第二十八部「雨宮先輩の本気」【ゆずるう】

柚夏(これは、まずい...)


 土日を挟んだというに、テストの結果は散々だった。覚えたはずの単語が一切出てこない。


 ひねり出してなんとか問題を思い出す事は出来たけど...。なんだこれはというほど頭にモヤが掛かった状態だった


柚夏(...今日が暗記問題で良かった)


解答用紙を美紗から貰い、前に渡す。


美紗「柚夏...?」


テストが終わって、美紗が話しかけてくる。...けど、何(なん)も会話が思い付かない。人と話すのってこんなに難しかったっけ...


美紗「柚夏、来て」


と、美紗に手を引っ張られて身体が動く。


柚夏(...そうだ。私には美紗が居る...。流雨に

嫌われても、一人じゃない...)


 美紗に連れ出された先は、大きな白いベンチがある木の影だった。


美紗「ここはね、雪音と会った特別な場所。」


美紗「柚夏、どうしたの...?なんか今日は

   変だよ」


柚夏「...何でもないよ。」


美紗「話したい事があれば話せば良い。私達の

   友情はそんなもので終わるの??」


美紗「...今の柚夏、凄い酷い顔してるよ?

   昨日夕飯食べた?」


柚夏「...ごめん、覚えてない。」


 昨日は寝れなくてずっと英文書いてた気がする...。お弁当も作る必要なくなったし、正直自分のご飯の事なんてどうでも良かった。


美紗「流雨さんと何かあったの...?」


”流雨”、その言葉を美紗の口から聞くだけでも

つらい。


柚夏「......あった、」


美紗「何があったの...?」


 美紗と少し目が合う、目の合った美紗は今まで見たこともないくらい真剣な顔をしていた...。


本気で心配してる人の目。あぁ、私はかつてこの目を見たことがある、お母さんだ...。


美紗(...そんな顔、始めてみた。...美紗は

   そんな顔も出来るんだね)


柚夏「...。」


美紗「...柚夏は流雨さんの事、好きだったの?」


 美紗の言った言葉の意味が一瞬、理解出来なかった。私と流雨は友達で恋人なんかじゃない...ただ一方的に私が好きなだけで


柚夏「...」


柚夏(...いや、違う。)


 美紗が古池さんに一目惚れしてるように私は別に恋い焦がれてるという感じではないから


好きだと認めたくない。だって、お母さんの結末を見て人を好きになる事なんて出来ないから。


 ...多分、あぁいうのが俗に言う恋というものなのだろうと思う。一緒に居るだけで笑顔になったり、手を握ったり...、...そういうの。


柚夏(私には今までそんな感情なかった。)


柚夏(...だから、この気持ちは...)


胸に手を当てて、深い溜め息をつく...。


柚夏(流雨の為にも隠し通さないといけ

   ない。流雨の事が好きなら尚更)


柚夏(本人が嫌がってるんだもん、

   やめなきゃ...。)


...人との関係なんて、飽きてしまえばそれで終わりだ。そう、私はそういう関係を何度も見てきた。噂で聞いたり 実の親だって...。


柚夏(...仮に本物の愛というものがあったら、

   ...母さんも...もっとまともな人生を

   歩めた筈なんだ...。母さん...、、)


 だから、これは...。この気持ちは...。一体、何なんだろう...。


柚夏(...胸が、張り裂けるように痛い)


 答えのない回答をただ、ひたすらに捜してるような...。


柚夏「...変わらない関係っていうものに、」


美紗「...」


柚夏「憧れる気持ちが一切ないとは言えない

   けど」


 でも...そんなのは理想で。此処は現実で。...この世に確かなものなんて、何一つありはしないのだから。


柚夏「...流雨の気持ちを踏みにじることだけは

   したくない、けどッ!!」


美紗「...うん」


 ...人に恋をするというのは一生を添い遂げる覚悟でなければいけない。それこそが、人を愛するという事。恋をする者の義務というものだろう。


...でも、そんな事は現実では不可能だ。


柚夏「流雨に友達じゃないって言われたんだ」


美紗「友達じゃない...」


柚夏「...流雨は...るーちゃんに似てるから...。

   だから、勘違いしてたんだよ...。」


柚夏「大好きだったっ、、捨てたくなんか

   なかった!!」


柚夏「流雨を人形(るーちゃん)と勘違い

   して、大好きだって...。ただ、それだけ

   だったんだ...」


柚夏「...急に怒鳴ってごめん、」


美紗「いや、良いよ」


 ...ただ、それだけの話だ。...きっとそう。そうに違いない ...そうであってほしい。いや、そうであるべき...なんだよ...。


こんな気持ちを流雨にぶつけちゃいけない.........。


けど、...なんでだろう。


柚夏(...少しだけ...空しい...、)


柚夏「...けど...流雨はそう思ってくれて

   なかったのかな...」


 彼女と私はただ、そんな関係で...そうでありたかった...。こんな感情を彼女にぶつけたくなかった、、


美紗「...そっか。」


柚夏「そっかって...」


 人が真剣に考えて話してるのに、そんなどうでもいいみたいな...。自分のそういう考え方も大嫌いだった


美紗「本当に柚夏は流雨さんの事、大好き

   なんだなって話してて分かったんだよ」


柚夏「...ただ、人形と重ねてるだけだよ」


美紗「流雨さんはなんで急に友達じゃないって

   言ったんだろ」


柚夏「そんなの分かんないよ...。」


美紗「今までそんな事言ってなかったのに

   縁を切るなら別にただ”うざいから”

   だけでいい。」


美紗「でも”友達じゃない”だけなら、なんで

   友達じゃなくなったんだろうって」


美紗「きっかけは例えそうだったとしても、

   好きって気持ちは本物でしょ?」


柚夏「永遠の愛なんてものは存在しないから。

   私は、ない物をあると言い張るなんて...

   出来ない」


美紗「でもその人形の事は今でも好きなんで

   しょ??」


柚夏「好きだよ」


美紗「捨てたのに好きだって、それって

   殆ど永遠に近い感情だと思うよ」


美紗「私にそういう感情はないから」


美紗「愛着とか、そういうの」


美紗「柚夏は、流雨さんがなんでそんな事を

   言ったのか知った方が良いよ」


美紗「そんな言葉だけで離れたくないなら

   後悔するなら、最後まで後悔して

   みるのも良いかもね」


美紗「私は雪音に直接聞いたよ」


 まるで白紙が正解とばかりの美紗の解答に、私はたじろぐ。


柚夏「でも、うざいって思われたら...」


美紗「別にうざいって思われても良いじゃん。

   むしろもっとうざがってみろって思う」


柚夏「えぇ...。」


美紗「どこがうざい?ってこれでもか、

   これでもか、、って私はそういう性格

   だよ」


美紗「それで好きになってくれたらやったぜ、

   みたいな達成感ない??難易度が難し

   ければ難しい程、楽しい」


美紗「永遠の愛がないなら作れば良いんだよ」


柚夏「...作れば良い??」


 美紗はリラックスしたように手を伸ばして伸びをする。私には全く無い発想。きっと周りから凄い愛されて生きてきたんだろうなぁ,..。


美紗「だって人だよ?喧嘩しない人なんて

   居ないし、私だって雪音を嫌いになった

   りする事だってあると思うし」


美紗「でもそれは”人間っていう”証拠だから」


柚夏「...好きだったら、...嫌いにならないん

   じゃないの?」


美紗「は〜っ、柚夏さんは乙女ですねー」


 物語好きで古池さんに一目惚れした人に言われたくはない。


柚夏「いつもイケメンイケメン言ってる美紗に

   言われたくないんだけど」


美紗「柚夏は真面目過ぎるんだよ。」


美紗「そうやって本当の気持ちを私じゃ

   なくて、流雨さんにぶつけてみなよ。」


美紗「流雨さんが呆れて、もう友達で良いわ

   っ、て思わせちゃうくらいに」


美紗「迷惑でもお節介でも。失敗したらまた

   上書きすれば良いんだよ成功するまで

   失敗じゃないから」


雨宮先輩「君はこんな所で何してるんだッ!!」


と雨宮先輩と目があった瞬間、雨宮先輩が凄い勢いでいきなり胸ぐらを掴み掛かってくる。


なんか前もこんな事あったな...立場は逆だけど


雨宮先輩「君は何をやっているっ!!僕の欲し

     かった物を全部持ってる癖に、

     ...僕を幻滅させるんじゃないッ!!」


雨宮先輩「君は命と引き換えにしても、

     大事な人を守って見せろ!!僕みたい

     になるな!!」


 ぞっとするような、まるで狂気じみた雨宮先輩の声に一瞬退く。


柚夏「...先輩?」


 雨宮先輩のただならない雰囲気に、何事かと身構える。


雨宮「流雨君が危ない」


※キャプション


雨宮「...」


 雨宮先輩は余計な体力を使わないよう目的地まで無言で走って案内所しようとしてたが、正直、私一人の方がもっと早く走れるだろう。


柚夏「何処、ですか」


雨宮「喋る暇があるなら早く足を動かす

   んだね」


柚夏「...私の方が貴男より、速い。

   そう言ってるんです」


雨宮先輩の足が止まる。雨宮先輩はただ目を閉じて


雨宮「2年、二階渡り廊下だ」


 とだけ言った。その言葉と同時に全力で私は走り出す。


...風が耳を切る音が聞こえる。少しずつ加速していき、余計な感情は全て消えていった。


※キャプション


柚夏「はっ、はっ...、」


 息が切れ、身体が酸素を求める。そんな当たり前の事を忘れるくらい 衝撃的な出来事が今まさに目の前で起こっていた。


「...流雨っ!!、、」


女生徒(じょせいと)に囲まれてる流雨。そのうちの一人が折り畳み傘を持って、流雨に振りかざす。


柚夏(間に合えッ...!!)


...鋭い痛みが腕に響いた。


 傘が右腕に食い込んで赤い血が滲み、ポタポタと熱い液体が腕から落ちていく。


柚夏「....ッ!!」


...息をするのも忘れて、私は無我夢中で流雨の前に腕を突き出していた。


学生「め、芽月、柚夏様...!!」


 すぐさま視線を流雨に向けると、不安そうな顔をした流雨が頭を抱えるような姿勢で太腿を床につけて怯えるような目で私を見ている。


柚夏「...怪我は?、...ッ」


 流石に、ステンレスで出来た物を腕に叩きつけられると骨に響く。...腕で受け身を取ったとはいえやはり痛いものは痛い。


流雨「...ゆ、柚夏...。」


 流雨の身体には小さな痣こそあったが、今のような重い攻撃はまだ受けてなかったようだ。


柚夏「...間に合って、良かった。」


柚夏(あぁ、”今度”は助けられた....、、)


 安堵したのと同時に、思い出したかのように身体が酸素を急速に欲求し始める。


柚夏「...はっ、...そりゃ、そうだ」


 私はすぐさま呼吸を落ち着かせて、女生徒に向かって立ち向かうのだった。


学生「なんで、あなたが...此処に...ッ」


 傘を持った女生徒は怯み、少しだけ足が後ろに下がっている。その後ろ足は微かに震えていた。


柚夏(...こいつ、...そんな勇気もない癖に

  こんな事をしたのか...。あとはさっき

  いた周りの奴ら...。...は皆、野次馬か)


 ...周りに付いている子達はどうやら流雨には敵意はなく、取り巻きのようだ。


 その証拠に傘で殴った人の近くに居た人達は恐れをなして距離を離しながらこっちを見ていた。


柚夏「...理由、」


学生「...ッ、本当、最悪。あんた仲間を

   呼んだの?独りで来いって言った

   じゃない」


 と私の腕を傘で叩き付けた女生徒は流雨に向かって怒鳴る。


柚夏「人が話してるときは話聞けよ...。

   それが礼儀っつーもんだろうが...、」


と、自分でもこんな声出せるんだと思えるくらいの怒りようだった。...その声に女生徒はたじろいだように此方を見る。


柚夏「...少し口が悪くなってしまって、

   すみません。ちょっと今とても

   機嫌が悪くて」


 雨宮先輩と会う前の私なら、一発拳でもお見舞いしてただろう。...けど今なら分かる。


柚夏(...怒りに任せて同じ事をしてるようじゃ、

  そんなのただの感情に任せて殴り掛かる

  野蛮な...獣でしかない。)


柚夏「流雨が貴女に何かしたのなら、謝ります」


...あの人なら、...こういうときなんて言うんだろう。


ふっ、と雨宮先輩の顔が思い浮かぶ。


雨宮先輩「...選択を間違えるな」


柚夏(...まさか。私が殴った結果がどうなるか、

  あの人は全部知ってて...。)


柚夏「...ですが...、これ以上、暴力で訴える

   ようなら」


柚夏「..."俺"は、暴力で停学処分になろうが

   あなたに手加減出来る自信がありません」


 ピリピリとした張り詰めた空気が廊下に響き渡る。...脅せるだけ脅して、この人が流雨を襲ったら私を思い出すくらいに...。


柚夏(それが今後に繋がっていくように、

   流雨は絶対死なせない)


柚夏「...だから、何があってこんな事を

   したか『答えろ』と...言ってるんです」


女生徒「ゆ...柚夏様が、静谷さんを好きに

    なったってお伺いして...藤奈さんが...」


 後ろに下がっていた女生徒が前に出て、震えた声で話す。...なるほど、私が流雨を好きなのを利用して仲間を集めたのか。


柚夏(...ん?)


女生徒「柚夏様...私達を嫌わないで下さい...。

    私達は柚夏様と少しでもお関わりに

    なりたくて...」


柚夏(...んん?)


女生徒「そしたら、静谷さんばかりずるいって

    人達が集まって...。私は藤菜さんが

    こんな事する方だとは思っていません

    でした!!」


女生徒「少し驚かして、...柚夏様に関わらない

    ようにって藤菜さんが...」


学生「なんで...、、」


 ずっと黙っていた、傘を振りかざした女生徒は、睨みつけるように怨んだ目で、突然大声で流雨を怒鳴りつけた。


学生「どうして、あんたばっかり幸せそう

   なのよ!!発達障害(うちゅうじん)

   なのに!!、、なんで私より、顔も人望

   もあるのよ!?」


学生「なんであんただけ、自分勝手で幸せ

   そうに生きてるのよ!!こいつは私を

   見捨てて、見て見ぬふりしたのに!!」


流雨「......。」


柚夏「"見て見ぬふり"...?」


 流雨は今にも泣き出しそうな顔で 口をつむる。そんな威圧的な態度じゃ、流雨は言いたい事も言い返せるはずなんてなかった。


学生「ほら見なさい、謝れもしないじゃない

そんな人間柚夏様には見合わないわ!!

 皆もそう思わない?」


柚夏「...だから、なんなんですか?」


柚夏「私の友人くらい私に選ばせて下さいよ」


柚夏(私の目的は流雨を守ることであって、

  仕返しする事じゃない)


柚夏「発達障害だからなんですか...?」


柚夏(発達障害がどういう病気かはまだ理解が

  及ばないけど、私は流雨の事は宇宙人

  なんて 一度たりとも思った事はない)


柚夏(...確かに流雨は普通の子とは少し違うの

  かもしれない。突拍子で、最初は何考えて

  るのかさえも分からなくって...)


柚夏(...流雨の言葉足らずで傷ついたりする事も

  あった。けど...!!)


柚夏「料理に点数を付けてたのだって、友達を

   大事にしろって言ったのだって私を貴女

   達から守るためだった。」


柚夏「私は女で流雨の事が好きだけど、好きな

   人の前で”好き”と言う...。それが病気

   だとでも?」


私は流雨を手繰り寄せ、唇にキスをした。


柚夏「...私は貴女方に人生を決め付けられる

   筋合いはない。」


学生「な、...女同士なんて...!!」


??「...それは、...杏里さんを恋人とする

  私への...宣戦布告。」


??「...そのように受け取って、

  宜しいのでしょうか...?」


柚夏「なんで古池さんが二年の教室に...、、」


生徒達「ふ、古池様...!!」


美紗「雨宮さんから話を聞いて、急いでメール

   で雪音に相談したんだ」


雨宮先輩「終わり良ければ全て良しと言える

     ほど、僕は甘くはないけどね」


雨宮先輩「...悔しいけど、中々格好良かった

     じゃないか。まぁ僕よりはまだまだ

     だけどね」


柚夏「美紗...、それに雨宮先輩も...」


雨宮先輩「たまたま情報通の子猫ちゃん達が

     流雨君の事を教えてくれたんだ。

     その子に感謝するんだね」


柚夏「ッ痛(つ)...!!」


 雨宮先輩は布で腕を固定してから、ぎゅっとキツくしめる。...この人、医療の知識もあったのか。


雪音「貴女のお名前は存じておりますよ。...ご両親が我が社に深く貢献なさっているようですね?」


 古池さんは私の前に向かって歩き出す。私はその間に流雨に手を差し出した。


流雨「...血、...私のせい...ごめっ、なさっ」


 顔いっぱいに涙を溜めて、流雨は自分にそんな資格はないとでも思ってるんだろう。ブンブンと首を振って視線を下に逸らす。


柚夏「"恐かったね"」


柚夏「...流雨、おいで」


 私は初めて流雨と会った時のように手を握って流雨を立たせてからお姫様抱っこで無理やり移動させる。


柚夏(右腕痛過ぎ...。...ははっ最後まで、

  格好付かないな...)


雪音「他の皆様方も...そう考えていらっしゃる

   先輩方がいらっしゃるのでしょうか?」


「め、滅相もございません!!」とクラスメイトは深々と頭を下げ始める。そして、顔を覚えられない内になのか


 皆蜘蛛の子を散らしたように走って逃げていった。


雪音「なるほど...顔を隠して去っていく。

   ...賢明なご判断ですね、私もそれでは

   覚えられません。」


 痛みに耐えかねて私は流雨を下ろす。...うーん、やっぱり片腕は...ちょっと無理だったか...。


雪音「貴女の言動、暴力...インターネットへ

   の書き込みなど...。流出させたら

   どうなるのか、私ったら...駄目な

   人間ですね...」


雪音「少しだけ気になってしまったようです。」


 彼女が味方になるとこれほど、心強いのか...。今まで古池さんの事、心がないお金持ちとしか思ってなかったのに...。


 結果として彼女は流雨と私を守ってくれていた...。


学生「なっ...そ、それだけは...」


学生「誰が裏切ったの!!」


と生徒に紛れて居たのか、犬の様な見た目をした女性が此方に向かって歩いてくる。


柚夏「朝乃先輩...?」


朝乃「...ネットサーフィンしてたらたまたま

   見付けちゃったんだ。あなたのサイト」


朝乃「...これこれ、愚痴や証拠品の録画」


朝乃「あんなセキュリティーガバいパスワード

   なんて...よく、暇つぶしに突破してる

   のよね...」


朝乃「お父様のパスワードにするくらい、

   ファザコンの藤菜さんのお父様に

   この事がバレたらどうなるか私も」


朝乃「興味がありますね。古池様」


学生「お願いやめて...」


ITの事はよくわからないけど...朝乃先輩が今の一部始終を録画してたみたいだ。先輩達も好機を狙ってたのかな...


柚夏(...こんな沢山の人が皆、流雨を助けて

  くれてる...最初は私一人でも戦うつもり

  だったのに)


柚夏(皆が流雨を守ってくれてる...。)


...証拠もこれだけあればもう流雨が苛められる事も無くなるだろう。


柚夏「......」


雨宮先輩「此処は彼女達に任せて、君は流雨君

     の不安を少しでも早く減らしに

     行ってきたらどうだい?」


柚夏「...貴男は。...素直に保健室に行って来い

   とは言うつもりはないんですね。」


雨宮先輩

「最近、耳が遠くてね。僕の耳は小栗君の胸の擦れる音を聞くので手いっぱいなんだ」


柚夏「...煩悩の塊ですね。...けど、色々...

   ありがとうございました。」


雨宮先輩「...なんの事だか」


雨宮先輩は照れたようにそっぽを向く。本当にこの人素直じゃないな...。


美紗「柚夏、腕大丈夫...?」


と美紗は心配した様子でついて来る。古池さんの有志を見れるチャンスなのに、私のところに付いて来る美紗に少しだけ優越感に浸る私がいた。


雨宮先輩「子猫ちゃん、君は知っているかい?」


 雨宮先輩は微笑みながら目を閉じて、美紗に声を掛ける。...雨宮先輩にとって美紗は子猫ちゃんなのか...。


雨宮先輩「保健室と言ったら夜の運動会をする

     所なんだ。恋人二人が保健室に

     行ったら、やることはたった一つ...」


美紗「えっ...///」


柚夏「はぁっ!?」


...何を言ってるんだこの人は。というか、美紗も何を反応してるの...。お母さんはそういうの教えた覚えはないんだけど。


雨宮先輩「...柚夏君のくんずほぐれずしたい

     気持ちを察してあげてやって

     くれないか子猫ちゃん」


美紗「...ご、ごめん...柚夏///」


 顔を赤らめて、目を逸らす美紗に本当に私がそんな事をする人だと思われてるのかが少し不安になった。


柚夏「先輩、この子冗談通じない子なんでやめてください」


流雨「...運動...会? ...昼に...夜の運動会...?」


柚夏(...流雨、違うんだよ。それはクイズじゃないんだよ...)


はぁぁぁ...とため息を尽きながら、私は痛む右腕を軽く抑えて保健室に向かったのだった。


※キャプション


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