⑧クリスマス編【みさゆき】


美紗「今日も返事はなし、...だね。」


 今日はクリスマスイブ。...一応、スマホを開いてシーウェをチェックしてみたけど


 既読はされてたから、ちょっと安心。


美紗(忙しいはずなのに...ごめんね。雪音、

   ...でも、あのメール、読んでくれたん

   だね)


美紗(ありがと)


 無理に返信しなくていいから、応援してるね。あ、それと最近特に夜寒いから...風邪には注意して下さい。美紗


という文字が向こうに送信されるまで見届けた後。


 私はスマホを机の上に置いて、窓から見える真っ暗な空の中でぼんやりと浮かんでるお月様を見上げた。


美紗「...良い子の願いを叶えてくれる。サンタ

   さんかぁ」


美紗「くゆは勿論入るとして...良い子って、

高校生も入るのかな。うーん...、

   ...多分入るよね?」


美紗「....」


美紗「もしも私の願いが叶うのなら、雪音の思い

   がどうか届きますように...。あと家族

   皆が事故なく暮らせれば私は幸せです」


美紗「あ、...あとゆずかーさんも。私にとって

   姉みたいな感じだから、抜けちゃった。」


美紗「.....」


美紗「まぁ、友達も大切な人の内に入るから」


美紗「多分大丈夫だよね。...うんっ。まぁ取り

   敢えずセーフって事で、」


美紗「よしっ...!!そろそろ始めます

   かぁっ!!」


美紗「今日はクリスマスイブだから、

   頑張らないとねっ!!」


 雪音と会えないのはちょっと寂しいけど、今の家族とこうやって一緒にクリスマスの準備をしたりするのも私にとって同じくらい大事な事だから。


美紗「ふふっ、でもこういうのわくわくする

   なぁ...///」


美紗「まさか私がサンタさん側になるなんて、

   此処に来る前は思ってもなかったし

   ...///」


美紗(というかサンタさんって本当に

   居るんだなぁって、)


美紗(此処のお家に来れたことが私にとって

   何よりのクリスマスプレゼントだし)


美紗(今の生活ってほんと恵まれてるよね。)


美紗(家の中に居てもイライラされないし、

   私の事見ても邪魔者扱いされないし。

   大きな声で怒鳴られる事もない。)


美紗(慣れてたけど、やっぱり叩かれるのと

   叩かれないのとでは違う)


美紗(この家にいる人達はほんとに皆優しい。)


美紗(くゆはそんなの当たり前だっていうけど、)


 それが当たり前だって言える環境にいれる事が何よりも嬉しかった。


美紗(もう高校生だし、今年もクリスマスがある

   かは分かんないけど...、分かんない

   けどっ...///)


美紗(...この服着たら。私もサンタさんの

   仲間入りできる、かな...///?、、)


美紗(新聞紙に包んだ例のブツを入れて

   っ、と...)


美紗(今回は、付け髭もちゃんとね。)


美紗(前は記憶を頼りに100円ショップで

   揃えただけだったけど、今回は一味違う

   からね!!くゆ!!)


 去年、柚夏さんから要らないからって幼稚園のお手伝いで貰ったらしいサンタ服に赤い帽子を付けて...。


美紗「おー...!!」


美紗「これぞ、THE☆サンタさんって感じ!!」


美紗「サンタさんっ!!...何か思ってたより

   袋大きかったけどまぁ...きつめに

   縛りながら持ったら大丈夫だよね?」


 そうやって鏡をチェックしながら、背中もちゃんと確認して...。最後にくるっと一回転した後


 満面の笑顔で私はよしっ、と鏡の前でサンタさんっぽいポーズをする。


美紗「...うん、大丈夫そうっ♪」


 クリスマスイブにメールが来ないくらい忙しいのかなとか、


 一人で背負い込み過ぎじゃない?とか、そんなメンヘラ彼氏な言葉を、全部ゴミ箱に捨てて。


美紗「楽しむとこはちゃんと楽しまなくっちゃ

   、くゆや今のお父さん、お母さんの前では

   笑ってたいもん」


美紗「私の。...ずっと夢みてた大切な家族の

   ための時間だから、...ね?笑顔っ、笑顔っ」


 鏡に映った自分に言い聞かせるように、頬を二回軽く叩いて、鏡を見るとまぁ一応笑顔っちゃ笑顔なんだけど...。


美紗(んー...、私ちゃんと笑えてるかなぁ...?、)


 楽しいとは思ってるんだけど、意識してないとまだ笑顔が自然に出ないんだよね


美紗(笑顔が可愛いって思われると嬉しいん

   だけど、なんか好きな人に対する反応

   みたいだな...、)


美紗(いつか自然に笑えると良いんだけど)


美紗「もっと、そう!!...縁蛇さんっ!!

   縁蛇さんみたいな笑顔っ!!、」


美紗「こんな顔じゃ、サンタさんの存在を心待ち

   してる良い子のくゆに会えない!!、、」


 くゆ「姉さんは私の事何歳だと思ってるの...」


 っていうツッコミが心のくゆから飛んで来たけど、まぁそれはそれ、これはこれだった。


美紗「縁蛇さんのテンションを私も見習い

   つつ。いざ、くゆ部屋へ出陣ッ!!」


 無理してたら晴華さんも雪音を怒ってくれるだろうし、...だからきっと大丈夫。...今はまだ会えないけど


 冬休みが終わったら、いっぱいお話しようね。雪音


※スライド


美紗「悪いごはい”ね”ぇがぁ...、」


くゆ「....」


 サンタの格好をしたまま10秒くらい無言でくゆと見つめ合ってると、くゆが先に口を開いたのだった。


くゆ「...姉さん」


くゆ「それ、...違う」


美紗「....。...だってっ、」


美紗「だって、サンタさん想像してないよ?!

   もう明日なのに、中学生がこんな時間に

   スマホとか!!」


美紗「私が中学生の時のスマホは、塾帰る時

   とかお母さんが帰ってくるから早く帰って

   来いとかほんとただの業務連絡だった

   のに、」


美紗「そういうの...!!、サンタさんも

   え、まだいっぱい配るとこあるのに

   まだ起きてるどうしよ...、、って

   なっちゃうよ?」


美紗「いやうん。もう、電気付いてたから

   サンタさんそう言うしかないね!?」


くゆ「...とりあえず姉さんがしたい事は

   分かった、」


美紗「なら、ほら!!良い子は早く寝ないと!!」


美紗「お肌カサカサになっちゃうし、ツヤも

   なくなっちゃうよ?お姉ちゃん部屋入る

   とこからやり直すから!!」


くゆ「寝る理由が完全に子供じゃないけど...」


くゆ「まぁ...いっか、姉さんがそこまで言う

   なら...。寝るよ...」


 と、クリスマスなのにこんな時間まで起きてたくゆをベッドまで押すように


 座ってたくゆの両手を握って立たせる。ふふふ、これぞお姉ちゃん特権。


くゆ「その...、お、おやすみ前の、...キ...ス

   とか///。...姉さんがしたいなら...

   姉妹だし、、」


美紗「...ん?」


美紗(ボソボソ言ってて、途中よく聞こえな

   かったかも...)


くゆ「...」


美紗「あ、ごめん。何が姉妹みたい...?」


くゆ「...大事なとこだけ拾えてない奴」


美紗「...ごめん。その部分小さくて

   よく聞こえなくて...、今度はちゃん

   と聞くから、」


美紗(耳に手を当てたらもっと聞こえたり

   するかな?)


くゆ「いや、...気のせいだから。」


くゆ「...そう、今のは本当に何でもないから

   気にしないで。...本当そう!!、、」


くゆ「そういう顔されると逆にこっちが困る

   から///っ!!姉さんの気のせいっ///!!

   分かった!?」


美紗「...う、うん。...でも、いいの?」


くゆ「...気にされる方が、つらい」


美紗(うー...しがない姉でごめんよ。くゆ...)


美紗「うん分かった、もう聞かないよ。...でも

   こんな時間まで何してたの?」


美紗「もう11時だよ?真夜中の深夜だよ?」


くゆ「姉さんも起きてるじゃん」


美紗「高校生はいいの。」


美紗(でも...こういう会話、いいな。)


くゆ「冬休みの課題がちょっと分からなくて

   聞いてただけ。返事が遅い向こうが悪い、」


くゆ「まぁ、でも終わったから。」


 立っているくゆの後ろにあったのは、中学生の頃何度か見た計算式が書かれたワークノート。


 もう答え合わせもすんでるのか開いてあるページは全部丸が付いていた


美紗「わぁ、懐かしい...」


くゆ「去年だよね?」


あは、は...。まぁ、そうなんだけど...。


美紗「こういうのやったなぁ...これ応用になって

   高校生でも出てくるから」


美紗「ちゃんと勉強しないと私みたいに

   なっちゃうから、気をつけてね」


くゆ「うん、覚えとく」


美紗(...えへへ、何だか今の私、くゆの

   お姉ちゃんみたい///)


美紗(いや、まぁ義理の姉妹なんだけど、)


くゆ「でも姉さん昔成績良かったでしょ?」


美紗「結構、...無理やり勉強してたからね。」


美紗「実際はそんな頭良くないよ。

   勉強してない今は普通の点数だし」


美紗「まぁ中学生の勉強は出来るかな」


美紗「今日は私、サンタさんなんだよ!!」


くゆ「結局バラしちゃうんだ、凄い似合って

   るよ」


くゆ「個人的にひげなしのが良いけど」


美紗「喋りにくいから良いよ。こっちのがサンタ

   さんっぽいけど、ない方が可愛いもんねっ」


 プレゼント袋を一旦置いてから、くゆに背中を向けてゴソゴソとぐるぐるに丸く新聞紙に包まれたプレゼントを両手で持って渡す。


美紗「シャンシャンシャン♪、シャンシャンシャンっ♪」


くゆ「まさかのソリ。」


美紗「メリー、クリスマスっ!!勉強してた

   良い子には良いものをプレゼントしよう

   ね...」


くゆ「プレゼント...?」


くゆ「結構、重そうだけど...何入ってるの?」


美紗「くゆが今一番欲しいものだよ♥️」


くゆ「えっ...?、まさか姉さんの...、」


 くゆがビリビリと外側から新聞紙の中を破っていくと、北海道産の一玉約三千円くらいする立派なキャベツが顔を出す。


くゆ「じゃない事は知ってた。けど、」


くゆ「...これ、雪玉キャベツ!?」


美紗(私のなんだろう)


くゆ「えっ、凄っ!!普通にこれ、凄いよっ!!

   姉さん!!これ中々手に入らない超

   レア物じゃん...っ!!」


美紗「そう...、キャベツ自身が北海道での

   極寒の寒さに耐えようと凍らない

   ように糖分を蓄えに蓄えたあの、」


美紗「究極の甘味キャベツっ!!キャベツの

   王様、雪玉キャベツ!!」


くゆ「...こんな激レアキャベツ、...どう

   やって仕入れたの...?!?!。どうしても欲しく

   てネットで捜しに捜しまくって、

   売り切れてた」


くゆ「...あの雪玉キャベツ...?、」


くゆ「まさか、闇市...?、、」


くゆ「危険を冒してまで...///姉さんが私の為に

   雪玉キャベツを...っ、」


美紗(闇市?闇市ってなに...?)


美紗「まぁ、でも。これがスーパーサンタさん

   パワーかな...?」


美紗(でも、喜んでくれてるみたいで

   良かった)


くゆ「は...?」


美紗(あは、は...本気で知りたかったって、顔

...。でも朝乃先輩に頼んで貰ったもの

   だから...入手方法までは実はよく分から

   ないんだよね...)


美紗「いや、その...うん...。まぁ、サンタさん

   って凄いね...。あは、はー...」


くゆ「...スーパーサンタさんパワー、すご...。

   最強過ぎるでしょ...」


美紗(信じた...、)


くゆ「...でも。...送った方もこれだけ

   喜んで貰えるんなら 幸せだね。」


美紗「お母さんから何貰ったの?」


 さっきお母さんがくゆに何かプレゼントしてたけど、心なしかそれからくゆの様子がちょっと元気ないような気がする


くゆ「まだ開けてない。...だから、知らない」


くゆ「まぁ何入ってるか想像はつくけど」


くゆ「その箱には見覚えしかないから」


美紗「開けないの?」


くゆ「...後で開けるよ」


くゆ「今みかげに姉さんからプレゼント貰った

   って自慢してるから。」


くゆ「....。」


美紗(うーん。これは...、あんまり聞いて

   欲しくない時のくゆ)


美紗(くゆも何か思う事あるのかな...?

   人から貰ったプレゼントに対して私も

   まだちょっと苦手意識あるから、)


美紗(柚夏は別だけど)


 スマホを眺めながら、動かしていた手をくゆは一端止めて私の方を見る。


くゆ「そんなに気になるなら開けて良いよ」


くゆ「取り敢えず食べ物じゃないから。」


美紗「あ、ううん。くゆのプレゼントだから。

   くゆが好きな時に開ければ良いと思う」


くゆ「見たいんでしょ?中身。」


くゆ「別に姉さんに見られて困る物じゃない

   から良いよ」


美紗「....」


くゆ「...そんなスマホ見られると、

   落ち着かないんだけど」


くゆ「大した話してないよ。」


くゆ「姉さん以外と、そんな仲良くして

   ないし」


美紗「確かに私と話すのは居心地良いのは

   分かるけど、友達だからこそ話せる事

   もあるし」


美紗「友達は作っておいて損はないよ。」


美紗「くゆはお洒落で可愛いし、天の邪鬼

   だけど、優しいし。髪もくるくる

   してて可愛いから」


美紗「友達もすぐ出来るよ。」


美紗「ジト目も良いよね」


くゆ「いや、別に友達が出来ない訳じゃなくて、」


くゆ「...これでも私結構モテるんだよ。

   空手とかしてるし、女の子も凄い

   見に来るし。」


美紗「ん~?、女の子と話すの恥ずかしい?」


くゆ「その辺の男と一緒にしないでよ...。

   別に普通に話してるよ」


くゆ「ただ付き合う気がないってだけで」


美紗「恋より部活に専念したいの?」


くゆ「まぁ...そんなとこ。」


くゆ「いや、まぁ...、姉さんが付き合いたい

   っていうなら付き合っても良いけど...」


美紗「選ぶならもっと可愛い子を選んだ方が

   良いよ。」


くゆ「姉さん以上に可愛い人なんて居ないよ。」


美紗「くゆはまだ中学生だから、一番近くに

   いる私が綺麗に見えてるだけだよ」


美紗「でも。友達はもっと増やした方が良いかもね」


美紗(くゆは本当に私の事好きだなぁ、

   ...お姉ちゃんが居なくなってその分

   誰かに甘えたいのかな。)


美紗(まぁ、私も今誰かに甘えたい気分なんだけど、)


 くゆの事を後ろからぎゅっ、と抱き締めてあげると安心したのか大人しくなるくゆ


美紗(あったか~い、誰かを抱き締めるのって

   なんか凄い安心するなぁ♥️)


 晴華さんもこんな気持ちだったのかな。よく雪音のこと抱き締めてるけど


美紗(これは、分かる...。)


くゆ「プレゼント、開けないの?」


美紗「人のプレゼント開けるの

   ちょっと、自信なくて...。」


くゆ「袋付きなら分かるけど。箱開けるだけ

   だよ」


くゆ「別に本人が開けても良いって言ってるん

   だから開けても良いでしょ」


美紗「そうなんだけど...、」


くゆ「...はぁ、」


くゆ「...馬鹿姉もそうでさ。クリスマスとか

   何か貰ったとき、私のプレゼント

   見てから開けたがったんだよね。毎回...」


美紗「そうなの?」


くゆ「...そう。というか母さんも母さんで      

   今でも...姉さんの分まで買ってきてる

   し...」


くゆ「...って、姉さんに愚痴った所で何も

   変わらないっていうのは、...分かって

   るんだけどね。」


美紗(私とみささんってそんなに似てるのかな?

   でも...、くゆの口から初めて、お姉さんの

   事聞いたかも...。)


※キャプション


??「まだ、出来ないのかッ!!、、お前は

   何度言えば、分かるんだっ!!」


 大きな怒鳴り声が響いて。また今日もお父さんの機嫌は悪い


 凄い煙草のにおいがする...


??「母さんから貰った物を壊したな!?!?、、あれ程母さんから貰った物は壊すなと言ったのにっ!!!、」


??「なぁ...、お前。...俺の事馬鹿に

  してんだろ?」


??「家に帰ってきて早々煙草ばっか

  吸って。飯もまともに作んない

  のかよって、」


??「母さんと違って、どうせひでぇ

  父親だって思ってんだろッッ!!!!、、」


 この人にとっての私はなんなんだろう。勝手に生まれて怒られるのが私の人生?


 殴られるのが痛いから 服を掴まれて、ごめんなさい、ってお父さんの機嫌を損ねないように謝る。


 それでも痛みで涙が溢れて


 でも泣いたら、また怒られるから


 終わるまで待つしかない。誰も助けてくれない


美紗(助けたところで悪化するからやめて

   欲しい、)


美紗(警察だって子供だけじゃ駆け寄って

   くれない)


 多分お父さんは私を怒りたいだけなのかな。それが私の生まれた意味なら


 私は黙って耐えるしかない、


私は育てて貰ってる身だから。しょうがない


 普通の家庭はこうじゃないって分かってる


けど そういう家庭に生まれたかった


美紗「.....」


チュンチュン...。


美紗(...最近あんまり見てなかったのに、)


美紗(...あの後くゆにプレゼント渡して)


美紗(それからすぐ寝て...、)


美紗(あー...、くゆと一緒に寝れば良かった

   かも...。)


美紗(クリスマスだし)


美紗(...この家の人達はそんな事しないのに)


美紗「ぐあぁぁ...、」


 小鳥達がお喋りしてる中、両腕をぐいいっと伸ばしながら欠伸をしてると固い何かが手に当たった。


美紗「ん、なに...。なにか落ちた...?」


美紗「...箱?」


 それは、オレンジのリボンでラッピングされた小さな箱。


美紗(プレ、ゼント...?)


 何か凄く、...嫌(や)な予感がする。


美紗(思わず...。)


美紗(距離取っちゃったけど...、)


美紗(さっき...手が、思ったより強く当たった

   気が...、)


 朝からあんなを夢見ちゃったせいか、...また怒られる気がして、


美紗「...お父さんはもう此処に居ないし...、

   何もない、から。だい、じょうぶ...」


美紗「...お父さんはもう此処に居ないし...、

   何もない、から。だい、じょうぶ...」


美紗(...それにまだ壊れてるって決まった訳

   じゃない、から)


美紗(普通の家庭はプレゼントが壊れても

   大丈夫だって...、、)


 そういって自分に言い聞かせながら...。恐る恐る箱の中の物を傷付けないように


なるべく慎重に、左右に振る。


カラ、カラッ...。


と...、


...何か小さな破片が箱の中で転がる音がした。


美紗(.....やばい、)


 背筋がすーっ...と凍り付く...、変な汗が全身から流れてきて、その汗が今にも目からこぼれ出(だ)しそうだった...。


美紗(....やばい、やばい、やばい、やばい、

   やばい...ッ!!これ、絶対中身壊れて

るよね...??)


美紗(...ど、どうしよう、...いや、、

   でも。此処の人は皆良い人達だし...)


美紗(それに中身が壊れてるって知ったら)

   

お母さん『やっぱり美紗ちゃんは今の生活より

     前の生活の方が...』


美紗「....あっ!!」


美紗(待って。...中身を開けて、元に戻せば

   ...バレない、かも、)


美紗(リボンの結び方も、)


美紗(今はスマホがあるから、調べれば...!!)


 スマホを慌てて掴みながら、急いでスリープモードを解除して。【プレゼント用のリボンの結び方】を調べようと検索ボタンを押した瞬間...


 家族4人の待ち受け画面が写った写真と目が合った。


美紗(...夏休みの時に行ったテーマパークの、

   写真)


 スマホの画面に写ってる私は凄く幸せそうで...、


 お父さんとお母さん、そしてくゆ...。くゆはあの時ちょっとムスッとしてたけど、皆心から笑ってて...。


美紗「.....、.....駄目だ。」


美紗((....ちゃんと謝らなきゃ、...この人達

   の前では普通の女の子でいたい

   よ...、お父さん))


美紗「...お母さん、、」


 パタパタと、下にかけおりて...。居間に向かうとそこにはソファーで寛いでいるくゆが居たけど


今はそれ所じゃなかった。


美紗「おはよ、くゆ...!!」


くゆ「姉さん?」


くゆ「...すごい急いでるみたいだ

   けど、何かあった?」


美紗「何でもないよ。ちょっと

   お母さんに話したい事があって」


くゆ「姉さんが何でもないって言うときは

   大抵なんかあるんだけど」


美紗「クリスマスプレゼント置いてあった

   から。見せに行こうかなって、」


くゆ「私より先に母さんに?」


美紗(くゆには、関係ない事だもん。

   ...今日はクリスマスなんだし、テン

   ション下げないように、...しなきゃ)


くゆ「...まぁいいけど」


 トントンと向こうから、包丁を切る音が聞こえて...。そっちに向かって急いで歩いていくと


 昨日くゆにプレゼントしたキャベツをお母さんが細かく切ってくれてるみたいだった。


母親「くゆのリクエスト。だってあの子、

   千切り好きじゃない?コールスローに

   しちゃうと怒っちゃうものね」


美紗「えっと...」


くゆ「高いキャベツにマヨネーズを掛ける

   なんて、素人がする事だよ。邪道行為。」


くゆ「味を付け足さないと食べられた物じゃ

   ないです。って」


くゆ「製造者の顔面に泥塗ってるのと同じ

   と思わない?姉さん。市販の

   スーパーの農薬まみれのだったら

   まだしも...」


母親「くゆちゃーん、パセリもつけるー?」


くゆ「逆にいらないと思う?」


美紗「...お母さん、これ...」


 枕元に置かれてた小箱をお母さんにおのずおのず見せると、お母さんはにこにこと笑いながら微笑えんだ。


母親「どうしたの?美紗ちゃん」


美紗「...えっと、これ...枕元にあって...。

   多分...。...壊し、ちゃって...」


美紗「その...ごめん、なさい」


母親「えっ?何か壊しちゃった?怪我すると

   危ないから、触らないでね...。すぐ

   行くから」


 と、お母さんは蛇口を止めて。少しあわてた様子で濡れた手をタオルで拭いてこっちに来た。


母親「...って、え?...それが壊れちゃった

の?」


美紗「...振ったら音が鳴った、から...」


母親「音...?」


 お母さんは小箱を見て一瞬、驚いた顔をしたかと思うと。私から小箱を受け取って、プレゼントを軽く横に振る。


 するとやっぱり小箱の中から、カラ、カラ...。という小さな音がした。


母親「...あー、確かに」


美紗「や、やっぱり、...壊れちゃったの

かな...。」


母親「んー...。お母さんは壊れてないと

   思うけど...」


母親「あ、でも...ここ、ほら。見て。...

   これって、美紗ちゃんにサンタさんからの

   プレゼントじゃないかしら」


美紗「...サンタさん?」


母親「裏に美紗ちゃんへって書いてある」


美紗「えっ、裏...?」


 小箱を裏返して見ると、そこにはメリークリスマスと書かれた手紙と一緒に何時も優しい美紗ちゃんへと書かれた可愛い紙が付いていた。


美紗「...あっ!!...本当だ、サンタさんより

   って、書いてある...。」


美紗「...これ、私宛ての

   プレゼントだったんだ...」


美紗(良かった...。壊しちゃったと思って

   ほんとに焦った、、)


美紗(自分のなら壊れても、大丈夫

   だよね...。ひとまず...、一安心...)


美紗(...お母さんの物壊した時の

   お父さん、凄い、怖かったから...)


美紗(そっか、そういや今日ってクリスマス

   なんだっけ...。くゆにプレゼント渡して

   すっかり終わった気分になってた、)


母親「うふふ、お母さんは

   大人だから、ちょっと羨ましいわね」


くゆ「お父さんから貰ってるでしょ。」


母親「それはまぁそうなんだけど♥️」


美紗「えっと...じゃぁ、」


美紗「これ、お母さんにあげる。」


美紗「何か音なってるけど」


 とプレゼントをお母さんに渡す。中に何入ってるかは分かんないけど、サンタさんがくれた物ならきっと良い物だと思うから。


母親「えっと、...美紗ちゃん?」


美紗「お母さんも、いい人だから。貰えない

   のは可笑しいもん」


美紗「それに私はもう充分、プレゼントを

   貰ってるよ。」


美紗「此処に住まわせて貰ってるだけで

   凄い幸せだし、」


美紗「優しくて素敵なお母さんにお父さん、

   便りになる妹に、ミユも可愛いし。

   一緒に居るだけで楽しい家族。」


美紗「それに...大切な友達。私が本当に欲し

   かった物はもう全部、貰ってるから」


美紗「それ以上望む物なんて、何もないよ」


美紗「...お母さん?」


母親「....っ、ぐ、、」


母親「....美紗ぢゃぁぁぁあん」


 ぎゅぅぅっと、私を目一杯抱き締めるお母さん...。ちょっと苦しいけど...、この痛みなら私、全然嫌じゃない...。


...何だか凄く、安心する痛みで。これが...、


美紗(...家族、...なのかな。)


母親「なんて良い子なのぉぉぉ...!!、、美紗ちゃん

   は天使なのおおぉぉ...?ごめんね、お母

   さんもっと頑張るからぁぁぁねぇぇ...」


母親「私美紗ち"ゃん"と結婚す"る"ぅぅぅ...」


くゆ「...どっちが大人なんだか。」


※スライド


 くゆが横たわって寛いでるソファーの横に座って、オレンジのリボンで包まれた小箱を膝の上に置く私。


美紗「結局、プレゼント返されちゃった。」


 『サンタさんは美紗ちゃん宛てに出してるんだもの。お母さんは貰えないわ』とお母さんに渡した後普通に返却されちゃったんだけど...、


くゆ「なんか残念そう?」


美紗「ううん、そんな事ないよ。プレゼント

   貰えたのは嬉しいし」


くゆ「なら良いんだけど...」


 この箱。軽いなぁ、ってさっきからずっと思ってたんだけど


 少なくともこの重さは金属じゃないし...。置物にしては軽すぎるし...


美紗(なんだろう)


美紗(...ひとまず。自分のだって分かった

   のは良いけど、)


美紗(ほんとに自分ので良いの?)


美紗(年下だからくゆにあげなきゃとかそういう

   のは?)


美紗(だって私この人達の本当の家族じゃない

   し、本当に貰って良いの...??)


美紗(こういうときって実の妹に渡した

   方が良いのかな?どうすれば良いん

   だろう。)


美紗「.....、」


美紗(くゆは開けて欲しいって言ってるし、

   取り敢えず開けてみよう)


 小箱を持つ手の位置を徐々に変えながら横に横にと持ち替える。どの辺から破ったら良いんだろ?


美紗(セロテープが破けないように、)


くゆ「.....、」


くゆ「...プレゼント。嬉しくないの?」


美紗「サンタさんから届いたプレゼントだよ、

   嬉しいに決まってるじゃん、」


くゆ「...私じゃ、言えないくらい信頼

   出来ない?」


美紗「家族でも」


美紗「言えることと言えない事があるから。」


美紗「くゆの事が好きだから。心配されたく

   ないの」


美紗「私は、縁切れてもしょうがないなって

   人しかそういうことは言わないし」


美紗「くゆとは縁を切りたいと思ってないから」


美紗「プレゼント貰ってうれしいのは

   本当だよ。」


美紗「折角のクリスマスなのにそんな事

   思わないで。ほんとに気にしてないから」


美紗「私の言葉はそんな信頼出来ない?」


美紗(私のために此処までしてくれるし。)


美紗(ただ、私が自分のだって思えない

   だけ)


美紗(言ったところでくゆのせいじゃないし、

   くゆに言ったところで当事者じゃないし

   無駄にくゆに怒りをぶつけるだけ)


美紗(根本的な解決にもならない。)


 って、言ってもくゆは気にするんだけど


 くゆって優しいよね...。


美紗(なんで気にするんだろ)


美紗(...別に謝らなくても良いんだけど)


くゆ「....。」


くゆ「...ごめん」


美紗(...お姉さんの事。気になるのは分かる

   けど、お姉さんが亡くなったのは

   くゆのせいじゃないし)


美紗(私は私で亡くなったお姉さんには

   なれないし)


美紗(私が出来るのは。くゆの姉として

   くゆの側にいる事だけ)


美紗「別に謝る必要はないでしょ、」


美紗「謝ると、相手に対して悪い事をしたって

   言ってるようなものだから。どれだけ

   相手の事を思ってやったとしても」


美紗「その気持ちは相手には伝わらない。

   それより先に【相手にとって悪い事を

   した】っていう『事実』だけが残るから」


くゆ「でも...」


美紗「私はそれでお父さんに毎回揚げ足

   取られてたし、」


美紗「ほんとに許して欲しいなら。謝るより

   相手と一緒に怒った方が良いよ。」


美紗「私には出来なかったけど」


美紗「悪い事してないのに。謝ったら...」


美紗(...出来なかった後悔だけが、ずっと残り続ける)


美紗「.....」


美紗「勿論自分が相手に悪い事したらちゃんと

   謝らないと駄目だけど、」


美紗「相手を思ってやった事に対して

   その気持ちを『ごめん』っていうたった

   三文字の言葉で蔑ろにしちゃ駄目だよ。」


美紗「くゆは私が『プレゼント貰って喜ばない

   とかなに?』とか1mmも思ってない

   でしょ?」


くゆ「はぁっ!?、、そんなの思ってる訳、、」


美紗「そう、それ。...でもたったそれだけの

   言葉でそれがそういう意味あいに

   変わっちゃうの。」


美紗「人って言葉が変わるだけで

   全く別の意味に捉える生き物だから」


美紗「...だから怒ったの。だって、くゆはそんな

   事思うような子じゃないから」


美紗「私が嬉しそうじゃないように見えた

   から。くゆは心配して声を掛けて

   くれたんでしょ」


美紗「そう思う可能性を0にさせて。

   私は姉さんのために心配したからって」


美紗「誤解されるような事は言っちゃ駄目だよ」


くゆ「姉さん...」


美紗「私はくゆの事をもっと好きでいたいから。」


美紗「だからしてもない事で謝ったら駄目だよ。」


 そう言って、ゆっくり優しい声でくゆに話かける。


美紗(今日の私、ちょっとイライラしてるな...、

   精神が不安定だから。)


美紗「...大丈夫、本当に嬉しかったから。ただ

   ちょっとこういうのに慣れてない

   だけ」


美紗「私ね、昔。お母さんから貰った

   プレゼントを落としちゃった事があって、

   凄い...」


美紗「....。」


美紗「...その時...、凄い。怒られたんだよね...。」


美紗「いつもよりお父さんが怒ってて。」


美紗「クリスマスプレゼントはお母さんが

   買ってきた物だったから。その時はそれを

   知らなくて」


美紗「人って何度も同じとこ

   絞められると痛いっていうより」


美紗「熱くなるっていうか。熱さに慣れてくると

   感覚が麻痺して。」


美紗「熱さもだんだん感じなくなってきて。」


美紗「やばいなぁ。っていうのは分かるんだけど」


美紗「もうだんだんどうでも良くなってきて...

   痛いけどこれ以上生きてくのもつらいし」


美紗「このまま意識失った方がいっそ楽になれる

   のかなって。もう怒られないし」


美紗「死ぬ直前ってアドレナリンがすごい出て

   凄い気持ち良いんだよね。起きると本当

   痛みの4重奏(~カルテット~)だけど」


くゆ「大丈夫。待って、その話ストップ。」


くゆ「無理しなくて大丈夫だから。本当、

   姉さん...。上の空みたいになってるし」


美紗「他人事みたいな感じだからね。」


美紗「あった事でも自分の事のように思え

   なかった。ただ痛いだけ」


美紗「人間ってそういう風に出来てるから。」


美紗「...私の話暗すぎて普通の人はついて

   これないんだよね、ワンシーンを除いて

   その印象が強すぎてそれ以外。残ってないの」


美紗「何されたとか、それよりお父さんの

   怒鳴り声と私を殴るところ。」


美紗「こういう話もあんま好きじゃないし」


美紗「もっと楽しい話したいでしょ?」


美紗「メンヘラみたいだし。ニュートンも

   びっくりの重力」


美紗「言葉も詰まるし、」


美紗「くゆはそういう世界を無理に知る必要は

   ないよ」


くゆ「姉さんの方が無理してると思うけど」


美紗「過去の事ほじくられるのあんまり

   好きじゃないんだよね。人が変わっちゃうから」


美紗「でも、私の事心配してくれて

   ありがとう。」


くゆ「私は何も...」


美紗「確かにくゆは私に対して何も出来ないけど

   、くゆが私に対して」


美紗「『もっと早く助けてあげれば良かった』

   っていう気持ちは伝わってくるから」


美紗「過去の事はどうにもならないけど」


美紗「少なくとも私はくゆが居たお陰で

   助かった人だからね。」


美紗「くゆがいなかったら今生きてるかどうかも

   分かんないし」


美紗「だからくゆには正しい事をしたって

   思って良いんだよ。それで救われる命は

   あると思うから」


美紗「私の心が虚無な分、くゆにはその

   ままでいて欲しい」


くゆ「....」


美紗(心配してくれる人がいる。それがどれだけ

   幸せな事なのか。)


美紗(分かってはいるけど、少しずつ受け止め

   られるようになってきてるから)


美紗「私も本当の幸せを受け入れられるように

   頑張らないとね。」


くゆ「別に幸せは頑張って感じる物でもない

   けどね」


 怖がってごめんねという気持ちと一緒にプレゼントを頬にぴたっとくっつける。


...なんだかすごく、そうしたいって

思えたから...。


※スライド



くゆ「分かってると思うけど姉さんから貰った

   キャベツと人参混ぜないでよ。キャベツの

   味死ぬから」


母親「注文の多いくゆ料理店」


美紗「えー、っと...。じゃぁ私から先に

   開ける事になるけど...。くゆは

   良いの?」


くゆ「...なんでそんな念押しするか分かんない

   けど 別にいいよ」


くゆ「誰が先に開けたとか 

   別に煩い人もいないし...」


美紗「え?だって、くゆが此処の長って

   いうか...。一番...」


美紗(強、じゃなくて)


美紗「しっかりしてるから。

   くゆより先に開けて良いのかなって」


くゆ「なんか今間(ま)がなかった?」


母親「確かに、お母さんも美紗ちゃんの気持ち

   分かるなぁ。」


母親「だって。お母さんよりくゆちゃんのが

   ずっと頼りになるもの♥️」


くゆ「親としてそれは良いの...」


母親「空手もすっごく、強いし。」


母親「瓶とか全部くゆちゃんが開けて

   くれるし」


くゆ「需要が限定的過ぎるんだけど。」


美紗「うん。私もくゆが瓶を開けてる姿

   格好いいと思う」


くゆ「ま、まぁ...///子供の時からしてれば

   別に誰にでも出来るし...///。もっと

   ヤバいのとか普通にネットにいるし」


くゆ「握力50kgとか。」


美紗「私が18kgだから...、3倍くらい?」


美紗(少なくとも麗夜さんはそれくらい

   いってそう...)


くゆ「お寿司食べると潰れるから苦手らしいよ」


くゆ「私の握力がおかしいんじゃなくて、

   この世界の物が柔らか過ぎるんだって」


美紗「握力強いのも大変なんだね。」


くゆ「まぁ瞬間的なチョップ力なら

   負けないけど」


くゆ「というか...、父さんは?」


美紗「いつもくゆが散歩に行ってるから。

   たまには散歩してきてよって」


美紗「昨日くゆがお父さんに言ってるの

   見たから」


美紗「今は、ミユとお散歩中かな。

   さっきハードル持っていくの見たし」


くゆ「別に今日じゃなくて良いんだけど」


くゆ「たまには散歩しろってだけで、」


くゆ「姉さんと居るのに邪魔だし

   ...クリスマスくらい

   母さんとゆっくりすれば良いのに」


母親「え?貴重なくゆデレ」


くゆ「というかさっきも言ったけど」


くゆ「普通に開けて良いから。そもそも

   私の方が姉さんより年下だし」


くゆ「そういう順番とか、どっちかというと

   姉さんの方が上でしょ。」


くゆ「...私だって、別に普段からあんなんじゃ

ないから。犬って時々散歩させてあげて

   ないと誰か忘れたりするし」


くゆ「だからみゆが父さんの事を忘れない

   ようにお願いしたの。別に私が

   父さんパシらせてる訳じゃないから」


美紗「そうなの?」


くゆ「そう。」


美紗(...うー、ん、...取りあえず。)


美紗(ミユに散歩すらさせてもらえない私は

   どうすれば良(い)んだろ、)


※スライド


美紗「じゃぁ...、開けるね」


 くゆに見守られながら。オレンジ色のリボンをするっ、するっと解(ほど)くと...


 中から透明なフィルムの掛かったチョコレートクッキーを思わせる


茶色色(ちゃいろいろ)のお菓子が姿を表した。


美紗「...ん?ブラウニー?」


 よく見ると小箱の隅っこにナッツの欠片(かけら)が、溜まってる...。


美紗(もしかして...、これ...)


 小箱を軽く横に揺すってみるとカラ、カラと小箱にナッツが当たる音がした。


美紗「ん”んー...、...ナッツ!!。ナッツの音ぉ...」


美紗「ナッツかぁ~~...、、」


美紗(...私、...凄っい、恥ずかしい勘違い

 を...///)


くゆ「姉さんの好物が裏目に...」


美紗「真面目な話しただけに、勘違いが凄い

   被害妄想でやだなぁ...、」


くゆ「でも悪いのは姉さんの親だし」


美紗「でもそういう人と一緒に居てもつまんない

   でしょ、」


美紗「【私の家は普通じゃない】って。考え方は

   変えてかないと」


美紗「どんな過去であれ、 

   人にとっては所詮人事だから」


 とはいえ、お風呂に入った後みたいに。身体が暑い...。というか、穴があったら今すぐ入りたい気分...///


美紗(うぅ"~ん///、...こうやって冷静さを失う

   の分かってるから)


美紗(普段からこういう事あんまり

   言わないようにしてたんだけど

   なぁ...。)


美紗「...う”ぅ、...ナッツに対してずっと

   怖がってたの。私...、」


美紗「ん~...、、言葉にすると...酷いね、、」


くゆ「まぁ...。変な物とか入ってなくて

  よかったんじゃない?」


美紗「...そう、だよね、ブラウニー

   好きだし...。それにほら見て、凄い

   美味しそう」


美紗(それにこんな状態じゃ、

   プレゼントに対して失礼だよね。)


美紗(これならくゆにもあげれるし。)


 フィルムをめくるとふわっとチョコレートの甘い香りがふわっと漂って...。ん~♪出来立ての良い匂い...、


 ご飯前だけど、ちょっとなら食べても大丈夫かな?


美紗「はい♪、くゆ」


 こぼさないように手で摘まんで。くゆの口元にブラウニーを運ぶ。


 このくらいなら左手をお皿代わりにしても多分、大丈夫でしょう


くゆ「へっ///?いや...でもそれ、...姉さんの

   プレゼントだし...///、」


くゆ「姉さん食べなよ。...悪いから」


 とくゆはそっぽを向いてしまう。一緒に食べたかったんだけど...、...やっぱり私から貰われるのは嫌かな、


美紗「うん...。」


美紗「...ごめんね、くゆ」


くゆ「何が?」


美紗「いや...、さっきの...」


美紗「...言い方がちょっとキツかった

   かなって...。」


美紗「怒られるのが怖いっていうのは

   私が一番知ってるはずなのに、」


美紗『誤解されるような事は言っちゃ駄目だよ』


美紗「くゆを怒るつもりはなかったんだけど...」


美紗「八つ当たりみたいなことして私、

   お姉ちゃん失格だね...、」


くゆ「.....。」


くゆ「......はぁ、」


美紗「.....」


くゆ「あんなの別に怒った内に

   入らないし、」


くゆ「掴み合いになってない時点でそんな

   大した事ないよ」


美紗(普段どんな喧嘩してるんだろう...)


くゆ「姉さんが言ってくれた事は、

   正しかったし。別にもう気にしてないよ」


くゆ「...私達姉妹じゃん。」


くゆ「それより、...お姉ちゃん失格って

   言われた事に対してはぁってなってる、」


くゆ「そう言われた方の気持ちもちょっとは

   考えて欲しいんだけど。」


くゆ「...あむっ」


と、くゆはブラウニーを咥えてそっぽを向いてしまった。...というか、耳赤い...。


くゆ「...ん、...これ、普通に美味しい。

   スッゴい姉さんが好きそうな味だね」


美紗「え、そんな?じゃあ、私もー♪」


 パリポリと奥歯で噛むと焼いた香ばしいナッツの香りが、満遍なく広まって...。


美紗(口の中が幸せの農場園

  (※カカオナッツ畑)だ、)


 甘過ぎず、かと言ってナッツに負けないチョコのしっかりとした風味が抜群の黄金費で折り重なってる...///


美紗「口の中が幸せで、...とろけちゃい

そう/////」


 もう一個食べる?とくゆに箱ごと渡すともう大丈夫って、返されちゃうけど...。


くゆ「いいから。姉さんが食べなよ」


美紗「遠慮しなくて良いよ?」


くゆ「姉さんが食べてるの見る方が

   好きだから、良いよ」


美紗「そんな私食べてるとき面白い顔

   してる...?」


くゆ「してる。」


美紗「えぇっ...!?」


くゆ「それに、姉さんが嬉しいと私も嬉しい

   し...///(ゴニョゴニョ」


※スライド


美紗(.....。)※黒画面


美紗(.......、....ふぅ)


美紗(...私、...色々焦ってたのかな。)


美紗(...もし、大好きな人が自分の

   側から離れていっちゃったらって...)


美紗(出会いがあれば別れも必ず来る。)


美紗(...でも、心が離れていなければ...また

   いつでも逢えるんだよね...。どこに

   居ても...)


 ...その日見た夢は、凄く綺麗な場所で雪音に似てる誰かとお話してる夢だった。


 当たり障りのない日常会話。


 その夢は声どころか、音すらも聞こえない何の変哲もない夢だったけど


 ...どこか温かくて、心地良い


 そんな幸せな夢だったのを覚えてる。


ブブッ...。


雪音「「大晦日にお会い出来ますか?」」


※キャプション




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