第十四部「親の心子知らず」【ゆずるう】

あれほど楽しみにしていた合同授業も終わり

7月の太陽が照り付ける暑さがじりじりと身に染みる中、高校生である私は勉学に勤しむ。


そんな青春真っ只中の放課後……


ミーンミンミーン…。


美紗「で、気付いたら古池さんの絵描い

   ちゃってて」

美紗「授業の絵は全然描けてないわ、先生に

   は怒られるわでー…。ほんとに散々

   だったよ。もう笑うしかない」


 私は何をしているかというと、美紗のノロケ話につき合わされていた。


柚夏「授業なんだから真面目にやろうよ」

美紗「単位は高校三年生になったら頑張れば

   よくない??」


柚夏(昔はまだもうちょっと勉強してたん

   だけどなぁ、手を抜くとこは手を抜く

   事を覚えてしまった。)


柚夏(…美紗はまぁ…まだ幸せそうだから告白は

   してないんだろうけれど…。)

柚夏(やっぱりいつか告白するのかな)

柚夏(…その先の返事が分かってるから

   こそ、美紗が傷つく前に彼女の事は

   諦めて欲しいんだけど…)


柚夏「…ねぇ、それ何のノロケ話?」

美紗「ノロケ…?」

柚夏「そんなに古池さんのこと好き好き

   言われてもってこと」


美紗「んー?」


 私は彼女の事をどうしても好きになれないと言うのに…、どうにかして諦めてくれないかな…。


 古池さんみたいな女性に憧れる気持ちも分かるけど


 彼女と私達は『それこそ』住む世界が違う、古池さんと付き合う事で嫉妬されることもあると思うし


 そもそも彼女が人の事を本気で好きになるとは思えない。なんで好きになってくれるかも分からない人に美紗は恋をするんだろう


柚夏「美紗ってほんとに古池さんのこと

   好きだよね…。」


美紗「好きだよ? 優しいし、丁寧だし。

   それになんと言ってもお姫様みたい」


柚夏(即答ですか…。これは..ちょっとや

  そっとじゃ難しそうだな…)


柚夏「…はぁ。そうじゃなくて、

   …"恋愛"として」


美紗「恋愛として…? …私が?」


柚夏「そう。美紗、が」


柚夏(…もしかして、)


美紗「古池さん…のこと…?」


柚夏(これだけ変な事してて、好きって

   気付いてないって…嘘でしょ…?)


柚夏「...好きなの?」


美紗「……っ///!?」


美紗の顔がみるみる赤く染められていく


柚夏(…うわぁ、…選択ミスった。)


美紗「…ゆ、柚夏は急に何を言い出すの//!? 

   そもそも女の子同士なのに、、」


柚夏「...別に恋をするのに今時性別なんて

   関係ないでしょ。」

柚夏「たまたま好きな人が女性だったって

   人もいるだろうし。」


 私だって付き合うなら女性がいい。家事とかもちゃんとしてくれるだろうし(私もやるけど)女性の辛さを知ってるから


 付き合うのが無理だとしても同棲くらいは全然していいと思う


柚夏「それに私は男の人より女の人のが

   信頼出来るし、まぁ...私の場合

   父親があれだったのもあるけど...」


柚夏「...だからと言って依存しすぎ

   もどうかと思うけど」


美紗「………///」


柚夏(…まだ、時間はあるし…。はぁ…

説得するならまた今度…、か。)


美紗「だって古池さん凄い美人なんだもん…

   これが恋愛的に好きだって言うのは

   私にも分からないよ…。」


柚夏「そこまで顔を赤くさせて何を言ってる

   のか…でも、本当に古池さんで」


美紗「ごめん、暑いから、ちょっと顔

   洗ってくるっ///!!」


と逃げるように美紗は教室を出ていった。


柚夏「…古池さんと仲良くなるのは」

柚夏「反対なんだけれどね。」


…今まで見たこと無い友達の顔。


柚夏(…美紗も大きくなればいずれは変わって

   いく。私が知らない誰かと恋して、

   そしていつの間にか誰かの人(もの)になる)

その時私は彼女の側にいるだろうか


柚夏(このまま、私の知らない美紗になって

いくんじゃないかなって…、)

柚夏(彼女が古池さんの事を好きになる

   たび…。...そう思う)

柚夏(幸せを願わなきゃいけないのに)


 仮に美紗に相手が出来たとしても 遊べる時間も減るし、一緒にいる機会も減るんだろうな


柚夏「…はぁ」

??「…はぁぁぁ」


 同じタイミングで大きなため息が聞こえて、顔を上げると


 目の前には真っ赤なバラのコサージュが目立つ育ちの良さそうな女性が困ったような顔をして立っていた。


??「…ふふっ。面白いわね」

??「同時にため息を付くなんて。」


柚夏「私…、、前を見てなくてっ!! 

   すみません!!」


 目の前の女性に対して大丈夫ですか?と、支えて手を取る。此方から迷惑を掛けたのなら謝るというのが礼儀だ。


??「通行の妨げをしていた私も同罪だもの。

  だから、お互い気にしないということに

  しましょう。それじゃ駄目かしら…?」


??「それより人を捜してるの」

??「こう...ズボンを履いていて。女の子を

見たら片っ端からナンパしてるような子

  なんだけど」

柚夏「いや、見てないですね...」

柚夏(そんな人が居たらすぐ分かるし...)


 女性は頬に手を添えて、困ったようにため息をつく。


??「そう。」

??「本当に見てないのね、見たら

  絶対に分かるもの...」

??「…確かに1年生のところまでは来てた

  のね。私走るのがあまり得意じゃない

  から、」

??「人に聞くしかなくて。」

??「もぉ…、本当どこに居るのよー

雨宮さん」

??「今日こそ授業が始まる前に見付けて

  見せるんだから」


A「授業をサボってるんですか?」

B「男装…? 此処って女子高ですよね…?」



→A「授業をサボってるんですか?」


??「学校に通えてるだけでも幸せなのに、

  どうして授業に出たがらないのかしら?」

柚夏「それは私にも分からないですけど...」

??「あらごめんなさい。貴女ってとても

  話しやすい人だから、ついつい話込ん

  じゃうみたい」

??「それにしてもさっきの対応、紳士的で

  とても素敵だったわ。...あの子にも

  垢を煎じて飲ませたいくらい」

??「理由を聞いてもはぐらかされて

  しまうし...」


→B「男装…? 此処って女子高ですよね…?」

??「そう。此処の学校はブレザーとスカート

  が学校指定なのだけれど」

??「堂々とあの子はズボンを履いて来てる

  わよね...。まぁ、そういう性別の人なら仕方

  ないけれど」

??「あの子の場合 どっちなのか

  分からなくて...」

??「理由もなく校則を破るのは

  よくないわ」



柚夏「力になれず...、すみません」


??「いいえ、そんな事ないわ。此処に来ていないって

  分かっただけでも私にとっては充分

  ありがたい情報だから。本当にありがとう」


と言い残して、女性は去っていた。


柚夏(あの人凄いな…。年相応以上に落ち着き

   があるというか…。3年生の人かな…?)

柚夏(透明感があって 芯が強くて)


これが俗に言う竹を芯で割ったような性格


柚夏(あぁいう人が『淑女』って言われるんだ

   ろうな…。なんというか、内面が綺麗)


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