第22章「雪音のひみつ、期待と裏切り、」【みさゆき】

じっと私の目を見詰める雪音は見たこともないくらいの満面の笑顔だった。


美紗「あの...、雪音さん...///?」


雪音は両手でぎゅーっと私の事を抱き締め、そしてすりすりと頬に顔をすり寄せ始める。


美紗「ゆ、ゆ、ゆっ...///!!雪音///?!」


.....そう、私は今。雪音に押し倒されていた。


美紗「え///!?お菓子が駄目ってそういう

   こと///!?」


雪音「美紗さんー、もっと雪音にお菓子を

   下さい~~♥️♥️」


 あの雪音から考えられない言葉が出てきてるんですが、これはどういう状況ですか...?


雪音「ねぇー、早くー...」


 普段感情が無い分、むすーっとした顔で機嫌悪そうに早くお菓子を出せとせがむ雪音。


美紗「お、お菓子?えっ、とさっきのクッキー

   がまだ机の上にあるんじゃないかな」


雪音「えへへ、美紗さん大好きですよっ///」


雪音はそう言って、私の唇にキスをした。


美紗「え///!?ええぇぇえええええ///!?」


 雪音はむしゃむしゃと残りのクッキーを手当たり次第貪っている。


美紗(というか、さっきの「食べて良いん

でしょうか?」ってこういう事...!?!?)


美紗「...はっ、、」


 私はぼーぜんと口を開けて、すぐにはっと我に返った。


美紗「た、橘さんっ。橘さんに電話

   しなきゃ!!」


 急いで立ち上がって、橘さんのシーウェから電話を掛ける。プルルッと5回目のコールの音が鳴る。


美紗「...橘さん、忙しいのかな、、お願い早く出てっ!!」


晴華「美紗ちゃん?」


6回目のコール音でようやく橘さんが出た。


雪音「ねー、もうないのー?」


 お菓子を食べ終わった雪音が肩に抱きついてくる。何か口に入れたいのかがじがじと私の首に噛みつく雪音、


美紗「...くっ、首ぃぃ...っ///!!!」


晴華首刺されたの...?


美紗「えっ、なんですか、

   そのホラー展開?!」


美紗「どうしたら良いですか!?

   このままだと私、ドキドキ死します

からっ、絶対///!!」


晴華あー...


晴華《ゆっきーにお菓子あげちゃった

   んだね。ゆっきー可愛いでしょー?

   感情吐き出してないと酷くなるから》


晴華《定期的にお菓子をあげてたんだけど...、

   今の聞くとゆっきーも色々溜まってる

   みたいだねー》


美紗「はい。なんかギャップで私の気持ち

   も色々大変ですっ!!」


雪音の手が、私の太ももに...っ!!!


晴華《身体は正直だねー、何時もの

   ゆっきーだってゆっきーって事は

   忘れちゃだめだよー?》


晴華あと、


晴華《ゆっきーあったことちゃんと覚えて

   るから、変な事しないようにねー》


美紗「えっ、それ、本当ですか...?」


晴華《もしかして...美紗ちゃん。

   ゆっきーに何かしちゃった後?》


美紗「...向こうからキスされたんですが、

   それは雪音的には あ、アウト

   ですか?(小声」


晴華《...ふ、ふふふっ。あはっ、あはは...

あー...ゆっきーがキスしちゃったん

だね》


 こっちは真剣なのに笑うなんて橘さん酷い...。


晴華《思ったよりも可愛い報告で安心

   したよー、》


 そんな事はいず知らず、雪音はスリスリとまるで猫科の動物のように私に顔をすりつける。


雪音「美紗さんー♥️(ゴロゴロ」


美紗「橘さん...、」


晴華《そうだねー...ゆっきーが満足するまで

優しくしてあげるのがお勧めなんだけ

   どねー、感情発散、根本的解決になるからー》


美紗「...他にないですか?」


美紗(というか、こうなるの分かってて

   なんでお菓子食べたの~、雪音ー...、、)


 甘えてる雪音と眼が合う。


美紗(...うっわー、可愛い、、っ////、、)


晴華《甘味を薄める水や紅茶で中和すると

   いいよー。仕方ないけど、誰かに見ら

   れちゃったら不味いもんねー》


美紗「ありがとうございますっ!!」


 急いでお茶を探す、水筒の中に麦茶があるから...。


美紗「雪音、喉乾いてない?ほら、クッキー

   食べて喉乾いてないかな?」


雪音「それよりお菓子ー、」


美紗「橘さん!?拒否されたんですけど!!」


晴華《ごめんー、美紗ちゃん私そろそろ

   お仕事戻らなきゃー。あ、でも

   ゆっきーにあんまりお菓子食べ

   させ過ぎたら駄目だよ?》


晴華《お砂糖の摂りすぎは身体によくない

   からねー。それじゃぁ、頑張ってねー》


 頼みの綱が切られた。ツーツー...と切れた電話音だけが空しく耳に響く...。


 えー...どうしたら雪音飲んでくれるんだろ...。


雪音「お菓子...、」


美紗「う...そんな泣きそうな顔されても...

   私は柚夏と違ってお菓子作れない

   し、...柿ピナ食べる?」


雪音「それはおやつじゃない。甘いのが

   良いのーっ!!」


 ナンテコッタイ、本日の雪音は何時もより口が尖っております!!、なの!?


美紗「柿ピナ、美味しいのに...。」


雪音「ねぇ、それより本当に

   私の恋人になりたいの?」


 さっき橘さんが感情発散って言ってたから、この雪音が喋ってる事は雪音の心の底の本音って思って良いんだよね...?


美紗(凄いぐいぐいくる、)


美紗「う、うん」


雪音「だって恋人同士ってキスとかする

   しょ?今まで沢山の本を読んで

   きたけど、大きな木の下で愛を

   囁いたり、キスしたり」


雪音「恋人ってそういう事をする人達の

   事を言うんじゃないの?」


 雪音はそういうのを期待してたのかな...?攻めの姿勢...。


 でも...そういうのってやっぱり、きっかけがないと難しいです。先生...


美紗「雪音はそういう事、して欲しいの...?」


 ...あー、心臓がさっきからバクバクする。おかしいのは雪音だけじゃなくて私もかな、


雪音「美紗さんは私の事が好きなんでしょ?

   なんでそんな事私に聞くの?」


雪音「キスしたいのが恋人じゃないの?」


美紗「じゃぁ...、」


美紗「してみる...?」


美紗「そしたら、

   ...お茶飲んでくれる?」


美紗(え、ちょっと待って!!私は何を

   雰囲気に任せて口走ってるの...!?)


美紗(けど、...こんな雪音を他の人に見られたく

  ...ない...)


※キャプション




美紗(...雪音を、...戻すため)


美紗(だから...)


...トクン、...トクンと、...生唾を飲む。


...もの惜しげな顔で、私を見つめる雪音。


 ...本当に、するの...?という背徳感からくる雪音の期待する、瞳と高揚感...。


...それは、...卑怯だよ


美紗(私は瞳の動きで全部分かる...から...)


美紗「...良い子に、しててね」


私はそう言って、持っていた...水筒の中に入っているお茶を口に含む。


美紗(...本当に綺麗な、睫)


...徐々に、...その距離は近付いていき。...キスをする直前になって、雪音はその瞳をようやく、閉じる。


雪音「....」


 ...どうやら私は働き蜂だったらしい。


女王蜂である雪音の蜜の味に完全に完全に酔いしれてしまっているようだったった...。


美紗「....ん、」


 ...唇が合わさり、...口に含んでいたお茶を喉の奥から親鳥が雛に餌を与えるように私は雪音に流し込む。


雪音「...ふっ、...ぅ」


 ゴクンという何かを呑み込む音が私の耳元から聞こえると同時に...、


「今、雪音はどんな顔をしているんだろう...、」


 と、心の中に住んでいる悪魔が...そう、私に悪戯に問い掛ける。


美紗「んっ...、雪、音」


 そうして、私はゆっくりと瞳を開いてく...。...すると...私の世界は光を徐々に取り戻していった...。


雪音「.....」


 赤く火照った、頬に...。雪音の潤んだ瞳...。唇は湿り、雪音はお代わりをねだるように私の瞳を見つめ...


...ていたのなら、どれだけ良かったんだろうか。


 光を取り戻した私が見た光景は...、


...なんという事でしょう。...凄く、...不機嫌そうな顔をした雪音...、お嬢様が...。...あれぇ?


雪音「....」


美紗「....ゆ、雪...音...?」


 これ以上ないくらいの、冷たい汗がダラダラと背中にこぼれていく感触がする...。


 それはまるで、蛇に睨まれた蛙のようなそんな...、


雪音「...何を...して、」


...嫌な寒気だった。


雪音「...いるのですか」


 今にも食い千切られそうな雪豹の鋭い眼光で、かつてないくらいに雪音の瞳は冷めきっていた...。


この感覚...、怒った時のお父さんの...、


美紗「...ぁ、...ぁ」


美紗「...ご、ごめ...んなさい...」


美紗(雪音は違う...、違う...!!)


...近くにあった、机の角を掴んで。...落ち着かせるように、深く息を途切れ途切れにはく。


美紗「っは...、はぁっ...、」


美紗(...っ、...過呼吸っ、、)


...逃げたい、怖い、...何されるの、


美紗(...雪音は、何もしないって、言ってん

   じゃん!!...っ、...言うこと、聞け...!!

   クソッ...そのくらい、分かれッ!!)


雪音「......。」


雪音「...私に感情が無いのは貴女が一番、

   ご存知のはずです。が...」


 雪音は、目を閉じながら教室のドアの方へゆっくり歩いていく。


雪音「貴女も所詮他の方と同じなの

   ですね。」


美紗(お願い...、失望しないで...、)


美紗「...え、あっ、...待って、ゆ、雪音」


 とにかく、雪音を止めなきゃ。って...思った。机から手を離して雪音の後に付いていく、...待って、誤解だから、待って、、雪音。


雪音「...今すぐその足を止めなさい。」


 と、雪音の声が聞こえた瞬間、足がすくんで


 自分の意志では動かなくなっていた...。


美紗(止めなきゃ、止めなくちゃ、っ...!!

   進んでよ...、進んでっ、進めっ...!!)


美紗( 駄目なのに...!!今止めなきゃ...雪音、

   やだ、行ったら駄目...、...置いて

   かないで...、)


美紗(私は他の人とは違うから、)


 恐怖...が、...全身に駆け巡る。


雪音「今は一人になりたいのです」


...背中越しでも伝わる...初めて聞いた本気の雪音の声、雪音に振られたの時に聞いたあの声なんて比にならないくらい...


 冷えきった声だった。


雪音「...すみません。今は...付いて、来ない

で下さい...」


美紗「雪音...」


 雪音にそう言われた私は...、...それ以上前に進むことは叶わなかった。


美紗(......、)


※キャプション

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