第7明「暗所恐怖症」【晴朝】


私が柚夏さんに謝ってすぐの事...。


朝乃(1年生の子が生徒会室の前で突っ立って

   待ってる...。書類持ってきたのに、どう

   しようかな)


朝乃("麗夜さん"の情報ももっと知りたいし...)


朝乃「...入ります?」


??「はえっ!?」


朝乃(雨宮さんと一緒に居た子だ)


??「...あ、...えーっと、」


朝乃(すごい目が泳いでる...)


??「...あ、いえッ...!!大丈夫です...!!

  何でもないですから...。

  ど、どうぞ!!私の事は気にせず、

  中に入って下さい...、」


??「...あっ、...と、それと...通行の邪魔

   しちゃって、...ごめんなさい」


朝乃「...あ、その...。何か...、...ごめんね」


??「いえ、こっちも悪いので...。

  ...本当に...気にしなくても、大丈夫

  ですから...」


朝乃(といっても気になる...)


 古池様に書類を渡して、ちょっと待ってくださいと1年生の子に話し掛ける


朝乃「...えっと、ごめんね」


??「...あ、...ごめんなさい。...二回も、」


朝乃「...えっと、...一人で生徒会室入りにくいと

  かなら...良かったら一緒に入りましょう

  か...?」


??「...いえ、...特にこれといった用事も...

   ないですから...。」


朝乃「...あー、と...芽月さんのお友達で

   大丈夫、なのかな...?」


??「...あ、はい。大丈夫です、...さっき、

  柚夏の事助けてくれた人ですよね。

  隣に居たから...」


??「...柚夏の事、助けてくれて

   ありがとうございます。」


朝乃「ううん...私がしたくてした事

   だから。...中に居るのは古池様

   だけだけど...、さっきまで一緒に

   居た、よね...?」


朝乃(ちょっと失敗しちゃったけど...)


??「...」


朝乃「...えっと、...もしかして...

   喧嘩とか...しちゃった?...とか?」


??「...うぅ、」


朝乃「えっ!?あっ、ご、ごめん!?

   ...ちょっと、無神経過ぎたかな

   っ!?...その...大丈夫...?」


??「...雪音を...、雪音を...怒らせ

   ちゃって...」


朝乃「え...?あの人を...?」


あんまり怒らなそうな人なのに。古池様も怒ることがあるのか


??「怖くて...、動けなくて...どうして

   良いか分からなくて...、」


朝乃「....」


朝乃「...怖くて、...仲直りする勇気が

出せない?」


そういう事ってあるわよね。


??「......。...幻滅、されちゃって...、

  また『お話出来ると良いですね』って...」


朝乃「『お話出来ると良いですね』

   かぁ...、」


朝乃「...んー、...それってもう関わら

  ないで欲しいって事...?でもあの

  古池様が本当にそんな事言うかな」


??「...嘘じゃ、...ないんです」


朝乃「えっと、そうじゃなくて...、何か

   それだけ聞いてると別に避けられ

   てる感じに見えないっていうか...」


朝乃「『お話出来ると良いですね』って、

   良い意味でも使うだろうし...、」


??「....え?」


朝乃「えっと...だから、お話出来ると良いです

   ねってまたお話しましょうって意味

なんじゃないかな...?」


??「先輩、ありがとうございますっ...!!

   先輩のお陰で目が覚めました、私!!」


朝乃(急に元気になったな...)


朝乃「え?う、うん...神のお友達が

   元気になったようで良かった?」


 一年生の子は私の手をガシッと掴んで、真剣な表情で私を見詰める。


??「先輩、良かったら私と海行きません

   か!?」


朝乃「えっ」


朝乃「凄い急...」


??「シーウェ、教えて下さい!!」


朝乃「あ...、はい」


朝乃(最近の一年生は当たりが強いなぁ...)


朝乃「古池様、喧嘩したんですか??」


と何処かに行った一年生を見ながら書類を渡す。


朝乃(美紗っていうのか、あの子...)


古池様「あぁ、その事ですか。彼女には

    少しお灸を据えた方がよろしいかと

    思いまして」


朝乃「古池様も怒る時があるのですね」


古池様「感情の起伏は薄めなのですがね。」


古池様「此方にも譲れないものがあると

    言いますか...」


朝乃(今は麗夜さんの事聞ける雰囲気

   じゃないなぁ...)


※キャプション


あれからあの一年生は無事、仲直りしたということで...


晴華「麗夜とはどうだった?」


朝乃「...なんか思ったより素直な人だなぁと思い

   ました。まだ常識はないですけど、」


朝乃「"知らない"だけでそれほど悪い人じゃ

   ないのかなって」


晴華「そうなんだ。朝乃ちゃんが麗夜を

   気に入ってくれて嬉しい」


朝乃(気に入ったとまではいかないけど...、

   晴華ちゃんが笑顔で嬉しい。)


晴華「私は会いたくても麗夜とは直接

   会えないから、感謝の気持ちも伝え

   られなくて...」


朝乃「私が言っておきましょうか」


晴華「良いの?、じゃぁお願いしちゃおう

   かなー」


朝乃「そこでなんですけど、」


朝乃「後輩に海に行こうって誘われたん

   ですけど、晴華さんも一緒に

   どうですか」


晴華「...えと、その日はどうしても外せない

   お仕事があって...。予定が合わなくて

   ごめんね...。」


朝乃(そ、そうよね...。晴華さんは今をときめく

   アイドル...私と違って忙しいか...)


朝乃「お仕事なら仕方ないですよ。」


と、体育の授業でバレーボールを仕舞おうとするとガチャンッと嫌な音がした


朝乃「えっ」


晴華「いやッ、、」


晴華「暗闇はほんとに駄目なの...ッ!!、、」


と彼女の怯えた声が聞こえる。


朝乃「晴華さんっ、、大丈夫ですか」


晴華「....。」


晴華「..."手を離せ"」


朝乃「え...」


朝乃「って、、手痛たたっ!!!、、どれだけ力

   あるの!!、、晴華さんッ、、」


晴華「"暗いな"。」


朝乃「ふぅ、ふぅ...、、危(あや)うく手が

   もげるとこだったわ」


朝乃「えっ、握手も駄目なの」


晴華「...はぁ こんなにも一人の人物と出会う

   とは何か因縁でもあるのか。」


晴華「貴様が知りたかった結果だ。...私は

   晴華と心が繋がってる」


晴華「まさか"入れ替わる瞬間"を見られる

   とはな...」


朝乃「入れ替わる...?」


晴華「忘れたのか。私は橘麗夜(たちはな 

   れいや)だ。さて、次はどんな状況で

   現れたか」


晴華「目が覚めたらこんなんだものな。」


朝乃「麗夜さん...??」


晴華「貴様が言ったんだろ。"二重人格"と」


朝乃「そうだけど、本当に二重人格の人が

   いるとは思わないじゃない、、」


朝乃「あと手めっちゃ痛かった!!」


麗夜「あれでも手加減した方だ。」


朝乃「というか、晴華さんは無事なの!?」


麗夜「安心しろ。」


麗夜「...残念ながら私は副人格だからな。少し

   の間しか現れない」


麗夜「主軸は"晴華"だ。お嬢様からはそう

   聞かされている」


朝乃「少ししか...」


朝乃「だから、時間が貴様より貴重

   だって言ってたのね。」


朝乃「最初からそう言えばいいのに」


麗夜「貴様が勝手にそう判断したんだろう」


朝乃「"貴様"じゃない。朝乃」


朝乃「友達で居たいならそう言いなさい」


麗夜「"朝乃"がそう理解したのだろう」


麗夜「めんどうだな...」


朝乃「文句言わない」


麗夜「..."晴華"は何か夜に対して深いトラウマが

   あるらしい。だから、晴華から無理矢理

   呼び出されたと言っても過言ではない」


麗夜「目が覚めたらいつもこんな状況だ。

   ストレスがたまるのも致し方ない

   だろう」


と壁に手を付けながら話す麗夜さん。


麗夜「眠ってる間は意識はないが 彼女は

   夢現(ゆめうつつ)病に掛かってる」


麗夜「起きたら変なとこで寝ていた、とかな」


朝乃「それってかなり重症じゃない」


麗夜「あいつが危険な時ばかり呼び出すから。

   仕方ないといえば仕方ないのだけどな」


麗夜「それより、ここは何処だ?」


朝乃「体育倉庫の中。先生に閉じ込められ

   たの」


麗夜「...貴様も大変だな。」


朝乃「晴華さんよりは大変じゃないわよ」


朝乃「でも貴女も大変よね...。暗闇に入るたびに

   意識が入れ替わるなんて」


麗夜「極稀に暗闇ではなくても、入れ替わる時

   もあるんだがな」


朝乃「へぇ、何か法則でもあるのかしら」


麗夜「そんなもの私が知るわけないだろう」


朝乃「自分の事なのに」


朝乃「...だから散々遅れた訳ね」


麗夜「散々待たせたというのなら "すまない"と

   だけ言っておこう」


麗夜「...私的には全然待たせてはいないの

   だがな。」


朝乃「そういう理由があるなら仕方ないわ。

   これからはそういう事はちゃんと

   説明して頂戴。」


麗夜「めんどうだな...」


朝乃「めんどうでもちゃんとしておくの。

   ほら、そしたら古池様だって「凄いわ

   麗夜」って褒めて下さるかも」


麗夜「それは本当か」


朝乃(話に食いついた、麗夜は"古池様"に

   弱いのね...。よく覚えておきましょ)


麗夜「ふむ。」


朝乃「それにしても、体育館に閉じ込められる

   なんて...本当にベタな展開あるのねぇ」


朝乃(というかちゃんと確認してから閉めて

   よね、先生...)


朝乃「でも学校に現れて大丈夫なの??」


麗夜「外で入れ替わった時は晴華のふりを

   してほしい、とお嬢様からはそう

   言われている」


麗夜「...晴華のふり、と言われても困るの

だがな」


麗夜「...私はお嬢様にとって切り札的存在。

幼い頃誘拐され掛けたため、

   万が一でも襲われた場合にすぐ対処

   出来るよう私の情報は伏せている」


朝乃「だから、"双子"として

   晴華さんは麗夜の事を扱っていたのね」


麗夜「これもお嬢様の為だ。私はお嬢様の

   ためなら命をも捧げられる」


麗夜「...そもそもないような命だからな」


朝乃(此処は話を詳しく聞くべきかしら)

→A.聞いておく

→B.聞かない※麗夜BADエンドが近付く



Aの場合

朝乃「ないような命...?」


麗夜「...私は崖から滑り落ちた所を椿様、」


麗夜「雪音お嬢様のお母様に助けて頂いた

   んだ」


麗夜「なんで一人でいるかも分からず、

   泣きながら泥まみれの状態で布団に

   くるまっていた事を思い出す...。」


麗夜「そんな泥に塗(まみ)れた

   見ず知らずの子を椿様は引き取って

   下さった。神様みたいなお方なのだ」


朝乃「想像以上に過酷な運命なんだけど」






麗夜「だからこの事はどうか内密にして

   おいて欲しい」


朝乃「別に良いけど...」


朝乃「それも酷い話よね...。」


麗夜「別に晴華の方が性格も良いし、貴様

   ...朝乃が困る必要はないだろう」


麗夜「どうして貴様が私を心配する」


朝乃「だって私なら嫌だもの。一人の人格が

   あるのに他人のフリをしなきゃいけない

   なんて」


麗夜「...別に外でだけだ。一人で対処する

   時はそのままだぞ」


朝乃「....。」


朝乃「あんたも大変なのね。」


麗夜「疲れたら晴華に戻るから安心すると

   良い」


麗夜「お前が会いたいのは"晴華の方"だろう」


麗夜「...今日は此処から出れば良いのか」


 あるのは格子のついた小さい小窓だけで、此処にいるだけでまるで閉じ込められている様な気分になる。


朝乃「貴女は男なの??女なの」


麗夜「胸があるから分かるだろう」


朝乃「一応聞いといた方が良いと思って。」


朝乃「でも貴女が居てくれて助かったわ。

   一人だったら多分冷静で居られ

   なかったから」


麗夜「貴様は晴華のファンだろう。晴華と

   入れ替わったのに私といると安心

   するのか」


朝乃「そうよ。人間ってそういうものなの」


朝乃「私達友達でしょ」


麗夜「友達...、」


麗夜「...理解出来ないな。私は面倒事を

   引き起こす種だぞ」


朝乃「私もそこまで鬼というわけでは無い

   ということよ」


朝乃「多分チャイムが鳴ったら戻ってこない

   って捜しにくると思うし、もう少し

   話をしましょう」


麗夜「あのぐらいの格子なら取れそうだが」


朝乃「握力強いわねぇ」


朝乃「取れたとしても備品を壊しちゃ駄目

   なのよ」


麗夜「...その事でお嬢様に叱られた事が何度か

   ある」


朝乃「不器用ねぇ。もっと上手くやんな

   さいよ」


麗夜「...私は腕力しか能が無いからな。

   場所は知識としてあるが、それの

   使い所がよく分からない」


朝乃「だったらこれから覚えていけば良い

   じゃない」


朝乃「そういえば晴華さんが貴女に感謝

   したいって言ってたわよ」


麗夜「感謝される筋合いもない。自分の

   したい事をただやっただけだ」


朝乃「そんな事言って。いつも助けられてる

   って言ってたわよ」


麗夜「疲れたから寝る。」


朝乃(暗くて顔がよく見えないのが残念だわ)


体育教師「おーい、橘達いるかー?」


朝乃「先生、、ちゃんと生徒入ってるか中身

   確認してから閉めて下さい」


体育教師「すまんすまん。2人がいないから

     って他の教師からも怒られたんだ」


体育教師「許してくれ」


朝乃「晴華さん、起きて下さい」


晴華「....、」


朝乃(晴華さん、麗夜さん。どっち)


晴華「...私また眠ってて、」


晴華「なんか、ごめんね。」


晴華「今起きるから」


と腰を上げる晴華さん。良かった無事で


晴華「ちょっと筋肉痛で...」


朝乃「ゆっくりで良いんで」


午後の授業が終わって晴華さんに呼び出される


晴華「ごめんね。私...極度の暗所恐怖症なの。

   暗いところがほんとに苦手で、、」


晴華「開いてる状態なら怖くないんだけど」


晴華「真っ暗になると...その、意識が

   遠のいちゃって」


晴華「...麗夜とは話せた?」


朝乃「えぇ。でも...ちょっとしかお話出来ない

   んですね」


朝乃(起きてる時間があれだけ少しだって

   言うのならもっと優しくしても

   良かったかもしれない...。)


晴華「私が寝てる間だもんね。」


ブブッ


朝乃「ん??」


古池様

『麗夜さんの秘密を知ってしまいましたね...?』


朝乃「え、こわ。呪いのメール??」


古池様『彼女が学校に通えない理由が

    正(まさ)しくそれです。』


古池様『知識という知識はあるのですが、

    倫理観などは"水平"とは言えない

    ようです』


古池様『ある程度の事は教えていますが、

    友人という立場で教わる事も

    あるでしょう』


晴華「授業が終わった後でゆっきーに

   報告しといたんだー」


朝乃(晴華さん古池さんのことゆっきーって

   呼ぶんだ。可愛い...)


古池様『彼女は二重人格のため、本当の意味で

    友達という友達が出来ません。』


古池様『晴華さんとも是非仲良くしてあげて

    下さい。』


※キャプション

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