芽月柚夏×静谷流雨【ゆずるうルート】

第一部「不思議な出会い」【ゆずるう】

【注意】※ゆずるうは苦痛にならない程度に筆者の空いた時間を用いて出来次第更新していきますので、宜しくお願いします。更新は《不定期》です。



第11話「新しい物語の始まり、」

→最後の選択肢にて

「柚夏の言葉も気になるなぁ...」

→芽月 柚夏 & 静谷 流雨 ルート 


ゆずるうルートから



※キャプション。


私の名前は芽月 柚夏(めづき ゆずか)。


…私は今、現在。とある少女に心が傾きかけていた…。この気持ちが恋心なるものなのかというと...


柚夏(...いや、それは違う。)


 美紗が古池さんに一目惚れしてるように私は別に"毎日好き好き"という感じではないから...。


柚夏「はぁ...。」


 ...まぁでも、多分こういうのが俗世に言う"恋"というものなのかなと思う。


 会うだけでドキドキしたり、手を握ったりとか...、...そういうの。


柚夏(...だったら、この気持ちは...?)


 胸に手を当て、深い溜め息をつく...。


柚夏(...美紗を馬鹿にするつもりはないけど

この世に"真実の愛"なんてものは存在しないっていうのはよく分かってる...。)


...人との関係なんて、"飽きてしまえば"それで終わりだ。


柚夏(...仮に愛というものがあったら、

   ...あの人も もっとまともな人生を

   歩めた筈(はず)...。)


 だから、これは...。"この気持ち"は...一体、何なのだろう...。


柚夏(...."慣れてる"はずなのに、)


 答えのない回答をただひたすらに求めているような...。


柚夏「...『変わらない関係』というものに憧れる

   気持ちがないとは言わないけど」


 けれど...それは"理想"で。此処は『現実』...この世に確かなものなんて、何一つありはしないのだから。


柚夏「...流雨の気持ちを踏みにじることは

   したくはないし、でもさ...、

   重なるんだよ。」


美紗「...うん」


 ...人に『恋』をするというのは一生を添い遂げる覚悟でなければいけない。それこそ、人を愛するという事。恋をする者の"義務"というものだろう。


 ...だが、そんな事は現実では不可能だ。


柚夏(私がどれだけ流雨の事を思っていても。)


柚夏「私が流雨を気にかける理由...。

   ...それはちゃんと分かってる。」


柚夏「....流雨は...るーちゃんに似てるから...。

   勘違いしてるんだよ...。"好きだって..."

   ただ、それだけなんだよ...」


  ...そう。たった、それだけの話だ。...きっとそう。私は人を『好きになっちゃいけない』、


 愛したって皆離れていくから。その悲しみがあるなら、最初から出会わなければ良かったなんて...。


.........。


けど、...なんでだろう。


柚夏(...どうして...、こんなに空しいんだろう...)


柚夏「...流雨はそう思って

   くれてなかったのかな...」


 彼女と私はただ、"そんな関係で"...ずっとそんな日が続くと思ってた...。


※キャプション


 学校の下駄箱の近くに近づくと、見慣れた水色の髪をした少女が此方に向かって早足で歩いて向かって来る。


 此処最近だったが、毎朝この小さな少女が登校するのを私は立ち止まって待っていた。...自分でも信じられないことに自ら進んで、だ。


柚夏(...流雨は...なんだか、見てて

  ...凄い癒される。"ほわほわする"

  というかなんというか...)


柚夏「...流雨、」


 名前を呼ばれた瞬間、私の声に反応して

少女はこちらに近寄ってくる。


 日本人形のように長い水色の髪 中学生にも間違われるような幼い容姿に無表情が特徴の彼女が静谷 流雨(しずたに るう)。...私の、....大切な人だ。


柚夏(いや、別に"恋人"とかではないん

   だけど)


柚夏「流雨、おはよう。」


 流雨とは身長差がかなりあるので、どうしても私が見上げる形になってしまうのだけれど...、


柚夏(...正直、上目目線の流雨はとてつも

   なく可愛い///)


...反則だ。可愛いの凶器だと思う...////


流雨「....ん。おは..」


 流雨は朝が弱い。そのためか、ぐしぐしと瞼をこすってる。


柚夏「眼を擦ると眼に悪いよ」


...そんな微笑ましい光景に思わず笑みがこぼれてしまう


 思わず流雨の頭を軽く撫でると無意識なのかは分からないけれど、うにーという感じの表情を見せるのだった。


そう、これが毎日見ていても

飽きない可愛さなのだ。


 それを私は凄く気に入っていた。ドハマリしていた。本当に。うん、すごく可愛い。癒しだ。


柚夏(...最初は流雨のこと先輩って知らなくて、普通に頭を撫でてたり

したけどきちんと確認すべきだったなぁ...。)


柚夏(結局、今でも嫌がられないから普通に

   撫でてしまっている訳だけれど...。)


柚夏「...っと、流雨の"お目当て"は

   こっちかな。」


ショルダーバックの中から、お弁当の入った水色の包みを流雨に渡す。...その瞬間。俯いていた流雨の顔が少し、上に上がった。


柚夏(うわ、可愛い...///、)


柚夏(...楽しみにしてくれてるって思っても

   良いのかな。まぁ、昨日の余りものが

   ほとんどなんだけど...。お金がね...。

   なくてね...。ごめんねー...)


 特に最近は流雨にあげる事を意識してお弁当を作っていて、残り物でも火を通すのは朝だったり、寝かせておいたり...。


少しでも流雨に美味しく食べて貰えるように工夫している。


柚夏(なんか子供にお弁当作ってるお母親さん

   みたいな気持ち...まぁこんな可愛い娘

   (こ)に作れるなら本望なんだけどね)


柚夏「今日の主食は照り焼きなんだけど、

   お肉にお酒を入れて」


柚夏「ギリギリまで口当たりのふわふわ加減を

   追及してみたんだよ。流雨の口に合う

   と良いけど...」


 今までは正直見た目とイメージがあんまり合わないから、そういうのを得意だと言うのは基本的に避けてた。


柚夏(...実際、周りに期待されることも

多いし、いつもは人の目線

   ばかり気にしてしまってるから...)


...でも、初めて流雨にお弁当を食べさせてあげたあの日。


 自分で作った料理を目の前で残さずに美味しいと言って食べて貰うというのは思っていたよりも


 その...、かなり嬉しいものだったという事に気づいた。だからこそ私は


柚夏(こうやって流雨にお弁当を食べて

   もらえることが...最近の楽しみに

   なってきてる...。)


流雨「...柚夏の料理、ほんと美味しい。

   毎日食べたい...」


柚夏(えっ、やだ 凄い嬉しい...)


柚夏「はは...。流雨が喜んで食べて

   くれるなら、早起きして作った甲斐があるよ。」


柚夏「...じゃぁ、そろそろ行こうか。」


 …こんな感じではあるけど、以前よりずっと流雨と随分仲良くなれた。


...と思う。...別に確証は無いけど まぁ、こういう日常も悪くは無いんだろう。今となってはそう思える自分が此処に居た



※回想シーン。黒画面



キーンコーンカーンコーン


 今日はバイトの先輩が用事があってバイトに行けない!!どうしよう!!、...とのことなので


 用事も部活もそして、お金もない私が先輩の代わりに急遽(きゅうきょ)出勤することになった。


柚夏(なにか言ってて悲しくなるから

深く考えるのはやめよう...。)


 ...今のバイト、好きだからシフトを入れるのは全然良いのだけど。...美紗を毎回一人で帰らすのもなんか悪い気がするんだよね...。


柚夏(バイトは私の都合みたいなものだし...。

  でも、美紗ってコミュニケーション力も

  あるし、一緒に帰る人居ないのかな?)


柚夏(他にも友達とか結構居そうだけど...。)


 先生の帰りのSTが終わり、すぐさま教科書をしまい込んでから 席を立ちあがった私は


 後ろの席にいるツインテールの少女に話し掛ける。


柚夏「美紗、さっきも言ったけど...」


美紗「分かってるよ。本当に柚夏はいつも

   お疲れ様だねぇ...まっじめー、

   また一人かぁ〜 寂しいなぁ..。」


 って言いながらまったく寂しさを感じない口調で話す美紗。本当に妹がいたらこんな感じだと思う


美紗「あー、でも一度で良いから古池さんと

   一緒に帰ってみたいなー」


柚夏「...はは、私のことは人事?」


 彼女は私の中学からの親友である杏里 美紗(あんりみさ)。温厚でマイペースなところもあるけど、


 無口で近寄り難いはずだった中学の頃の

私に話かけてくれた。心優しくて、それに勇気もある女の子だ。


柚夏(...あの頃は美紗に随分冷たくしちゃって

   たけど、美紗のお陰で大分私も

   明るくなれた気がする。)


柚夏(...調子に乗りそうだから、本人には

   絶対言わないけど)


美紗「んー。どっちかと言うと"柚夏事"?」


柚夏「...そっか。...残念だけど、今週はお菓子

   なしの方向でいこっか今月ピンチ

   なんだよね...。」


美紗「ちょ?!それは卑怯じゃないかな?!

   私柚夏の作ったお菓子すっごい楽しみに

   してるんだけど?!」


 美紗は焦った様子で眼の色を変えて、椅子から立ち上る。


美紗「柚夏ごめんっ!!調子乗ってました。

   バイト忙しいもんね!?柚夏って

   いっつも頑張ってて凄いなって

   思ってるから!!」


美紗「すみませんでした!!どうか、

   お慈悲を!!柚夏様!!!

   考え事してました」


机の上でへへー、と畏まって頭を下げる美紗。


 ...それにしても、この子はプライドという物がないのか


 砂糖は白い麻薬と呼ばれるって聞くけど、美紗のこの様子を見るとあながち間違いではなさそうな気はする。


柚夏(...けど、砂糖ってあんまり身体に良く

   ないって聞くし、炭水化物は必要最低限の

   摂取で十分だと思うけど...。)


 ...まぁ、でも市販のものをずっと食べるよりましなのだろうか。特に糖分が


柚夏「早くしないと遅刻するから、じゃ!!」


 そう言って美紗に手を軽く振ってから、廊下を出て即座に早歩きをする。下駄箱を出てから

全力で走る。...それがバイトがある日のいつもの日課だ。


 体力も尽くし、早く自宅に着いて洗濯物やら 何やら片付けしないといけないし。帰るのが早いに越したことは無い


柚夏「....。」


 廊下で早歩きしながら家に帰って何をするか考えていると、急に後ろから大きな声が聞こえてきた。

※自転車の時と電車の時がある


美紗「お菓子ーーー!!!」


 息を荒げながら、お菓子をくれと叫ぶ美紗の姿に思わず私は笑ってしまう。


...本当に美紗は感情的な女の子で、昔見たアニメに出てくる女の子の主人公にそっくりだった


"私"とは違う


柚夏「ふっ、ははっ。...その為だけにわざわざ

此処まで走って来たの?美紗って正直で

   本当に面白い子だなって思うよ。」


柚夏「お菓子はまた今度ね」


...こういう日常的なやり取りって凄く新鮮に感じる。両親が離婚してから私の日常は一度大きく崩れてしまったけれど、


美紗「...ずーっと親友だよ?」


柚夏(私もあれだけ可愛げがあれば、お母さんも

   まだ死んでなかったのかな...。)


『あれだけ』明るければ、


 美紗が馬鹿みたいに毎日話し掛けてきてくれたお陰で 私はこうやって少しだけだけど変わることが出来た。前よりずっと前を向いて歩くことが出来る。


 「ずーっと親友」私があの言葉を忘れることはきっとこの先ないだろう。そう思ってる。そう、信じてる


 けど...いつかは、そんな言葉も色褪せて、儚く消えて無くなってしまうのだろうか


母親「""本当の愛""なんてないの...。貴女も

   そうなんでしょう?!だって、あの人

   の子だもの!!!今すぐ家から出て

   いってっ!!」


柚夏(...私個人の我侭かもしれないけど、

   美紗にはずっとこのままで居て

   欲しい。)


...美紗には本当にすごく感謝してる。


 だからこそ、『恩返し』とまでは言えないけど週に1度だけ美紗にお菓子を作ってあげているし


 美紗は友達として大事にしたいと今でも、本気でそう思っている。


 ...けど、"好きになる相手"は選んで欲しかった。


柚夏(私は美紗が古池さんと関わるのは

   反対で、美紗は古池さんに一目惚れ

  していて)


柚夏(私がそれを止める権利なんてないのは

   分かっている...。"不釣り合い"だって

   思うのも)

 

...分かってるけれど。...古池さんって告白する人を振っていく事で結構有名な人だ。...適わない恋だと、美紗に伝えるべきなのだろうか...


柚夏(..."あの子の夢を壊してまで"...?

   それにもし、それで...美紗に嫌われ

   でもしたら...?)


 美紗は、私の大事なたった一人の『親友』で...。少なくとも私はそう思っている。...だからこそ 本当の親友だからこそ。


柚夏(...自分の保身の為に、こんな事さえ

   言えないなんて...なんて、私は酷い

   人間なんだろう...。)


柚夏(こんな"自分"が嫌になってくる...。)


 下駄箱に到着してから上履きを入れた後、私は靴を即効で履き替え外に出た。ガラスのドアを開けると、むわっと湿気が押し寄せてくる...。


柚夏「うっわぁ..すごい湿気...。

   もう6月なんだなぁ...、

   ...洗濯物干さなくて正解。ん?」


 ふっ、と茶色のアスファルトの視界の端っこの方に水色のものが一瞬だけ目に映った。


柚夏(...なんだろう?)


 ...目を細めて焦点を合わせ、しばらく見ていると視界が定まりはじめる。


 その視界の先には...


 少し硬そうな茶色のアスファルトの上で少女が目を瞑って仰向けで寝ていた。


 そのお陰と言えるのだろうか。今まで考えてた嫌な自分や暗い気分がすべて吹き飛んだ。


柚夏(...あぁ、水色に見えたのは

   人の髪だったのか)


柚夏「...。…はぁっ?!って、人?!」


 思わず、二度見してしまう。...無表情で空の一点を見詰める少女。


 ...見間違いではないらしい。...確かにそこに、少女は居た。


柚夏(何してるんだろう...?)


流雨「....」


 水色の髪の少女がアスファルトの上で目を瞑って何か感じ取っている。


...それは別に全然良いと思う。


 少女が疲れてただ、寝ているだけかもしれない。それとも、お日様の光が心地良くて。昼寝でもしてしまったのだろう...。


などと普通の人なら考えると思う。


...でも、それは土砂振りの雨の日じゃなかったらの話だった。


柚夏「....まさか、死んで」


 ノイズで色あせた一フレームの光景が脳裏に映る


 その思考をかき消すために、急いで傘立てから真っ黒な傘を選び抜き少女の傍に全速力で駆け寄った。


柚夏「....はっ、はぁっ...。」


 ...そこに居たのは 仰向けに寝転び、全身を濡らしながら一人、...虚空を見詰める少女。


 ...ぱっと見、損傷らしきものはなさそう。ふぅっと胸を撫で下ろし、重くのしかかっていた緊張の糸がほどける。


柚夏「良かった、生きてた...」


 ...けれど、生きてると分かって冷静にこの状況を見ていると あまりにも異質な光景に思考が追いつかない。


 これをそう、人の言葉にするのなら"現実見がない。人間が決して触れてはいけない。幻想"


それに近いだろう感覚だった。


 ...もっと分かりやすく言うと突っ込みどころが多すぎて、頭から言葉が選べない状況なのに、


あまりにも不自然過ぎてそれがかえって自然に思えてくる錯覚が私に重くのしかかっていた。


柚夏(でも、芸術的にも思えるのが妙に...。)


 そうして、バイトの時間が押してるのも関わらず私は少女に...まるで引き寄せられるがごとく、近づいてしまった


※CG


 ...少女に近づいてみると、


 少女の髪は水しぶきの様に疎らで…そのまま地面に吸い込まれてしまいそうなくらい綺麗な髪がアスファルトの上に広がっている。


柚夏(...なんて思うなんて。私は知らない間に

   美紗に毒されてきたんだろう..?)


 少女は無表情に真っ直ぐと深い緑色の瞳で

黒い空をただ、おぼろげに見つめていた。


柚夏(...嘘でしょ?...)


 少女はこちらに気づいていないのか、はたまた興味が無いのか。足音がしても眼を閉じたままだ。


...まさか、こんな雨の中、本当に寝るつもりなのだろうか。


柚夏(流石にそれは無いだろうけど...

   このままだと、この子....。)


 周りを見るとすれ違い様にこっちを見てくる人は居るけど 少女に近づこうとする人は誰一人として居ない。


柚夏(..."触らぬ神に祟りなし"、って感じ

  なんだろうなぁ...。)


 現実というものは本当に非情だ。変な事に巻き込まれたくない、自分には関係ない。そんな言葉が次々と思い浮かぶ。


 ...けど、その気持ちも分からなくもなかった。


柚夏(...私だって巻き込まれたくない。けど

   見てしまったものは ...仕方ない、か。)


柚夏「…なにしてるの?」


 と私の声に反応して少女の眼がゆっくりと開く。


 ...良かった、とりあえず最悪の状況だけは避けられたみたいだ。


 面倒事に巻きこまれなくて良かったと思う反面、少しほっとする。死体なんてものは一生に一度見ればもう、充分だ


??「…雨。」


柚夏(いや、うん…そうだけど)


問いに答えた少女は静かに目を閉じる。


 ...何もかもが、異質。もう、何もかも分からなかった。なんなんだこれは


柚夏「寝るな、寝たら身体が冷える」


 ザァザァと黒い大きな傘が雨を弾く音が私の耳元で響く。


柚夏(...流石にこのまま放置はないだろう。

  私もそこまで外道じゃないけど...)


 ...美紗なら すぐ助けたんだろうな。


...それが私と彼女の決定的な違いだ。私は"普通"の人間で、誰かの特別になんかなれやしない


 それに、バイトの時間だって...。


柚夏「どうしようかな...。」


→A.バイトに間に合わないと困るから帰ろう。

→B.やっぱり、...ほっておけない。

  好感度10up



→A.バイトに間に合わないと困るから帰ろう。


 私は...やっぱり、美紗みたいにはなれない...。


 それにバイトの時間だってあるし、彼女も放っといて欲しいって感じだし...私が行かなくてもきっと誰かが助けてくれる。


柚夏(私には、関係ない...。)


 ...一歩、また一歩と少女から遠ざかっていく


柚夏(悪く思わないでね、私だってバイトが

   あるし...忙しいから...。多分誰か優しい

   人が拾ってくれる...。)


...面倒事から離れ去るように、私は歩く


柚夏(本当に...これで、良いのだろうか...?)


父親「私は、最初からこの人が好きだった

   んだ。お前が、どうしても

   結婚したいというから...」


 私は、あの親と同じように...。...見て見ぬふりをして、そして最後に人として....あの子を見なかった事にするのか?


 黒く染まる視界がフラッシュバックし、白い服を着た女性が無音の世界の中、


 この世の生から離れるように血相の悪い顔で白いベッドの上で静かに目を閉じてまるで時が止まったかのように...


そこに眠っていた。


柚夏「あーっ!!!、、くそッ!!!」


 ...私はすぐさま振り返り、走って少女の元へ駆け寄るのだった。




→B.やっぱり、...ほっておけない。



柚夏「…ほら、おいで」


??「……手。…?」


柚夏「このままだと…風邪引くでしょ。」


 私は少女に手を差し出すが、少女は興味がなさそうに


??「…別に良い。」


とだけ言った。


柚夏「君が良くても、私が、駄目なの。」


??「貴女がそうでも私に"そうなって"欲しい

  人はいると思う」


 か細い少女の右手を掴み、反動を使って無理やり引っ張って立たせる。


柚夏(何これ軽っ…?!それに冷たっ。)


 そして、そのまま急いで近くの雨よけのある武道館に走った


??「凄い強引...。」


...まるで、"死んでいるかのように"冷たい女の子の手。少女の手を握っていた私の手の温度がちょっとずつ彼女に奪われていく...


 この少女は何があって、どうしてこうなってしまったのだろうか...。


??「....」


 少女は無表情のまま無言で立っていた。ポタポタと濡れた少女から沢山の水滴が落ちている音が雨音と共にはっきりと聞こえてくる。


??「力、 ...強いんだね。」


柚夏「褒めてくれてるならありがとう」


??「私は体力ないから本当に凄いと思う」


柚夏「必要だったから勝手に体力が付いた

   だけだよ。」


柚夏「...確か、この辺りに。...あった、

   これ。」

  

 濡れた時用に持っていたタオルで少女を拭く...。


流雨「.....、」


 眼を閉じて動かない少女。少女の眉間には少しだけシワが寄っていた。嫌か。


??「……?」


柚夏(それにしても、ちっさいなぁ…捨てられた

仔猫みたいだ...っと、こんな事してたら

本気でバイトに遅刻する...。)


??「なんで...そこまでしてくれるの?」


柚夏「嫌な事があったのかな、って

   思ったから」


??「......。」


??「ありがとう。」


 少女はしばらくの間、濡れたタオルと私を交互に見詰めていた。


??「...タオル」


柚夏「バイトの時間も押してるから、

   あげるよ。...じゃぁね」


 と自分の傘を少女に押し付け、鞄を雨避けにして雨の中私は走ってく。...服が雨を吸い 身体が少しずつ重くなっていく。


??「....に、...人....。」


 家に帰ったら洗濯物を取り込まないと、制服も乾かして...。


あー...でも...


柚夏「...雨の中、濡れたのっていつぶり

   だっけ。」


 少女は何かを言いたそうにしていたが、その小さな言葉は大きな雨音によって打ち消されていった。


??「...本当に…お人好しな人…

   …知らない人なのに。...なんで?」 


??「...人に優しくしても、良いことなんて

   何もないのに」


※キャプション


柚夏(ちょっと寒いけど、まぁ風邪

   じゃないな。うん)


 次の日の朝、昨日出会った少女が下駄箱に居た。


 昨日とは違い、スラッと長く乾いた水色の髪。さらさらとした綺麗な髪は


 少女が小動物のようにキョロキョロとした動きをする度に動いている。


柚夏(濡れてないとここまで印象変わるもの

   なんだ...)


 少女はうろうろと落ち着きなく動いてたが、2回程私の顔をじーっと確認してから、勇気を振り絞って話しかけてきた。


柚夏(小動物みたい...、)


??「…昨日の人?」


 人の顔を覚えるのが苦手なのか、少女はちらっ、ちらっと私の顔を見つめる。


柚夏「.....、」


 そして、顔を斜めに傾げる。...まるで上目遣いの仔猫のみたいに。


柚夏(...可愛い。)


 少しして、不安になってきたのか少女の眉毛が下がり始める。別に助けてやったぞって誇示する気はなかったけど


 ...なんだか、忍びなくなってきたので返事をすることにした。


柚夏「...まぁ、ね。そのタオル、わざわざ

   返さなくても良かったのに」


??「…合ってた。…良かった…"声"も一緒。」


柚夏「声で人を判断してるの?」


??「…うん…人の顔見るの…

  あんまり好きじゃないから…」


柚夏「確かにじっと見られるのは嫌だよね」


柚夏「私、目付き悪いしなんか見てると

   ガン飛ばしてるみたいで。」


??「...別にそうでもない」


柚夏「そうかな。なんか ごめん、

ネガティブで」


柚夏(もっと気の効いたこと言えないのかな...、

   私。私の目付きが悪いとか...この子に

   関係ないでしょ...、、)


??「別に良い...。ただ私は"そうは思ってない"」


??「そもそも人の顔を見てないので...

  あなたがどうとかはない...。」


??「まぁ...、確かに『怖い』と言えばそうかも

  しれない。」


??「あなたがそう思うなら。」


柚夏「私の目怖い?」


??「別にそうでもない...」


柚夏(どっち)


 エメラルドグリーンの瞳で困ったように首を傾げてるのは可愛いけど


??「しゅっとしてる目も、それはそれで良いと

  思う」


柚夏(...私が目が怖いって言ったからか??、

   お世辞??それとも本当に良いと

   思ってる??)


??「...茶色の目綺麗だよね、」


柚夏(これは本当に"良い"と思ってるやつ)


??「…『返さなくても良い』…。このタオルは

  要らない...?…じゃあ、雑巾にすると良い…」


柚夏「……え?...んー?」


  返さなくても良い→柚夏(わたし)はタオルが要らない。→じゃあ、雑巾にしたらいい。ということ?


  ...んー、すごく分かりづらい。


柚夏(まるで子供を相手してるみたい...。

   いや、子供好きだけど)


??「…パレット拭きにも使える」


 少女は一人、納得したようにうんうんと首を頷く。...何でいちいちそんな可愛いのだろうか


柚夏「えーと…そのタオルが要らないって

   訳じゃなくて、君にあげたって訳で…」


柚夏(どうやったら上手く伝えられるんだろ...。

   言葉というものは どうも難しい...)


...私はどちらかというと理数系タイプだ。だから、そういうのは美紗と違って、どっちかと言うと少し苦手っていうか...。


柚夏(人からはよく、空気が読める人だなんて

  言われるけど...)


柚夏(それは、"私が気を使い続けてるから

   なぁ"...。...はぁ、この場合なんて

   説明するのが正しいんだろう...。)


柚夏(こんな時...美紗なら...)


美紗「あ、可愛いね。ありがとう」


柚夏(言えるか、、こんな顔で言ったら

   "犯罪者"だし)※可愛いのめっちゃ好き


??「…タオル。私に…あげた?」


柚夏(…えーと、これ私が可笑しいの...?)


柚夏「パレットに使いたいなら別に返さなくても

   良いよ」


柚夏(子供みたいで可愛いし。)


??「人と話すのは苦手…。タオルはあなたの

  じゃないの?人にあげていいの...?」


柚夏「別に君に対してタオルが欲しい

   卑しん坊とは思ってないよ。ただ私が

   使うより、あなたの方が大事に使って

   くれると思って」


??「....、」


 怖がらせないようにそっと頭を撫でる。怯えさせないように。というか、..ほんとにちっちゃいな。


柚夏「んー、私も言い方が悪かったのかも

   しれない。ごめん...」


??「…とにかく、返す..から..。…私に

  関わらないで…。」


柚夏「あっ…」


 とだけ言って。少女は私にタオルを押し付けて、走って行ってしまった。


柚夏(折角格好良くいったのに、関わらないで

   欲しいと言われてしまった...)


柚夏「変わった子だな…」


※キャプション

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