第21章「楽しい勉強会、」【みさゆき】

※キャプション


雪音「英語だけではなく、全ての暗記問題

   において頭の中に留め続ける事の

   出来る暗記方法を美紗さんはご存知

   でしょうか?」


 約束通り授業が終わって、2人っきりの教室で机を寄せて私は雪音に勉強を教わっていた。


 ...訳ではなく、雪音は白いチョークを右手で持ちながら黒板の前に立って私に文法を教えていた。


美紗(うん、黒板のがよく見えるもん

   ね...。いやもう...何となく始まる前

   から察してたけど)


美紗(いやいや、雪音が折角教えてくれて

   るんだから我が儘言ってちゃ駄目

   だよね...っ!!)


美紗(というかもう私くらいのレベルに

   なると、雪音に勉強を教えて貰える

   って状況だけで点数上がるから、)


美紗「えっと、知らないです」


 それにしても、本当に授業を受けてるって感じだなぁ...それに英語の勉強っていうよりも、覚え方が本当に講座みたいな感じ


雪音「人は五感を使用して覚えると暗記

   しやすいとされています。」


雪音「覚え方の例題としまして、頭の中で

   思い付いた英単語をおしゃって

   下さい」


美紗「んー...英単語。...あ、そうだ。

   雪音これ、なんて読むの?」


 私は土曜日に橘さんに入れられたあの英語の書かれた紙を雪音に見せた。


雪音「...これは、どちらで?」


 紙に書かれた英語を見て、雪音の表情が少し真面目な物へと変わってく。何て書かれてたんだろ...?


美紗「どういう意味なの?」


雪音「Be carefulは『気を付けなさい』と

   いう意味です。」


雪音「...特徴のない綺麗な文字ですね、」


美紗「え?橘さんの文字じゃないの?」


雪音「晴華さんの文字はどちらかと言うと、

   丸文字ですから...。ですが...、この文字

   には見覚えがあります」


美紗「え...」


雪音「綺麗過ぎるのです。まるで、

   パソコンで書かれたかの様な文字...

   そのような字を書く人物に、」


雪音「一人だけ心辺りがあります。」


美紗「なんか、それだけ聞いてると殺害予告

   っぽい感じするんだけど...」


雪音「...殺されはしないかと、思います」


美紗「物騒!!」


雪音「ですが、これで英単語の方は理解

   出来ましたね。晴華さんが側に居る

   限り彼女も簡単には手出し出来ない

   はずなので」


雪音「貴女に危害はないかと思います

   よ。因みに暗記方法の話に戻らせて

   頂きますと」


美紗「えぇ...、」


美紗(急に気を付けろって言われて

   も、何に気を付ければ...、)


雪音「彼女には私の方からも強く申して

   おきますから。今はテストの事のみ

   集中して下さいね」


美紗「...う、うん」


美紗(...といっても、そんな事言われたら

   気にならざる負えないし...)


美紗(雪音と橘さんの話からすると、麗夜さん

って人が私にとって、かなり危険って

  事なんだよね...?)


美紗(...そんなに怖い人なのかな、)


美紗(そもそも会ったこともないし...。)


 でも、麗夜さんは学校には来ないって話みたいだし...。


 橘さんの目が黒い内は大丈夫だって雪音も言ってるし...そこまで深く考える必要もないのかな?


美紗(...今はそれより、雪音に勉強を教わってる

  幸せを少しでも噛み締めよう、)


雪音「Be carefulを例にしてましょう。

   まずはカタカナでビーケアフルと

   書いてみて下さい」


 雪音に言われた通り、カタカナでビーケアフルとノートに書いてみる。


雪音「カタカナをご覧になって、何か思い

   浮かびませんでしたか?」


美紗「ビーは蜂、ケアする...フルで完全に?」


雪音「蜂が注意をしなかった事で怪我を

   したという覚え方にしてましょう」


雪音「そのイメージを頭の中で想像しながら、

   簡単に絵で描いてみて下さい」


雪音「Be carefulと口ずさみながら絵の

   イメージを考えていきます。」


 ビーケアフルと口ずさみ絵を考えながら、3分くらい掛けて蜂が怪我した絵が完成した。その上に小さくBe carefulと書く。


美紗「ビーケアフル、っと...」


雪音「慣れてきますと、文字を見ただけで

   その絵がイメージされるようになり

   ますね。...見て、書き、喋り、聞く」


雪音「そうする事で、左右両方の脳を使う事

   が出来ます」


美紗「へぇ...確かに書くだけよりもこっちのが

   頭に入ってきそう。教えてくれて

   ありがと、雪音」


雪音「この方法では何度も無駄に書くよりも

   効率よく覚えられますよ」


美紗(柚夏さん、雪音に完全にディスられてる

  けど...まぁ。これなら仕方ないよね...)


 雪音は黒板に書いた文字を消そうと黒板消しを手で持つ。


美紗「あ、雪音。忘れないようにちょっと撮る

   から黒板消すの待って」


雪音「構いませんよ」


美紗(折角の記念だから、撮っておこう。)


 パシャっと雪音が書いた黒板に書かれた内容の写真と一緒にさり気なく、雪音が一緒に映った写真も撮った。


美紗「...そういえば。柚夏からお菓子

   貰ってたけど、雪音は甘いもの

   平気なの?」


 前、雪音は甘いもの食べないって奈実樹さんが言ってたから大丈夫なのかなって


 決して、苦手だったら貰おっかなとは思ってないからね?


雪音「そうですね...。私自身は苦手という

   訳ではないのですが、基本的に晴華

   さんとご一緒の際に頂いていますね」


 奈実樹さんのお話を聞いて、てっきり雪音はお菓子が苦手なんだと思ってたけど...。違うなら


美紗(...だったら、これがきっかけで雪音も

   柚夏の事見直してくれるかもしれないっ!!)


美紗(だって柚夏の作るお菓子は、世界一

   美味しいし...!!)


美紗「柚夏の作るお菓子は本当に美味しくて、

   濃厚なんだよ。」

 

 今朝食べたガドーショコラも最高だったけど、お昼のクッキーもこれまたバターの味がしっかり染み渡ってて...おっと、これ以上は涎が


美紗「雪音も食べたらきっと柚夏の事、

   絶対見直すよって言えるくらい。

   そのくらい本当に美味しいからっ!!」


雪音「なるほど...杏里さんがそれほど

   力説なさるほどに、芽月さんは料理が

   とてもお上手なのですね」


 雪音は深く考えるように目を閉じながら、そう答える。


美紗「うん、柚夏は料理の腕は本物だから。

   だから雪音にも一回食べて見て

   欲しいな」


 驚いたように雪音の目が少しだけ大きくなる。そして、雪音の手が首もとのマフラーに伸びた。


雪音「今すぐにですか?今日は晴華さんが

   モデルのお仕事でいらっしゃらないので

   すが、本当に良いのでしょうか...」


美紗「あ、でも何か急いでるんだったら無理

   につき合う必要ないよ?」


美紗「勉強方法ももう教えて貰ったし、そっち

   優先して」


美紗(雪音、1時間なら勉強教えるの良いよ

   って言ってたから)


雪音「いえ、急ぎではありません。ただ...

長ったらしくお教えするのは私の趣味

ではなかったというだけです」


美紗「...雪音は効率が良いのが好きなんだね、」


雪音「そうですね。麗夜さんを見ていると、

   そのようにどうしてもなってしまいます

   ね」


美紗「その、麗夜さんって言う人は確か

   雪音のボディーガードの人なんだっ

   け?」


雪音「本業は私の執事ですね。勿論、それだけ

   の強さを彼女は備えているのですが...」


美紗「執事さんなんだ」


(執事さんって事は麗夜さんってもしかして男性...?)


雪音「すみません。私、手を洗ってきます」


 雪音はチョークで汚れた手を洗いに教室を出てから、すぐに戻ってきた。


雪音「甘い匂いがしますね。」


 雪音はどちらかというと甘いものは嫌いじゃないみたい。...というか、どっちかというと凄い好きそうに見える。


美紗(...でも、なんであの時橘さんが和菓子

  食べてたんだろ。やっぱり、好み

  なのがばれると色々大変なのかな)


美紗(好きな物も人前で食べるのに気を

  使わなきゃいけないなんて)


 雪音の口の中にクッキーが入っていく


 最初の一口は本当に小さかったが、よっぽど気に入ったのか雪音は2口目で口の中に入れた。


美紗「どう?柚夏のクッキーは

   本当に美味し...」


 視界がグラッと急に揺れ、私は何が起きたのか分からず身体を支える。


 教室の床に寝転ぶような仰向けの姿勢、


 目の前には前髪で隠れて見えない雪音の顔、私の頭の中はもう真っ白だ。


美紗「ゆ...、雪音...////?!」


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