第十五部「友達と嫉妬」【ゆずるう】

柚夏(...そういえば前に先輩のシフトが

  変わったから、土曜日はバイトがないん

  だっけ。えーと...他に何かあったかな)


 此処最近バイト詰めの生活だったからなのか、どうも...休みという実感があまり追いついてこない。


 そもそも学生の休みってどんな感じなのだ

ろう。私はバイト生活だけど...やっぱり、友達と夏休みの勉強とかしたりするのかな。


柚夏(バイト好きだから良いけどね)

柚夏(掃除して戸棚の整頓とかお風呂の掃除...。

   遺類品の整理 洗濯して勉強してたら

   一日あっと言う間に終わるけどな)


柚夏(何か今の内にやっておくことは...)


 胸ポケットに仕舞ってる生徒手帳を取り出して、今後の予定の書き置きメモを確認する。


必要なもの


☆「ホワイト」


 とだけ小さくそこに書いてあった。『ホワイト』とは白の絵の具の事。


☆マークは重要なもの。


柚夏(悲しいくらい、、バイトしか

   予定がない)


兎に角予定は分かりやすくシンプルにを重視して書くようにしている。...可愛いのもありだと思うけれど、


 やはり見やすさがあるに越したことはない。あと万が一誰かに見られた時とかにも 無難でシンプルなものの方が良いだろう


 そうして私はパタンと生徒手帳を閉じ、ない予定と一緒に胸ポケットに仕舞った


柚夏(そろそろ買った方が良いと思ってたんだ

  よね。次の週は絵の具を使いそうだし...

  安い店回りとかもたまには良いかもしれない。)


 丁度登校したのであろう長髪のツインテール少女の美紗が教壇の前を歩いてる。目が合うと同時に、美紗は軽く手をあげて気さくに微笑んだ。


美紗「おはよー、柚夏ー」


柚夏「おはよう、美紗」

柚夏「今日は随分早いね?」


美紗「昨日の課題わりと難しくなかった? 

   あの数学のやつ...教えてよー」

柚夏「別にいいけど...。数学そんなに

   駄目なの?」

美紗「理数系は全然。なんか海外では

   黒板の前に全部公式書かれててそれを

   解くみたいなんだけど」

美紗「なんで日本ではやんないんだろうね」

美紗「将来絶対覚えてない数式覚えるよりも

   もっとやることがあると思うんだけど」


柚夏「此処は日本なので。まぁ私は嫌いでは

   ないけどね 数学。クイズみたいで」

柚夏「それこそ、答えを丸暗記しなきゃ

   いけない教科より まだ楽しいよ」


美紗「覚えるだけなんてまだ簡単じゃん。勉強に

   楽しさを感じるなんて...流石柚夏さん...

   優等生...」


柚夏「まぁ、勉強とバイトくらいしかする

   事がないから。それに順位がね」

柚夏「 私の生活水準は奨学金に全て掛かってる

   んだよ」

柚夏(温室育ちの方とは一緒にしないで頂き

   たい)


 このルネミア高等学校では入学金免除の他に、成績優秀者には別の奨学金が寄付されている。


 50%免除と中々の大盤振る舞いである代わりに、奨学金を貰い続けるには学年5位以内をキープし続けなければならないのだが...。


柚夏(それに全部賭けてるから※主に食費面で)

柚夏(志が違うよね。生(せい)の、言わば

   奨学金もバイトみたいなもん)


...まぁ、夜にゆったり勉強してるから

柚夏(その辺りは無理のない範囲でしてる

   けど...。勉強も別にそこまで嫌いじゃ

   ないし)

柚夏(嫌いにならない程度には勉強しな

   きゃね。あの人には頼りたくないし)

というか借りを作りたくない。


柚夏(親の出来が良かったのか...原理を一度

   覚えればめったに忘れることは...。)


美紗「お母さんからお金借りれないの?」


柚夏「えっ...?」


 美紗から"予想もしていなかった"回答をされて、一瞬だけ思考がフリーズする。


柚夏(親...??)


美紗「ん?」

柚夏「...あ、いや。学費は自分で出すって

   決めてるし...」

柚夏「それに、あの人は多分 私の顔なんて

   見たくもないと思うから...。」

柚夏(父親似 だしね...)


美紗「そんな事ないと思うよ? 柚夏は凄い

   頑張ってるし、それに子供が大事じゃ

   ない親なんて居ないよ」


...その、"母親自体"が"もうこの世界には 居ないんだよな"


柚夏(美紗とは対等な関係で居たかったから

  具体的な話はしてないし)

柚夏(自業自得なんだけど、)

柚夏(...でも、そうか...『普通』は そうか )


 "頼りになる人"が側にいて 困った時にはすぐに助けてくれる。


 私の"何が"いけなかったんだろう。どうして『こんなに』違うんだろう


柚夏("いい子"に暮らしてたはずなんだけど

   な...。)


柚夏「...それよりこの辺りで絵の具の

   安いとこ知らない?土曜はバイトが休み

   だから買いに行きたいんだけど...」

美紗「やっぱネットとかの方が安いと思うよ」

柚夏「校内のパソコンで買う訳には行かないし

   お父さんが全部持っていちゃったんだよね」

柚夏「携帯は持ってないし...」


美紗「あー、確かに黒と白ってすぐに無く

なっちゃうよね。特に白なんてすぐ」

美紗「余ってるの使う?」


柚夏「いや、美紗とはフラットな関係で

   いたいからいいよ。何回も

   借りる訳にはいかないし」


美紗「んー、でも私は無くなりそうに

   なったら、学校で買っちゃうかな。」


柚夏「学校の道具って結構高いんだよね。

   その分品質は問題ないんだけど...。」


美紗「...柚夏。」


美紗のトーンが変わり、美紗を見る。


 その時初めて私は美紗に対して目を反らしているのに気付いた。


美紗「...私は柚夏の家の事情はよく知ら

   ないけど」

美紗「柚夏には無理して欲しくないと思うよ」


柚夏「別に無理なんてしてないよ。だって

   両親が離婚したのって4年前くらい

   前だし」

※離婚したのが柚夏の小6(春)で

 予定が早まった。母親が亡くなったのは

 中2の夏辺り


柚夏「...それにしても引っ張りすぎでしょ。

   私がそんな性格に見える?」


美紗「...本人が思ってるより周りにはバレる

   もんだよ。柚夏って、結構頑固な

   ところあるからね。」

美紗「柚夏って嘘が下手だから」


柚夏「美紗が鋭(するど)過ぎなんだよ、、

   あんたは私の彼女か、」

美紗「思春期だねぇ」


美紗「別に言いたくなければ言わなくて

   良いんだよ。人と仲良くなるのって」

美紗「...近付いて離れての繰り返しだから。」


 美紗はたまに凄いらしくないくらい大人びた発言をする時がある。普段は子供っぽいのに言うことはわりとサッパリしてるんだよな...


 気を使わなきゃいけない、なんて『親友』とは言えない。とか 真面目な柚夏の事だからそう思ってるんでしょ?


 とかいう私の予想とは全く違った答えが返ってくる


柚夏「...」


柚夏「.....。」


美紗「私はさ、柚夏の事親友でいたいから

   親友だって言うよ。でもそれは別に

   "祈願"であって」

※みさゆきでは友達と言っていますが友達であり親友ということです


美紗「柚夏が親友だと思えなければそれで

   いい。私はもっと酷い人を知ってるし」

美紗「...それでもあんまり心が痛まないの」

美紗「柚夏は柚夏のスピードでいけばいい」


柚夏「...美紗」

柚夏「寧ろ美紗はお婆ちゃんみたいだね」

美紗「えぇ???」


 "美紗らしい"相手を思いやった優しい発言。私はこの優しさに何度救われた事だろう


 お母さんがいなくとも。居た方が良いけど 『何もない』よりはいい


この距離感が凄い楽なんだ。


...そんな美紗だからこそ、...私は 美紗の気持ちに答えなきゃいけない。...答え"なければ"いけない


柚夏(...でも、...美紗には

     気を使われたくない...。)


 そこから先の言葉は喉につっかえて...、出てこなかった。


美紗「...ん?」


柚夏「...ごめん。...楽しい話に変えようか。

   ところで、美紗は古池さんとは

   どうなの?上手くいってる?」


美紗「うん。あ...えっと...私、雪音とお付き

   合いすることになったんだ。それが

   柚夏に言いたかった事なんだけど」


柚夏「...は?」


柚夏「...ちょ、ちょっと待って? ...あの、

   『古池さん』が、...付き合った?!」


...嫌な、汗が全身から流れる。


...待って、...冗談だよね?あの人美紗よりずっと仲の良い人がいるのに


美紗「...ちょっと 驚き過ぎじゃない?」


柚夏「...どうやったの?...古池さんって...

告白してきた人達全員振ってるって

超有名な人だよ...。」

柚夏「え...嘘でしょ? あの古池さんが...?

   大手の美術品株式会社を取り持つ

   あの資産家、お嬢様に告白して...」

柚夏「マジでOK?...って...本気で

   そう言ってる?」


美紗「...本気でそう言ってる、でも柚夏がマジって

   言葉使うの珍しいよね」

柚夏(ぽわぽわだからか、、)


柚夏「確かに...こんな、美紗がそんな

   大それた嘘 付ける訳が...」


美紗「相変わらず酷いなぁー。…けど、

   私柚夏のそういうとこ嫌いじゃな

   いよ」


...美紗が、私から遠ざかっていく。私を置いて...先に離れていく...。...ザザッ※ノイズ音


柚夏「今は別に美紗の趣向をカミング

   アウトしなくていいから、」


私は何を言ってるんだろう...。...分からない。


柚夏(...でも。...多分。凄い酷い事、

   ...言ってる)


柚夏「...まぁ、一気に就職有利になったね。

   美紗の将来は"安泰"って訳だ」


美紗「ううん。就職先は自分で捜す、

   雪音の力は 地位で好きに

   なったわけじゃないから」


美紗「でも、私なんかが雪音と......だなんて...

   幸せすぎて... ...けど」


柚夏「...告白、したんだ。」


美紗の話してる内容が うまく頭の中に入ってこない...。なんで...


知らないうちに"皆"離れていくの。


美紗「はは...。一回は振られちゃったけどね。

   でもやっぱり、...っていうのが大事だと

   思うよ。振られても... ...過去の私偉い」


美紗「.......。」


柚夏「...そうなんだ」


※キャプション。

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