第十三部「好きなおにぎりの具材」【ゆずるう】

柚夏(...見せつけてくれちゃって、 まぁ...。

   あんな可愛い人に抱きしめられて)

柚夏(幸せな人生送ってるねぇ...。)

柚夏(美紗、脈ないけど 大丈夫か...)


??「ゆっきー!!私、今日はゆっきーと

   学校行けて凄く幸せだよーっ///」

古池「普通に驚きますので、急に抱きつかない

   で下さい...。モデルのお仕事は

   順調なのですか?」


 という古池さんは慣れてるのか、そう言いつつまったく動揺した素振りを見せずに答える。


というか...、距離近くない???


「そもそも此処の家主は誰だ??誰のお陰でこの家に居られると思ってるんだ??」

「それはあなたが"働かなくて良い"って、、」

「そうは言ったけど」

「僕は"僕を愛し続けてくれる人には尽くす"と言ったけど 君は僕の事を本当に愛してるのかい??」

「そんなこと...、」

「"本当に愛してる"なら相談があるんだ」

「昨日僕は好きだった子に告白された。」

「僕はその子と結婚を前提にお付き合いしたいと思ってる」

「結婚するなら君みたいな『年寄り』

 じゃなくてもっと"若い子"の方が良いし」

「酔ってるの...??」

「お金持ちで本当に頼りになって素敵ですね♥って。雅人君の奥様は本当に幸せものだって、」

「彼女の方が僕の気持ちを何倍も理解してくれてる」

「それに最近"ご無沙汰"じゃないか」

「確かに僕は『C型肝炎』だけど遺伝する確率なんてかなり低い物だ。僕の"妻"なんだから当然だろ??」

「私は"そんなの気にしない"って」


「僕は僕を必要としている人の所にいきたい」

「"君は一人でもやっていける"だろう?」

「僕が居なくとも君ならお金を貯められる」

「そんな...。」

「だからこの家から出て行ってくれないか?彼女がこの家に住みたいって聞かないんだよ」

「まぁ君が住みたいなら良いけど」

「良いけどって...、最初に結婚したのは私でしょ?なんで他の女の人と住まなきゃいけないの...?」

「『僕の家』だから」


「お母さん...?お父さんと喧嘩したら駄目だよ」

「...柚夏。」

「....」

「ごめんなさい...。」

「なんでお母さんが謝るの??」

「じゃぁしょうがないね。君が嫌って言うなら」

「小学校が卒業するまでは一緒に居てやるからな。『"全部お前の母さんが悪いんだ"』」

「君といると疲れる。人間は"そう難しく出来てないんだよ"特に男なんかは」

「生きてるときくらい"人間として生かせてくれよ"」


柚夏(本当に好きでもない癖にそんな素振り

   見せるな。好きな人がいるのに

   他の人に良い顔して、...美紗が可愛そう)


 これだからお金持ちは、"お金さえあれば"なんでも許されると思ってる。女の人は奴隷でもなんでもないというのに


"こんな人"に美紗はあげられない。


やっぱりお金持ちにはろくな人なんかいない。


??「うん、やりがいがあるお仕事だから

   ねー。でも今日はゆっきーと久しぶりに

   思いっきり遊びたいなー?」

??「...駄目、かな?」

古池「良いですよ。...勿論構いません。

   と、おっしゃっても屋敷で毎日

   顔を合わせていますが」

??「それとこれとは話しが別だよー♥」


柚夏(あのモデルさん 古池さんと一緒に

   暮らしてるの...??どういう仲??幼馴染...?

   いやでも、"苗字"も違うし...。)


 ふいに古池さんと目が合う。...また、無機質のあの笑顔(かお)だ、


 本気で恋をしている美紗のことを滑稽だとでも思っているのだろうか


 ...本人は気付いてないようだけれど、美紗と居る時もそんな顔をしている時がある。彼女は本気で『笑っていない』


 子供の笑顔を見てると本気で笑ってるかなんてすぐ分かる。


柚夏(...古池さんが美紗の恋心を弄んでる

   ようなら、私にだって考えがある)


柚夏「...古池さん」 

古池「何か御用でしょうか?」 

柚夏(あんたの事だから、大体察しは

   ついてるんだろ...?絶対認めないからな) 


柚夏「...お二人の関係性について、お聞きしても

   良いですか??」 

モデルさん「何か険悪なムードだねー?...二人とも、喧嘩は駄目だよー?」


 ...そう言いながら、古池さんの隣に居たモデルさんが唐突に私の唇に人差し指を押しつけてくる。


 それから屈託の無い笑顔で、モデルさんは綺麗に笑った。


 なんかお茶を濁されるな...。これだからコミュ力が高い人は...、、というかそんな触らないで頂きたい


 ...だけど、これだけは簡単に折れるわけにはいかなかった。 


柚夏(絶対聞いてやる...) 


モデルさん

「むっとした表情だねー?ご機嫌斜めかな?柚ちゃん」 

柚夏「名前覚えるの早いですね」 

モデルさん

「んー...?あぁ、...その黒髪が長くて、

 綺麗だなーって気になっちゃって。光に

 照らされてつやつやした黒髪って良いよね」

モデルさん

「あ、でもそれだけだからね?そんな怖い顔したら、折角の綺麗な顔が勿体無いよー...」


柚夏(めちゃめちゃこの人、髪触ってくる

   じゃん...)

 

柚夏「...。...こんな顔、別に綺麗でもなんでも

   ないです。」 


 モデルさんは私の耳に顔を近づけて、小声で口を開く。


柚夏("私の古池さんに近付くなよ"、とか

そういう...??)


 というか...耳がくすぐったい、彼女の吐く吐息が耳元にふり掛かる...。 


柚夏「...何の真似、ですか?」 


 キャーっ////と黄色い歓声が教室に響く、彼女の唇が今にも私の耳に触れてしまいそうだった。 


モデルさん

「"大事な人を守りたい"って思うのは勿論大切なことだよ。...でも、私達の関係は《柚ちゃんが思っているものとはちょっと違うから》 安心して」


モデルさん「少なくとも私は、ね。」


モデルさん

「美紗ちゃんとゆっきーが付き合うのは賛成なんだー。...でも、美紗ちゃんにはそれを教ちゃだめだよ...?」

モデルさん

「...これは柚ちゃんと私だけのひ...み...つ...♪」

耳が近いんですってっ////、、、

モデルさん「こんなこと私が言ったって

 知れたら、きっと私、麗夜に怒られちゃうから...」

モデルさん「ただでさえ麗夜に嫌われてるのに...」


柚夏「っ...、分かりました、、先輩。だから

   もう、いい加減っ////、耳元から離れて 

   下さるとありがたいのですが...。」

柚夏「人目もありますし...」 


 そして、私は耳元にあったモデルさんの手を軽く押しのける。 


モデルさん

「あははっ、柚ちゃんはクールだねー?。 

 ...でも、顔は真っ赤だよ?」 


この人、、とんだ肉食兎だよ!!、、、絶対『草食』ではない!!!

柚夏

「...私の負けですから、...もう、勘弁して下さい...。"お二人の邪魔"をしてすみませんでした...。」 


...この人を敵にしたら、なんとなく不味いというのは分かった。 


柚夏(取り敢えず、恋人でないと知れただけ

  よしとしよう..."関係性"は分からなかった

  けど)

柚夏「知りたかったのはそれだけなので、

   ...じゃぁ」 


 お辞儀をして、私はモデルさんに背を向けてきびずを返す。 


モデルさん

「えへへっ、柚ちゃん。またいつでも、私達に話し掛けてね」 

雪音「何故、その中に私も含まれて

   いらっしゃるのでしょうか?」 

モデル「お友達は多いほうが楽しいよー?」 


...結局、最後までモデルさんに引っ掻き回されて 話は終わった。 


 それにしても、モデルさんが言っていた「少なくとも"私は"、ね。」とはどういう意味なのだろうか...。


 古池さんと美紗と付き合って欲しくない人がモデルさんの知り合いにもいるということ?? 


柚夏("麗夜"さん...。)


 でもモデルさんはその人には嫌われていて、でも古池さんと美紗には仲良くしてほしいと思ってる


というかあの人に嫌われる人間とか居るのだろうか...


柚夏(...なんかややこしいなぁ、)

柚夏(でも、なんで、わざわざ何も関係もない

   私に古池さんとは恋人じゃないって

   教えてくれたんだろう...)

柚夏(まぁ考えても分からないから、

   考えるだけ"無駄"か)


柚夏「...あ」

   

 ...そのまま歩いて教室を出ようしたら、凄いなんとも言えない表情をした流雨と目が合う


柚夏(...あれ、出ていくんじゃなかったの??)  


 その目の前には犬耳をしたピンクの先輩が座っていた。


あー...なるほど


 移動したかったけど、捕まって逃げられなかったのか。私の方を申し訳ないくらい上目遣いで...見てくるし...


柚夏「あぁ...えーと...朝乃先輩?...ですよね?」 


朝乃「うん。合ってるよ。静谷さんには中々

   覚えてもらえないから」

朝乃「最近覚えにくい名前なのかなって

   思い始めてたんだよね。」

柚夏「わりとよくある名前だと思いますよ」 


 先輩は自重気味に笑いながら頬をかく。ふわふわしたピンク色の長い髪が大きく揺れた


柚夏「"可愛い名前"だと思います」 


柚夏「ところで、私に何か用ですか...?」 


 なんかさっきからこの人から凄い視線を感じるんだよな、きっと『本題』という物があるのだろう。 


 「何勝手に晴華さんと話してんだよ。」とか、


朝乃「晴華様と普通にお話出来るのが羨ましく

   て...。参考に何話してたのか 

   聞いても良い?」 


 結構目立ってからなぁ、そりゃ好きな人が耳元で近付いてたら気になるわ


柚夏(なるほど... お茶を濁して伝えるべき

   か...、それとも...) 


 タイミングよくモデルさんとふ、と目が合う。


 あぁいうタイプは怒らせたら『後』が怖いんだ、流石にこれは後者を選ぶしかなかった...。 


柚夏「...2人の秘密なんだそうです。

   すみません」 

柚夏「どちらかというともう一人の人に

   ついて話してました」


朝乃「古池会長の??」

朝乃「...まぁ、そうだよね。いいの、いいの。

   ただ、仲が良さそうに話してたから」

朝乃「どういう話をしたら晴華様は 

   喜んでくれるのかなって....」 


柚夏(恋する乙女は可愛いな...) 


流雨「ご飯を買って、教室に帰ろうとしたら

   捕まった...。」


 とバツが悪そうにそう言う流雨。お誘いを断った手前言いづらいんだろう


こんなはずじゃなかったって


柚夏「あぁ、良いよ。誘われたら断りづらい

   もんね」


 落ち込むようにしょんぼりしてる流雨とモデルさんを交互に見つめていると、明らかにモデルさんの視線が此方に反応してるのに気付く。


 ...私ではなく、主に朝乃先輩に対して何かを気にしているようにも見えた。 


柚夏(...モデルさんも朝乃先輩に気になってる

  感じだよね。どうしようかな...。) 

柚夏(...朝乃先輩に他意はないんだけど)

柚夏(あの人のお陰で変な噂が流れたし)


柚夏「...先輩ー」 

モデルさん「ん?なーに?柚ちゃんっ」 


 いつの間にか古池さんは消えていて、その代わりあと一歩というところで生徒に話しかけられようとしていた


モデルさんがこっちに向かって歩いてきた。 


朝乃「へ...?あ!!!ちょ///!!

   なっ...な、なっ///!!!」 


柚夏(この人反応面白いな...

   さっきも会ったろうに)


柚夏「あ、朝乃先輩が晴華さんと

   もっと仲良く...」

柚夏「いわゆる『親密な関係』を築き

   たいそうです。」 

晴華「朝乃ちゃんのえっちー...///」

朝乃「えっち///!?!?!?私が!?!?、、」

朝乃「いや、でもそんな推しの前で

   気持ち悪い動作はしてない

   はず、、確かに推してる時の

   私は気持ち悪いかもしれないけれど」

朝乃「え??気持ち悪かった!?!?

   辛いんだけど、、」 

柚夏「本人の前でヘタらないで

   下さい」

朝乃「だってっ、、」

晴華「朝乃ちゃんは気持ち悪くない

   よ。いつも応援してくれてるし

   本当にありがたいと思ってる」晴華「ありがとう♥️」

朝乃「あっ////、、、(絶命」


柚夏「私達は此処でご飯食べてるので、

   頑張って下さいね。(もう半分

   食べ終わちゃってるけど」 


 焦る朝乃先輩を目の前に、食べ掛けのお弁当の包みを開ける。 


柚夏「よし、これでこの間の『借り』

   は返せた」

流雨「柚夏...性格悪い...」

柚夏「あの人のお陰で、なんか恋の

   キューピット的な"あれ"が出来たのか」

柚夏「遠くで拝む人が出てきて

   困ってるんだよ」


そしてなんか雰囲気的に同じ席に当然のように座るモデルさん。友達のように自然に座ってくるなぁ...


いやまぁ良いんだけど


晴華「私も、朝乃ちゃんとずっと

   お話しかったの。今日の授業凄い楽しかったねー♥」 

朝乃「...一緒にお絵描き出来て、私も、幸せです////せ、晴華ちゃ、様...///」 

晴華「晴華で良いよー?私も朝乃ちゃんって

   呼んでるもん」 

朝乃「呼び捨てはちょっと難しいので、、

   ...せ、...『晴華さん』で...////」 


 なんか初めてそういう店に入った店員さんと人みたい。と思ったのは口にしまっておこう


晴華「凄い緊張してるねぇー?、朝乃ちゃん。 

   もっと、リラックスー♪、リラックス

   ー♪」 


 そんな様子が面白いのかモデルさんは凄い朝乃先輩に身体をくっつけて遊んでる。でもなんかちょっと和むな...


テレビで学園ドラマ見てるみたい。 


柚夏「流雨はお弁当何食べるの?」 


流雨「...購買で買ってきた。......」


柚夏「購買で買ったんだ。食べないの?」


流雨「...いや...食べるけど」


 と言って、流雨はお握りを一個手提げから取り出したのだった。


 ...他に食材が入っていそうな空気は一切無い。


柚夏「は???お握り一個!?!?、、」


 そんな限界食堂じゃないんだから、、食費がきつくてそういう生活する生活


私だってしないぞ。モヤシだってもっと沢山入れる


流雨「...鮪のお握りは特別...。そう言われると

   思ってあまり出したくなかった」


柚夏「あ、味が重要なんだ...。でも

   そんなんじゃ駄目だよ...。栄養が

   あまりにも偏ってるから...」


流雨「お弁当もカロリーメイフにも飽きたし...

   "やはりこれ"。」

そんなどこかのCMみたいに言っても駄目です


朝乃「静谷さんは毎回そうなんだよ。鮪のお握り

   中毒みたい。よくそれで足りるね」


柚夏「流石にそれは...そのうち倒れるよ。

   ...ほら、私のあげるから」


 と私は卵焼きを爪楊枝を刺して、流雨の口へ運ぶ。それこそ"子供にご飯を食べさせる感覚で"


柚夏(ってこれ、間接キスでは...??)


流雨「...!。...美味しい。(もぐもぐ」


 実質弁当 食べれなくなったんだが...いや、これくらい女子高生では普通。逆に変に思ってる私がおかしい


というか流雨を女子高生と言えるのか。見た目だけからしたら犯罪ではないか...?


多分そんな事思ってる人はいないと思うけど...。


 そんな私の口外キス事情は露知らず、もぐもぐと卵焼きを食べ続ける流雨。別にお弁当自体が嫌いな訳ではないらしい


 流雨は卵焼きをあっという間に食べ終わると、卵焼きの味を噛み締めるように口内をもちゃもちゃしてる。...なんて可愛いんだろう


朝乃「えっ?!」


 と橘先輩とお話をしていた朝乃先輩がすごく驚いてた。私と流雨の顔を交互に見て唖然としている。


柚夏(...気付くな!!!、私も今気付いた!!!

   そんな『変』な感じじゃないっ!!!!、、)


柚夏(...この人、、こういう時には、

   するどいんだから。変な感じにしないで、、)


朝乃「二人ってすごい仲良いんだね」


引くな、引くな。


柚夏「そうですかね...?仲の良い友達

   とお弁当を分け合うのは

   普通じゃないですか?」

柚夏(あくまでも"自然"に爽やかに...上級階級みたいな感じで)

柚夏「お弁当を忘れて来た子におかずを

   あげるみたいな...。そんな感じで」


 そう言って 豚の生姜焼きをつまみながら、流雨に渡しやすいように小さなカップに分けてあげる。


柚夏(生姜焼き残しといて良かった。焼肉は

   食べちゃったけど...)


朝乃「...それはそうなんだけど。...うーん、

   そうだね。『仲良くて、微笑ましいと

   思った』って方が良いかも」


柚夏「そうですか?仲が良い...。」


晴華「朝乃ちゃんもしたいの?」


朝乃「間接キスを!?!?///、、、

   晴華さんとっ///!?!?、、」


柚夏(言うな)


容器を渡すと同時に、流雨と視線が合う。


柚夏「全部食べても良いよ。嫌なら」

流雨「いや、別に気にしない」

流雨「柚夏の分がなくなるから」

柚夏「気にして...」

流雨「え...?」

晴華「柚ちゃんは流雨ちゃんとの

   間接キスが恥ずかしいん

   だって」

柚夏「別に私は、、流雨が良ければ

   それで良いですし」

晴華「じゃぁ 食べるよね?」

柚夏「.....、」

柚夏「はい」


 こんな中学生みたいな恋愛感だとばれるわけにはいかない、多分もうバレてると思うけど


この人 本当に『苦手』だ...


柚夏(..."仲が良い"というのはどういうこと

  なんだろう)

柚夏(間接キスを普通にしても

   『嫌』じゃない仲とか、)

柚夏(ある一定の時間相手に寄り添い

   合える仲の事?それともお互い

   不快に思わない距離感の事...?)

柚夏("どちらにしても"、なんて

   曖昧な言葉なんだろう...。)


柚夏「食べられるやつだけで良いから、

   倒れないようにしっかり食べるんだよ」


流雨「...柚夏」


柚夏「取り合えず流雨の体調も心配だから 

   明日から少な目のを2人分作って...。」

流雨「...いい、お弁当作るのも大変だし......

   それに...その分お金も掛かる。鮪のおにぎりは

   好きで食べてるから...。」


柚夏「...そっか。」


 ...私の余計な『お世話』というやつだろうか


柚夏(流石にお弁当作ろうかはやり

  過ぎた...?。でも...、流雨が栄養不調で

  倒れたら困るし...。)


晴華「流雨ちゃんも柚ちゃんの言葉に

   もっと甘えちゃっても良いんじゃないかな?」


 そう言って、沈黙を撃ち破るかのように隣に居たモデルさんが微笑んだ。


晴華「それに柚ちゃんのお料理凄く美味し

   そうだもんー。私も少し食べて

   みたいなー。ね?」


柚夏「あ、良かったら先輩もどうぞ。」


と自分のお弁当から卵焼きを1つ掴んでモデルさんのお弁当箱の中に入れる。まぁ食べ掛けだけど

 

晴華「良いの?わー、すっごい!!綺麗な色

   だねー。」

晴華「...鰹に昆布..それと薄いお醤油。

   自家製かな、みりんに...あっ、

   蜂蜜も入ってるんだねー」


柚夏「凄い...。見ただけでですか?

   ...全部正解です...。」


晴華「あははー、流石に見た目だけでは

   難しいかなー。良い匂いがしたから

   〜。...はいっ、朝乃ちゃんっ♪」


 モデルさんは箸で半分に切った卵焼きの片方を朝乃先輩の口元に運ぶ。


朝乃「...ッせ、晴華さん//?!こ///、...これ///?」


晴華「皆で食べた方が美味しいもんね?」

晴華「はい、朝乃ちゃんっ、あーん♥

   ...あ、もしかして卵嫌いだった..?」


朝乃「いやっ!!...そんなことないですっ!!逆に、

   好きすぎて困るくらい、好きです...////!!」


 朝乃先輩は少しだけ固まった後、意を決したのか眼を閉じなから、無言で私の卵焼きを頬張った。


柚夏(...先輩も人のこと言えないじゃない

  ですかね。イチャラブ行進曲...)


 朝乃先輩は嬉しさと恥ずかしさのあまりなのか、両手で即座に顔を包み込む形で机の上に突っ伏す。


朝乃「....顔ッ///!!今、絶対っ赤いからっ///!!.....///」


柚夏(この人、焦ると面白いなー....)


柚夏「先輩方の方が仲が良いようで羨ましい

   限りです...。あっ、それとお味は

いかがでしたか?」


朝乃「...味?!味???え、っと...、....どうだった

かしら」


晴華「柚ちゃんー?朝乃ちゃんをそんなに

苛めたら可哀想だよー?」


 考えていたことがバレてしまったのか、モデルさんは綺麗な笑顔で私に語りかける。いや貴女もさっきまでやってたじゃないですか...


晴華「でも、本当に柚ちゃんの卵焼き美味し

   かったねー。」

晴華「もう少しお代わりしちゃいたいくらい

   だもんー。山盛りの卵焼きおむすび

   唐揚げパーティとかしたら楽しそう」

柚夏「そういうのも楽しそうですね。作るのは

   大変そうですけど」

柚夏「"日本食"って感じで」


晴華「ふふ。柚、料理人!!今まで私が食べた中

   でも特段 美味しかったもん。

   良かったら作り方、教わりたいなー。」


柚夏「いえ、私なんて全然...。まだまだ見習い

   ですから...。あ、でもレシピでしたら

   書いてから明日(あす)にでもお渡し...」


朝乃「....そうだわッ!!奈実姉ぇの卵焼きの味に

   そっくりなのっ!!この味。」

柚夏「....そ、...そうなんですか?」

朝乃「凄く美味しい。個人的にはもうちょっと

   濃いほうが好みだけど」


柚夏(....というか、"奈実姉ぇ"って誰)


晴華「朝乃ちゃんも 柚ちゃんの卵焼き

   美味しかったもんねー?」


 朝乃先輩はまだモデルさんを見ていられないようで、橘先輩からは目を反らしながら何故か私に焦点を合わせて答えるのだった。


朝乃「...はいっ///!!」


 朝乃先輩...今まで、さっきの回答をずっと考えていたのだろうか....。...だとしたら、


柚夏「なにか、...すみません...。」


朝乃「...?...何が?」


少し、顔の赤い照れた先輩と見つめ合う。...なんだろうか。この絵面は....。


晴華「....朝乃ちゃん、...もしかしてお姉ちゃん

   が居るの?」


 ふと、前を見ると。いつの間にやらお弁当を食べ終えていた流雨の頭の位置が少しずつ、下に下がっていく。


...やがて、突っ伏した状態になってしまった。


朝乃「...あ、ごめん寝」

晴華「えへへ、流雨ちゃんはまるで仔猫

   みたいで可愛いねー。」

流雨「....ねむい。ありがとう...」


 ずっとお礼を言いたかったのか、流雨は最後にそうとだけ告げると顔面で力尽きてしまった。頬がむにっと机の上に擦れている


流雨「...すぅ」

柚夏(....流雨はよくこんなに寝れるなぁ。

  まぁ、可愛いから全然良いんだけど...)


 流雨が食べ終えた鮪のおにぎりのゴミをまとめて回収し、ほどけないように袋をキツく結ぶ。


朝乃「...まぁ、...うん。...話は戻るけど、

   その姉じゃなくて...。従姉妹なんです

   よ。...この学校の調理部の『部長』

   です。」

朝乃「私は奈実姉(ね)ぇって呼んでるん

   ですけど 本名は鐘鏡 奈実樹

   (しょうきょう なみき)」

朝乃「実家が旅館を経営してて、料理が凄い

   上手で...。自慢の従姉妹なんです。」


晴華「へー、調理部の部長さんなんだ。

   それに 旅館の娘さんって、朝乃

   ちゃんの従姉妹さん本当に凄い人

   なんだねー?」

柚夏「凄いですね。旅館の... いつか機会が

   あれば、行ってみたいです。」

朝乃「...まぁ機会があれば...ね。なんと

   いうか、用事もないのに会いに行くの

って...結構行きづらいというか...。」

朝乃「まぁ普通に行ってるんですけど」

柚夏(どっち) 


柚夏「そういうとこちゃんと考えてるん

   ですね」 

柚夏(私の方も空気を読んでほしかった)

朝乃「...まぁ、その分要らない心配事も

   多いんだけどね。...と、話は此処までに

   しようかな。」

朝乃「...いくら押し付けられた仕事だから

   って、委員長が授業に遅刻なんて

   洒落にならないよ。」


と、朝乃先輩は立ち上がる。


柚夏「じゃぁ私達も此処でお開きにしますか」


 と朝乃先輩と同じタイミングで流雨の手を繋ぐ。何その奇跡、と思いながら委員長の朝乃先輩と二年生の教室に向かって行ったのだった


晴華「私もいるよ♥」


 と何故か流雨の肩の上に手を載せてどや顔するモデルさん。仲間はずれは寂しいもんね


※キャプション




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