第4品「末っ子は甘え上手」【なみじゅり】


 食料が痛みやすくなる湿気の蒸し暑い季節。そんな時は気分転換に朝乃ちゃん家に訪問するに限る。


奈実樹「お邪魔しまーす」


朝乃母「先生、此方でございます。お願い

    します。」


奈実樹「プラゴミはこっちで、燃えるゴミ。

これは...資源ゴミですね。資源ゴミは

    燃えない日に捨てたら駄目ですよ」


奈実樹「乾電池は燃えないゴミ」


朝乃母「お母さん...」


奈実樹「ちゃいます。と、これおとんの弟さん

    から残り物の惣菜です」


 私の家は今時珍しく旅館の経営をしていて、家が広いからかおとん(お父さん)の弟と一緒に暮らしとる。


 お婆ちゃんやお爺ちゃんは京都の老舗にいて、家族総出で東京に進出してきたっちゅーわけやな


朝乃母「これで野菜が摂れるわね。本当に

    助かるわ」


奈実樹「どんな生活してはるんですか、

    まったく」


奈実樹「冷蔵庫の中は大丈夫なんでしょうね」


朝乃母「その辺はまぁ、はい...」


奈実樹「消費期限切れとるやないか」


奈実樹「賞味期限ならともかく消費期限は

    お腹壊すてあれ程...、三日は完全に

    アウトですね。」


奈実樹「捨てるのは勿体無いので畑の肥料に

    します。」


朝乃母「あの人と全く同じ事を言うのね」


朝乃母「流石あの人と血の繋がった再従姉妹

   (はとこ)さん。ほんとにしっかり者

    だわ」


朝乃母「そろそろ私達もあの人の家に行くべき

    なのかしら」


奈実樹「そこはゆっくり考えて下さい。

    遊びに来る分には私達一同歓迎

    しますよ」


朝乃母「...ごめんなさいね。お父さんの弟って

    結構離れてるものねぇ」


朝乃母「いつも朝乃がお世話になって」


奈実樹「いえ、うちも朝ちゃんの事は好き

    ですし。姉はんがいつもお世話に

    なってます」


朝乃母「あぁ、幹白さんのところの会社、

    服のクオリティが高いから早いうち

    から個人契約が取れて最高だったわ」


朝乃母「今となってはブランド物だものね。」


朝乃母「こういう繋がりって大事よね」


奈実樹「それもそうですけど、ゴミ出し

    早く覚えて下さい」


朝乃母「はい...」


※スライド


奈実樹「様子見に来たで〜」


奈実樹「"様子見"という名のゴミ掃除。」


奈実樹「...相変わらず、凄い部屋やな」


 というのも朝ちゃんはモデルの晴華ちゃんが大好きでグッズを揃えまくっているのである。


雑誌は勿論、タペストリーやマグカップなど小物に至ってはとことん揃えとるらしい。これだけ人を好きになれるというのも幸せな事だと思う。


朝乃「わっ、、ナミ姉ぇ!!入ってくる

   時はあれ程ノックしてって言ってる

   じゃん」


奈実樹「まぁ。細かいこと気にするな」


奈実樹(朝ちゃんの標準語は勉強になる

    からな)


奈実樹(あと普通の人がどういう生活送っとる

    のかも分かる。旅館の生活が普通とは

    違うというのも分かっとるしな)


奈実樹「...相変わらずの散らかりよう。また

    寝転びながら本読んだろ、お菓子の

    カスが散らばっとるで」


朝乃「来ると分かってれば、掃除したのに」


奈実樹「笑わせるな。来るって分かってても

    どうせ掃除せーへんやろ」


奈実樹「朝ちゃんは掃除苦手やしな」


朝乃「掃除しなくても死ぬわけじゃないし...」


朝乃「あとは私がやるから、、」


奈実樹「...うちと朝乃ちゃんの仲やろ。

    どれだけ際(きわ)どい晴華ちゃんの

    グッズがあろうが、うちは気にせん

    から」


奈実樹「はよゴミ出せ」


奈実樹「そして食べろ(大量にあるお菓子

    の袋見て)」


奈実樹「ゴミ出しの日は決まってるんやで」


朝乃「もう、お仕掛けヤクザだよっ!!」


朝乃「私が気にするの!!」


奈実樹「思春期の男子かいな。」


奈実樹「...この晴華ちゃんのタペストリー可愛い

    やん」


朝乃「でしょ。最新モデルなの」


奈実樹「そういえば最近その晴華ちゃんが

    うちに転校して来た言うやん」


朝乃「.....」


奈実樹「もしかして、当たったか」


朝乃「そうなのっ、、でも全然話せなくて...」


奈実樹「青春やなぁ。ファンなのに当たる

    とか豪運以外のなんでもないやん」


朝乃「どうしたら良いかな。」


奈実樹「そりゃ気持ち悪いところ見せずに

    普通を装って話しか」


朝乃「気持ち悪いとか言わないでよ」


奈実樹「現実の晴華ちゃんとラジオの晴華

    ちゃんは違うからな。彼女も学校

    にいる時くらい普通の人として

    過ごしたいやろ」


朝乃「そうだけど...。それだと話し掛けられ

   ないじゃん」


奈実樹「...まぁ いつかチャンスが来るやろ。」


※スライド


幹白「奈実ちゃん。お帰り〜」


奈実樹「姉はん、帰って来とったんかいな」


奈実樹「ちょっと朝ちゃん家にゴミ捨てにな」


幹白「ついでだから?」


奈実樹「ついでやから。」


奈実樹「姉はんは今の仕事楽しいか」


幹白「...難しいけど、凄く楽しいよ。なんて

   たって自分で決めた職業だから」


奈実樹「"自分で決めた職業"なぁ...」


奈実樹「そうか、」


奈実樹「うちの場合なぁなぁで決まったから

    なぁ。」


奈実樹(...姉はんが継がんから、代わりに

    うちが継ぐことになった。別にその

    事に関しては文句はないけれど)


奈実樹("自分の夢"という物に憧れる。)


奈実樹「姉はんは昔から夢があったもんな」


奈実樹「お洋服売りたいって」


幹白「せやな。」


幹白「でも、奈実ちゃんに好きな事や

   やりたい事が終わったらいつでも

   帰ってくるつもりだよ」


幹白「今すぐに、とは無理だけどいつかは

   帰ってくるつもり」


幹白「それまでにどれくらい奈実ちゃんの

   料理が仕上がってるかな」


 料理の才能は姉はんの方が上で、接客も完璧と来たもんだ。それでも姉はんは服の業界に行った。


奈実樹(まぁ、やりたいこともなかったから

    別にえぇんやけどな...。)


幹白「じゃーん、また奈実ちゃんに似合うかな

   って新作作ってみたの」


奈実樹「おー、中々えぇやん」


 姉はんの作る新作は人気も高く、可愛い物が多い。背が高くてもナチュラルに着れる物は大変ありがたく たまに旅館で着るときもある。


幹白「デッサンも沢山あるから選んで選んで」


と若い女子高生のように二人でパンフレットを見ながら、あぁでもないこうでもないと二人で口論する。


奈実樹(結局、うちもこういうのが好き

    なんかな。一応女の子やからな...)


奈実樹「旅館で着れるのがえぇなぁ。」


幹白「奈実ちゃん胸出して寝とるやろ。

   その癖治るまではそういうのは...」


奈実樹「パジャマとして使える奴が良い」


幹白「といってまた着替えずに料理するやろ?」


奈実樹「幹ちゃんの作った服は皆可愛えぇ

    からな。ずっと着ときたいんやもん...」


奈実樹(これで許されるやろ...。)


幹白「そんな事言われたら、、作るしか

   ないやん、、」


奈実樹(なんか姉はんといると安心する

    なぁ...。というか...眠い...旅館は朝

    早いからなぁ)


※スライド


奈実樹母「本当に仲良いわね。貴女達、

     樹理ちゃんに嫉妬されても知らんで」


幹白「樹理ちゃん!!、あの碧眼美少女っ!!」


幹白「大人になった今なら何着ても似合い

   そう〜」


奈実樹「あんまり樹理に迷惑かけたるな」


奈実樹「樹理は玩具やないで」


幹白「分かってるけど、あんだけ可愛いモデル

   中々いないし...」


奈実樹「朝ちゃん家行ってきた」


奈実樹「おかんはこの仕事楽しいか」


奈実樹母「どうしたの急に」


幹白「それ私も聞かれた。」


奈実樹「ちょっと気になってな。うちって

    夢らしい夢ないやん」


奈実樹「だから二人が羨ましい思うてな...」


奈実樹母「勿論楽しいわよ。忙しいけど、

     色んな人の話が聞けるし」


奈実樹「おかんはこの店をお金を切ってまで

    買ったんやろ??どうしてそこまでして

    頑張るん」


奈実樹母「...先住の知恵ね。もともと鐘鏡家は

    旅館営業をしてて、こっちに移住

    したかったんよ」


奈実樹父「若気の至りってやつやな。」


奈実樹母「奈実ちゃんも歳を取れば分かるわ」


奈実樹母

「でも、これだけは忘れないで。」


奈実樹母「本当に自分が幸せだからこそ、

     本当の意味で人を幸せにする事が

     出来るの」


奈実樹母「幹白も私も。」


奈実樹母「旅館の仕事は辛い事も多いけど、

     それなりにやり甲斐がある仕事。」


奈実樹母「だから例え二人が店を継がなくても

     この店をやめるつもりはないわ」


奈実樹母「最後までやりきってみせる。

     だから、あなた達は安心して好きな

     仕事先を見つけなさい」


奈実樹「お母はん...」


※キャプション

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