住んでるのか全く想像出来な

   いけど...」


 流石にこれを見た後だと雪音が凄い扱いされるのも分かる気はするけど...、


 だからと言って雪音に対して今更そんな対応するつもりもないし...。


美紗(...広いけど、...私はやぱっり住むんなら

   今のお家が一番良いな。くゆ達もいるし、

   何より落ち着くから)


柚夏「あの壺とか、...いくらくらいするんだろ

   う?凄い高そうだけど」


 腰から足ぐらいまである青い壺が中央に飾られているんだけど、柚夏はその壺を眺めるように見ながら歩いている。


美紗(見るからに高そうって言うのは

   分かるけど...。いくらって言われると

   分かんないや)


美紗「ほんと大きい壺、んー...300万くらい

   かな?」


流雨「...1200万」


柚夏「せん、にひゃく...まん...!?こんな壺一個

   で...?」


...まさかの、流雨さんから解答が。


流雨「...くらい?」


柚夏「流雨の目利きは凄い良いんだ

   よ...、」


美紗「...あはは、高すぎてどう反応したら良い

か分かんないね...」


 でも取りあえず、少し壺から遠ざかりながら歩くことに。


柚夏「家より高い...。というか、流雨。骨董品

   詳しかったんだね...」


流雨「...、.....すごい?」


柚夏「...。...うん、凄いよ」


 柚夏はふっと笑顔を浮かべて、嬉しそうな顔をしている。


...好きな人の前だからなのかな?へぇ...柚夏って流雨さんの前だとこんな優しい顔もするんだ...、


美紗(あれ...?今まで気にしてなかったけど、

   私の前だと不敵な笑みしか浮かべてなく

   ない?)


流雨「スゴイ...食べたい...」


柚夏「流石に海に鯉は居ないかな...」


美紗「鯉って川にいるよね、橋に掛ってるあの

   泳いでるのって鯉だよね?」


流雨「...それは...食用じゃないから、...下水の

   鯉は汚染されてる...。生活水と混ざって

   る鯉は...、...考えたくない」


美紗「あ、そっか。洗剤とか混ざっちゃってる

   から...。いっぱいいるし、近いから楽そ

   うだなって思ってたんだけど...。」


美紗「よくよく考えたら鯉さんって虫さん

とか食べてるんだよね...。流石に虫さん

を食べた鯉さんはちょっときついか

も...」


美紗(...それを、考えてはいけない)


樹理「ね、ねぇ。...もっと楽しいお話しないか

   な?ナミがよく鯉触る機会とかあるから

   どうしても考えちゃうよ...」


奈実樹「樹理は昔から、虫が苦手なんよ。キャ

    ベツについた小さな青虫はよ外逃がし

    たいのに、見たときしがみ付いて来て

    大変やったなぁ...」


樹理「も、もぅ///!!そういう事、後輩に言う

   必要ないでしょー!?ナミ///!!ほんっ

   と、私虫だけは駄目なの...!!」


奈実樹「毛虫とかならまだしも...ちっちゃな

    青虫は可愛いんやけどなぁ。蝶々に

    なるんやよ?」


樹理「虫は可愛くないー...!!」


 樹理先輩、蝶々も駄目なんだ...。蝶々が苦手な人って本当に

虫嫌いって感じするけど...。


美紗「あ、でも蛙とか美味しそうですよね。

   雨蛙とか可愛いですし、蛇とか。昆虫

   はちょっと勇気要りますけど...」


奈実樹「雨蛙は毒があるからオススメ

    せんけど、」


奈実樹「牛蛙は一回食べてみるとえいよ。あっさりし

    た鳥みたいであれは美味しかったな

    ぁ」


樹理「女の子同士がしている会話に思えない

   よ!?もっと女子力、ある会話

   しよう...?」


柚夏「みっ、み、美紗に女子力...」


美紗「口元を押さえてまで、笑わなくても

   いいじゃんかっ///!!!」


 今にも吹き出しそうなくらい、口元を抑えて目を逸らしている柚夏。いくら女子力ないからってそれは酷いよ!?


...でも、私で笑顔になってくれるっていうなら良いよ///!!存在意義、感じるし!!もっと、笑って!!どうぞ///!!


柚夏「いや。なんで、少し嬉しそうなの...」


奈実樹「いや、な?女性の時点で女子力はもう

    100%やから気にせんでも大丈夫や

    よ。樹理は200%くらいいっとる

    だけやからね」


美紗「...ふむふむ。なるほど、女の子に生まれ

   た時点で女子力は100%。...正論ですねっ!!

   100理くらいありますよ!!」


美紗(流石、奈実樹さんだ...!!)


樹理「ナミは気にし無さ過ぎなの!!男前過

   ぎなの!!折角ナミ、すっごく美人な

   のに勿体ないよぉ...」


※スライド


管理人「一旦お預けになられますのは

    此方で、

    全てという事で宜しいでしょうか?」


美紗「はい、問題ないです。宜しくお願いします」


 と、先輩方から預かった荷物をひとつずつ管理人さんに手渡していく。


美紗(なんだか、ホテルのチェックイン

   みたい...。夏休み中に皆と行った旅行

   思い出すなぁ...)


 管理人さんが皆の荷物の数を確認しながら、一つ一つ鍵の掛かったケースの中に入れてくれてる。雪音からのメールによると、


 「「鍵は砂浜ですと一旦落としてしまうと無くす可能性がかなり高いですので、管理人の方にお預け下さい。」」との事で...


 貴重品なども全て預かって貰う事に。その間、先輩達をずっと立って待たせるのも悪いので、声を掛けてソファーの上で座って寛いで貰っていた。


美紗(...旅行、すっごく楽しかったな。くゆ

   と、新しいお母さん。お父さん...。私に

   付き合ってくれて...)


柚夏「...あの、さ、美紗。ちょっと気になって

   る事があるんだけど...」


美紗「ん?」


 皆が寛いで座っている中、カウンターの前で管理人さんが荷物を入れているのを見ていると、流雨さんと手を繋いだ柚夏が急に私に声を掛けてきたのだった。


柚夏「美紗って、流雨の考えてる事分かる?」


美紗「え、急にどうしたの?」


柚夏「いや...、さっきの...更衣室で流雨が海に

行きたそうにしてるって言ってくれたか

らさ...。もしかしたらそうなのかなって」


 まぁ...、分かるけど...。めっちゃめっちゃ、海楽しみにしてるね。流雨さん...。流雨さんの瞳から、滲み出る海への愛情を感じる...


流雨「...」


美紗「ごめんね、もう少し待ってて

   流雨さん。すぐに終わると思うから」


管理人「では、お預かり致しますね。お預かり

    頂いた物にご用時が御座いましたら

    お気軽に声をおかけください」


と、その様子を笑顔で見ていた管理人さんはいってらっしゃいませと微笑んで言ってくれた。


 その言葉と同時にいよいよ海で遊べるんだ!!という開放的な気持ちになる。管理人さんに会釈をしてから、私は拳を上に上げて満面の笑顔で言った


美紗「じゃ、預け終わりました事ですし!!

   行きましょうか!!海に!!」


流雨「ん...!」


 と柚夏の隣に居る流雨さんも微笑みながら返事をしてくれる。流雨さんも本当にお待たせさせちゃったね。私も早く雪音に会いたいよ...!!

 

柚夏「...流雨、やっぱり暑いから

   あまり乗り気じゃないのかな?」


美紗「え?」


 流雨さん、こんなに楽しそうな顔をしているのに、なんでゆずかーさんは分かんないの...?


美紗「柚夏、...流石にそれは。...本気で

言ってる?」


 こんな楽しそうな顔をしている流雨さんに向かってそれはあまりにも...、...ねぇ?


柚夏「いやだって...、基本的に流雨はずっと

   同じ顔してるし...。そのうえ思ってる

   事、中々口に出したりしないから...」


柚夏「乗り気じゃないのかなーって...、

   さっきまでずっと寝てたし」


美紗「え!?全然違うよ、柚夏の目は

   狂ってるの?!」


 確かに、ホームから電車乗ってた間殆ど流雨さん寝てたけど。ただ単に疲れやすいだけなんだと思う。


柚夏「それほどまで?!」


流雨「....」


 恋人同士なら、普通分かるとは思うんだけど...。柚夏には流雨さんの気持ちが伝わってないんだ。...凄く仲良さそうなのに。...以外だな、


美紗「ほら。流雨さんもかなり驚いてる...」


柚夏「...変わってなくない?」


流雨「....」


 柚夏は流雨さんの瞳をじっと真剣そうに見つめる。けど、完全に困った瞳をしていた...。


美紗(分かる努力はしているんだろうけ

   ど...、...んー)


美紗「嘘やろ...って感じ、」


柚夏「むしろ何で分かるの...」


 流雨さんの目を見てみると、深みの増した色になってる...。これは落ち込んだ時の瞳で、視線が下にいってるから影が出来るんだよね。


 それに嬉しいとか楽しいって感じてる時は顔が上に上がるから瞳が光って見えるからすぐ分かるはずなんだけど...。


美紗「....」


流雨「....」


美紗「流雨さん悲しそう」


柚夏「え!?、えっと...!!」


 それを聞いた柚夏は慌てた様子で、どうしたらいいか分からないと言った感じだった。


美紗(この目を見ても、分からないなん

   て...。...やっぱり普通は人の感情

   ってよく、分からないんだ...)


美紗(私だって昔は分かんなかったし...、

   ...そっか。お父さんの機嫌を見てたら

   何となく分かるようになっちゃっただけ

   なんだよね...)


 涙と言ったら、しょっぱい。...しょっぱいと言ったら...海。...って、分かりやすいんだけどなぁ。


 でも、最終的に海の事を考えてる流雨さん...


美紗(...本当に海が、大好きなんだね)


 ...瞳からもわくわくしてるっていう感情が凄く強く、伝わってくる。


流雨「....」


 流雨さんはリラックスしているような瞳でこっちを向いたまま、まるで返事をするかのようにゆっくりと瞬きをしていた。


大抵人の顔を見られるのって嫌がられる物だけど...それは、見られて不快とかそういうのじゃなくて...。...え?


美紗(あれ...?もしかして、流雨さん...。)


美紗「...」


流雨「....」


柚夏「何見つめ合ってるの...」


と、恋人の流雨さんと見つめ合ってるのが気になるのか少し仲間外れにされたような瞳で見る柚夏。


美紗「え、あ...。いや、流雨さん...

   も同じ人なんだって、ちょっと

   ビックリして」


柚夏「...同じ人?...何の事がよく分からない

   けど。やっぱり私には一緒にしか見え

   ない...」


と、柚夏は理解出来ないといったように眉間にシワを寄せて今度は流雨さんの顔を見ているようだ。


流雨「...私の場合は...言葉や声のトーン

   だから、喋ってないと分から

ない...」


美紗「柚夏に分かって貰えると良いね。」


流雨「ん...、海...」


美紗「そうだね、流雨さん。海は良いよね...」


 なんだか、今まで勝手に感情を見ちゃうのは少し悪いことだと思ってたから...、


 流雨さんも人の気持ちが読める人だって分かって、この特技を持ってて少し良かったなって、私はそう思った。


※キャプション


 遠くの方で白い雪の様な肌をした女性が誰かとお話しているのが見える、


...あのピンク色の紫髪、そして美しい瞳!!あれは、...間違いなく!!雪音っ!!


美紗(...だよね?、合ってるよね...?)


と言うのも、雪音のふわふわの髪は上に託しあげられ


 普段隠されてて見えない雪音の禁断の白いうなじが露わとなっていたから...、、


美紗(普段の雪音も綺麗だけど、)


美紗(今日の雪音は特に大人っぽく

て...、)


 黒茶色のサングラスを掛けた雪音はどうやら誰かとお話しているみたいなんだけど...、


 久々に好きな人に会ったせいか、なんか落ち着かない...///


美紗(...私って、こんなんだったっ

   け、、)


美紗(....、)


美紗(声...、掛けて良いんだよね...///?)


 久々に会ったのもそうだけど、なんか、今の雪音...、一般の人に紛れてオフを満喫してる芸能人みたいで...。


美紗(晴華さんが結んだのかな///、、絶対

   似合うだろうなぁとは思ってたけど

   まさかの...スタイリッシュ系////?)


美紗(普通の水着も可愛いと思うけど

   、)


美紗(ほんとはこういう水着のが好き

   なんだよね、、雪音もそういうのが

   好きなのかな、えー...///、凄い似合

う.../////)


 いつもと違う雪音に、興奮が抑えきれない私


美紗(どうしよ...、...なんか話掛けようと

   するこっちがどうにかなっちゃいそうなくらい...、心臓バクバクするし...///)


 雪音は本当に綺麗だし、普通にテレビに出ててもおかしくないくらいの美人さんだから、こういう格好されると本当にまともに見れなくなってしまう///、、


 ...それくらい、凄く似合ってたから。


美紗「...ゆ、雪音っ!!」


 それよりも、早く会いたいという気持ちが上回って。砂浜を裸足で駆けながら、満面の笑顔で雪音の元に走る。


 私に気付いた雪音はぺこりと頭を下げてから、顔をあげていつものように上品に微笑みを浮かべた。


雪音「安里さん。お久しぶりです。

   このように直接お会いするのは

   夏休みに入って以来ですね」


雪音「何事もなく無事にたどり着いたようで、

   良かったです。...あの、いかがな

   さいましたか?」


美紗「...いや、その...。雪音が眩し過ぎて、

   ...直視出来なくて...///...白い、水着...

   本当、よく、似合ってたから...///」


いつもみたいなゆるふわも良いけど...///


何か、こっちは雪音の素って感じがする。


 あの、同棲して着崩した彼女が凄くエッチすぎて困るって感じ...///


分かるかな...、でも...雪音って本当に綺麗だよね///


美紗「...その、...髪も本物のモデル

   さんみたいで心臓がいくつあっても

   足りないよ...///」


美紗(私が白の水着が好きって言ったこと

   雪音、覚えててくれたんだ...///)


 心の中に、心地良くて温かい気持ちが流れ込んでくる...。...えへへ///


雪音「出会って早々にそれなのですね。」


美紗「だって、久々に会ったんだもん...///

   なんか、凄く嬉しくなっちゃって。

   ...ぎゅー、...したくなっちゃっう///」


美紗(前は雪音の気持ちを無視して、勝手に

   キスしちゃったから雪音を怒らせちゃ

ったけど...)


美紗(雪音...///)


美紗(取り敢えず、今の雪音はいつもの雪音

   だから、許可を取れば良いのかな...?)


美紗「...ぎゅって、していい?」


雪音「....」


 雪音はきょとんとしたように、目をぱちくりと瞬きして、瞳を閉じた。


美紗(試されてるのかな...?)


美紗「拒否しないって事は、良いって事...?」


雪音「...まるで、犯罪者予備軍のような

   考え方をなさるのですね。杏里さんは。私が通報したらそれこそ逮捕さ

   れてしまいますよ?」


美紗「あは、は...。...なら、もう私は愛という

   牢獄に捕らわれてるから大丈夫かな?

   雪音、すっごい好き...///」


雪音「...。...暑いです」


 ぎゅーっと、雪音を抱き締めると雪音は溜め息を付いてそうとだけ言った。


 さらっと髪を一回だけ撫でて、私は雪音から離れる。


美紗「まぁ...でも。私も暑いの苦手だから、分

   かるよ。そうだね、これくらいで止め

   とくね。ごめん雪音…あれ?」


美紗「...雪音、いつもマフラー付けてたよね? 

   今日はないけど…。マフラーのない

   雪音って始めて見るかも...」


 雪音の印象が凄い変わって見えるのもそのせいなのかな


 凄く大事そうにしてるからてっきり常に身に付けてる物だと思ってたけど...。


雪音「あのマフラーは、通気性がとても良く、

保湿性もありますから。…夏でもそれほど

暑くはありませんが...」


雪音「あのマフラーは他界してしまった

   祖母の形見の品なので...。砂で汚れて

   しまうよりは良いかと、」


 ずっと付けてるなとは思ってたけど、そっか...あの白いマフラーが雪音のおばあさんの形見だったんだ...。


 不安そうな時とかによく握ってるの見るけど...やっぱり、お婆さんを思い出して落ち着くの、かな...


美紗「そうだったんだ...。...無理に海誘ちゃっ

てごめんね。雪音...」


雪音「いいえ、私も何時までも祖母に頼っている

   訳にもいきませんから...。それに...」


美紗「それに?」


雪音「....。」


雪音「...晴華さん、麗夜さん...。それに、今は

   いざとなったら膝盾ぐらいにはなって

   下さるかもしれません、杏里さんが居て

   下さいますからね。」


 でも...そう言ってる雪音の顔は心無しか不安があるように感じる


 いつも側に居る晴華さんも居ないし...、雪音の表情的にも麗夜さんって人も今日は居ないのかな...。


美紗(でもペットよりは精進した事だし

   ...!!...まぁ、まだまだ雪音の後

   ろ盾には、なれないみたいだけど...)


美紗(私もいつか雪音の心の支えになれる

   くらい...大事な存在になれると良い

   な)


美紗(ん...?)


 雪音の隣にあるヘリコプターの中に大きなパラソルとテントを作る布に、長いアルミ棒が並べてあるのに気付く。


美紗「あ、テント...」


 さっきまで雪音とお話していた使用人の人が一人でてきぱきと一切無駄のない動きでテントの用意をしてる...。


 流石雪音の使用人の人、棒と布だけだった物が見る見るうちにテントの形に変わっていった。


雪音「使用人の方が組み立てて下さいますの

   で問題ないかと。麗夜さんが居れば

   一瞬で立てられるのですが...」


美紗「え?あれよりも、早いの...?麗夜さん

   って、え?ロボットじゃなくて、一応

   人間か何か...なんだよね...?」


 流石の私もロボットにはなれないよ?というかもう、麗夜さんって人造人間か何かのイメージしか浮かんでこないんだけど...。


雪音「...腕が鈍るからという理由で熊狩りに

   行くような方ですから...。干し肉に

   して召し上がってるところを何度か」


美紗「私そんな人から気をつけろって言われて

   るの!?」


雪音「...麗夜さんは一応人殺しはしない方だとは

   思いますが、私が小学生だった頃

   から面倒を見て頂いている方で

す」


雪音「ですので、捕まるようなそのような

   真似は致しませんよ」


美紗「...その言い方だと警察に捕まるような

   そんなヘマしないみたいに聞こえるん

   ですが...」


雪音「...確かにやり過ぎな点は目立ちます

   が、彼女にはそれなりの事情がある

   ので仕方ありません。」


雪音「...ですが、一体何処から杏里さんとお付き合いしている

   事が分かったのでしょうか」


雪音「私としてはそちらの方が気掛かりですね...。

   麗夜さんはあまり、人とは掛からない

   方ですから...」


雪音「ですが、そのような行動を取ったという事は少なからず麗夜さんも杏里さんに対して興味を抱(いだ)いているようです。」


美紗「...雪音、は?」


雪音「...私は二度も同じ事は言いませんよ。」


美紗「今まで会ってきた人と違う...?」


雪音「分かっているのでしたら、伺う必要は

   ないのではないのでしょうか。私は

   その手には乗りません」


美紗「あは、は...、答えがあってただけで

   充分満足だから...///」


美紗「...雪音の為に私も何か出来る事って

   ないかな?」


雪音「杏里さんに、...ですか?」


雪音「....」


雪音「.........。」


美紗「長考してる時点で、全然期待していない

   というのが分かるんだけど...。私は

   その程度じゃ挫けないよ?、雪音」


美紗「もっと、罵ってくれなきゃね///!!」


雪音「...私には正直、時々貴女の言ってる

   言葉の意味がよく分からない時が

   あります...。」


美紗(んーと...。流石にあそこまでは完璧

   には出来ないけど...せめて、パラソル

   くらいは...!!)


美紗「パラソル立てるの、私も手伝うよ雪音

   !!」


美紗(雪音に良いとこ見せたいし...!!)


雪音「...使用人の方が立てた方が早いですよ?」


※スライド


...そうだ。此処に、テントを立てよう。


と、いうことで...、


 雪音に頼りになる人だって少しでも思って貰えるようにパラソルを運んでたんだけど、なにこれめちゃめちゃ重いっ...。


美紗「うぐうううぬっ...!!」


 炎天下の中、2mはある大きなパラソルを引きずりながら、私は汗だくでパラソルと格闘していた。


柚夏「手伝うよ」


美紗「あ、大丈夫。大丈夫。柚夏だって腕

   まだ完治してないんでしょ?あまり

   無理しちゃ...」


 と、海岸に走っていく流雨さんを見ながら柚夏はパラソルを軽く持ち上げる


 さっきまで鉄の様に重かったパラソルはバッ、と音を立てて開いた。


美紗(...柚夏って、その水着の下筋肉バッキ

   バキなの...?)


 ...電車に乗ってた時、柚夏は腕を怪我しててまだあまり激しく動かせないって言ってたんだけど...。


...これで完治じゃないって、...嘘やん。


柚夏「…美紗には海に誘ってもらったし、この

   くらいの事なら任せて」


美紗(...あは、は。このくらい

   かぁ...、嘘、...私の握力、低過ぎ...?)


柚夏「...しょっ、場所はこの辺?」


美紗「うん、そこ。...はぁ、すごー、柚夏って

   本当に握力あるよね?でも、そんなに

   腕に負担掛けちゃって大丈夫なの?」


 ぐいぐいとパラソルを砂にねじ込む柚夏。早く終われば雪音もそれだけ褒めてくれると思うし、一人だと凄く、暑いし...。本当に助かったよ...、


柚夏「大丈夫。バイトの筋肉痛のがどっちかと

   言うとキツいから、今日までに治して

   おきたかったんだけど...」


美紗(...柚夏?)


柚夏「.....」


 パラソルに重心を掛ける柚夏の視線が、海岸に居る流雨さんの元へ向かってる。その流雨さんを見詰める柚夏の視線は...


美紗(...せっかく、好きな人と一緒に海に来たん

   だもんね。)


美紗「柚夏。手伝ってくれて、ありがとね。

   もう、後は私一人でも出来そうだから、

   早く流雨さんの所に行ってあげて」


 そういって此処まで一人で運んできた、もう一個のパラソルを私は持ち上げる。


美紗「こっちは大丈夫だから、柚夏は流雨さん

   と一緒に遊んできなよ。それ...っに、

   他の人にも頼む事も出来るから」


柚夏「…けど、...パラソル立てるのって

結構、力いるよ?...本当に大丈夫?」


美紗(もぉー...、ゆずかーさんは心配性だな

   ぁ...。流雨さんに会いに行きたいって

   分かってるのに、素直じゃないんだから...)


美紗「けども、でもも、ないんだよ。雪音に

   良いとこ見せなきゃ!! 柚夏のお菓子食

   べてから、雪音かなりご機嫌斜めなんだ

   よね...。」


柚夏「え…。もしかして、お嬢様には味が

   合わなかったとかそういう...?」


美紗「いや、ご機嫌斜めなのは味のせい

   じゃなくて…。や、やっぱ...お、...

重...い...」


 急に傘が左にどんどん倒れ初めて、重心がこっちに向かってくる。急いで両手で支えた瞬間


...持ち手がさっきよりも軽くなった。


朝乃「...余所見、したら駄目じゃないの。

   危ないじゃない。それに、こういう事

   は一人でするもんじゃないわ...」


美紗「あっ...。先輩」


朝乃「間、一髪ね。...私も一緒に手伝う、

二人なら力もそこまでいらないでしょ」


と、朝乃先輩は柚夏に向かって溜め息を尽きながら言った。


 本当にその通りだから、もっと言って下さい先輩...!!


柚夏「朝乃先輩…」


朝乃「…芽月さんは…私の分も楽しんで…くる

   のよ…くッ…」


美紗「朝乃先輩!?重心が!!」


 グラグラとパラソルが揺れて、今にも倒れそう...!!きゅ、急に力抜いちゃうと...!!


朝乃「…見てて辛いから、…もう…」


朝乃「…本当。…行って、お願い…。します…何

   でもしますから…、ん? 今、なんでも

   って」


美紗「そのネタもう、前にも違う人から聞いて

   ますから...!!ネタ被ってますよ!!

   先輩...!!」


柚夏「あー、もう!!本当に大丈夫ですか!?」


※スライド


美紗「大丈夫だよ。こっちは任せて、柚夏。」


 柚夏が急いで支えてくれたので、大事にはならなかったけど...。このままだと何時まで経っても柚夏が流雨さんのとこ行けないよ...。


美紗(仕方ない...。...此処はもう、あれし

   かっ...!!)


美紗「...朝乃先輩!!」


朝乃「..助けに来てこれとか、本当に私は役立

   たずなのね...、だから晴華さんにも

愛想尽かされるんだわ...」


 もう完全に自己嫌悪に走ってしまっている朝乃先輩に、異議を申し立てる...!!別に反対意見って訳でもないんだけど...、


私には朝乃先輩に対抗する手だてがあった。


美紗「私、実は橘さんとシーウェしてるんです

   けど…この間橘さんが、ボツになった

   写真を整理してたらしくて…」


美紗「…橘さんの、NG写真を。あ、これ以上

   はちょっと柚夏の前では…、」


 私は持っていたスマホの画面を朝乃先輩に向ける。...橘さん、ファンの人に衣装見せられなくて残念がってたから、別に見せても平気だと思うけど...。


美紗(勝手に見せたの怒られないかなぁ...、

   まぁ、その時はその時だよね。朝乃

   先輩には見せたの内緒にして貰わなきゃ...)


朝乃「....」


美紗(...あれ、...これだけじゃ、浅いかな?ファンの人にとってはレア写真だと思ったんだけど...)


朝乃「せッ///、」


朝乃「…晴華さんの非、公開写真っ////!? なにそ

れ美紗ちゃん※ゆずるう杏里さんになって

   る編集。kwsk」


美紗「ふっ、ふっ、ふっ…wktkですよ」


 私は見事に朝乃先輩を釣り上げることに成功したのだった。


 ...まぁ、これで少しでも朝乃先輩が元気になってくれれば見せた甲斐もあるのかな...?


美紗(でも良かった...、朝乃先輩には橘さん

   この画像見せて無くて...)


美紗(橘さん、朝乃先輩とはシーウェは交換し

   てないって前言ってたから大丈夫かな

   とは思ったんだけど...)


美紗(でも今考えて見ると、なんで朝乃先輩

   には橘さんシーウェ登録してないん

   だろ...?)


※キャプション


美紗「ただいまー、あー...、暑かったぁ...」


雪音「お疲れ様です。杏里さん」


 眩しい日差しが差し込む中、大きなパラソルも建て終わって...朝乃先輩と一緒に雪音や樹理先輩の居るテントに戻ってくる。


奈実樹「朝ちゃんもお疲れ様やったね」


朝乃「すぐに終わちゃったから、実際

   そうでもよ?それに二人作業だった

   し」


朝乃「良い物も手に入っちゃったしね

   ー///」


樹理「...美紗ちゃんはともかく、...別に朝乃

さんはもうちょっと遅くても良かった

のになぁー」


奈実樹「樹理、そんなこと言ったら

    あかんよ。それにこれ言うん

    何回目や...?」


奈実樹「いい加減なぁ...、うちも樹理と

    朝ちゃんが仲良うなって欲しい

    んやけど...」


樹理「...むー!!、...ナミは朝乃さんに

   誘惑されても平気なの!?」


奈実樹「誰もうちなんか、とったりせー

    へん言うとるやん...。それに

    朝ちゃん誘惑しとるんはモデル

    はんやないか?」


朝乃「まぁまぁ...、奈実姉ぇもその辺

で...」


樹理「あっ!?、ちょっと...!!」


 朝乃先輩はそんな樹理先輩の皮肉にまったくものともせずに。


奈実樹さんの背後で横に寝転んだかと思うと、背中を向けて寝そべりながらスマホを見つめてごろんごろんと悶えていた。


朝乃「...うへへ///、晴華様ぁ♡」


樹理「ナミから離れてよーーっ!!」


 樹理先輩はどうにか引きはがそうと頑張ってるみたいだけど...、先輩は橘さんの秘蔵モデル写真に夢中でまったく気にしてなさそう...。


美紗「遅くなちゃってごめんね、雪音...。出来

ればもっと早く建てたかったんだけど...」


雪音「いえ、テントはもうございますので、

   早かれ遅かれどちらでも構いません

   でしたよ」


 雪音の隣に立って、そのまま腰を下ろした後。出来上がったパラソルの方を見詰めてから雪音の方を見た。


美紗「近くに居たときは全然気付かなかった

   けど、此処から見ると、大分傾いちゃ

   ってるね...。」


美紗(柚夏のと比べると特に差が目立つなぁ...)


雪音「...本当に。今まで見たことないくらいに

   歪で、すぐに倒れてしまいそう

   ですね。」


美紗「雪音...?」


美紗「....、....。」


美紗(雪音、パラソルの方と全く違う方

   見てるけど...柚夏と流雨さんの方

   眺めてるし...)


美紗「もしかして心配してくれてる?」


雪音「...そのような事は一言も申して

おりませんよ。」


 柚夏は流雨さんの作っている物のお手伝いをしているようで...、さっきからしきりに砂に少しだけ海水を混ぜ合わせて粘土状にしているのが見える。


雪音「...あちらだってそうですね。海岸の粘土

   状態の場所から取ってきた方が効率は

   格段に良いはずなのですが...何故、なさ

   らないのでしょうか?」


美紗「...あれは流雨さんと遊ぶのに夢中で

   気付いてないだけだと思うけど、まぁ

   楽しかったら良いのかな?」


 柚夏ってそういうとこあるからなぁ...と思いながら親友の様子を遠くから見守る。


雪音「得意な者に任せておいた方がよほど

   効率が良いですし、綺麗で尚且つ

   (なおかつ)より良い物が仕上がり

   ます。」


雪音「何故貴女方はそのような事を好き

   好んでなさるのでしょうか、」


美紗「でも、私はして良かったなって思って

   るよ。大好きな人のために何かが出来る

   ってきっと、凄く幸せな事だと思うか

   ら」


雪音「そのためなら自ら、苦渋を舐めるのも厭(いと)わないと。そのように仰る

   のですか?」


美紗「...苦渋を舐めるって猫が灯油を舐めてる

   イメージがあるんだけど、皆そうなのか

   な?」


雪音「美紗さんだけだと思います。妖怪である 

   猫又の伝承と混ざってはいません

   か...?世間的には修行僧のイメージが

   一般的だとは思われますが...」


美紗「雪音は猫、苦手だもんね」


 そういえば以前、雪音が車から降りた瞬間に後ろから猫さんが付いて来てた時があって、めちゃめちゃ可愛かった覚えがあるんだけど...。


 あの時雪音は気付いてなかったけど、今でもあの写真とっておけば良かったなぁってちょっと後悔してる。


美紗(私の顔見た瞬間逃げちゃったけど、

   猫さんが付いて来てる雪音、本当に

   可愛かったなぁ...///本人には悪い

けど...)


雪音「ところで、杏里さんはトキソプラズマという感染症を

   ご存知でしょうか?」


美紗(トキソプラズマ...?...名前から考えると

   身体の一部に摩擦によって、電流が起こ

   る...。みたいな感じだったりして...)


美紗「電流でも走る菌?」


雪音「....」


 雪音は呆れたような顔をしながら、ふぅっと溜め息をつく


 多分違うかなとは思ったけど、やっぱ違ったみたい。...まぁそれは兎も角、


...愁いを帯びた雪音の顔も素敵だった。


雪音「...猫が食べた寄生虫の付いた鼠から感染する病です。

   胎児ならば、最悪の場合死に至る事もある恐ろしい病気

   ですよ。」


雪音「ワクチンもないので、大変危険

   度の高い病気とされています。」


美紗「飼い猫なら大丈夫って事?」


雪音「関係ないです!!彼等を舐めてはいけま

   せん!!以前、小梅さんが鼠を咥えてい

   たのを見た事が...彼等は狩人です!!」


 本当に猫が苦手って分かるほどに、雪音の顔色はまるでホラー映画を見終わった人のかのように曇っている。


美紗「...雪音、大丈夫?」


雪音「思い出したくもないですね...。何故、

   彼女は鼠や半殺しの蝉などを私に見せに

   来るのですか...。次は貴様の番だという

   見せしめでしょうか...?」


美紗「見てみて、捕ったって見せに来てる

だけなんじゃないかなぁ...。気に入った

   人には見せるってテレビで前やってたよ」


雪音「私は鼠や蝉などはいただきません...」


美紗「あ、あそこに猫ちゃん居るよ。

   雪音見てる」


 近くに魚が貰えるところがあるのか、じっとさっきから雪音の方を暑い眼差しで見ていた。


雪音「えっ、、」


 そういって私の腕を慌てて掴む雪音。


美紗「逃げちゃったけど...。」


雪音「猫は水が苦手なはずではなかったの

   ですか...何故水の集合体のような

   場所に集まって来ているのです

   か...、」


※スライド


美紗「もう近くに居ないから大丈夫

   だよ」


雪音「本当ですか...?」


美紗「私が見ると逃げちゃうし、大丈夫」


美紗(猫好きの私としては全然大丈夫じゃない

   けど...、、)


美紗「...えっと...だから、今回の

   事は見逃して欲しいかな、」


 腕にしがみついてるのに気付いた雪音は何事もなかったように腕をそのまま離した。


雪音「猫を追い払って下さって有り難う

   ございます...。今回はマフラーも

   無かったので...、」


美紗「誰だって苦手なものはあるもん

   ね、、」


と、スマホを持って立ち上がる、...そろそろパラソルを直しに行かないと...あのままだと流石に危ないもんね...。


美紗(って...あれ、真っ直ぐになってる...。)


 さっきまで今にも傾いて倒れてしまいそうなギリギリなラインだったパラソルはそんなもの始めから無かったかのように真っ直ぐになっていた。


美紗「私の雪音への強い思いが、パラソルを

   真っ直ぐにさせた...?」


雪音「杏里さんが怪我をなさってからでは遅い

   ですから。先程使いの者に任せておきました」


美紗「あ、そうだったんだ。...そっか、

   雪音が頼んでくれたんだね」


 上げた腰をおろして、ふぅっと溜め息をついて吸い込む。


 ...きっと溜め息は幸せが逃げていっちゃうから、


美紗「...でも、私が出来なかった事だから

   こういうのは私がちゃんとすべきだった

んだろうけど...。そっちの方が早いもん

   ね」


雪音「正直に申し上げますと貴女の行動は大変

   危なっかしく、拝見していると気が散っ

   てしまいますので...」


美紗「...雪音のそういうとこ、すごい好きだよ。」


美紗(危険な事はするなって、事前に行動して

   くれたんだよね...///)


雪音「...本当に、相変わらずですね。

   世間一般的にはこれらは煽る行為と

   考えても、差し支えはありませんよ」


雪音「貴女はこれらの言動に対しても、怒り

   を覚えていないように思います...」


 柚夏にもよく言われるけど、逆に何で悪い所を教えてくれる人に対して皆怒るんだろうって私はずっと不思議で仕方なかった...。


美紗「叱ってくれるっていうのは私の為を

   思ってだから、本当にどうでもいい人

   は注意してくれないって。昔お父さんが

   言ってた。」


 だってそれは恥をかかないように、必要とされる人間に近付けるって事だから...。


美紗(それに最近、幸せ過ぎて...。ちょっと

   不安もあるし...、なんだろう...。今の

   私って、本当に私なのか時々分からなく

   なってくる)


雪音「...それにしても、です。杏里さんのなさ

   っている行動は、本当に非効率である

   だけなはずにも関わらず...、」


雪音「そのような貴女の姿を眺めていたい。

   とも...同時に、...感じている私が

   居るというのも否定は出来ません。」


雪音「...杏里さんと関わってから本当に

   理解出来ない事が沢山増えたと、その

   ように感じる事が多くあります」


美紗「...そっか。私はちゃんと雪音の力になっ

   てあげられてるのかな。...あは、は

   だとしたらちょっと嬉しいかも」


 ずっと手探りで雪音に喜んで貰える事を捜してるけど、これが本当に正しいのかどうかは今の私には分からない。


 モデルの晴華さんや、何でも出来るボディーガードの麗夜さん。あの人達と比べたら私は失敗だらけだけど、


 私もいつかはあぁなれるかな...。


美紗「私一人じゃなくて、さっきのパラソル

   ね。柚夏と朝乃先輩も手伝ってくれた

   んだよ、私1人じゃ全然持ち上がらな

   くて」


美紗「あれをひとりで持っちゃう雪音の使い

   の人って本当に凄いなって思った。」


美紗「簡単にやってるように見えて、

   実際してみると凄い難しくて出来

   ない事って沢山あるよね。」


雪音「確かに今の時代は杏里さんの仰る

   通り、努力、知力、効率...。仕事に

   は様々な物が求められる時代で

   す」


雪音「勿論個人の実力も大切ですが、私は

   杏里さんには其方の方は全く期待

   していませんよ。」


美紗「...ダメダメでごめんね。いつか出来る

   ようになれるように私、頑張るか

   ら」


雪音「いいえ、そうではありません。私が申し

   上げたいのは人と同じになろうとするの

   ではなく、杏里さん。貴女には...」


雪音「貴女が思っているよりもずっと素晴

   らしい才能が貴女自身に備わって

   いるのではないでしょうか」


雪音「自分が無価値な原石だと思っていて

   は貴女はずっと無価値な

   石のままです。」


雪音「貴女と同じ瞳の色のアメジストは

   いくら塗装してもルビーには絶対に

   なりません。大切なのはどう原石と

   していかに『輝くか』です」


雪音「ルビーの原石では絶対にアメジスト

   にはなれませんからね」


 確かに雪音の言うとおり、自分が宝石を石としか見てればそれは宝石ではなくただのくすんだ石になっちゃうけど...、


...だとしたら?


美紗(...私の付加価値って、なんだろう。モデルの

   橘さんにもボディーガードの麗夜さん

   にもない。...私だけの。価値、かぁ...)


美紗「因みに、雪音は何の宝石なの?」


雪音「世界に一つしかない硬度を持った、

   ダイヤモンドです。色褪せるつもり

   などありません」


美紗「...私の彼女がイケメン過ぎて辛い///」


美紗(私の原石か何の原石なのかはまだ

   分からないけど、

   いつかそれが分かったら嬉しいな...)


奈実樹「...やっぱ、うまいね。朝ちゃん」


美紗「ん?」


 パチッと言う音が聞こえて、後ろを振り返ってみると朝乃先輩がドロドロの液体を手に付けて奈実樹さんの背中を触っていた。


美紗「あっ、オイルマッサージ?」


 奈実樹先輩は気持ち良さそうに目を閉じながら、無言で朝乃先輩に身体を任せている...。いいなぁ...気持ち良さそう。


朝乃「今は機嫌が良いから、たまにはこういう

   のもしないと鈍っちゃうのよね」


雪音「...オイル塗りですか、良いですね。」


朝乃「古池様が良かったらですが、終わったら、

   塗りましょうか?」


と、両手を奈実樹さんの背中に馴染ませていた朝乃先輩が汗をかきながら顔をあげる。雪音良いなぁ...。


雪音「お言葉に甘えさせて頂いても宜しい

   でしょうか?」


狛「なるほど...、小栗君の様子を見に来たの

   だけど、どうやら僕の出番のようだね」


小栗「自分で塗るから貴方の出番はないわ

   よ?」


奈実樹「そろそろ終わるし、塗ろか?」


小栗「良いかしら?」


狛「…冗談だろう?僕の小栗君胸さわり放題の    

  キャッキャウフフタイムは何処へ行った

  んだい?悪い事は言わない、僕に任せて

  大丈夫だよ」


小栗「狛は無理。」


狛「何故だい!?僕はこんなにも君の胸を

  思っているのに!?」


小栗「ごめんなさい…貴方の邪な思いには

   答えられないの…」


奈実樹「扱いうまあなっとるなぁ。」


小栗「お陰様でね…」


※キャプション


朝乃「....ふぅ」


 と額に汗を浮かべながら、雪音にマッサージをしていく朝乃先輩...。


 雪音の使いの人が直してくれたパラソルの下で、朝乃先輩がオイルをたっぷりと付けて雪音の身体をマッサージしてる。


美紗(かなり体力使うのか、奈実樹先輩の後

   と続いていてるのもあって、先輩

   かなり疲れてるみたいだけど...大丈夫

   かな?)


朝乃「....」


美紗「やっぱり、マッサージって結構体力とか

   使いますか?」


朝乃「んー...、私は専門家じゃないから、

   慣れてないってのもあるだろうけど。

   正直のところ結構腰に来るっちゃ来る

   かも...」


朝乃「...マッサージするって言っても、

   疲れた母さんにしてあげるくらい

   だからね」


朝乃「最初は私も母さんと同じように芸能人

   の人にマッサージしたいなって思って

   教えて貰ったんだけど」


朝乃「完全に母さんの趣味でしてあげてる

   みたいで、それが仕事じゃないって

   知ったときかなり驚愕を受けたっけ」


美紗「へぇ...、このマッサージってお母さん

   直伝(じきでん)ですね。凄い

   なぁ...」


朝乃「あはは...別にそうでもないよ、」


 そう言っている、朝乃先輩の顔は汗がぐっしょりと垂れていて汗が雪音に掛からないように何度かタオルで吹いていた。


美紗(でも朝乃先輩も疲れてるみたいだし...、

   かわりに代わってあげられないかな...?)


美紗「朝乃先輩も奈実樹さんの後で大変そう

   だから、私が朝乃先輩に教えて貰い

   ながら雪音にするっていうのはどう

   ですか?」


朝乃「えっ...、美紗ちゃんがしたいのなら

   全然私は構わないけど...」


 朝乃先輩がマッサージの手を止めるのと同時に目を閉じていた雪音の瞳が開き、こちらに向かう...。


雪音「触れるのですか?」


雪音「...私の身体に、...触れるおつもりなの

   でしょうか?」


美紗「...」


雪音「....」


美紗「...ど、どうぞ、ごゆっくりおくつろぎ

   下さいませ、...ゆ、雪音様」


 途中で止められたのが、少し不快だったのか雪音お嬢様のご機嫌を少しだけ損ねてしまったようだ...。


朝乃「あはは...、私は大丈夫だから...。古池様

にはいつも晴華さんがお世話になってる

 から何かしたいと思ってたし、もう少し

   頑張るよ」


 少しだけ休憩が出来た朝乃先輩はまた雪音のマッサージを再開し始める...。


雪音「....。」


 すると、まるでブラシをしてもらっている時の猫科動物のように雪音は普段見られないような満足気な表情でリラックスをしていた。


美紗(あは、は...邪魔されたくないくらい

   マッサージがよっぽど、気持ち良かった

   んだね...。)


美紗(雪音の普段のストレスってよくよく

   考えたらかなり過ごそうだもんね...。習い事とか生徒会の事とか...、)


美紗(折角の休みだし、...今はそっと

   しといてあげよう)


※スライド


美紗(暇だなぁ...、)


 とぼとぼと、テントの方に帰って行くと奈実樹先輩の側に白い小さな貝殻が円状に並べてあるのが見える。


 近くでよく見てみると、それがただ拾い集めただけの貝殻じゃなくて


 その貝が糸で繋げた小さな貝殻のブレスレッドだということに気が付いた。


美紗「...あれ?そのブレスレット、誰か

   朝付けてましたっけ?凄く可愛いです

   ね」


奈実樹「いや、さっき樹理が作ってくれて

    な。朝ちゃんがオイル塗ってる時に

    作ってくれたんよ」


美紗「作ったんです!?これを!?...こんな

   事、手作りで出来るんだ。へぇ...!!、

   樹理先輩っ、すごく器用だったんですね!」


樹理「文化祭で、そういう小物を作って

   売ってるんだよー。縫いぐるみとか、

   いらなくなった布で作ったり、ね」


美紗「文化祭!!初めてなので凄く楽しみ

   です!!どんな事するんだろう...」


美紗(でも。これだけ綺麗に作れる先輩の

   作品なら、きっと凄く人気なんだろう

   なぁ...)


樹理「美紗ちゃんは一年生だもんね、クラス

   と部活で主に活動するんだよ。綿飴と

   か、安くで沢山食べられたりするよ」


美紗「それは凄く楽しみですね!!えへへ、

   文化祭かぁ...///」


美紗「あ、でも奈実樹さんはこのブレスレット

   、腕に付けないんですか?折角こんなに

   可愛いのに...」


奈実樹「今、日焼け止めで手がベタベタや

    からね。それにさっきまで小栗はん

    を触っとったから貝殻で傷つけても

    あかんかったんよ」


 腕に塗り込んだ日焼け止めを手で広げながら、手のひらに伸ばしている奈実樹さん。日焼け止め対策は大事ですよね。


美紗「あ、だから此処に置いてたんですね」


奈実樹「そういう事やね。それに壊れやすい

    もんやからなぁ...後で預けに行こう

    思うとるよ」


奈実樹「折角、樹理に貰うたもんやしな」


奈実樹「...それにしても、小栗はんは綺麗な

    肌しとるね。これは雨宮はんが

    触りたくなるんもよう分かるわ」


小栗「もぉ、...恥ずかしいからよして頂戴///

 狛以外の人にまでそう言われると

   何だか、むずがゆいわ...///」


樹理「ナミは胸がやっぱり大きい人のが

   良いんだ、」


奈実樹「重いだけやからな...」


樹理「胸の大きい人はいつもそうやって

   いう!!」


と、うつ伏せだった小栗さんが手を付いて身体を起こすと谷間が強調されて...。これがEカップ...と何かに私は納得したのだった。


小栗「...?どうしたの?」


美紗「...いえ、...色気が。その、凄い

   なぁと...。私、胸そんなに無いですか

   ら」


小栗「えっ///!?」


と小栗さんは胸元に手を添えて、胸を隠すように手で覆う。...ところがどっこい、それが逆に胸を強調しちゃってやがるんだぜ...!!


小栗「...あ、貴女もそう思うの...///?」


と、警戒したように少し赤らんだ顔で私を見詰める小栗さん。...雨宮先輩の前だと平気なのに、他の人からは恥ずかしいのかな?


美紗「初めてみたときは大学生の人だと思って

   ましたし、あの...それに、凄く大人っぽ

   い人、だったから...」


小栗「それは嬉しいけれど...。...狛の冗談を

   周りから納得されると何とも言えない

   複雑な気分になるのよね...///」


と、照れたように目を閉じながら。顔を真っ赤にさせている小栗さん。小栗さんは話を反らすように奈実樹さんの腕を見ながら


小栗「さっき、狛もそれを見てどこかに行って

しまったのだけれど、貝殻でも取りに

   行ったのかしら///?」


と、小栗さんが話していると雨宮先輩が丁度戻ってきたようで...。


雨宮「ただいま、さっき樹理君が奈実樹君に

   貝殻を渡していただろう?」


雨宮「僕はそれを見て、うにをとってきたよ」


小栗「...いや、なんでよ。」


と冷静な突っ込みを入れる小栗さん。雨宮先輩って本当に面白い人だから、私好きだな...。お話聞いてても楽しいし。


奈実樹「はは、花より団子やね…」


狛「プライベートビーチだそうだから、食中毒

  の心配はないそうだよ」


 うにを何かの道具で割って子猫ちゃんも食べるかい?と狛先輩は黄色いうにを差し出してくる。


美紗「...うにって、美味しいんですか?

   食べたことなくって...」


美紗(うにって見た目が結構グロデスクだから

   食べた事なかったけど...美味しいのか

   な?)


 紙皿の上に乗った、黒と黄色の生き物。なんかちょっと動いてるけど...大丈夫かな?


狛「海にいるのは、安物の寿司屋の味よりも

  全く違うものだからね。騙されたと思っ

  て一口食べてみるといい」


狛「不味かったら、目の前で捨ててくれても

  僕は何も思わないよ?」


小栗「狛、最後のは要らないわ...。一年生の

   子もそんな事言ったら食べづらいじゃない...」


狛「けど、食べてるよ?」


小栗「...本人がそれで良いのなら良いの

   だけれど...。」


 先輩がそこまで言うのなら...、とあむっとスプーンで掬って食べてみると...


美紗「なにこれ...、口の中が、甘い...!!」


 口の中にまろやかな、それでいて濃厚な甘い液体が口の中に広がって...!!


狛「だろう?身が詰まっていて此処のうにや

  牡蠣は本当に美味しいんだよ」


美紗「こんなに美味しいなら、私とりに行こう

かな...」


美紗(丁度、暇してたし。もっと食べたい

   し...、うにって岩がいっぱいあると

   こにいたりするのかな...?)


奈実樹「生牡蠣なぁ...、」


美紗「どうしたんですか?」


樹理「牡蠣は調理関係者は基本的に生物は

   タブーなんだ...。食中毒はノー、

   danger(危険)だから」


奈実樹「充分加熱してへんものは、口には

    出来へんのや...けど、美味しそう

    やね」


樹理「でも...スープとか、揚げ物...とか

良いなぁ...。すごく美味しそうだもん...」


狛「だったら揚げるなり焼くなりすると

  良い。用意してくれそうな奴に心辺りが

  あるからね。」


樹理「え!?狛さん、本当!?だったら、

   私も美紗ちゃんと一緒に拾いに行こう

   かなぁ...!!」


美紗「えっ?!樹理先輩も一緒に捜してくれる

   んですか!?わぁい!!行きましょう、

   行きましょう!!」


奈実樹「うちは次はマッサージに入るから。

    薄めには塗ったんやけど、このまま

    やとまだ日焼けるんよ。やから、

    もうちょい此処におるな」


小栗「なる程、さっきの子とは塗り方が

   違うのね?」


奈実樹「朝ちゃんのは朝ちゃんのお母はんが

    配合しとる特別なやつなんよ。うち

    のは市販のやつやからねぇ」


小栗「...へぇ、そうなのね」


狛「ふふ、丁度お腹がすくころには準備して

  おいてくれるだろうから泥船に乗ったつも

  りで待っててくれると嬉しいよ子猫ちゃん」


小栗「...それだとすぐに溶けて沈むわよ?」


※キャプション


雨宮「牡蠣を採るのなら、この道具達を使う

   と良いよ。一人分でも十分食べられる

   量はあるからね」


 トングやトンカチ、大きなヘラのような道具などを一式。雨宮先輩から受け取ると、先輩は深そうな海岸の方に向かって背中を向けて歩いて行く。


雨宮「あとそれ、一応あのお嬢さんから

   借りてきたものだから、返すなら僕

   じゃなくてそっちに宜しくお願いするよ」


美紗「はーい、ありがとうございます!」


 雨宮先輩は向こう側に歩きながら、返事をするように片手をあげて去っていった。


美紗「道具も借りれましたし、これで準備万端

   ですね!さっそく、取りにいきます?」


樹理「うん!、これだけ道具が揃ってたら

   簡単に採る事が出来ると思うな!!」


小栗「あ、ちょっと待って。スマホは海水に

   落としては困るでしょう?此処に置いて

   おくと良いわ」


奈実樹「うちも見とるし、安心してえぇよ」


美紗「あっ!!、確かに。海に落としちゃった

   ら雪音と連絡も取れなくなっちゃいます

   もんね」


美紗「危なかったです...、、」


樹理「それにいくら防水とはいえ、壊れ

   ちゃったら、ナミとの画像とか全部

   台無しになっちゃうもんね...」


朝乃「バックアップとかとっておくと

   良いよ」


美紗(...海に落としたから。...なんて、理由で

   雪音がまたメール教えてくれるとは絶対

   思えないし...)


美紗(...いや、...わりともしかして、仕方

   のない方ですね...って教えてくれたり

   するのかな...?)


美紗(ではまずは...足を舐めたら、考えま

しょうか。美紗さんがどうしても私と

繋がりを持ちたいという誠意をお見せ

下さい、とか...///)


樹理「美紗ちゃん?スマホ持って行くの?」


美紗「あ、いえ。普通に置いてきます、」


 樹理先輩と私はブルーシートの上にスマートフォンを置いて、雨宮先輩から借りた道具を両手に持ちながら海岸へと向かって行った。


※スライド


美紗「...でも。...こういうのって初めてだか

ら、どうしたら良いんだろう...」


 浜辺に来たのはいいけど、ウニ取りとか一回もしたこと無いんだよね...。プールにはよく行ってたから...泳げはするけど、んー。


樹理「実は私も実際、採った事はないん

   だけど...。ダディーと一緒に養殖場で収穫

   してるのは一度、体験したこと

   あるんだ」


美紗「牡蠣の体験をしている樹理先輩

   と一緒なら、いっぱい採れそうですね」


樹理「えへへ、だったら良いな。その時は

   岩にくっついてたから、岩場を捜して

   いけば...。良いと思うんだけど...」


美紗(あ、うに)


 流されないように注意して歩きながら(あと、うにも踏まないように)樹理先輩と岩場に行ってみると...。


 雨宮先輩が言っていた通り。沢山のうにや、牡蠣が岩の側に隠れるようにくっついてて、本当に此処は貝がいっぱい採れる所のようだった。


美紗「樹理先輩ー、みてください!いっぱい

   ありますよ!!」


樹理「Wow、流石プライベートビーチ、だね。

   養殖場より、大きい牡蠣がいっぱいだ

よぉ...。養殖場もビックリだね!」


 うにを樹理先輩と一緒に沢山取って、ガンガゼとうにの違いを教えて貰ったり、牡蠣を沢山拾ったり。


 先輩とお話しながら採っているといつの間にやら、網の中が随分重くなってしまっているのに気付いた。


美紗(手で持ってるのが重くなってきたから、

   海に浮かせてるけど...。まるで、ワン

   ちゃんを散歩させてるみたいで少し

   楽しいかも)


 ぷかぷかと浮かんでいる海栗と牡蠣を眺めながら、私は何故だか、少しだけ儚い気分になっていた。


美紗(...みゆ居るんだけどなぁ、何故か

   私には散歩させてくれないんだよね。)


樹理「それにしても、沢山採れたね」


美紗「そうですね、もう網もいっぱい

   になってきましたし...。これだけでも

   沢山食べれそうですね、早く皆で

   食べたいなぁ...」


樹理「うん、そうだね。私とナミは兎も角、

   皆には天然のうにや牡蠣を生で食べて

   欲しいもん」


美紗「一口だけでも、生で食べるのって

   駄目なんですか?」


美紗(やっぱり、お刺身と同じで焼いちゃうと

   味変わっちゃうのかなぁ...?)


樹理「天然物だから食中毒の危険もあまり

   ないと思うけど、ナミが食べないのに

   私だけ食べるなんて出来ないよ...」


樹理「それに、食中毒は一口食べただけでも

   当たっちゃうんだよね。それが

   食中毒の怖いところなんだよ、」


美紗「たった一口だけでも、駄目なんです

   ね...」


樹理「料理関係の仕事だとね、加熱してない

   物はどうしても不安になっちゃうんだ。」


美紗「あ。それだと、柚夏も駄目なのかな

   ...?」


樹理「っていう事は...?美紗ちゃんのフレンド

   さんも調理関係の事してるの?」


美紗「アルバイトがファミレスで、厨房で

   料理を作ってるそうですけど...あ、

   でも!柚夏の料理は本当に、それは

   絶品なんですよ!!」


 柚夏の作るお菓子を食べちゃうと、市販のお菓子じゃ物足りなくなっちゃうくらいに美味しいんだよね!!来週が楽しみだなぁ...。


美紗「幸せになっちゃう味ってこういう事

   なんだなぁ...って、柚夏のお菓子を

   食べると思うんですよねぇ...///」


樹理「んんぅ...甘党の美紗ちゃんもそこまで

   絶賛する味...是非食べてみたいな

   っ!!」


樹理「それにナミも凄い絶賛してたし...、

   洋食専門の私としては美紗ちゃんの

   フレンドさんは、ライバルって事

   かな?」


美紗「あっ、私も樹理先輩の作ったお菓子も

   是非食べてみたいです!!手作りの

   お菓子が沢山食べられるかも...///」


美紗「持ってくついでに、柚夏の方にも後で

   私から伝えておきますね」


樹理「OK、ホテル・ルシェルの名に掛け

   ても!!美紗ちゃんのお友達よりも

   凄いお菓子を作って見せちゃうから

   !!」


※キャプション

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る