第6章「私の妹は天の邪鬼?、」【みさゆき】



※キャプション


すっかり真っ暗になった空を見上げながら、マンションの鍵穴に鍵を差し込む。


美紗「....、」


ガチャッ


美紗「ただいまー...」


 ドアを開けたその先の階段でつり目の少女がわたしを見て立っているのが分かる。


美紗(やっぱ怒ってるかなぁ...、)


??「....遅かったね、姉さん。」


美紗「くゆ、....うん。ごめん」


くゆ「毎回謝る必要ないって言ってん

   じゃん」


くゆ「...冷や奴作っておいたから、

   ラップに包んであるよ」


美紗「くゆが作ってくれたの?」


くゆ「....そうだけど、ほぼ母さんだよ。

   ネギと生姜すりおろしただけ

   だから」


と、そそくさとくゆは自分の部屋に戻ってく。


??「美紗ちゃん、おかえりなさい」


 居間に移動して、鞄を机の端に置いて


 すると、ペットの黒い柴犬のミユが足元にすり寄ってキュンキュンと甘えるように顔をすり寄せてきた。


美紗「いつもそんな事してくれないの

   に、どうしたの、」


ミユ「ヴゥ"ー...」


美紗「あれ、さっきまでのご機嫌は

...?」


 ミユの頭をそっと撫でて、噛まれてると台所に立っているお母さんの方へ走っていってしまった。


母「美紗ちゃん、噛んじゃ駄目でしょ、」


 って、ミユの顔を見ながらほっぺをつまむお母さん。


むにむにのほっぺがぐにゅってなってて凄い可愛い


母「分かりましたか?」


ミユ「キュゥン、キュゥンッ」


 ミユはへっへっ、と満面の笑みでお母さんの顔を見ながらブンブンと引きちぎれんばかりに尻尾を振ってる。


美紗「それより...遅くなってごめん

   なさい...、」


母「謝らなくて良いのよ、...無事で

  良かった」


と抱き締めて頭を撫でてくれる...優しいお母さん。


美紗「...心配、しました...?」


母「...当然でしょ、美紗ちゃんはもう、

  私のもう一人の娘なんだから...。」


 ぎゅっと抱きしめられながら、目を閉じる。...温かくて、柔らかい。


美紗(...私、本当にこんな幸せで

   良いのかな、)


母「くゆったらね、美紗ちゃんの為に

  料理を作るんだって今日凄く張り

  切っててね」


母「だから美紗ちゃんが帰って来なくて

  ちょっと拗ねてるみたいなんだけ

  ど...、」


母「あんまり気にしないであげてね?」


母「さっきまで「お姉ちゃん、いつ帰って

  くる?」って心配でずっと階段で

  待ってたのよ。はい、美紗ちゃん」


 ダイニングテーブルの上にあった夕飯のラップを取って、頂きますと手を合わせる。


美紗「温かい...、」


美紗「私が来るまで温めてくれてたの...?」


美紗(...もう冷めててもおかしくないの

に)


母「家族なんだからそんなの当たり前

  じゃない」


美紗(家族なんだから当たり前...、か...)


 お父さんと暮らしてた時、お母さんが居る時は温めてくれてたけど...そうじゃなかった時は普通に冷めたまま食べてた。


美紗(叩かれないだけで、良いのに...)


 私にとってはずっとそっちの方が当たり前だったから


美紗「...ありがとうございます、」


 だから、ちゃんとお礼は言おうと思った。


美紗(...というか、普通に遅く帰ってきた

   のが申し訳ない...。私別にそんな事

   する程価値ある人間じゃない

   のにな...)


 才能に恵まれてる雪音や柚夏なら分かるけどただの女子高生の私がこんな待遇...受けてて良いのかな...、


美紗(...多分お母さんに言ったところで

   大丈夫だからって...帰ってくる

   のは分かってるけど)


美紗「もぉ...ミユ、駄目だよ」


くぅんくぅんと普段は出さない甘えた声でご飯をおねだりする黒柴のミユ。可愛いけど、人間の食べ物ばかりはね。体に悪いから


母「さっきご飯あげたばっかりなんだけど

  ね、ミユったら、もう本当に食いしん

  坊なんだから」


母「誰に似たのかしら?」


とお母さんはご飯を諦めたミユを優しく撫でてる。


美紗「くゆもご飯、作ってくれたの?」


と冷や奴を食べながら、手作りのハンバーグを摘まむ。


 ハンバーグを箸で切ると溶けたチーズがどろっと出てきて


その光景にテンションが上がる。


美紗「美味しい....、」


母「えぇ、喜んでくれるかなって凄い

  楽しみにしてたんだけど...。くゆ

  ったら、中々下に降りて来ないわね」


 台所からお茶碗を取り出して、お母さんは椅子に座る。


美紗「カップ麺食べた後に卵を入れて、

   レンチンすると美味しいんだって」


母親「今度やってみようかしら?」


 そんな何気ない会話をしながら、私は手に持ってたフォークを止めた。


美紗「えっと...私が帰って来なくても、

   先に食べてて下さい。」


美紗「私は大丈夫ですから、」


母「そんな事出来ないわ。...本当に美紗

  ちゃんは大事にしたいの、あの子と

  年齢も一緒なのは本当に奇跡を

  感じたから」


美紗「娘さんですか?」


母「えぇ、...事故でね。...生きていたら

  美紗ちゃんと同じ年。そして、名前

  が」


美紗「みさ、ですよね。」


美紗「...そのお話はママからお伺いして

   います」


母「...そう。あの子とくゆは本当に仲が

  悪くてね、喧嘩別れだったの...だから

  こそ、美紗ちゃんとは仲良く出来たら

  良いなって思ってるのよ」


くゆ「....。」


美紗「あ、くゆ。冷や奴美味しかったよ。

   御馳走様でした」


 食べ終わったお皿を片付けるためにお母さんは台所に運んでく


くゆ「...姉さんが一人だと寂しいと思った

   だけだから」


ミユをぎゅーっと抱きながらくゆはソファーに寝転がった。


母「くゆったら...美紗ちゃんが居なくて

  寂しかったのね」


くゆ「...まぁ、別にそれでもいいけど」


※スライド


くゆ「姉さんの学校の話聞きたい。」


 いつもくゆはこうやって色んな話を聞きにくる


 ...それが私達の、くゆと住むことになったあの日からの日課となっていた。


 どうやら今日のお題は学校のようだけど...


美紗「学校の話?えっとね...、実は」




→A「白雪姫みたいに綺麗な人と

   仲良くなったんだよ」


→B「...友達と喧嘩しちゃって」






→A「白雪姫みたいに綺麗な人と仲良く

なったんだよ」


美紗「白雪姫みたいに綺麗な人と仲良く

なったんだよ、」


くゆ「ふーん...どんな人なの?」


美紗「えーっと、古池さんって言う人

   でね、すっごく有名な会社の娘さん

   なんだって」


美紗「その子のお母さんが本当にすごい人

   みたいで...その子、古池の娘さんっ

   て呼ばれてた」


美紗「...けどそれってさ、なんかその子

   じゃなくてお母さんを見てるみた

   いでね...」


くゆ「へぇ...、古池...」


 くゆはスマホを取り出して検索してるみたい。


 そういえば何の会社とか聞いたことなかったかも...今度雪音に聞いてみようかな。


くゆ「...古池グループ。会長取締役、

   代表...総資産...えぇ...いや、まさか...

   流石にこの人じゃないよね?」


 くゆの側に寄ってスマホの中を覗く、


 そこには正装姿の雪音の写真が乗っていた。


美紗「...あ、その子だよ」


くゆ「...えぇ、...冗談、じゃないんだ

   よね...?」


 くゆはまるで胡散臭そうな壺を眺めるような客のように目を細めて


 今にも「マジか...」とでも言い出しそうな顔で雪音の写ったブログを眺めている。


くゆ「....今日はその人と居たから

   遅かったの?」


美紗「ううん、違うよ。ちょっと考え事

  してて...」






→B「...友達と喧嘩しちゃって」


→美紗「...友達と喧嘩しちゃって、」


くゆ「前話してた姉さんを餌付けしてる

   柚夏って人?」


美紗(餌付け...?)


美紗「うん。何か私が怒らせちゃった

   みたい...」


くゆ「その人、心が狭いんじゃない?」


美紗「そんな事ないよ。柚夏は優しい

   よ?私が怒らせちゃったのが悪いん

だし...」


くゆ「姉さんが?」


くゆ「...怒らせた原因は?」


美紗「んー...お母さんから学費払って

   貰えないの?って私が言っちゃったの。

   言葉が悪かったかな...」


くゆ「ふぅん...。その人、一人暮らし

   なんだっけ?」


 ミユがくゆの顔をすごい舐めてるけど、くゆは気にしてないように身を任せている。


美紗「うん。お父さんが家で浮気してて、

   それが理由で離婚しちゃったんだ

   って」


くゆ「...よくもまぁ目の前で浮気なんて

   出来るね。...浮気するなら初めから

   結婚なんてしなけりゃいいのに」


美紗「柚夏のお母さんはそれでも離婚

   したくなかったみたいなんだけど、」


美紗「お父さんから離婚届を出されてて、

   そこからお父さんの事はよく

   分かんないみたい。興味ないって」


くゆ「自業自得だね」


美紗「やっぱり、一人で何とかしたいって

   思ってるんじゃないかな。...柚夏

   は本当に優しいから...」


美紗「きっと、お母さんに負担掛けたく    

   なくて頑張ってるんだよね。...

   なのに私、酷い事聞いちゃった」


くゆ「知らなかったんだから仕方ないよ。

   姉さんは悪くないじゃん」


くゆ「...たまたまタイミングが悪かった

   だけだし、またすぐ仲直り出来る

   はずだよ。」


美紗「くゆ...。...うん、きっとタイミング

   が悪かっただけなんだよね...。...

   えへへ、悩み事聞いてくれて

   ありがとう」





母「美紗ちゃーん、お風呂湧いたわよー」


 お母さんが私を呼ぶ声が聞こえて、お風呂の着替えの服を取りに自分の部屋に行くために立ち上がる。


美紗「はーい」


 くゆはミユを抱き締めて毛に顔をうずくませてる。


美紗(...良いなぁ...ミユ、私にはさせて

くれないから...。モフモフして

   柔らかいんだろうなぁ...)


 頭を撫でさせてくれるようになったのも割と最近だし...。...犬だけじゃないけど、動物にすぐに好かれた試しがない...動物は好きなんだけど...


美紗「いつも一番風呂なのってなんか

   申し訳なくて、...くゆも一緒

   に入る?」


くゆ「....。....はぁ!?私が姉さん

と///!?」


 くゆの声に驚いたのか、ミユは台所の方に駆けていった。


くゆ「お風呂...///!?無理無理無理

ッ///!!」


美紗「...私とそんなに入りたくない?」


くゆ「....そうじゃないけど、姉さん

スタイル良いし...///、、」


美紗「C寄りのBだよ?」


くゆ「胸の話じゃなくて...。どこ見たら

   良いかも分かんないし...///、、」


くゆ「その、あーもぅ!!恥ずかしい

   の///!!分かってよ///!!...兎に角、無

理!!」


美紗「そっか...」


くゆ「別に怒ってる訳じゃないから!!

   ...むしろ、...その逆...だし...」


美紗「あはは...、大丈夫。ちゃんと

   分かってるよ」


 そうして、私は一人寂しくお風呂にはいったのだった。...静かな夜のお風呂、こういうのも悪くないけど....


美紗(...もっとくゆと話したかったな。)


チャプ...、


※スライド


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