第18章「逸材の料理人、」【みさゆき】

美紗「あ、奈実樹さん」


美紗「おはようございます」


奈実樹「一昨日は樹理に付き合ってくれ

    はっておおきにな。お陰で樹理

    の方も大分元気になっとったよ」


柚夏「うわ…すごい美人…」


 柚夏はそんな奈実樹さんを見ながら口をぽかんと広げてる。


美紗(樹理さんが凄い目立ってるっていう

  のもあるけど)


美紗(奈実樹さんもよく見ると顔立ちが

   整ってて、凄い綺麗な人だよね。)


美紗(大人の色香っていうか。どんな時も

   余裕そうな感じとか)


美紗(性格がおおらかだから凄い話し

   やすいけど)


美紗(この学校美人な人多くない?...美術

   学校だからかな...)


奈実樹「ふふふ、上手やね」


 まるで着物を着ている時のように制服の裾を口元に当てて微笑む奈実樹さん。...なんというか、凄い大人の魅力を感じる。


美紗(樹理さんは奈実樹さんのこういう

  とこに不安を感じるのかな…?)


美紗「あれ? 奈実樹さん、今日は樹理先輩

   と一緒じゃないんですね」


柚夏「樹理って、この学校の副会長の?」


奈実樹「その認識であっとるよ。樹理なら

    今日は生徒会のお仕事やね」


美紗「そういえば雪音も昨日シーウェで

   生徒会があるって言ってました」


 樹理さんと話した後、くゆと話ながら晴華さんと雪音と3人でシーウェでグループ会話してたんだけど


美紗(そのとき朝から生徒会があるみたい

  な話しを雪音もしてたし)


奈実樹「樹理は美紗はんの事、特に気に

    入っとるからなぁ。今日はうち

    だけやけんど堪忍してな」


美紗「いえ!!奈実樹さんもお母さん

   みたいでなにか落ち着きますから。」


美紗「あっ、そうだ。それと私も柚夏

   にお菓子作ったんだよ!!」


柚夏「美紗が?」


 私が料理出来ないことを知ってる柚夏は驚いたように私に聞き直す


美紗「そこにいる奈実樹さんと樹理先輩

   から作り方を教わったんだ」


 柚夏がゆっくりと包みを開ける。すると、土曜日に作った白色の梅が顔を出した。


柚夏「可愛いけど…。これ、美紗が

   作ったの?…へぇ…凄いなぁ...。

   …後で写真撮ってもらっていい?」


 柚夏は梅の和菓子をとても気に入ってくれたようで。下から眺めるように、じっくりと和菓子を見てくれてる。


美紗「うん。いっぱい撮ってあるし、

   後で紙に印刷して渡すから。

   ほら、だから早く食べてみて、」


柚夏「急(せ)かすね、」


 柚夏はゆっくりと一口だけ和菓子をかじって口を開く。


 柚夏は甘いものが好きじゃないから、あんまり乗り気じゃないみたいだけど…、


美紗(事前に奈実樹さんに柚夏は甘過ぎるの

  苦手なんですって相談しておいたん

  だけど…大丈夫だよね…?)


柚夏「…あ、…しつこくない、優しい味

   だね。美味しい...。好みかも…」


美紗「でしょ?土曜日に頑張って作った

   んだ」


柚夏「和菓子ってあんの塊だからわりと

   甘いイメージがあったんだけど」


柚夏「…これなら、毎日でも食べたいな。」


 と、和菓子を少しずつ食べながら話す柚夏。柚夏が喜んでくれたみたいでほんと良かった。


奈実樹「素材の甘さを最大限に生かしとる

    からね。あと、会長さんも甘い

    ものは頂かんからなぁ」


美紗(…そういえば、あんまり気にして

  なかったけど。晴華さんが雪音の

  作った和菓子食べてたような...)


美紗「はぁぁぁぁぁぁ…けど、柚夏と

   仲直り出来てほんと良かったー…。

   柚夏すごい怒ってたから、

   どうしようか迷ったよ…」


柚夏「私もすごい大人気なかったって

   思ってるよ…。美紗まで離れて

   いったら嫌だったから」


柚夏「だから話しを聞いてくれて本当

   嬉しかったよ」


美紗「確かに雪音とは恋人になれたけど、

   だからって柚夏を蔑ろにするつもり

   はなかったよ。」


 でも柚夏とまたよりを取り戻せて良かった。ずっとこのまま話せないなんて、そんなの絶対に嫌だったから


奈実樹「ふふふ、うちはお邪魔みたい

    やね」


美紗「あ、待って下さい。良かったら

   奈実樹さんもガドーショコラどうぞ」


美紗「今回手伝ってもらったお礼です、

   ほんと美味しいんで、」


美紗(最後の一個だけど、奈実樹さんにも

  食べて欲しいし)


美紗(それに仲直りした今ならまた柚夏に

   お願いして作って貰えば良いもん

   ね。…お金払えばだけど)


奈実樹「えぇの? …最後の1つやよ?」


美紗「はい!! また柚夏が作ってくれます

   から!」


柚夏「それ結構材料費掛かってるから

   頻繁にはちょっと…。」


柚夏「…でも、私も是非食べて欲しい

   です。美紗も良いって言っていますし」


奈実樹「…では、お言葉に甘えさせて

    もろうて」


 最後の一つを奈実樹さんは手で摘まんで口の中に入れて、一度噛んでから


 味を確かめるように少したって、ゆっくりと噛み締める。


奈実樹「…。」


奈実樹「…なる程な、悪ぅない」


奈実樹「寧ろ大当たりの部類やな。」


柚夏「どうでしたか…?」


奈実樹「いんや、これ樹理に食べさせたら

    どんな顔するんやろ思うてな」


奈実樹「うちはわりと洋菓子が好きな方

    なんやけど、このガトーショコラ

    ほんま旨いわぁ...♥️」


奈実樹「…あんさん何者なん? これ、

    素人の味やないよ」


柚夏「えっと…普通に作ったのですが…、」


 やっぱり奈実樹さんも柚夏の作ったお菓子が凄い美味しく感じるんだ。


美紗(なんか、柚夏が私のために作って

  くれたお菓子が褒められてると、

  自分が褒められたみたいに嬉しいな~)


奈実樹「…これが普通なぁ、…才能って

    ほんまおもろいわぁ」


奈実樹「うちは両親が旅館を経営しとう

    てな。舌には少し自信があったん

    やけどな…ふふ、樹理が食べたら、

    嫉妬しそうな味やね。ごっそうさま」


柚夏「…えっと。旅館経営って、

   …もしかして朝乃先輩の従姉妹って…」


奈実樹「なんや朝乃ちゃんのお知り合い

    さんやったん?確かに朝乃ちゃんと

    うちは従姉妹の関係やで」


美紗(朝乃さんって確か前に橘さんが話して

  た…、ファンの人だっけ?)


奈実樹「…っと、お楽しみの時間は

    此処までやね。時間は 止まって

    はくれへんからなぁ、…ほな、

    さいならな?」


奈実樹「また会えたらえぇね。」


 奈実樹さんはそういって、上機嫌そうに微笑みながらそのまま3年生の教室へ向かっていった。


美紗「奈実樹さん、綺麗だよねー。和風

   美人みたいな感じ。…私もあんな風

   になれたらいいな」


 奈実樹さんと別れて、柚夏と一緒に教室に向かう。柚夏とこうして一緒に教室に入ってくのもなんか久々って感じ


美紗(柚夏学校来るの早いもんなー、)


柚夏「…美紗はそのままの方が私は

   好きだけどね」


美紗「柚夏、どうしたの? 今まで好きとか

   そんな事絶対に言わなかったのに」


美紗「…なんか、イケメンに磨き

   が掛かった感じだね。」


柚夏「…私一応女。…まぁ、ちょっと最近

   変な夢見てさ、」


柚夏「それから…もっと自分に素直に

   なっていきたいなって思ったんだよ」


美紗「そうなんだ。私も金曜日の夜にね。

   くゆと同じ夢を見たんだけど、夢に

   出てきた子がガドー☆ショコラって

   名前でね」


柚夏「へぇ…。ショコラ…?」


 いつもの柚夏なら、「そんなのただの夢だから」とか言いそうなのに今日はどうしたんだろ…? 


 柚夏もちょっとはお伽話の世界に興味を持ってくれるようになったのかな。


 いつもはつまらなそうに私の話を聞いてるんだけど、


 今がチャンスとばかりに私は夢で見たあの時の景色を柚夏に熱く、語る。


美紗「その子が魔法少女みたいな格好を

   してて…、」


 こうして、柚夏と無事仲直り出来た私はあの日不思議な夢の中で出逢った住人。ガトー☆ショコラのお話をしながら


 1年生の教室に向かって仲良く2人で一緒に廊下を歩いていくのでした。


※キャプション



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