⑦冬休み編(柚夏とデート)【みさゆき】

 

 少しでも雪音の負担にならないように柚夏に勉強を教えて貰って。


 再試は免れる事ができたけど、美術館以降、予定がないから暇だなぁ...、


 まぁ布団の中で何もしないでごろごろしてるのも良いんだけど


美紗(冬休み中は雪音がコンテストに集中

   出来るようにしたいし、)


美紗(何しようかなー...、)


美紗(冬休み初日から勉強はなぁ...)


 布団を引き寄せて体に巻き付けながらぎゅっと縮こまると、布団の隙間が無くなって温(あった)かくなる。


美紗(スマホ...スマホ...、あ、あった...!!)


美紗「...今まで通り話しかけたらちゃんと

   返信してくれるし。」


美紗「シーウェでも、返事はくれるん

   だけど...。」


美紗(...寂しいって言ったら 迷惑かな...。)


 あれから日曜日を挟んで


 あの日の事は何もなかったように、いつも通り学校に通ってたら一週間があっという間に過ぎていて


 学校では普通に雪音と会えたから...、不安はそこまであんまり感じてなかったけど...。


美紗(ひとりになると考える時間が増えるから、

   やっぱり色々考えちゃうなぁ...、)


美紗(...あの時の雪音、凄い真剣だったし、)

   

美紗(...雪音があそこまで自信がないって言う

   事は多分そういう事...なんだよね...。)


美紗(....)


美紗(...ううん、雪音の事。...信じるって

   あの時言ったから、)


美紗(これからもずっと一緒にいれるって

   私が信じなきゃ、駄目だよ。)


美紗(...まだそうって決まった訳でもないしっ)


美紗(今ここで不安になるだけ...きっと損、

   だよね、)


美紗「あ~...でも、もう今日から学校行かなく

   て良いんだ...。そっかぁ...、」


美紗(これから寒い中、布団から出なくても

   良いのはそれはそれで...良いかも...///)


ピンポーン


美紗(誰か来た...?)


美紗(お母さんの知り合いの人かな...。

   まぁ、いっか。今日は贅沢に二度寝も

   出来ちゃうんだー...)


美紗(...時間はたっーぷりっあるし...////)


くゆ「姉さんー、お客さんー」


美紗「んー...、私のお布団パラダイス計画は

   数秒で終わっちゃったけど...。まぁ、

   しょうがない...」


美紗「分かった、今行くー」


美紗(でも誰だろ...?)


柚夏「...いや、その、急に来てごめん。」


 急いで布団から出て、階段を降りるとそこには見知った親友の顔があった。


美紗「柚夏...?どーしたの?」


 でも、丁度暇してたから柚夏が来てくれたのは普通に嬉しい。


 ...時間はもうちょっと遅いほうがありがたかったけど


柚夏「クリスマスプレゼント、一緒に選んで

   欲しくてさ...。どうしても一つに絞り

   きれなくて...」


美紗「リア充自慢ですか...、ゆずかーさん...。

   あ、もしかして、私のを選ぶために

   ...///」


柚夏「...。」


柚夏「.......はぁぁ、」


美紗「冗談、冗談っ。結構悩んでる?」


美紗「流石の私も流雨さんのやつだっていうのは

   分かるよ。」


柚夏「美紗だって一応、女の子だし」


柚夏「女の子が貰って嬉しいものとか参考に

   なるかなって思ったんだけど」


柚夏「やっぱり小栗先輩とかに頼んだほうが

   正解だったかな...。」


美紗「ごめんて、こっちはクリスマスぼっち

   確定って決まっちゃってさー。ちょっと

   した嫉妬、」


柚夏「...は?なんで?パーティーか何かで

   埋まってたとか?」


美紗「んー、ちょっと違うけど...。まぁ

   そんな感じかな」


美紗(説明すると長くなるし...雪音が

   スランプっていうのを柚夏に

   話すのもなんか違う気がするし、)


美紗「というかゆずかーさん。私じゃなくて、

   流雨さんに直接聞けばいいのに

   そっちのが確実でしょ?」


美紗「一緒に行ったらデートにもなるだろう

   し。それに...外寒すぎない?流雨さん

にはこっちからメールしとくから...」


柚夏「前賃金」


 徐に柚夏はバックの中に手を突っ込むと透明なクッキーの入ったお菓子の袋の端を私の目の前で摘みながら、左右に軽く揺する。


美紗「いや、うん。親友達て(きって)の

   願いを、寒いからってしょうもない理由

   で断わるとかありえないよね!!」


美紗「こんな寒い日にうちまで来てくれた

   んだもん付き合うよ!!ちょっと、

   準備してくる...!!」


 柚夏からクッキーの袋(おだちん)を受け取って、上着を取りになる早で二階に駆け上がった。


美紗「ゆずかーさんのお菓子、GETだぜぃ

   っ!!」


柚夏「はいはい...、付き合ってくれる気が

   起きたのならそれで良いよ...」


※スライド


美紗「シーウェで流雨さんにどれが良いか

   聞いてみる?」


柚夏「いや...、それだとプレゼント渡すって

   モロバレだし...。」


美紗「んー別にどれが可愛いと思う?くらい

   普通じゃない?」


柚夏「時期が時期だから、」


 近所にあるデパートに向かう途中。私と柚夏は目的地に向かって歩きながらお喋りする


美紗(...というか、登下校以外で柚夏と一緒

   に居るの久々かも。)


 最近雪音の事で色々あったし、たまにはこんなのんびりした日も良いかもしれない。


 ...そう思うと少しだけ気持ちが楽になった。


美紗(多分、一人でいると雪音の事ばっか

   考えちゃうだろうし...。やっぱり親友の

   存在って大きいのかな、)


柚夏「折角だからサプライズにしたくてさ。お菓

子とかも考えたけど」


柚夏「なんだかいつもとあまり変わらない

   気がして」


美紗(私なんてプレゼントのプの字も考えて

   なかった訳なんだけど、)


柚夏「中々決められなくてさ、それにあと2日

   しかないし。美紗に相談に乗って貰い

   たくて...、」


美紗(...少女漫画の主人公の事は好きだけど

   何故か付き合わないイケメンみたいな

   性格してるな。この人、)


美紗(相談する相手、間違ってますよ。

   ※二回告白して振られた人)


美紗(これが昼ドラなら三角関係っぽいけど、

   クリスマス前に私とデートして)


美紗(流雨さん嫉妬したりしないかな、)


美紗「因みに柚夏は流雨さんに何あげたいの?」


柚夏「有名所でバーバリウムとか?ぬいぐるみ

   も良いだろうし...。流雨は絵を沢山書く

   から、やっぱり絵具?」


柚夏「それとも掃除がしやすいように可愛い

   ゴミ箱とかも考えたし、万年筆とかは

   なにか違う気もするしなぁ...。」


美紗「あー...、うん...。...多いね、」


柚夏「自分から聞いておいて...、引くとか

   あります?」


美紗「いや、純粋に凄いなぁって思って。

   それだけ流雨さんの事が好きな訳でしょ?」


美紗「もういっその事全部買っちゃう?」


柚夏「そうしたいのは山々なんだけどね、...

   正月明けて授業料払えなくなっても困るん

   だよ。流石に中卒は雇い先ないだろう

   し...」


美紗(あ、これ一回本気で考えた人がする

   発想だ)


美紗「まぁ、色々見てから考えるのも

   良いんじゃない?二人で捜せばきっと

   良いのが見付かるよ」


柚夏「...だと良いんだけどね。」


柚夏「一応こっちも、美紗と一緒に

   古池さんの捜す予定だった

   から」


美紗「雪音のを?」


 まさか、このタイミングでその名前が出てくるなんて思ってなくて...私の足は止まっていた。


美紗「クリスマスは雪音と会わないよ?

   今は大事な時期だから邪魔したく

ないし」


柚夏「知ってるよ。というかさっきも

   聞いたし」


柚夏「確かに忙しい人に対して、今すぐ会いたい

   っていうのは酷だけど」


柚夏「会いたい時に会いたいって思うのは

   別に悪い事じゃないと思うよ。」


柚夏「クリスマスが過ぎても贈り物は

   出来るし」


美紗「そうだけど...。...でも、」


柚夏「でも、なんて。美紗らしくもない、

   あの古池さんと付き合えたんでしょ。」


柚夏「もっと自信持って良いと思うよ」


美紗(...まぁ 今は友達、だけど...。)


美紗「...うん。」


美紗(あ、でも...、一回でも雪音と付き合えた

っていうのは確かにそうかも...)


美紗「...そうだね、ありがとう柚夏」


柚夏「...というか、美紗。...他に何か、

   あった?...悩みあるなら聞くけど」


美紗「ううん、」


美紗「...雪音にプレゼントあげるの。何か

   今年最後のプレゼントって感じで

   あまり気が進まなくて」


柚夏「だからこそ、あげれる時に

   あげるんだよ。」


柚夏「『あげれなかった』って後悔

   するより、そっちの方が

   あげた物だって幸せだと思うから」


柚夏「今年が最後のプレゼントが

   寂しいなら。年明ける前に

   また何かプレゼントしたら?」


柚夏「文章でも、なんでも。」


美紗「え...、あっ...。...ごめん。柚夏...、」


柚夏「いや、ただあげられる時にあげれば

   良いって話がしたかっただけで」


柚夏「そんな気にしなくて良いよ。」


柚夏「もう二年経つし。ただ、どうしても

   あの時の光景が目に焼き付いて離れなくて

   ね、」


柚夏「...この話すると止まらないから」


柚夏「あんまり話したくないん

   だけど。まぁ、親友って事で

   許して、」


柚夏「...病死とかならまだ忘れられる

   んだけどね」


柚夏「でも、今の私には流雨と美紗がいるから。

   だから、今回美紗を誘ったんだよ。」


柚夏「喧嘩してそのままだったし」


柚夏「クリスマスイブ前ならいるかな

   と思って、」


柚夏「私達、盃交わしあった仲でしょ。」


美紗「あの不味いやつね...、」


柚夏「美紗がいきなり飲みたいって言い出して

   クリスマスに持ってきたやつ。」


美紗「あの時は美味しいと思ったんだよ、」


柚夏「最終的に私が全部飲んだけど。」


美紗「いや、ほんとごめん。苦手な物

   とか食べてくれるし」


柚夏「美紗じゃなきゃこんな事して

   ないよ。」


柚夏「...だからさ、」


柚夏「...悩みがあったらお願いだから

   言って欲しい。言っても無駄とか...

   言ってみなきゃ分からないし、」


柚夏「私は美紗と違って察するのも下手だし

   言いづらいかもしれないけど...。」


柚夏「美紗には、母さんと同じ目にあって欲しく

   ないんだよ」


美紗「...もう当分死ぬ気はないよ、」


美紗「お母さん達にも言われた。」


美紗「美紗ちゃんはほっといたら死んじゃい

   そうって、」


美紗「室内飼のハムスターじゃないんだし、

   皆心配性なんだから。」


美紗(いや、まぁ何度か死にそうになった

   けど...。言ったらもっと心配される

   だろうし...、)


美紗「それに、...私が死んだら、ゆずかーさん

   顔ぐしゃぐしゃにして泣くでしょ。」


柚夏「...当たり前でしょ。」


美紗「あれ?ゆずかーさん...今日なんか...、

   何時もと違って素直じゃないです

   か...、」


美紗「まさか、クリスマス効果...///!?」


柚夏「...冗談も大概にね」

 

美紗「あい。」


※キャプション


美紗(...とりあえず柚夏と一緒に百貨店の中を

   見回って探してみたけど...。)


美紗(まぁ、柚夏って優柔不断だから...)


 これだ!!っていうのが中々決まらなくて、売ってる物を眺めながらあーでもない。こーでもないと苦悩している柚夏を見てると


 柚夏も女の子なんだなー...って、思う。


美紗(流雨さんが好きなもの、かぁ...。

   魚のぬいぐるみとか好きなんだろうなー

   って思うけど、)


美紗(やっぱり、こういうのはあった

   としても鮫とかイルカのぬいぐるみ

   だよね)


美紗(...そういうの探すなら水族館だけど

   クリスマス前に柚夏と二人で水族館は

   流石にデートだし、)


美紗(なんかさっきから柚夏が好きそうなのは

   見付かるんだけど。このなんとも

   言えない狼の人形とか、)


美紗「この狼、柚夏に似てるよね、」


 そういって両手で狼のぬいぐるみを持って柚夏に近付ける


柚夏「...まぁ、可愛いと思うけど...。

   ...美紗さん、此処に来た目的

   覚えてます?」


美紗「...あー、うん。...流雨さんの

   プレゼント?」


美紗(だってさっきから柚夏が側にいるから、

   普通近くの人に合いそうなの考えちゃう

   じゃん、)


柚夏「今日は私のじゃなくて、流雨や古池さんの

   プレゼント見付けるのが目的だった

   でしょ?」


美紗「あ、うん。そうだね...」


美紗「...久々だったから、こうやって柚夏と

   買い物するの。こういう事...。最近...、

無かったじゃん...?」


柚夏「...たまにはこうやって遊ぶのも

   良いでしょ、私は恋人出来ても友達を

   疎かにしない人だから。」


美紗「...凄い、恨みがこめられてる、」


柚夏「自覚ない友人を持つと大変でしょ?お互い」


美紗「ほんと...そうだね、あはは...。」


美紗(...今度はもっと柚夏に優しくしないと、、)


柚夏「取り敢えず今日はプレゼント探しが

   目的だから。買い物はまたお互い時間が

   空いた時ね」


美紗「恋人にかまけて私を疎かにしないでね。」


柚夏「だから今日誘ったでしょ、」


柚夏「でもやっぱり品揃えを考えると向こうの

   方が良かったかな。」


柚夏「学校の近くのお店のが品ぞろえも良いし、

   定期あるからお金もかからないよね?」


美紗(話逸らしたな、かーさん、)


柚夏「時間もあるし、次はそっち回ろうか」


美紗「いや、その前にちょっと行きたい所が

   あるんだけど、」


柚夏「行きたいところ?」


※スライド


柚夏「あー...」


美紗「お菓子とか、オードブルとか...!!

   いっぱいあって目移りしちゃう///」


柚夏「やっぱ...行くよね食品売り場」


美紗「当然っ!!デパ地下って色んな物が

   売ってるから見てるだけで楽しいし、」


美紗「ちょっと高いけどその分見た目も

   良いから購買威力を駆り立てるよね。」


柚夏「購買意欲ね、威力駆り立ててどうするの」


美紗「柚夏はデパートにはそんな

   行かないの?」


柚夏「此処はね、...半額ないと基本的に

   買わないかな。百貨店の食品って

   品質や品ぞろえは良いけど安くないし」


柚夏「まぁたまに行く分なら良いんじゃない?」


柚夏「それと。美紗」


 エレベーターを下って、降りる途中。柚夏がポケットから何かを探るように手を奥に入れる...


柚夏「....あった、」


美紗「...?」


柚夏「はい、...これ。食べて良いよ。」


柚夏「あぁでも喉に詰まらせないようにね」


美紗「え?良いの?」


 と、柚夏から手渡されたのは果物のど飴。


 丁度小腹も空いてたし、素直に受け取る。なんか大阪のおばちゃんみたい


美紗(柚夏、甘いの好きじゃないのに飴を持ち

   歩いてるの珍しいな...。でもくれるって

   言ってるから良いんだよね?)


柚夏「良いよ」


美紗「ありがと?じゃぁ、頂きまーす♪」


 と私は口の中にのど飴を入れてデパ地下へと向かっていったのでした...。


※スライド

  

ひとしきり回って...、


柚夏「...そろそろ場所変える?結局何も

   買わなかった訳だけど」


美紗「んー...なんでだろ、別にそんなに欲しいと

   思わなかったんだよね。何でだろ?」


柚夏「飴舐めてるとそうなるからだよ。知ら

   なかったの?」


美紗「は...、嵌められた...!?お母さんに野菜

   は絶対入れないから食べてみてって」


美紗「ミキサーでぐしゃぐしゃにしたピーマン

   と人参達をハンバーグに盛られた気分

   なんだけど」


柚夏「...体験談?」


美紗「いや、私は人参とピーマン好き。」


柚夏「だったら良いじゃん。」


柚夏「...目ぼしい商品なかったし、買うなら

   最後にね。この時間が一番無駄遣い

   多い時間帯だから常備すると良いよ」


美紗「確かに、それは証明されたのですが...」


美紗(...まぁ金欠の時には良いかも、)


柚夏「それに私ももっと美紗とデートを楽しみ

   たかったし?」


美紗「...雨宮先輩移った?」


柚夏「普通に女の子同士でも言うでしょ、」


柚夏「こっちのがお互い楽しいし良いんだよ。

   私は流雨が本命だからね。」


美紗「本妻の余裕というやつですか」


柚夏「ほら早くしないと置いてくよ、美紗」


美紗「あれ?私、高校生だよね...?」


 これだと欲しいおもちゃを目の前にして子供を引っ張る母親なんですけど、


※キャプション


柚夏「美紗、次で降りるよ。」


美紗「はぁーい」


 ガタンゴトン...と、柚夏とお喋りしながら電車に揺られて30分...。学校の近くの駅で降りてピッ、と改札口に定期券を通す


柚夏「良い時間だし何か食べてから行く?」


美紗「んー...でも、何食べようかなー?」


 スマホを見ると、もう13時10分。


美紗(...色々見て回って学校に来るだけでも

   時間って結構過ぎるよね。)


柚夏「美紗が食べたいとこでいいよ。こっちが

   誘ってる側だし」


美紗「歩いてる途中で美味しそうなのあったら

   入ろっかな」


 ぼーっと...百貨店に向かってお店を眺めて歩いてると駅を曲がった先に


 濃いオレンジ色の背景にドンっと、主張するかのように大きな黒文字で【牛丼】と書かれた看板があった。


美紗「あ、秘屋(ひめや)の牛丼。最近

   秘屋(ひめや)がこっちに来て

   話題になってたんだけど」


美紗「学校も近いし、美味しくて安いから

   昼休みは皆こっちに来るし 混んでるから」


美紗「あんまり行く機会なかったん

   だよね。今は冬休み期間中で人も

   居ないみたいだし、どう?」


柚夏「...いや、うん。まぁ、そっちの方が

   私としても助かるけど」


柚夏「でも美紗は良いの?牛丼で」


柚夏「気を遣ってるなら良いけど」


美紗「今は普通に牛丼のセットが食べたいの。

   生卵とお新香のセット食べたい」


柚夏「確かに美味しいよね。お新香」


瑞撫「店長、お肉増し増しで、お代わり

   ですわっ!!」


店長「あいよ、ほんとよく喰うよな

   嬢ちゃん。」


店長「もうすっかりウチの常連さんになっち

   まってよぉ。此処にいる奴ら全員

   嬢ちゃんにかなわねぇよ」


瑞撫「やっぱり牛肉は噛みごたえがあった

   方が最高ね!!いくらでもいけちゃう

   わ~~!!」


瑞撫「高いお肉って食感がなくて、あんまり

   食べてる気しないのよね。それが良いって

   人もいるけど」


瑞撫「やっぱりお肉はこうでなくちゃっ♪」


美紗(あっ、...瑞撫先輩だー、って...)


 美人で細身の女性が大皿を掲げながら笑顔でおかわりーと言ってる姿は皆も凄い気になるらしく、


 食べてる人達の殆どが瑞撫先輩の方を見て食べてる...。


美紗「はっ!?」


 そこにあったのは一個1500円ぐらいしそうな、大食いの人でも音をあげるだろう量の牛丼を綺麗に平らげた、後のお皿だった。


美紗(この人のどこに、それを入れるだけの

   質量が...、、)


瑞撫「あら、美紗ちゃんじゃない~///!!

 今日も一段と可愛いわね、お姉さん

   ちゅーしちゃいたいわっ///」


美紗「瑞撫先輩っ///、というか、そ、それ...!!

   そんなに食べちゃって、カロリー

   大丈夫なんですか!?」


 ぎゅうぎゅうと瑞撫先輩に抱き締められる私、流石にお腹は結構出てるみたいだけど。何故それでその体型を維持できるの、、


柚夏「えっ。気にするとこ...、そこ...?」


瑞撫「そうねぇ...。夜に激しい運動をすれ

ば、大丈夫よ?」


瑞撫「食べた分だけ動けば、問題ないわね?」


美紗「夜の、激しい...。運動...///?」


 丁度空いてたカウンター席の瑞撫先輩の隣に座って、注文票を取る。


 ...というか、夜の激しい運動ってなんだろ...///、、


店長「嬢ちゃんのお友達かい?注文が決まっ

   たら遠慮なく、声掛けてな」


美紗「あ、はーい。」


瑞撫「いいえ。この子はお友達なんてチャッチ

   な概念じゃ表せないわ店長。そう...っ、

   言うなれば妹ちゃんっ...よ!!」


美紗「妹ちゃん...?あ、私牛丼大盛でお願い

   しますー」


柚夏「お新香じゃなくて?」


柚夏「いや、まぁいいけど。私も同じ奴で」


店長「まいどー!!」


店長「それより、どうだい?嬢ちゃん。

   俺の息子は?ちょっと女々しいけど

   いいやつだぜ?」


店長「あいつも嬢ちゃんの事気になってる

   みたいだし。なんなら俺が紹介してやる

   けど」


美紗(凄い...、瑞撫さんナンパされてる...)


瑞撫「ごめんなさいね。私、男より可愛い

   女の子が好きなのよ。孫が欲しい

   なら他をあたって頂戴?」


瑞撫「他にも可愛いお客さんはいるでしょ。」


美紗(流石先輩...、断るのもばっさりで格好

   いいなぁ...。)


店長「もったいねぇなぁ...、お嬢ちゃん程

   顔がよけりゃ、男が皆黙ってねぇ

   ってのに」


瑞撫「...そうねぇ。私、男性相手には

   手加減、出来ませんの」


瑞撫「とくに夜は興奮が抑えられなくって...、

   私、困ってしまいますわ...、」


 にっこりと、微笑みながらまとめた割り箸の中央を掴んで何をするんだろって思いながらみてると


 ....バキッ、と割り箸の屑がボロボロと手からこぼれ落ちる。


瑞撫「ん...?...箸が柔らかすぎて壊れて

   しまいましたわね。...お箸代は此方で

   足りるかしら?店長さん♡ 」


店長「じゅ…十分です…」


 真っ青な顔をしながら店長が逃げるように厨房の奥へと消えて行くのと同時に、


 瑞撫さんは凄く不機嫌そうな顔で大盛の牛丼をガツガツと食べ始める。


瑞撫「此処の牛丼は美味しいけど、店主が

   男尊女卑なのがちょっとね~。私には

   マイスイートハニー雀ちゃんがいるのに、」


瑞撫「脳内がピンク!!人の事言えないけど、、

   あのおっさんが親とかないわ。結婚する

   気ないけど」


瑞撫「恩を仇で返すとかcrazyの極みかしらね~?

   ねー、美紗ちゃんもそう思うわよね~?」


美紗「柚夏もあれ出来る?」


柚夏「いや、無理だけど。」


美紗「そうなんだ...」


美紗「.....。」


瑞撫「そうねぇ...。少し、びっくりさせ

   ちゃったかしら?」


瑞撫「...怖かった?」


 と少し寂しそうな顔で瑞撫さんは笑顔でそう言った。その笑顔はとても優しくて、でも...。無理して笑ってる顔だった。


美紗「っごい...!!」


美紗「さっきの瑞撫さん、スッゴいっ、

   格好良かったですっ///!!、、」


美紗「瑞撫さんって強いんですねっ...///!!、

   男の人相手に自分の意見を

   ちゃんと言えるの凄いです!!、」


柚夏「えっ、強...え?」


美紗「こう、固い蓋とか開けちゃうの!!

   さっきのほんと、凄かったよねっ、」


美紗(...雪音がいるのに、私。何言ってるん

   だろう)


美紗「柚夏、さっきの見た!?こうやって、

   割り箸をぐーってさ!!ぐううっ...!!」


柚夏「怪我するから、止めなさい」


美紗「んー、やっぱり『私には』出来ないや。」


美紗(これで瑞撫さんが雀さんじゃなくて私

   を本気で好きになったら?)


美紗(瑞撫さんが強いって分かった瞬間、

   気に入られたいって気持ちが私の中を

   一瞬でよぎった)


美紗(今まで適当にあしらってた瑞撫さんが

   見たら...瑞撫さんの強さ目的だって

   すぐ...、分かるのに、)


美紗(柚夏だって側にいる。)


美紗(瑞撫さんが強いって分かった瞬間、

   今までの事は全部どうでも良いの?)


美紗(瑞撫さんがいるから。柚夏はいらないの?)


美紗「私、昔から、強い人が好きなんです。

   頭でも力でも。」


美紗(勝手に言葉が出て...、この人に気に入られ

   たいって)


美紗(本能に突き動かされる。)


美紗「...どうしたら、」


美紗「瑞撫さんみたいに強くなれますか...?、」


瑞撫「そんなの簡単よ。」


瑞撫「まず、自分を愛する事」


瑞撫「他人と比べない。我が儘な自分でも良い

   と思う」


瑞撫「そして次に自分の出来ない事はしない。

   手を抜く時には手を抜いて必要のない

   時は省エネ。」


瑞撫「わりとそっちの方が皆に好かれるのよね」


瑞撫「最後にこの人生を思いっきり楽しむ事。」


瑞撫「人生は一度きりというけど、実際

   人って何度も生まれ変わってて」


瑞撫「その時の記憶がないだけで、ちゃんと

   前世の魂は受け継がれているの。」


瑞撫「若くして交通事故で亡くなった子は

   前世でそういう目に合わせた人の生まれ

   変わりだし、」


瑞撫「人が死ぬのにもちゃんと理由が

   あるのよ。私達が生まれて来たのにも

   ちゃんと理由はある」


瑞撫「そしてそれを知ってるのと知らないの

   とでは、人生が大きく左右されるの

   もね。」


美紗「...勉強になります、」


美紗(焦ってるのバレて逆に、諭された...。)


瑞撫「ふふ、美紗ちゃん。あなたは本当に

   いい子ね。お姉さん、もっと美紗

   ちゃんの事が大好きになっちゃったわ

   っ...///!!」


瑞撫「ぎゅー////、、」


瑞撫「これだから妹ちゃんライフはたまらない

   わねっ!!え?もしかして、二次元の

   世界から来ちゃった妹ちゃんなの///?」


美紗「私は普通にお母さんとお父さんから生まれ

ました。あ、牛丼来た。柚夏」


美紗(見透かされてるのがちょっとなぁ...、)


店長「牛丼、大盛お待ちー。そ、その、

   ...嬢ちゃんさっきはすまなかった。

   本当に嬢ちゃんには感謝してんだ」


店長「今回の料金は無料で構わないから、

   また店に来て欲しいんだが...。やっ

   ぱり駄目だよな...」


瑞撫「近いからまた来ますわ。可愛い子を

   紹介して頂ければ私はそれで構い

   ませんもの」


店長「おっ、それなら力になれるぞ」


 お店の人が運んできた新しい箸と牛丼を受け取って。頂きまーすっ!!と手を合わせてから、牛丼に箸をいれる...。


 真ん中をかき分けて、空いた空間に山吹色の卵をとろっとかけるとぷるんとした濃厚な黄身がご飯の上から私を見つめるよう。顔を出して...。


 そんな傷一つない美しい黄身を外から箸でつつくと...美味しそうなオレンジの液がゆっくりと、白いご飯に絡み合っていく...///、


美紗「わぁ...、すっごい、濃厚~...♥️」


瑞撫「なにかしら!?その素敵な台詞の言い

   回しはっ///!!お姉さんのえちえち

レーダーが反応しちゃうわっ///!!」


※キャプション


美紗「ふぅ、ご馳走様でしたっ...!!」


美紗「...美味しかったぁ~///」


瑞撫「ところで美紗ちゃん達はどうして

   此処に?」


美紗「お腹が空いてて、牛丼を」


瑞撫「ふふ、そちらではなくってよ。美紗ちゃん

   も目的があって此処に来たのでしょう?」


美紗(てっきり、牛丼屋さんに来た理由かと

   思って普通に答えちゃった...///、)


 瑞撫さんが聞きたかったのは、冬休みなのになんで私達が学校の近くまで居んだろうっていう目的の方かな、

 

美紗「あは、は...なんか、いやしんぼうみたいに

   なっちゃいましたね。」


瑞撫「だがっ、...それがいいっ///!!食いしん坊

   いやしん坊キャラは萌え度アップ

   だから、私的にはかなり美味しいわ///!!」


 がしっと、そう言いながら私の肩を掴む瑞撫さん。


美紗(瑞撫さん、ボディータッチするの

   好きだよね...)


美紗「えっと...、クリスマス用のプレゼントを

   探しにきたんです。柚夏の、ね?」


柚夏「...美紗のも。だけどね」


瑞撫「なるほど、ね。それなら確かにここら

   辺りはうってつけね?都会だから品揃えは

   良いでしょうし」


瑞撫「贈り物には困らないでしょう。」


美紗「だって、良かったじゃん!!柚夏」


柚夏「期待出来そうですね。」


美紗「ねっ、」


瑞撫「...ところで、美紗ちゃん」


美紗「はい?」


瑞撫「古池様から。例のお話は

   もうお聞きしたかしら?」


美紗「...あぁ、はい...。瑞撫先輩は知ってたん

   ですね...、」

 

瑞撫「...やっと話したのねー。話してなかったら

   お姉さんネタバレでもしてやろうかしらと

   思っていたのだけれど、」


瑞撫「まぁ。...あの子も本当に大変ね。」


 大盛りのお代わりを平らげた瑞撫さんは苦しそうな素振りを一切見せることなく、はにかんだ顔で答える。


柚夏「ネタバレ?...何の?」


美紗「んー...、雪音が引っ越すかもって話。」


柚夏「引っ越すかもって...、えっ?」


美紗「雪音のお母さんが前から引っ越しを考えて

   て、その予定が思ってたより早くなった

   んだって。」


美紗「でもコンテストで金賞を取ったら引っ越さ

   なくて良くなるからって」


柚夏「それ、本当に大丈夫なの...?」


美紗「大丈夫も何も。」


美紗「私一人が雪音の引っ越しを嫌だって

   言ったところでどうしようもない

   でしょ」


美紗「...どっちにしろ、今は雪音を信じる

   しかないよ。」


美紗「苦手なテーマだから。前会った時結構

   精神的に参ってて、元気出して欲しい

んだけどね。」


瑞撫「あぁぁぁっぁあっーーー!!!なんて、

   健気なのーーーーーっ!!...なんとか

   してあげたいっ!!」


 悲劇のヒロインを見た、シンデレラに出てくる妖精のおばあさんのように


 瑞撫さんは急に立ち上がってから、ダンッ、と嘆くように膝をつけて頭に手をついた...。


美紗(...びっくりした、)


瑞撫「けれど...、流石の私も奥方様には逆らえ

   ないですわ...、あの執事さんを敵に回すの

   は極力避けたいもの。」


瑞撫「彼女は正真正銘の化け物よ」


美紗「それって、...麗夜さんの事ですか?」


瑞撫「そうそう。それに執事さんにはお世話に

   なってるのもあってね...、」


瑞撫「晴華ちゃんも居なくなってしまうし、

   朝乃たんもしょぼんとしてたから。

   何とかしてあげたいのだけれど...」


美紗(瑞撫さんでも。麗夜さんの事

   苦手なんだ...)


美紗(でも...、本当に自分でも...

   あの時よくお話出来たなぁって思う)


美紗(追いつめられてたのもあるけど

   今考えるとほんと凄い無茶な事

   したよね私...。)


瑞撫「力になってあげられず、...ごめんなさい」


美紗「えっ、」


美紗「そんな事ないですよ、私だって雪音に

   対してなにも出来てないですから」


美紗「瑞撫さんに謝られると私の方も辛く

   なっちゃいます。」


美紗(瑞撫さんにまで気を使わせて...、)


美紗(...あの時、麗夜さんに雪音の事信じて

   ないって言っておきながら)


瑞撫「力になってあげられず、...ごめんなさい」


美紗「えっ、」


美紗「そんな事ないですよ、私だって雪音に

   対してなにも出来てないですから」


美紗「瑞撫さんに謝られると私の方も辛く

   なっちゃいます。」


美紗(瑞撫さんにまで気を使わせて...、)


美紗(...あの時、麗夜さんに雪音の事信じて

   ないって言っておきながら)


美紗(一番雪音の事信じられてないのは

   私なのかな)


 雪音の精神が万全な状態ならまだしも、見てるこっちが何も言えないくらい


 あんな疲弊しきった雪音に金賞が取れるとは思えなかった


美紗(雪音は続けるって言ってたけど

   それより先に精神的に元気になって

   欲しい、)


美紗(出来ない事をし続けるのってほんとうに

   辛い事だから...)


美紗「......」


美紗「...後悔ない、生き方をしたいって。

   雪音言ってた」


美紗「...うん。」


美紗「私、...雪音にプレゼントするよ。」


美紗「邪魔したら悪いかなって思ってたけど

   此処であげなかったら多分一生後悔すると

   思う」


 雪音の精神が万全な状態ならまだしも、見てるこっちが何も言えないくらい


 あんな疲弊しきった雪音に金賞が取れるとは思えなかった


美紗(雪音は続けるって言ってたけど

   それより先に精神的に元気になって

   欲しい、)


美紗(出来ない事をし続けるのってほんとうに

   辛い事だから...)


美紗「......」


美紗「...後悔しない、生き方をしたいって

   雪音言ってた」


美紗「...うん。」


美紗「私、...雪音にプレゼントするよ。」


美紗「邪魔したら悪いなって思ってたけど

   此処であげなかったら多分一生後悔すると

   思う」


美紗「プレゼントはいつ貰っても

   嬉しいもんね。柚夏」


柚夏「うん、そうだよ。美紗」


美紗「見るだけで思い出に残るような」


美紗「そんな素敵なプレゼントが出来たら

   良いなって」


美紗「いつもありがとうって大切な人に

   伝えられる、そんな贈り物がした

   くて。何か良いの...ありませんか?」


 柚夏からじゃない、今度は私から。


ちゃんと胸をはって雪音に贈れるものを探そう


瑞撫「...そうね、...それでしたら」


瑞撫「とっても良いお店を存じておりますわ」


※キャプション


 連れられるように、私達は期待に胸を膨らませながら瑞撫さんのお勧めのお店に向かって歩いていた。


美紗「電車の方に戻っていってますけど、電車に

   乗るんですか?」


瑞撫「わくわくして小動物みたいにくっ付いて

   歩く美紗ちゃんも可愛いのですわぁ...///」


美紗(え、それ目的でちょっと早めに歩いてた

   の)


 柚夏普通に付いてくるから私がちょっと遅いのかなって思ってた。


瑞撫「ふふっ、もう少し焦らしても良かったの

   ですけれど着いちゃったから」


瑞撫「まったく。空気が読めないわね~」


瑞撫「もう少し美紗ちゃんとのデートを楽しみ

   たかったのに、」


美紗(ライオンに狙われるのって

   こういう気持ちなのかな...)


美紗「何のお店なんだろう...?」


柚夏「さぁ...?」


カランコロン、と鈴の音(ね)と共に店に入る


瑞撫「大事な人にあげるプレゼントと

   言ったら、」


瑞撫「私がお勧めするのはただ1つ。

   このお店しかありませんわ」


 アンティーク調の少し重たいドアを開けると、宝石のような丸い綺麗な石が沢山視界いっぱいに広がった。


 ブレスレットというより装飾に型どられた小さなアクセサリー専門店みたいな感じ...、指輪とかイヤリングが黒いショーケースの中に飾られてる


美紗(...凄く、綺麗...。パワーストーン...?)


瑞撫「取りあえず二人とも中に入って入って。

   此処は、土足で結構ですわよ」


??「いらっしゃいませ、お客様。本日は

   どの様な...。...ご主人様」


??「お帰りなさいませ」


瑞撫「うふふ、寂しかったかしら黒沢さんっ!!

   お友達連れて来ちゃったー///」


 雪音のお家の執事さんとは違って、大人の女性らしい美人のメイドさんがそこにいた。


??「そちらのご返答は別途料金となって

   おります。よろしいでしょうか?」


瑞撫「ベット料金///!?お仕事が終わったらね!!

   はすはす///!!」


??「.........」


瑞撫「お手数お掛けしちゃうけれど、お客様に

   お紅茶を出して下さるかしら?」


??「畏まりました。ご主人様」


瑞撫「その人を強く思うパワーストーンは

   一生の物。...これ以上にうってつけの

   贈り物はないですわ」


瑞撫「お父様達は、パワーストーンなんて

   外道と仰るけれど...。崩石にだって

   人の意思が宿るのよ?」


瑞撫「...まぁ、そんな話はどうでもいいの

   ですけれど。パワーストーンには一つ一つ

   意味があってね」


美紗(ん?お父様達...?)


美紗「って...、えっ!?、此処瑞撫さんのお店

   なんですか!?」


瑞撫「まぁ、そうね?2人しかいないから

   完全なオーダーメイド製になってしまう

   けど...。」


瑞撫「黒沢さんって、とても器用だから

   お姉さん今はとっても楽できて最高よ///!!」


黒沢さん「ご主人様、お言葉ですがお客様が

     お見えになられますので...」


美紗「私、和服のメイドさんって初めて

   見たんですけど」


美紗「お洋服、凄い可愛いですね。

   帽子みたいなカチューシャ

   可愛いー」


美紗(ちょっと着てみたいかも。)


美紗「和メイドの方がシックで良いなぁ...

   こう、メイドさんって近寄りづらい

   イメージだけど」


美紗「和メイドさんは団子屋さんとかにも

   居そうで良いね。」


柚夏「可愛い子が着ると凄い可愛いですよね。」


黒沢さん「恐縮です...、」


瑞撫「わかりみが、深いわっ!!」


瑞撫「この子を初めて見たとき、私は感じたの。

   和ゴス///!!やっば...、超、好み、

   ドストレート...っ///、満塁ホームラン!!」


瑞撫「欲望のままに、抱き締めてよしよしして

   可愛がってから、はすはすしたいっ!!

   ぺろぺろ、ぺろぺろ///って、ねっ!!」


美紗「あは、は...流石にそこまでは思ってない

   ですけどね...。」


黒沢「セクハラには慣れていますので。

   大丈夫ですよ」


黒沢「お褒めにあずかり至極光栄でございます、

   ご主人様。お客様もごゆっくり御品を

   拝見して頂ければ私と致しましても

   幸いでございます、」


瑞撫「こう見えて、この子中学生なのよ?

   お姉さん手が出せなくて辛いわ」


美紗「中学生っ!?」


黒沢「これでも一応中学三年生です。」


美紗(って、事は私よりも...、...この人、年下?!

   というかくゆと同い年!?!?、嘘でしょ!?)


黒沢「お望みでしたら。ご奉仕も致しますが」


瑞撫「めっ!!手を出せないから中学生なの!!」


黒沢「意味が判り兼ねます。...ご主人様には雀様が

   いらっしゃいます、私に好意を抱く理由が

   何一つありません」


美紗「私、自信なくしそうかも...。」


※スライド


美紗「種類も色々あるね、どれを買うか

   迷っちゃうなぁー...」


 アメジストと小さなシールに書いてある石を落とさないよう両手でゆっくり上に持ち上げて、


 電灯の方に向けてみてみると光が透き通って凄く綺麗に見える...。


美紗(綺麗、なんだけど...。うーん...、雪音と

   言ったら真っ先に紫が思い浮かんだん

   だけどなぁ...)


美紗(なんだろう...。これは違う気がする...)


 コトン、とアメジストを元の場所に戻す。


美紗「どれにしようか迷うね。」


 気分を変えて、柚夏のとこに戻ると柚夏はパワーストーンをじっと見ながら顎に手を当てて何か迷ってるみたいだった。


柚夏「いや、石自体はもうどれ買うか決まって

   るんだよ。ただどれにしようかなって。」


柚夏「同じ種類でも全く一緒って訳じゃない

   からね。...こういうのは大事にしたい

   から」


美紗「んー、早いなぁ...、さっきまで凄い

   悩んでたのに随分即決じゃない?」


美紗「どんなの?見て良い?」


柚夏「これだよ、...好きなんだ」


 と柚夏が差し出したのは青い濃い色をしたつやつやした石。中には金粉が入ってるのか、キラキラ光ってる。


美紗(デパートの高いチョコレートとかで

   こんな色のみたことあるけど、...これが

   モチーフなのかな?食べれそう)


美紗「本当に石みたいな石だね?でも、

   金粉が入ってる...。なんか柚夏が

   選んだじゃないのかも...、」


美紗「こういうの好きなの?」


柚夏「ちょっとゴテゴテしてるし、結構威圧感

   あるよね。」


柚夏「...けど、小さい頃は星みたいで本当に

   綺麗だなって思ってたんだよね。多分

   あの石が特別綺麗だったんだと思うけど、」


柚夏「...でも。それでもこの石は私にとって

   流雨との思い出の石なんだ。」


美紗「へー、なんか感動的。思い出の石って

   素敵だね」


美紗「運命の出逢い。って感じで」


柚夏「なのかな...、自分ではよくわから

   ないけど」


美紗「...というか、最初から

   それ選べば良かったんじゃ...」


柚夏「...んー、...いや まぁ、待ってるし。

   それにゆっくり選んだ方が気持が

   籠ってるって言うでしょ?」


柚夏「さっきの美紗の受け売り。」


美紗「自分で言った手前、言い返せない...」


美紗「カーさんに先を越されて

   しまった。」


柚夏「美紗の方が付き合うのは早かった

   でしょ。ま、...大いに悩んで下さいな、

   命短し恋せよ乙女ってね」


美紗「ぬぅ...」


 柚夏はそう言いながら、どれにするか決めたのか、机に向かってお客様箱用のメモを書き初めてる..。


私も早く決めないとなぁ...。


美紗(雪音に見合う石って、どんな石

   なんだろう...?)


瑞撫「さて、どの子が美紗ちゃんを選ぶの

   かしら?」


美紗「...石が人を選ぶんですか?」


 顔をあげて瑞撫さんをみると、瑞撫さんは普段みないくらい。とても穏やかな表情をしながら飾ってある石達を眺めるように見ていた。


瑞撫「えぇ。この子達はただの石ではなく

   ってよ、」


瑞撫「必要としてる方に対してはちゃんと

   返事もしてくれるし、その方に必要な

   パワーだって分けて下さるの」


瑞撫「それに、この子には本当にお世話に

   なってるし 私がこのお店をやれてるのも

   この子達がいてくれるお陰。」


瑞撫「高校生が一人でお店してるのに万引き

   とかも起きた事ありませんし、なんか

   わりと良いことあるのよね。」


瑞撫「別に宗教じゃないけれど、」


瑞撫「このお店をやって良かったなって思う」


瑞撫「黒沢さんや雀ちゃんにも逢えましたし、

   美紗ちゃんに続き。妹ちゃんハーレムも

   夢じゃないかもっ!!」


美紗(私、いつ瑞撫さんのハーレムに入ったんだろ...)


瑞撫「この子達がいるのといないの

   では安心感がまったく違いますのよ?」


瑞撫「日本の擬人化文化は本当に素晴らしい

   ものですわ...、」


 と、頭についている髪飾りを触りながら本当に嬉しそうに語る瑞撫さん。何か最後違和感があったような気もするけど、気のせいかな


美紗「瑞撫さんの頭に付いてる桜の子、とっても

   綺麗ですよね」


瑞撫「えぇ、この子はちょっと値が張っちゃう

   けれど。ブラックダイヤモンドで

   出来てる子で、」


瑞撫「...私の初めて作った物だから、気に入って

   いますわ」


 と、桜の髪飾りをとって手の平に大事そうに乗せて瑞撫さんはちょっと照れるようにほほ笑む


 もうそれだけで瑞撫さんが本当にその子を大事にしてるんだなぁっていうのが凄く伝わってきた。


美紗(照れてる瑞撫さん可愛いな、)


瑞撫「この子は通常なら、10万前後って

   ところですわね?指輪なら加工ありで

   プラス二千~くらい。」


美紗「じゅ、じゅうまん...」


美紗(お小遣いが五千円として、10万円

   だから...20カ月分?)


瑞撫「学生にはちょっとお高いですわよね。」


美紗(ちょっとどころではない。)


瑞撫「これでもダイヤモンドに比べたら、

   あまり人気ではないの。私は大好き

   なのだけれど、貴石の人気が凄まじ

   すぎるのよ」


瑞撫「どの子も魅力的な子なのだけれどね、

   ...美紗ちゃんにはこの話はまだ早かった

   かしら?。ふふ、ごめんなさい」


瑞撫「ついつい、営業モードになって

   しまいましたわね」


美紗「...んー?」


瑞撫「何かあったかしら?」


美紗「いえ、なんで石の下に沢山の石が

   いっぱいしいてあるのかなーって」


美紗「...ちょっと不思議に思って」


 ガラスケースの中にさっきよりも大きなアメジストの結晶があって、その下に沢山の透明な石がひいてあったから...。


瑞撫「あぁ、それはね。スピリチュアルな

   お話になってしまうのだけれど」


瑞撫「この下にひかれてるのは全部水晶なの、

   水晶は石を清めてくれる効果があってね。」


瑞撫「いうならば、縁の下の力持ちってところ

   かしら?」


美紗「....」


美紗(...透明な石って私、...好きかも。

   それに、氷みたいだし。冷たくない、

   氷...?)


美紗(透明な氷で出来た、結晶...)


 その瞬間、私の頭の中にあるイメージがぱっと思い浮かんだ。雪音にピッタリの、自信をもってこれなら雪音にあげられる!!


美紗「彫刻みたいな加工って、出来たり

   しますか?」


瑞撫「勿論。この桜だってそうやって

   作られたものですもの、大船に乗った

   つもりでお姉さんを頼っていいの

   よ?」


瑞撫「そのアメジストで、何か作るのね。

   ふふん、お姉さんに任せて頂戴」


瑞撫「オーダーメイドはお姉さんの得意分野

   だから!!!、」


美紗「いえ、この透明な石のもう少し大きなの

   が良いんですけど...」


瑞撫「え?水晶...?」


美紗「えっと...、おかしいですか?見てたら、

   完成した物が思い浮かんできて...。」


瑞撫「いえ、おかしくはないわ。...ただ、水晶

自体に選ばれる人って初めて見たの。

その子は染まりやすくて本来、主張が

   ない子だから」


瑞撫「それに管理がちゃんとしていないと

   すぐに濁ってしまうし...」


美紗「箱の中に入れて飾れるのが良いんです

   けど、うーん...」


瑞撫「ごめんなさい、大丈夫よ、大丈夫。」


瑞撫「...ふふっ、水晶を主役にするなんて、

   お父様なら逆立ちしてでも絶対に考えら

   れない発想でしょうね。...今から腕が

   鳴りますわ」


 メイドさんに手渡された紙に、忘れてしまわないうちに思い浮かんだ特徴をばーっと書いておく。


 というか、イメージも凄いはっきりしてたから、完成図まで絵にしちゃった。


黒沢「イメージは、...はっきりとご理解でき

ますが」


美紗「出来そうですか...?」


黒沢「申し訳ございません。見た限り、私では

技術不足の点が大きく...」


瑞撫「どれどれ?」


 メイドさんから瑞撫さんは私の書いた紙を受け取って、すぐに満面の笑顔を見せる。


瑞撫「あっ、凄いわ!!これ彼女のイメージ

   ぴったりじゃない!!」


瑞撫「美紗ちゃんデザインセンスのレベル

   高いんじゃなくて?!あーうちに一人、

   欲しいですわ...///」


美紗「本当ですか!?」


瑞撫「お金で美紗ちゃんが買えるなら!!」


美紗「あっ、そっちじゃないです」


瑞撫「そうねぇ...。このサイズならわりと

   大きいし、問題なく出来そうっていうの

   が本音ね」


瑞撫「どうしても心配ならほっぺにキスして

   「これで出来なかったら、

   許さないからね。お姉ちゃん」って」


美紗「私瑞撫さんだったら、ちゃんと出来る

   って信じてますから!!大丈夫です」


瑞撫「うん、そうね。...折角だからしてみな」


美紗「いですっ」


美紗(瑞撫さんのこういうノリは嫌いじゃない

   けど...私がキスするのは、雪音だけに

   したいもん)


※スライド


美紗「「雪音が忙しいのは分ってるけど、

    どうしてもプレゼントしたいのが

    あるの。プレゼントだけでもいい

    から渡したいです」」


 アクセサリーを作るために部屋の奥へと笑顔で消えていった瑞撫さんと別れて、


 店内から出ると、忘れていた寒気が襲ってくる。


美紗「さむっ」


柚夏「厚着してこないから...」


 ふぅっと、自分の吐いた白い息が消えていく。こういうのを見てるとやっぱり冬なんだなーって思う。


美紗「ネックレスとかイヤリングとか色々

   あったけど、柚夏は何を作ってもらう

   の?」


柚夏「秘密、」


美紗「えー、付き合ったお礼に教えてくれて

   も」


柚夏「そういう美紗こそ。古池さんにメール

   でなんて送ったの?」


美紗「んー?、...内緒♥️」


柚夏「美紗だって同じじゃん。人のこと

   言えないでしょ」


美紗「私のは内緒だもんー」


美紗(...クリスマスまでとはいわないけれ

ど、今年中にもう一度、雪音と...会え

   ますように。)


※キャプション

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