第13章「乙女心と揺れ心、」【みさゆき】


美紗(んー...、)


美紗(やっぱり...少し不格好に

   なっちゃった...。)


 出来上がった歪な里芋を見つめながら...お皿に筑前煮を盛り付ける。


美紗(絶対橘さんが切った方が綺麗

   なのになぁ...、なんで私にやらせる

   んだろ...、、)


 盛り付けの終わったお皿を橘さんがテーブルの上へと運んでいった


美紗「あぁ、すみません。それは私が

   食べるので私のとこに」


晴華「うん、分かったよー」


 筑前煮を運ぶ橘さんの後ろ姿をぼーっと眺める...。晴華さんは同じ同性でも本当に見取れるくらい美人なのだ。


 白兎のように長くて透明感のある白い髪に...髪が白いから真っ赤なルビー色の瞳が一際輝いて見える、


美紗(流石モデルさん...後ろ姿も綺麗ー、

   まぁ雪音の方が美人なんだけど...)


 でもあぁいう見た目の方が好きって人も多いんだろうなー...


 優しくて、思いやりがあって。自分から話し掛けてくれる...そんな人、


美紗(あんな生活続けてたら気が狂い

   そう、、お父さんもそうだった

   し...。私には無理だなぁ...)


美紗(橘さんは悪くないんだけどね...)


 昔から輪の中心に立って皆に好かれてる人より、どっちかというと誰も寄せ付けない...不思議な魅力のある美人な人の方が好きだった。


美紗(柚夏とかもそうだし...、だから

   話し掛けようと思ったんだよね。)


晴華「はい、ゆっきー♥️」


美紗「えっ!?、、」


 と、あろう事か歪な里芋の入った筑前煮の方のお皿を橘さんは座っている雪音の前に置く。


美紗「橘さん!?、それは私の分で...っ

   !!」


 急いで、橘さんの切った綺麗な里芋の方にしようとすると


雪音「...一度、置いた料理を頂かずに

   下げるのは失礼に当たりますよ。」


 と読んでいた本を置いて、雪音はそう澄ました顔でそう答える。


美紗(とても下げられる雰囲気

   じゃない...、、)


 それは例えるならまるで餌を目の前で下げられた飢えた雪豹を目の前にしているような、そんな感じ...。


美紗(別に飢えてないと思うけど、)


美紗「いや、だってそんな汚い形、

   雪音が食べるのに相応しくない

よ...、」


美紗「ほら、やっぱり綺麗な見た目の

   方が食べたいと思うし失敗した

   形のやつだから」


美紗(なんとか笑顔で誤魔化せない

   かなー...、、)

 

 綺麗なのに替えてあげるからって言ってももう譲る気はないんだろなーってゆうのが雪音の眼を見ても凄い分かる、、


 そんな瞳も堪らない。愛してる、、


 愛してるから替えさせてー...、、


美紗(晴華さん...、)


晴華「ごめんね、ゆっきーそういうの

   あんまり好きじゃないみたいで、」


 この人わざとやってるのか、それとも本当に雪音が好きじゃないって分かってやってるのか...


美紗(良い人だと思ったら急に邪魔して

   くるし、でも仲を引き裂きたいに

   しては...)


美紗(全然敵意を感じないんだよね...。

   いっそ邪魔してくれた方が分かり

   やすくて対処の仕様もあるん

   だけど...、)


 彼女の瞳を見ても、...うまく確信が持てない。明らかに場面的にはわざとだったんだけど...でも瞳の方は...


 むしろ少し罪悪感を感じてるぐらい...、


美紗(っていうか...、今はそれより

   雪音の方だ...うぅ、だから料理

   は好きじゃないって言った

   のに...)


美紗(形が可笑しいだけで味は別に

   そこまで変わらないよね?、煮崩れ

   してたら形も変わるし...、、)


 ....ガシャンッ!!※皿が割れる音。


??「「不味いッ!!お前は本当に俺の子

    か!?俺のガキなら、料理が絶対

    旨いはずだ!!」」


??「「グズグズするな!!さっさとしろ!!

   料理長である俺を待たせるなッ!!」」


美紗(....だから、、言ったのにな、)


 私の気持ちは雪音に届くはずもなく...、、私の切った里芋を口の中に入れる。


雪音「...」


 やがて、口の動きが止まり...そして、ゆっくりと雪音の口が開く


美紗(...どうしよう。...もし、不味いって

   言われたら、私、雪音の事...恐く

   ならないかな、折角恋人になれた

   のにっ、、)


雪音「...私は里芋は小さい方が好みです。」


美紗「...え?」


雪音「...人は人である以上、必ずミスを

   起こす生き物です。」


雪音「世に出回っている薬も何度も

   何度も統計を繰り返して」


雪音「その結果、今の形になりました。」


雪音「...失敗をしたくないのなら失敗

   を起こさない程成功させれば良い

   だけの話です、」


雪音「私の事が本当に好きでしたら。貴女

   が作る最も最高の物を私に食べ

   させて下さい」


美紗「...、」


...そんな事、初めて言われた。


美紗(私、雪音が絶対に不味いって言うと

   思うって...勝手に思い込んでたん

   だ...、)


美紗(お父さんにずっと怒鳴られてた

   から...、でもそんな風に思ってた私

   に気付いて)


美紗(橘さんはそうじゃないって教えて

   くれようとしてくれたのかな...、)


 雪音は、無言で筑前煮に箸を進める。


晴華「「ふふっ、その気持ち。忘れちゃ

   駄目だよー?」」


晴華「「なにがあっても、

         絶対に、ね。」」


美紗(雪音はそんな事言う人じゃない...、

   橘さんがさっき伝えようとしてた

   のはそういう事だったのかな、)


美紗(もっと雪音を信じられるように

   なりたい、物語に出てくる主人公

   みたいに優しい人なりたい...。)


美紗(もっと頑張らなくちゃ。)


美紗「...うん、...次は雪音に喜んで貰える

   ような見た目になるように頑張り

   ます。」


雪音「...期待していますよ。」

   

晴華「ほらほら、美紗ちゃんも筑前煮

   冷めない内に食べちゃおー?」


美紗「...、...はいっ!!」


 そう言ってお茶を注ぐと同時に橘さんは私の耳元に近付いた瞬間、小声で囁く。


晴華「...何があってもゆっきーを諦めたら

   駄目だよ、本当にゆっきーの事が

   好きなら」


晴華「私の言う言葉に絶対流されないで」


 誰も気付かない一瞬の隙、橘さんは笑顔で皆の湯飲みにお茶を注いでいる。


美紗「...本当に、そう...ですね」


美紗(...?)


 ポケットに何か違和感を感じて、見てみるといつの間に白い小さな折り紙が入っていた。


(Be careful)


美紗(...どうしよう、読めない。)


 凄い綺麗な文字だけど...、橘さんかな...?


美紗(びぃ...けあふる...?)


美紗(どういう意味なんだろ、)


縁蛇「筑前煮だけだと楽なんですが、何

   か物足りないですねー。」


代茂技「私は少食だから...こっちの方が

    良い、かな...?」


晴華「確か以前まではフルコースだった

   よね?」


縁蛇「食べ切れない人が多いからなのです

   よ。...つまらんーなのです!!、

   手応えが全くないのですよー!!」


 筑前煮を食べ終えた縁蛇さんが荒ぶってる、...こういうの最近の言葉でなんていうんだっけ。...モチベーションが高い人?


晴華「あー...確かにこの学校、お嬢様も

   多いもんねー」


美紗(ということは橘さんもお嬢様?

確かにこの学校、お洒落な人

   多いもんね...?)


代茂技「調理というより...アシェリー

    先輩とお話したい人の集まり

    なんじゃないですかー?」


美紗「...アシェリー?」


代茂技「その、愛称です...。ファンの方が

    そうやって呼んでて...」


 そういう代茂技さんはやっぱり縁蛇さんの方を向いてお話してる。


美紗「へぇ...アシェリー、かぁー...」


美紗(...なんか、英会話で出てきそう)


雪音「海外では親愛の念を込めて愛称を

   付ける事はよくありますよ。」


美紗「...そうなんだ。...あっ、そう言えば

   樹理先輩って何処の国の人なんだ   

   ろ。アメリカ?英語喋れるし...」


雪音「アメリカでなくとも実際英語でお話

   出来る方は多いです。ビジネスと

   して習得している方は多数いますよ」


美紗「...今、私の頭の悪さが浮きん出てる

   気がする」


雪音「美紗さんの読解力は一般の方よりも

   優れているとは思いますが」


美紗「現代文だけ良くても、嬉しくないよ

  ー...」


代茂技「...因みにアシェリー先輩は

    スウェーデンの方、...だそうです、」


代茂技「...ハーフの方でスウェーデン語と

    英語、日本語が話せるって...、、」


美紗「三カ国語...私日本語だけでも難しい

   のに...」


雪音「英語の学力テストはもうそろそろ

   ですが...」


美紗(これは雪音と勉強会が出来る絶好の

   チャンスなのでは...っ!!)


美紗「雪音、お願い...っ!!英語教えて!!」


美紗(雪音のお家行ってみたい!!いや、

   でも家でも嬉しい...!!)


雪音「...英語は私よりも、晴華さんや

   副会長の方の方が良ろしいかと」


美紗(完全に忘れてたけど!!雪音って

   そういう人だよねーーー

   ー!!)


美紗(感情が薄いって本人も言ってた

   もんねっ!!断られるより、クるも

   のあるなぁ...これ...、、)


晴華「あ、その日私お仕事入ちゃってるん

だよー...」


そう言って、横目でウインクする橘さん。


美紗(...た、橘さん...///)


 ずっと、小悪魔だったけど...今の橘さんは天使に見える...。見た目も丁度白いし...、


雪音「そうですか...では、副会長の方に

   私からお願い致しましょう」


晴華「もぅ、ゆっきー...このままだと

   美紗ちゃん泣いちゃうよ?」


美紗(...すみません、もう心の中では

   泣ちゃってます...。)


雪音「...何故ですか?英語圏の詳しい方の

   方が効率的です。教わるのであれ

   ば、プロの方の方がネイティブで

   覚えやすいですが...」


 そうして、午前の筑前煮作り体験は昼休憩を挟んで無事に終わったのでした。


※スライド


奈実樹「ほな、お時間が参りましたので

    午後の部の茶道の体験を始め

    ます」※方言


 お昼休憩が終わって、着物を着た奈実樹さんが奥から現れる


 奈実樹さんの普段のお淑やかなイメージが一層極まって、より京都美人らしい雅な雰囲気を醸し出していた。


美紗「わぁ...、着物だー...!!」


 奈実樹さんの着物姿を見て分かったけど奈実樹さんの場合、制服よりも着物姿の方が断然、似合う。


美紗「奈実樹さんって、落ち着きがある

   女性って感じがしてモテそう

   ですよね」


 なんというか、影で旦那を支えるお淑やかな女性って感じで憧れちゃう...、


 内面から滲み出る落ち着きのある女性に私もなれたらなぁ...。


奈実樹「ふふっ、そんな事あらへんよ。

    古臭い人より、今の子らは

    可愛いらしい樹理みたいな子のが

    人気なんやないかな」


 それはまるで普段無愛想な父親が自慢の娘を褒めている時のような、そんな穏やかな表情で奈実樹さんは答える。


美紗「あれ...?樹理さんは...?」


美紗(今の奈実樹さんの顔を樹理さんが見た

  ら、不安なんてすぐになくなるはずな

  のに...)


奈実樹「和室の中やよ。...これが終わった

    ら時間あるはずやから、樹理を

    励ましたってな」


奈実樹「うちはそういうの苦手やから

    他の子から言って貰えた方が

    樹理も喜ぶ思うし、」


 襖が閉まっている和室の目の前で、奈実樹さんは立ち止まる。


美紗「今の、..樹理さんに聞かせてあげな

   いんですか?」


奈実樹「...ふふっ、そういう子の方が

    うちは樹理に相応しい思う

    とるからな」


奈実樹「...あの子は...純粋過ぎるんよ。

    良い意味でも悪い意味でもな、」


奈実樹「うちには勿体無さ過ぎる。」


美紗「.....」


美紗(奈実樹さんも樹理さんの事、大好きな

  なのに...なんで自分から手を離す

  ような真似、するんだろ...)


※スライド



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