第十六部「朝乃先輩のお願い」【ゆずるう】

最初から親友じゃなければいい。そうすれば辛くないから そうすれば彼女の"門出"を祝うことが出来るから


 あの人も言ってた『私は別に古池さんの恋人じゃない』って、私の思い込みかもしれない


お金持ちってだけで彼女を疑うのもよくない。そんなのは分かってるけど、、


お昼休憩。私は美紗から遠ざかるように


...2年生の教室へと向かっていた


柚夏(...あぁ そうだ。 流雨にお弁当

渡さないと...)


 2年生の教室に続く螺旋階段。ルネミア学園は新学校で、他の学校に比べても大学とも思える程お洒落に出来ていると思う


 ...こういうのに憧れが無かったわけではないれど...。


 ...私がこの場所にいるという事自体が、...すごく場違いな気がする。


柚夏(この学校も美紗が最初に行きたいって

言ったから、この学校にしたんだっけ...)

柚夏(...推薦で学費免除じゃなかったら、

   こんな大それたところ入ってなかった

   だろうなぁ...。)

柚夏(...それにあの頃はこんな凄い学校...

   受かるわけないって思ってたし...。)

柚夏(保護者は中学の教頭先生のお陰で

   何とかなったけど 普通は入れなかったん

   だよね)


母親もいなくなった独り暮らしの少女がこんなところに来ていいのだろうか。


??「あっ、黒髪イケメン神(しん)...」


柚夏(どんな名前だ)


 思わず心の中でツッコミながら顔を上げると、ふさふさとしたピンクの髪が目の前で揺れていた。


柚夏(...朝乃先輩。)


柚夏「なんですか...それ。」


朝乃「晴華さんが『柚ちゃん』って呼んでたの

   は分かるんだけど...でも、いきなり

  『柚ちゃん』とかは...結構照れない??」

柚夏「無理に同じように呼ばなくてもいいと

   思いますけど」

柚夏(...同じように呼びたいのか??)

柚夏(相手は先輩、、例えいくら間が

   悪かったとしても ちゃんと受け答えは

   しないと)


柚夏「...そうですね。えーと、今更自己紹介

   する形になって申し訳ないんです

けど...。芽月柚夏です」


朝乃「芽月さん。ね、うん。会ったらお礼言わ

   なきゃなと思ってたんだよね。前は晴華

   さんにあーんされる権利を作ってくれて

   ありがとう。」


柚夏(権利って...)


柚夏「...いえ」


朝乃「あの、芽月さんは...静谷さんに

   会いに?」


柚夏「まぁそんなところです。...先輩、

...それ」


朝乃「ん?」


 朝乃先輩の手元を見ると、持っている道具が学校指定のものでないことに気付く。


柚夏「...その器材(きざい)...どこで

   手に入れたんですか?」


朝乃「あー...安くて品質が良かったから、

   ...えーと、中古でね。買ったんだよ」

朝乃「少しでも晴華ちゃんの写った写真が

   買いたいから節約に」


柚夏「どこのお店ですか?」


朝乃「個人販売。皆ネットで買わないから...

   知らないよね。」

柚夏(ネット販売か...)


柚夏「...朝乃先輩って、ITにかなり詳しいんですね。

   私、そういうのはあまり触ったことが

   なくて...。」


朝乃「何か調べたいのでもあったりする?

   良かったら...すぐに調べられるけど」


柚夏「...でしたら、...近場で絵の具を安値で

   買えるところって知りませんか? 

   今丁度、白を切らしてしまっていて...。」


朝乃「あぁ、それなら。ちょっと待って」


 朝乃先輩は携帯を取り出し、驚くほどの速さで文字を打ち始める。


朝乃「比較サイトで一番安い店を捜して

   みたけど」

朝乃「...少し遠いけど、此処の骨董屋と

   かどう??口コミも良いし」

といって画面を見せてくれる先輩。


朝乃「一番まともそうな商品で安いかな。

   変なサイトからの投稿もないし、

   評価も高いし 信頼出来そうだね」


柚夏「あっ...すみません。住所、メモしても

   良いですか?」 


朝乃「うん、どうぞ。」


柚夏「...丁目の、...2...」


 朝乃先輩の携帯の画面を見ながら、骨董屋の住所を急いで生徒手帳に書き込む。大体の場所も


朝乃「芽月さんは携帯、使わない派

   なんだね。」


 確かに、携帯が普及している今。...携帯を持っていない人なんて今時珍しい分類に入る


 ...でも...学校の寮には電話もあるし、調べ物をするなら図書室に行けばいい。それに


柚夏「一人暮らしなので、あまり

お金は自由に使えなくて...」


朝乃「一人暮らし...。その歳で大変だね...」


柚夏「...いえ、そういう生活にも大分慣れて

   きましたから」


朝乃「...ふふ、ほんっと静谷さんと芽月さん

   ってそっくりね。"似たもの同士"って

   言った方が近い、のかしら?」


朝乃先輩は携帯の画面を高速でタップしながら言う。何か面白いものでも見つけたんだろうか


柚夏「私と流雨が...。...ですか?」


柚夏(...そんなことないと思うけど...。

   流雨は天才肌で、私は流雨程 優れた

   才能も持ってないし...。)


朝乃「そう。だから 芽月さんには静谷さんの

   味方で居続けて欲しいの」


柚夏「...言われずとも、私は私の意志で

   流雨に近付いてますから」


朝乃「...ふふ、...それは良かったわ。

   あ、書けたかな?」


 先輩は深くは語らなかったけど何かを知っているみたいだった


柚夏「はい。お陰様で」

柚夏「ありがとうございます。」


朝乃「静谷さんの前以外はあんまり喋らない

   のね。でもそういうのも分かる

   気がする」


朝乃「一応これでも先輩だから、力になって    

   あげられる事は手伝うよ。後輩には

   いいところ見せたいしね?」

朝乃「それに委員長(いんちょう)だし」


柚夏「...先輩。...朝乃先輩が委員長に選ばれた

理由、なんとなく分かるような気が

  します」

柚夏(面倒見は割と良いんだよな...)

柚夏(ただちょっと美紗っぽいところが

   あるだけで)


朝乃「極力なりたくはなかったんだけど、ね。

...まぁ、頼りない先輩だと思うけど」

朝乃「...私も出来る限りの事はするから。じゃぁね。」


と朝乃先輩は最後に意味深な言葉を残して去っていった。


朝乃「ありがとう、芽月さん...。」

朝乃「あなたが居てくれて『本当に』

   助かったわ」


朝乃「でも...まだ足りない。先生は宛に

ならないし、"彼女には悟られる前

   に"なんとかしないと...」


※スライド

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る