⑪雪音と遊ぶ編2【みさゆき】


雪音「薬を撒けば一瞬ですのに...。何故

   このように手間の掛かる事を皆さんは

   なさっているのでしょうか...」


美紗「それじゃ雪が全部溶けちゃうからね、

   疲れたら家で休んでて良いよ?」


 流石の雪音も慣れてないショベルを使っての雪かきはなかなかしんどいのか、凄く疲れた顔をしてる。


 というか、疲れた顔も美しいのが凄い。労働者もびっくりの顔面偏差値。流石雪音。


雪音「杏里さんが平気そうな顔をしている

   事を、古池の跡を継ぐ私が折れるよう

   では許されません。」


美紗(結構汗かいてるけどね)


雪音「一度、手を出した責任は私にあります。」


雪音「...最後まで、...諦めず...、、諦める、

事...なく...」


雪音「....。」


 そう言って雪音のスコップを握った手は止まってる...。


美紗「...うん、」


 というかさっきからあんまり動いてない気も...、そりゃ初めて雪かきする人にとって雪かきって結構ハードだから...。


雪音「...申し訳ありませんが、少しだけ休憩を

   頂いても良いですか...」


美紗「う、うん...」


美紗(あんまり雪音にスコップ足掛けて雪かき

   させるのもあれだしね...)


雪音「そちらの縁側をお借りしても良い

   でしょうか。今は外に居る方が心地が

   良くて」


美紗「大丈夫?」


雪音「少し...、休憩をすればすぐ治りますよ」


美紗(発想が社畜(ルビ:ブラック))


美紗(というか普通に休んでて良いんだけ

   ど...)


美紗「今日は遊ぶのが目的だから、

   無理して手伝う必要ないよ」


美紗(...でも雪音って、見た目に反して結構

   体力あるよね...。)


美紗(わりと掘ってくれたし...)


美紗「お茶、持ってくる?」


雪音「お願いします...。」


 急いで家から麦茶を持ってきて。裏側から窓を開けて、雪音に渡す。まぁそうさせちゃったのは私だし...


雪音「...杏里さん」


雪音「これは...」


美紗「あ、」


 雪音に渡したお茶は冷蔵庫からすぐに出したもので、外の冷たい空気に触れた麦茶は表面が凍ってしまっていた。


美紗「ご、ごめんっ、新しいの持ってくるからっ、」


雪音「...いえ、良いのです。」


雪音「このままで...、」


美紗「....、」


美紗「...良いの?」


雪音「私もコップの中身を見るまで凍っている

   事に気付ませんでしたから。家では

   こういった事は起きませんからね、」


雪音「可愛らしい自然の悪戯を見れて

   良かったです。」


雪音「...杏里さんはまだ雪かきをなさるの

   ですか?」


美紗「ん〜、あとちょっとで完成するから、」


雪音「....」


美紗「雪音は此処で休憩して、待ってて

   完成させてくるから。何かは見ての

   お楽しみで、」


雪音「...若いですね。」


美紗「同い年だよ」


美紗「ふぅ...。さ〜って、と...、」


美紗「此処からが本番!!、雪音に教えて

   あげなきゃね」


美紗「雪かきの醍醐味ってやつを...っ!!」


 雪かきが終わって、今まで後ろにかき集めてたまっさらで綺麗な雪を見る。雪音が手伝ってくれたお陰で、後は固めて穴を掘るだけだ。


美紗「よーしっ、やるぞーーっ!!」


※スライド


美紗「じゃーん...っ!!、、かまくらーーー

   っ!!」


雪音「1185(いいはこ)作ろうですね。

   昔は1192(いいくに)でしたが」


美紗「そうなの?」


雪音「テストに出ますから覚えておいて

   下さいね。どちらとも出題されるそう

   ですから、先生が仰っていましたよ」


美紗「はぁー...いっ」


雪音「ですが...成る程、確かに融雪剤を使って

   しまったらこのかまくらは出来ません

   でしたね。」


雪音「秋田では中に七輪やコンロを入れて

   お餅を焼いて、甘酒を振る舞う事で

   金銭や別のお餅を貰うそうです」


美紗「今回はそんな大きくないけどね。

   七輪使ったら溶けるよ」


美紗「お餅が食べたいならチンするけど...」


雪音「秋田とは雪の量が違いますからね。」


 かまくらを作って疲れたから...、まぁ、雪の上だし服もそんな汚れないかなって、


 寝転がろうと余った雪の後ろに大の字で倒れ込んだ。


美紗「...はぁ、疲れたーっ...、」


美紗「あははっ、背中スッゴい、つめたっ」


美紗(こういう事をするのはいつぶりだろう。)


 疲れた身体に冷たい雪が染み渡る以前に、普通に寒い。でも、悪くない気分だった。


雪音「...風邪を引いてしまいますよ。移され

   てしまうと私も色々と困りますので...」


 雪音が私に向けて 手を伸ばす。


美紗「ありがと...、雪っ、音っ...、」


 その時、ちょっとした悪戯心が湧いて。


 雪音の手を取って...上半身を起こすと私は雪音の手をひぱって後ろに倒れ込む。すると遠心力で雪音の身体が私の方に崩れたのだった。


雪音「...!!、」


美紗「ね。冷たい、でしょ?」


雪音「きゅ、急に何をなさるのですか...、」


 端から見れば雪音に押し倒されてるようにしか見えないこの状況...。


美紗(雪音と初めて会ったときの私なら

   考えられなかったよね...)


美紗「朝の仕返し、」


雪音「朝の仕返し、って...。」


雪音「此処まで、しますか...」


美紗「でも。びっくりしたでしょ?」 


 嫌われるとか嫌わないとか。そういう"疑心暗鬼"で今ある雪音の大事な時間を失いたくない、


 "残りの時間は雪音と思いっきり、遊ぶ。"


それが、...私の出した『答え』だった。


雪音「...ビックリはしましたが...、

   まさかそれほどまで、根に...もたれていた

   とは...」


 これまで人と関わった事がない雪音は、自分の我が儘を相手が嫌だと思ってる。ちょっとしたイタズラでも


 相手に受け入れて欲しい気持ちと今まで培ってきた自分とのギャップに追い付いてない


 ...今の雪音は初めてあったときに比べて本当になんというか、随分人間らしい顔をするようになった気がする。


美紗「違うよ、」


美紗「私も雪音とこうやって遊んで

   みたかったの。」


美紗「早く大人にならないといけなかったから。 

   その分こういう事をさせて貰えなかった」


美紗「本当はこういうのをするのが好き、

   お洋服が汚れても。その分私が洗えば

   良いし」


美紗「めんどくさいなら私がお金を払って

   綺麗にすればいい。でも、この経験は

   お金じゃ買えないの。」


 最初は、そういう感情のないところが好きだったけど


 今は"雪音"という、1人の女の子が好きだ。


雪音「....何を、」


雪音「...笑っているのですか。」


美紗「...楽しいな、って。」


雪音「私は...、怒っているのですよ...、」


雪音「手だって、お洋服だって汚れるのに、

   洗濯だって晴華さんがするのに...。」


雪音「私は貴女を助けようとしたんですよ...?」


雪音「それがこの仕打ちですか?、押し倒されて。

   ちょっと怖かったんですよ、今だって

   寒いですし。階段だって危なかった

   ですし」


雪音「私がバテたからって、一人で勝手に

   かまくらを作ってどや顔はしますし、

   私だって...、...初めてやった事だったん

   です。」


美紗「...最後までしたかった?」


雪音「...ただ、一人だけお茶を飲ませて休憩

   する事に納得いかなかっただけですよ。

   私だってちょっとは鍛えてるんですから...、」


雪音「そんなの...、友達じゃないですか。」


美紗「二人で作りたかったんだね。また

   今度一緒に何か作ろう」


美紗「私も、雪音と何か作りたい」


雪音「....。.....、」


雪音「........、」


美紗「本当は...絵なんて、もう描きたくない

   んでしょ?」


雪音「......。」


美紗「...良いんだよ、それで。」


美紗「泣くくらい嫌な事は、しないでいい。」


美紗「絵を描きたくないって言っても、私は

   雪音を嫌わないよ。雪音はもう、充分

   頑張ったから。」


 ぎゅっ、と私はめいいっぱい雪音を、抱き締める。生きてさえいれば 絵なんてまた描ける


雪音「.....。」


美紗「大丈夫...。」


美紗「...大丈夫だよ、」


雪音「....、」


雪音「..........。」


 ポタッと...、服の上から水滴が落ちる。


雪音「目から...、」


美紗「涙...、」


雪音「...そういえば久しく泣いてません

   でしたね。」


雪音「...でも、どうして...急に...、」


美紗「それが、雪音の本当の気持ちだから

   だよ。悲しい時に涙は勝手に出ちゃう

   ものだから。」


美紗「苦手な物をずっと描き続けるのは

   辛いって、雪音の心はそう思ってたん

   だよ」


雪音「...、」


雪音「私が嫌だと言えば、我が儘な人間として

   誰も近寄って来なくなります。」


雪音「ただでさえ誘拐されて。疑心暗鬼

   なのに...」


美紗「じゃぁ何で私は雪音の側に

   いるんだろ?」


雪音「顔が、良いから...?」


美紗「そう、まぁそれだけじゃないけど」


雪音「いくら顔が良くても。貴女には助けて

   くれた妹さんがいるじゃないですか」


雪音「別に私でなくとも」


雪音「妹さんに優しくするのは分かりますが、

   どうして私にそこまでして下さるの

   ですか」


雪音「貴女がそこまでする理由が、

   分かりません...。麗夜さんの事も

   晴華さんの事も」


雪音「...幻滅されるのが怖くないのですか。

   あなたのせいで、私が変わって

   しまったと言われるのは」


雪音「貴女なのですよ。杏里さん」


雪音「...私に関わるとはそういうことです。

   貴女は私と関わる事で」


雪音「もっと自分の身を危険に晒す事になる

   と考えた方が良い...」


雪音「麗夜さんの事はたまたま解決しました

   が、私に利用価値を見出(みい)だして

   いる方はまだ沢山います。」


美紗「それを言うなら、雪音だって危ない

   じゃん」


雪音「...私は慣れてますから。一人の犠牲で

   済むのならそれに越した事は...」


雪音「貴女がわざわざ関わる必要はありません」


美紗「もう犠牲、って言っちゃってるよ、

   ...雪音」


雪音「....ま、まぁ...。貴女と会話をして

   いると何故かそう思ってしまっている

   私がいるのも事実ですが、」


雪音「...貴女に危険な目にあって欲しくないの

   です。下手に椿様に逆らって敵を作る

   必要はありません」


雪音「私に絵を描くなというのは私から絵を

   取り上げるのも同然です。」


美紗「ずっと描くなって言ってる訳じゃないよ。

   コンテストに参加しなければ良いんだから」


美紗「納得のいく絵が出来なかったとか、

   来年のコンテストに向けて勉強してる

   とか、」


美紗「...雪音に絵を描かないでって言った

   一番の理由はね、雪音に絵を嫌いに

   ならないで欲しかったからからなんだよ」


雪音「絵を嫌いにならないで欲しい...?」


美紗「絵って無理やり描くと、歪んでい

   って、変になるから。辛い気持ちで

   描いた絵は"悲しい絵"しか出来ない」


美紗「私にとって絵は、人を幸せにするもの

   で、...誰かを傷付ける物じゃない」


美紗「少なくとも私は絵があったお陰で、

   幸せな世界があるって知ったから。」


美紗「私もそういう絵を描けるように

   なりたいの。皆が幸せになれる絵」


美紗「辛い気持ちで描いた絵は、絵に伝わる

   から」


美紗「だからこそ、辛い時は描かなきゃ

   いけない絵じゃなくて自分の描きたい

   絵を描くんだよ。」


美紗「描いてる人だって。絵で幸せになる

   権利はあるんだから」


美紗「お金も貰ってないのに、無理やり描かなきゃ

   いけないのはおかしい。」


雪音「...それを言ったら、学校の課題もですね。」


美紗「それは将来の為に仕方ない事だけど...、」


美紗「とにかく、絵を描くのに辛さを感じ

   てたら駄目なんだよ。美術学校にいるから

   って、」


美紗「将来本当にそういう関係に就くか

   分かんないし...」


雪音「...そのような事を私に言ってくれるのは

   貴女だけですよ。...杏里さん」


雪音「それに...貴女に初めから策など無い事

   など、分かっていました。...貴女は

   優しい方ですからね」


美紗「え”っ」


雪音「....まさか、」


雪音「気付かないと思っていたの

   ですか?」


美紗「うん...、」


美紗(私の苦労なに。)


美紗「本当に、言ったら嫌われるかもって思って

   たんだよっ、、」


雪音「私が嫌った所で貴女はまた付いてくる

   でしょう...。」


美紗「どうして言ってくれ

   なかったの...。」


雪音「...私にとって"それ"はとても勇気のいる

   決断だったからです。...おいそれと簡単に

   決まるようなものではありません...」


雪音「絵が描きたくないから..."描かない"

 なんて...、今までの私からすれば

   考えられない事ですから。」


美紗(習い事やだー、とか駄々こねたこと

   ないの?)


美紗(なさそう。)


雪音「椿様の期待に応えられない私に甘い

   言葉を並べ、裏で利用する...」


雪音「...貴女が本当にような輩でしたら、

   良かったのですが...、」


雪音「そのような事をした瞬間、必ず生きて

   きた事を後悔させますけど...」


美紗「怖いね...?」


雪音「どうやら、...私は今回も貴女の気持ち

   に根負けしてしまったようです。」


雪音「...そのような些細な事で、貴女を

   嫌いになれるのならばもうとっくに

   なっているというもの。」


雪音「.....、」


雪音「...察して下さい。」


雪音「貴女は語学力だけは高いのでしょう?」


美紗「雪音、もしかして...それツンデ」


雪音「ではありません。悪しからず」


美紗(良かった、何時もの雪音に戻った...、)


美紗「えへへ...///」


雪音「...かまくらに入らなくても良いの

   ですか。折角作った物なのでしょう?」


雪音「早くしないと溶けてしまいますよ」


美紗「入りたいの?」


雪音「少しだけ。」


美紗「...。」


美紗「...雪音、大好きだから。」


雪音「...今すぐその口を閉じる事を銘じます」


美紗「ひどいっ」


※スライド


かまくらの中に二人で入るのはちょっと狭いけど...、なんか子供の頃に小学校でした隠れんぼを思い出すなぁ...。


美紗「二人だと流石に狭いね。...こっちは

   こっちで、秘密基地って、感じがして

   好きだけど」


雪音「...今までに味わった事のない

   感覚ですね。教科書に書いてあった

   通り、中は外よりも温かく感じられ

   ます」


美紗「ちょっと大変だったけど雪音にかまくら

   も体験して貰えたし」


美紗「...頑張って作って良かったよ。

   雪音もお疲れ様」


雪音「私は殆ど何もしていませんよ。」


雪音「...それに、このように誰かと遊ぶのも

   随分と久しぶりで楽しかったですから」


美紗「次は何したい?」


雪音「したい...、事ですか...?」


美紗「私はこれが作れたからもう満足かな

   ~、したいことに付き合って貰った

   し」


美紗「次は雪音の番だね。」


雪音「...ですが、杏里さんはかまくらを私の

   為に」


美紗「雪音は『かまくらを作ってほしい』

   なんて一言も言ってないから」


美紗「私が個人的に雪音に作りたかった

   だけだよ。小さい頃から憧れてた

   から」


美紗「それに下僕(ルビ:ともだち)なんだ

   から、私だけっていうのも不公平

   じゃん?」


美紗「雪音がしたいと思った事をしたら

   良いと思うよ。」


美紗「本当に何にもない?小さい頃にこういう

   事したかったなって。私はいっぱいある

   よ、数え切れないくらいたくさん」


美紗「...やりたい時にやりたい事をすると

   生きてるって実感するんだよね。

   だから、今日は嫌な事忘れて一緒に

   遊ぼう」


美紗「たまには、そういう日があっても

   良いでしょ?」


雪音「...たま、ではないんですよね...。

   此処最近あまり絵を描いていません

   でしたから」


美紗「...精神的な疲れは数日じゃ

治らないよ。」


美紗「今の雪音に足りないのは

   絵を描く事でも、努力でもない」


美紗「絵を描く"余裕"だよ。」


雪音「...絵を描く、余裕ですか...」


 休む事を知らない雪音に、心から休んで貰うにはこれだけじゃ足りない...。雪音が言い返せないくらい納得いく答え...


美紗「雪音がそんな風だから、『  』も

真似しちゃうんだよ」


A『晴華さん』

B『麗夜さん』


→A『晴華さん』


雪音「.....」


雪音「...........。」


雪音「...私を見て、彼女も無理をしている

   のでしょうか、」


雪音「どちらかというと...私より今の彼女

   の方が酷いですよ。」


雪音「大丈夫だからと言って、何があったか

   は教えてくれませんが...。」


雪音「最近、...部屋に籠ったままですし、

   私が気にしなければ良いだけのお話

   ですから」


美紗「晴華さんは晴華さんの事情も

   あると思うし、仕方ないと思うけど」


美紗「でも、そこで雪音が心配しちゃ

   いけないっていうのは違うと

   思う」


雪音「....。」


美紗「勝手に心配しただけだから。」


美紗「向こうはそれを望んでない、」


美紗「それでも...、そういう家族の

   絆って本当に大事だと思う

   よ。」


美紗「確かに晴華さんからしたら迷惑

   かもしれない。でも、」


美紗「誰かに心配して貰える

   っていうのは」


美紗「凄い幸せな事なんだよ。」


美紗「今はただ、心の準備が出来て

   ないだけ」


美紗「だから。今は雪音が元気になる

   方が優先だよ」









→B『麗夜さん』


雪音「.........、」


雪音「....。」


無言で、頭を抱える雪音。


雪音「...確かにあの子の前では、

   私も手を抜く事を覚えなければ

   いけません...、」


 その辺の言葉よりよっぽど説得力があったみたい、まぁ...分かって貰えたなら嬉しいんだけど...


...完全にオーバーキルだった。


雪音「...手を抜くのを、覚えます...。」


美紗「別に責めてないよ、」


美紗「ただ休みは必要って言いた

   かっただけ、」





美紗「今此処にいるのは私と雪音だけ

   だから。もし誰かに見付かったと

   しても」


美紗「私が付き合わせた事にするから」

   

美紗「...ね?」


 そういえば、いつからこんな至近距離で誰かと話すこともなくなったんだろう


  知らない内にそれが当たり前になってて。こういうのが大人になるって事で 常識とか、周りに染まっていくのが大人になるっていうことなら


 ずっと子供っぽくても。私はそれで良いと思う。それで大好きな人が喜んでくれるなら、私の好きな人が幸せでいてくれるなら。


...私は、それで良い。


雪音「....杏里さんがそこまでおっしゃるの

   なら、休むようにします...。」


 まるで、ブラックで勤めてた社員が急に有給が入ったかのようだ


雪音「....。」


雪音「...貴女にはもっとこう...、照れという

   感情はないのですか?」


雪音「先程から結構近くでお話されて

   いますが...」


雪音「...こういった時になんと返事をすれば

   良いか、分かりません...。」


美紗「逆にそんな急に構えられるとこっちの方が

   照れるっていうかっ...、、気楽にうんって

   言えばいいと思うよ///、うんっ///」


 急に素に戻るじゃん、これ以上続けると本当に恥ずかしくなってきそう。


美紗(雪音が入りたいって言ったのに。)


美紗「で、雪音は何かしたいことあったの?」


雪音「...その、」


雪音「...雪で作った白い兎が

   見たいです。」


美紗「雪で作った白い兎って...、雪うさぎ?」


雪音「...昔、晴華さんを喜ばせるために

   お婆様が作って下さったものです」


雪音「誘拐に会うよりもっと以前のお話なの

   ですが」


雪音「...また、見られるのでしたら...。」


 触れただけですぐに溶けてしまいそうなか弱い雪音に少しだけドキッとする、でも私は雪音の下僕だから。そういう趣味はないから


美紗「良いじゃん。雪うさぎ、」


美紗「かまくらよりすぐ出来るし

   何より、可愛いしね。」


美紗「雪うさぎなら簡単に作れると思うよ」


 こんなときこんな風に思うのはどうかなって思うんだけど。美少女の杞憂する姿は凄い絵になる


美紗「晴華さんに見せたら。

   喜んでくれるかもしれないし」


雪音「どうでしょうか、...あの時の晴華さん

   は心此処に有らずのような状態でした

   から。そもそも覚えているかどうか...」


美紗「それならそれで、楽しい思い出になるから

   良いんじゃないかな。」


美紗「雪音は晴華さんの家族だから、

   絶対に嬉しいって思うと思うよ」


雪音「...血が繋がっていなくても、ですか?」


美紗「うん、そもそも両親だって

   元はといえば血の繋がらない

   存在だし。」


美紗「血の繋がらない夫婦が家族に

   なれるのに、義理とはいえ

   その子供が家族になれない理由なんて

   ないでしょ?」


美紗「『血が繋がってないから家族に

   なれない、』なんて。もう"古い"よ」


美紗「...血は繋がってなくても。相手を思い

   やる気持ちに家族も、何も関係ないん

   じゃないかな」


美紗「どっちかというと、今の家族の方が...

   ホントの家族より。家族みたいだし、」


美紗「少なくとも。私は嬉しかったよ。」


雪音「気を...、使われてるとは思わないの

   ですか?」


雪音「私の場合...後継者問題もあって、

   晴華さんは私に後見人、」


雪音「...跡継ぎ関連の全権を譲るため、

   敢えてメイドのような真似事を

   しているのです。」


雪音「お金より、大切な物もありますし、

   私としてはあまり気にしてないの

   ですが...。」

   

美紗「...後継者問題ね。私は実の親が

   死んだら降りると思うけど、晴華さん

   の場合分かんないもんね。」


美紗「その辺りは、多分晴華さんは自立して

   モデルの仕事でお金を貯めようと

   してるんだろうけど、」


美紗「あの人の場合。お世話の方は好き

   好んでやってると思うよ」


雪音「何故...そう言いきれるのですか、」


美紗(だって、あの人。そういうときの反応

   すごい良いもん。すっごいにこにこ

   してるし)


 近くに落ちてる小枝を拾って、雪の地面に雪うさぎを描く。


美紗「本当に嫌かどうかは本人に聞いて

   みればすぐに分かるよ。「晴華さんは私の事

   どう思ってるんですか?」って、」


美紗「...家族なんだからもっと信頼してほしい

   、困ってる事があったら力になれる

   かもしれないから、相談してほしい。とか」


美紗「そういうのはちゃんと言わないと

   駄目だよ。お姉ちゃんはそういうのに

   弱いから」


雪音「前にもそう言っていましたね。」


美紗「それだけ効果があるんだよ。晴華さんを

見てると、分かるでしょ?」


美紗「それで逃げるようなら、後ろから

   思いっきり抱き締めれば良い。

   泣きながら。」


雪音「....経験談ですか。」


美紗「経験談、です...」


 くゆに後ろから抱き付かれながらの涙はそりゃもう、罪悪感が凄かった。メンヘラとそうじゃないのの違いって


 スキンシップがあるかどうかと思う


美紗「...晴華さんともっと仲良くなる方法。

   知りたい?」


雪音「...知りたいです。」


美紗「じゃぁ、一回1ぎゅーで」


雪音「....」


美紗「冗談だよ。」


雪音「...本当に一回、貴女に抱き付けば教えて

   頂けるのですか?」


美紗(自分で言っといてなんだけど、詐欺とかに

   引っ掛かったりしない?大丈夫?)


美紗「麗夜さんに知ったら殺されるから、

   普通に教えるよ。ちょっとした意地悪、

   雪音があまりにも可愛いから」


雪音「貴女は下僕じゃなかったのですか。」


美紗「「早く教えなさい。私にそんな事が

   許されると思ってるのですか、」って

   言ってくれたら」


雪音「...早く教えて下さい。」


美紗(場を和めようと思ったんだけどなぁ、)


美紗「自分から我が儘を言うんだよ。」


美紗「私は貴女とこうしたいから。

   あぁしたいって、具体的にね」


雪音「...自分から我が儘を、ですか...」


雪音「難しい事を言いますね。」


美紗「一回、気を使わず話してみるといいよ。

   私と話してるみたいにさ」


雪音「...ですが、私(わたし)が我が儘を言って

   しまったら。」


雪音「晴華さんはきっと...夢を諦めて、

   私(わたし)に付いて来てしまうでしょう」


雪音「それだけは、...してはいけない。」


雪音「杏里さんも知っての通り、晴華さんは

   記憶を失くした自分に代わり」


雪音「ご両親に自分を見付けて貰うため。

   モデルのお仕事と学業を両立しながら

   日々頑張っています。」


美紗「雪音は、その夢の邪魔をしたくないん

   だよね。」


雪音「はい...。晴華さんは日本人ですから、

   ご両親も日本に居る可能性が極めて

   高いのです」


美紗「...そっか、」


美紗「ご両親が外国にいるっていう可能性は

   ないの?大分経ってるからそろそろ

   見付かってもおかしくないと思うん

   だけど、」


雪音「その可能性はないと、椿様は仰って

   いました。理由までは教えては頂け

   ませんでしたが...」


美紗「うーん...。なんでだろ...」


美紗「...でも、私なら...言う、かな」


雪音「その事で彼女を困らせる事に

   なっても...ですか?」


美紗「どっちにするかは晴華さんが決める

   事だし、晴華さんはそれでも

   雪音と一緒に居たいかもしれない」


美紗「...でも雪音が何も言わなかったら」


美紗「それこそ、道はそれしか無く

   なっちゃうんじゃないかな。

   雪音が残してくれた道だからって」


美紗「晴華さんの事が本当に大切なら

   お互いちゃんと話し合った方が

   いいよ」


雪音「....」


雪音「確かに、貴女の言う通りですね」


雪音「...貴女にそう言ってもらえるのを

   心の底では望んでいたのかもしれ

   ません。例え結果がそぐわなくても」


美紗「やる事に意義がある、と」


美紗「きっかけに雪うさぎを作って。

   彼女とお話したいと思います。」


美紗「じゃぁ、そうと決まればっ」


美紗「あと必要なのは赤い実と耳に使え

   そうな綺麗な葉っぱだね。よーし、」


美紗「早速なんかそれっぽい

   材料があるところに行こうー」


美紗「確か公園にあった気がするんだよね、」


雪音「材料は特に決まっていないのですね。」


※スライド


美紗「きっのみー、きっのみー」


 近くの公園までちょっと歩いただけなのに

 誰かが作った雪だるまが1体、離れたとこで顔を覗かせてる。


美紗「考える事は皆一緒だね。」


雪音「ですが、一体一体顔や身体の大きさが

   違いますね。あちらの雪だるまの方が

   大きいです」


雪音「人数の差でしょうか?」


美紗「大人の人が作ったのかな」


 なんか、妙にクオリティの高い首から下が人間のマッスルポーズをしてる『とてもてもてもちゃん』を見ながらその場で立ち止まる


雪音「確かにその可能性もありますが。」


雪音「足元を見て下さい」


美紗「あ、足跡が沢山...」


雪音「靴の形と人数から考えて」


雪音「大学生かI(アイ)チューバーが注目を

   浴びるために作ったのでしょう、実際

   写真を撮っている方もいましたし。」


美紗「確かにバズりそうだもんね」


美紗(...コケッティ君の事といい、雪音って

   そういう事情に結構詳しいよね。)


美紗「あっ、赤い実発見」


美紗「ね。ちゃんとあったでしょ?」


雪音「...なんで得意げなんですか」


美紗「雪音が思ってるより人の記憶って結構

   曖昧なんだよ、特に私は記憶力に

   まったく自信がない中で」


美紗「この実を無事に見付ける事が

   出来ました。これを奇跡と呼ばずに

   何と呼びましょう」


 ついでに雪うさぎに作りに使えそうな綺麗なはっぱもとって、っと


雪音「...若年性アルツハイマーでしょうか?」


美紗「...そう言われてみれば、...確かに」


雪音「本気にしないで下さい。」


雪音「ですが...、公園の物とはいえ無断で

   取ってしまっても良かったの

   でしょうか」


美紗「取った後に言わないで。」


美紗「盗み目的じゃないし...。持っていかな

   かったら大丈夫じゃない?それに2粒

   だけなら、うーん...駄目かな...」


雪音「調べましたところ。『学術的調査の

   目的と周辺住民の生活に必要な場合を

   除く』そうですので...」


美紗「雪うさぎを作るのは日本的文化

   だよね、」


雪音「その理由でしたら充分でしょう。」

  

美紗「じゃぁ、必要な分だけ持っていって

   家で作ろ」


雪音「そうですね。」※少し微笑んでる


※キャプション


 あとはさっきとってきた赤い木の実を2つ。目にくっつけって、っと...、


美紗「出来たっ!!手乗り雪兎~っ」


雪音「...写真を、撮っても良いですか?」


美紗「何か頼み方がコスプレーヤーみたいな

   感じだけど、雪音なら撮られても

   良いかな。」


雪音「では、失礼します。」


パシャッ


雪音「...」


美紗「雪兎、ちゃんと撮れたー?」


雪音「...ピンボケをしてしまったので、

   もう一枚お願いしても良い

   ですか?」


美紗「良いよー?」


パシャッ


美紗「今度はちゃんと撮れた?」


雪音「えぇ、屋敷に帰ったら晴華さんに

   画像をお見せしたいと思います。」


雪音「彼女が喜んでくれると良いのですが...」


美紗「絶対、喜ぶよ。だって雪音が作った

   雪兎だよ?国宝級っ」


雪音「その根拠はどこから沸いてくるの

   でしょう」


美紗「私が欲しいくらいだもん!!でも...、

さっきスマホ家においてきちゃったん

   だよねぇ...」


雪音「後でお送りますよ。シーウェで」


美紗「本当!?今回は私が選んだ材料で

   作ったけど、次は雪音が選んで作った

   雪兎もみてみたいな。」


雪音「それはまた今度、ですね」


美紗「また今度、かぁ...。もう大分暗いし、

   ...遊んでると本当に時間ってあっと

   言う間に過ぎちゃうね。」


美紗「休みの日だけ1日48時間になら

   ないかなー」


雪音「...杏里さん。」


美紗「...なぁに、雪音?」


雪音「貴女が言った通り。私はもう...、

   ...コンテストの絵を描くのは

   これで最後にしたいと思っています。」


美紗「...雪音が決めた事なら、それで良いと

   思うよ。それだけ悩んだと思うし」


雪音「...本当に、良いのですか?」


雪音「私が絵を描かなければ」


雪音「杏里さんと会う機会も減って

   しまいます。」


雪音「貴女と、...このように遊ぶ機会も」


美紗「罪悪感を感じる必要はないよ。

   雪音は今までずっと頑張ってくれた

   でしょ。感謝こそすれど、」


美紗「恨みの感情なんて一つもないよ。

   今回は、ただタイミングが悪かった

   だけ。」

   

雪音「....。」


美紗「...そりゃ、寂しくない。って言ったら

   嘘になるけど」


美紗「今まで人の為に色々頑張ってきたん

   でしょ?最後に、自分の為にちょっと

   くらい休んでもバチは当たらないと

   思う。」


雪音「私が、ですか...、」


美紗「凄い頑張ってると思うよ。雪音が

   そう思ってなくても」


美紗「それに気付いてる人はちゃんといる。」


美紗「人の為より、自分の為に生きてる方が

   ずっと楽だもん。...そうしないと

   自分が自分じゃなくなっちゃう」


美紗「...今日見た夢ね。

   夢の中で雪音がいたんだけど、」


美紗「その人は雪音なんだけど...、雪音と

   違って大分明るいの」


雪音「今の私とは、真逆の存在ですね。」


美紗「姿は雪音なんだけど、中身は雪音の心

   を守ってる門番さんなんだって」


雪音「門番...」


美紗「その人に愛の女神の会い方について

   聞いたんだけど、」


美紗「『現実にそんな俺TEEEなチートスキル

   持った都合の良い存在はいない、』って、

   言われちゃった。」


雪音「...御祖母様みたいな事を仰るのですね。

   あの方はそういった事例を信じては

   いましたが」


雪音「最終的には結局、培った経験や感が物

   を言うと」


美紗「大分アクロバティックな性格してる

   ね...」


美紗「門番さんが守ってる世界は、今にも

   崩れそうなくらい。本当にボロボロで、」


美紗「その世界の中で、ただその運命を受け

   入れてる門番さんがいた。」


美紗「...夢と現実を一緒にしちゃいけない

   と思うけど、」


美紗「せめて現実の雪音には、あんな顔 

   させたくなくて。雪音が自分の事を思って

   くれて嬉しいんだよ。」


雪音「...ただ、絵が描けないだけですよ。」


美紗「それでも、人より自分の事を大切に

   してくれた」


雪音「...、」


美紗「雪音が帰ってくるのが先か、私が

   雪音のところに行くのが先か。」


美紗「高校卒業したら、絶対会いに行くよ」


美紗「雪音が認めてくれるくらいの淑女に

   なって。その時はまた告白しちゃ

   おうかな」


美紗「だから、それまで...死なないでね。」


雪音「...別に死ぬつもりはないですよ。

   私はそのような柔(やわ)な精神は

   していませんし」


美紗(そういう人程、追い詰められる時は

   ほんとに一瞬だからね。一応念の

   ため、)


雪音「ですが、...貴女の口からお祖母様の

   話が訊けて良かったです。例えそれが

   夢の中のお話でも」


雪音「杏里さんをお祖母様に紹介出来て。」


雪音「状況は状況ですが...」


雪音「...もう絵を描く必要はないと思うと、

   人は、このような気持ちになるのです

   ね...」

   ※キャプションまで自動スクロール。実際に喋ってる

   みたいに


 そういって。雪音は肩の荷が取れたかのように穏やかな顔付きになる、それはまるで聖母マリアように優しい表情


美紗( 私は...多分、雪音のこの顔がずっと

    見たかったんだろうな)


美紗「でも、"悪く、ない"でしょ?

   そういうのも、」


美紗「生きてる、って感じ、

しない?」


雪音「...えぇ。」


雪音「...とても」


雪音「雪は、...こんなにも冷たいもの

   だったのですね。」


 薄暗くなった雲を二人で見ながら、お迎えの車が来るまで私達は今あるこの時間を雪音と一緒に過ごした。


※キャプション


美紗「ふぁぁ...」


 久々に外で遊んだからかな...、夜ご飯食べたら、何か凄い眠くなってきちゃった...。


ブブッ


美紗「あっ、可愛いー」


 小説を書く気もおきなくて、なんとなくスマホを見てたら。手の平に乗っている2匹の可愛い雪うさぎの写真が雪音から送られてくる。


美紗(作った日にさっそく作る、って

   行動力凄いなぁ...。私は体力使い果たして

   もう眠くって...)


美紗(スクショしておこ)※SE


 仲良さそうに寄り添っている二匹の兎を画面におさえて、フォルダーに入れる。


雪音「「今日は本当にありがとうござい

    ました。早速、晴華さんと作った写真を

    お送り致します」」


美紗「「私も楽しかったからお互い様

    だよ。」」


雪音「「杏里さん」」


美紗「「ん?」」


雪音「「今日は楽しかったよ(*´ω`*)」」


雪音「「...やはり、敬語でないと少し違和感が

    ありますね。ですが、此方の方が

    杏里さんも親密さを感じられるかと

    思いまして」」


美紗(えっ、なんか凄い急に可愛くない...?)


美紗(可愛い人がデレると

    こんな可愛いのか...。)


美紗(スクショしとこ)※SE高速スクショ3連射


雪音「「変、でしたか...?」


美紗(一瞬晴華さんと思った)


美紗「「ううん、そんな事ないよ。

    雪音もそんなお茶目な事する

    ことあるんだなって」」


美紗「「ちょっと可愛かった。」」


雪音「「ちょっとですか?」」


美紗「「いや、だいぶ」」


美紗「「今日は久々に身体動かしたから、

    さっきから凄い欠伸ばっかだよ。」」


雪音「「寝ます?」」


美紗「「うん、そうする。雪音は

    まだ起きるの?」」


雪音「「えぇ、そのつもりです。したい事も

    ありますので」」


美紗「「寝不足にならない程度にね」」


雪音「「分かっていますよ。」」


美紗(...やりたい事って、見付かると

   テンション上がるよね。あぁ言われても

   深夜まで結局起きてやっちゃうんだけど)


美紗(まぁ、お約束ってことで。)


美紗(心はどう足掻いても逆らえないし、

   それなら最後まで夢中になれる

   ものをした方が良い。だから)


美紗(人生って楽しいんだろうね、きっと)


 スマホをスリープモードにして、ふらふらとした足取りで洗面所に向かう。


美紗「ん”ぅ~....」


美紗(歯磨きするの、めんどくさい...。

   このまま寝ちゃいたいなぁ...)


でも、歯磨きはちゃんとしないと虫歯になるし...


美紗(目を瞑っただけでも。寝ちゃい

   そう...)


美紗(ふわぁ....)


美紗(....、)


美紗(..........。)


ブブッ...、ブブッ...


美紗「ん”ぅぁ...?」


美紗(アラーム、付けっぱなし...?)


美紗(... 昨日アラーム切ってなかったっけ、)


美紗(というか、歯磨きした記憶ない...)


 バイブの鳴ってるスマホの画面を見てみると


 雪音からシーウェの着信が来てて、私は慌ててスマホにイヤホンを挿しながら電話に出た。


美紗「雪音...?、どうしたの??」


雪音「今、起きていますか?」


美紗「うん。今起きたとこだよ、おはよぉ...、」


雪音「もう少しお待ちした方がよい

   ですか?」


美紗「ううん、大丈夫。」


 枕を抱き締めながら膝の上において、雪音の話を聞く。


雪音「晴華さんに昨日の事をお話ししまし

   た。先程、もし外国に行くことになったら

   一緒に付いて来て欲しい...、と」


美紗「勢いって凄いね」


雪音「そういうのは出来るだけ早い方が

   良いですから」


美紗「行動力の化身。」


美紗「でも、本当によく頑張ったよ。

   そういうの言うのって凄い

   勇気いるし...」


美紗(私も雪音を騙してたの言いづら

   かったもん、勇気かぁ...、)


雪音「これも、全て...貴女のお陰です。」


美紗「ううん。頑張ったのは雪音だよ、私は

   相談に乗っただけだし」


美紗「で?晴華さんはなんて?」


雪音「一応...、彼女は付いて来ると

   言いました。」


美紗「あんま歯切れがよくないね。」


雪音「分かるんですよ。...彼女にも、

   事情があるのが」


雪音「篠崎様の事やご両親の事を

   告げると、彼女はそれでもいいと」


雪音「ですが...、そう言った彼女の瞳は

   迷いがありました。そこで篠崎様に

   相談したのですが...、」


美紗「朝乃先輩に?」


雪音「...晴華さんは、晴華さんの家族

   を知る人とお会いしてから。

   養子として...、」


雪音「その方と一緒に暮らさないかと

   言われたそうです」


美紗「....。」


雪音「彼女まで、私に付き合う必要は

   ないのですが...、」


雪音「それでも...、相談に乗って、欲しかった

   ですね...。本当に、何も言ってくれない

   ので...」


美紗「うん...。」


雪音「晴華さんが本当の意味で、日本に残り

   たければ、私も諦めが付きます。」


雪音「分かるんですよ。彼女にも、

   事情があるのが」


雪音「篠崎様の事やご両親の事を

   告げると、彼女はそれでもいいと」


雪音「ですが...、そう言った彼女の瞳は

   迷いがありました。そこでその事を

   篠崎様に...相談したのですが...、」


美紗「朝乃先輩に?」


雪音「...晴華さんは、晴華さんの家族を

   知る人とお会いして。」


雪音「養子として...。その方と一緒に

   暮らさないかと言われたそうです」


美紗「....。」


雪音「彼女まで、私に付き合う必要はない

   のですが...。」


雪音「それでも...、やはり、...相談に乗って、

   欲しかった、ですね...。本当に、

   何も言ってくれないので...」


美紗「うん...。」


雪音「晴華さんが本当の意味で、日本に残り

   たければ、私も諦めが付きます。」


雪音「私は彼女の引き取り主じゃないんです、

   彼女は...、私の事をやはりそういう目で

   見ているのでしょうか...、」


雪音「家族としてじゃなく...、」


雪音「...篠崎様と話し合って。私の元へ

   二人で来るようお伝えし、晴華さん

   には一度冷静になって頂くよう頼み

   ました」


美紗「...そっか、」


美紗「頑張ったね。」


美紗(晴華さんの気持ちも分からなくもない

   けど...、流石にそういう大事な事は

   言っとくべきだよ...特に、家族には)


美紗「雪音と、本当の家族を知ってる人と

   一緒に暮らすのは、どっちが良いん

   だろうね。」


雪音「....。」


美紗「...私の場合、親が虐待してる人だった

   から。」


美紗「良い人だと良いんだろうね、」


美紗「でも、雪音に付いていこうとした

   のは」


美紗「...それだけ雪音の事が好きだから

   だと思うよ。私から晴華さんには、

   クレーム入れておくから」


美紗「これからは我慢せずにそういう事

   言って。私なら、雪音が言いたいことを

   直接言えるから」


美紗「もし晴華さんと喧嘩しても、雪音には

   ちゃんとシーウェするし。淋しい思い

   なんてせないから。」


美紗「というか、私が雪音に構って

   欲しいだけなんだけどね。」


雪音「分かりました。...少し冷静に

   なりました」


雪音「...最近はこういう事ばかりですね。」


美紗「頼って頂けて、有り難き幸せ...」


雪音「何ですかそれ...、」


美紗「人に頼られるのって自尊心あがる

   じゃん。こう見えても私結構、自信

   ないんだよ」


雪音「...意外ですね。私と突き合おうとする

   自信はあるのに、そういった事には

   自信がないのですね」


美紗「ただ、人より貪欲なだけだよ。」


美紗「私は雪音みたいに綺麗じゃない

   から。ただ綺麗なのが好きなだけで」


美紗「雪音みたいにはなれない。だからこそ

   その先が見たいんだと思う、」


美紗「雪音が思ってる以上に。私は冷たい

   んだよ」


雪音「むしろ、ベタベタされるのはあまり

   好きじゃないので」


雪音「いいと思いますよ。」


美紗(晴華さん涙目)


美紗(拗ねてるのか、本当にそうなのか...

   わかんないけど)


雪音「それと...、ですね...。」


雪音「...今から少しお時間を頂いて宜しい

   ですか?杏里さんにどうしても

   お渡ししたい物があって」


美紗「私に...、渡したい物?」


雪音「今からそちらに向かいます。」


美紗「え”っ、今から!?」


ブッ...。


美紗「あ...、切れた...。」


美紗(いきなり電話掛かってきたのは驚いた

   けど、でも...晴華さんとちゃんとお話

   出来たんだね。)


 スマホをスリープモードにすると、一気に身体の力が抜けて


ポテンと布団の上に横たわる。


美紗(良かった...、まぁ、まだ問題は

   解決してないんだけど)


美紗「....ふあぁぁ」


美紗(まだちょっと眠い...。)


美紗(何分くらい掛かるんだろ、

   雪音の家から車で来ると思うし...)


美紗「取りあえず...、髪とかさないと...」


 眠気冷ましに外を見ながらぐしゃぐしゃになった髪をとかしていると、窓の向こうに雪音が居て


眠気が、一気に消し飛んだ。


美紗「...え?」


美紗「うそっ、まだ5分も経ってない

   よ!?」


 慌てて、窓を開けて、本当に雪音なのか確認する。いつもと違ってバックを肩に掛けてるけど...うん、間違いない。


 あのふわふわの髪、それに遠くから見てもすぐ分かるくらい、美しく透き通る黄金の瞳は紛れもない雪音本人


美紗「...まさか、」


美紗「...瞬間...、移動?」


雪音「よく気付かれましたね?」


美紗「えっ?まさか...、本当に瞬間移動

   してきたのっ!?」


美紗「いや、確かに雪音、

   人にしてはちょっと美人過ぎると

   思ってたけどっ」


美紗「それでテレポーターなのがバレて。

   超能力者保持法で、外国に帰らないと

   いけないって、コト...?」


雪音「...謎の既成事実を次々と生み出さない

   で下さい。寝ぼけてるのですか...?」


美紗「あ、はい。」


美紗「...えーっ、と...、」


美紗「今すぐそっち行くからっ、そこで

   ちょっと待っててー」


※スライド




 

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