同人誌と藤の花の行方【ゆずるう】

生徒O「いやーしかしほんとに楽しかったですね。

   文化祭!!」


生徒O

「ハロウィン祭でやったブラックウルフが

 大変人気でまたやってほしいんですよね。」


柚夏「流石にもうしませんよ」


生徒O「そんな!!」


柚夏「あんなコスプレはもうしないですからね」


生徒O「そうですか...、大変似合っていたの

   で残念です...。」


 そして、いつも通り調理室に向かう。...なんか最近流雨は教室よりそっちの方が気に入ってるらしく大抵そっちにいた。


流雨「こっちの方が人が優しいから...」


奈実樹

「嬉しいこと言ってくれるやん。教室は

 騒がしいもんな。分かるで、うちもよく

 此処におるからな」


奈実樹「こっちの方が落ち着くし...」


とお茶を用意してくれる奈実樹さん。京都のお茶かな。味が上品で、口当たりがとてもまろやかだ


奈実樹「柚夏はんはうちと違ってイケメンや

    さかい、何処でもやってけそうやな」


柚夏「イケメンですか...?」


柚夏「皆そう言いますけど、実際はそうでも

   ないですよ」


柚夏「特に内面とか...。ネガティブですし...」


柚夏「...流雨の言葉も刺さったままで。」


奈実樹「それはおかしいな?」


奈実樹「同人誌とかあったりするくらい。

    柚夏はんは好かれとるで」


柚夏「....? "同人誌"ってなんですか」


奈実樹「薄い本とも言われる代物(しろもの)

    で、個人で描いた漫画みたいなもの

    やな」


奈実樹「...勧められて買ったんやが。樹理も

    人気で入っとったりするから」


奈実樹「因みに、これは本人には内緒な。」


奈実樹「今 丁度持っとるで」


と言って、ページの薄くて大きい本を渡される。 

  

そこには私モチーフなのかイケメンな私と雨宮先輩が一緒に描かれてる本があった。


柚夏「...これが個人で描いた本。こんな

   上手いのに、単行本じゃないんですね」


奈実樹「単行本は色々面倒くさいからな」


 同人誌のページをパラパラ捲ると、そこにはキスしないと出られない部屋の中に閉じ込められた私と雨宮先輩が


...急いで本を閉じる。


柚夏「は...?」


柚夏「...これ、一体どこで??、、」


柚夏(というか、キスしないと出られない

   部屋ってなんだ...///!!!、、)


奈実樹「芽月はんは知らんのか。新聞部で

    配っとったのをもろうてきたんよ」


奈実樹「女子はこういうの好きやからなぁ。

    結構売れとったで、コピー本が

    無くなっとったくらいやし」


奈実樹「因みにコピー本は紙をホチキスで

    とめた、本というより紙という感じの

    漫画やな」


柚夏「色々教えて下さってありがとうござい

   ました、ちょっと今から新聞部にカチコミ

   入れてきます」


奈実樹「...おぉ、それは頑張ってな」


 私はそれを聞いて、急いで新聞部の元へ駆け抜けるのだった。速歩きで


流雨「.....。」


※スライド


柚夏「何勝手にしてるんですか...ッ!!、、」


!?「...ついにバレたか。」


藤奈「何故私達の仕業だと?」


柚夏「こんな事をする人があなた達くらい

   しか居ないからですよ。」


!?「柚夏様、握手して下さい。握手」


と何故か握手をねだられてる訳なんだけど...


!?「こういう手なんですね。なるほど」


!?「指も長くて綺麗で、ピアノとか弾けそう

  ですね」


!?「いや〜、実際生で見るとクソイケメン

  ですね。こりゃ人気も出る訳だ」


柚夏「いや、漫画っ!!」


!?「ちっ...誤魔化せなかったか。」


柚夏「なんで雨宮先輩と私がいちゃつい

   てるんですかっ!!」


!?「えっ、それが嫌だったんですか??」


!?「結構人気のジャンルなのに...」


藤奈「漫画部と半(なか)ば強制的に一

   描かされたのに...。柚夏様を思って」


柚夏「それが駄目なんですってば」


柚夏「本人にはちゃんと許可を取って下さい」


!?「...柚夏様がそう仰るならやめるしかない

  ですねぇ。ファンも大勢いたのに」


!?「ファンクラブの方達にも大変人気でしたよ。」


!?「あぁ、そういえば...名乗り忘れていま

  したね。私が新聞部の"部長"です」


柚夏「自己紹介とかは良いですから。それより

   なんで雨宮先輩と私が一緒なんですか」


柚夏「よりによって、あの人と」


部長「ゆずこまが尊いからです。」


柚夏(駄目だ、この人話が通じないタイプの

   人だ...。)


藤奈「私としては柚雪の方が良いんです

   けどね。あくまで個人の感想ですけど」


柚夏「というか、そもそも接点すらないっ...!!」


藤奈「同人誌のノウハウも理解出来ましたし、

   そのうち描きます」


藤奈「出来たら真っ先に柚夏さんにお見せ

   しますね♪」


柚夏「描かなくて良いです」


部長「分かります。だからこれから作るん

   ですよね」


部長「同人誌で」


部長「因みに柚夏さん達人気過ぎて、生徒会

   新聞の四コマ漫画でも掲載されてます。

   皆さん顔がめちゃめちゃ良いので」


柚夏「古池さんはなんて言ったんですか」


そっと、目線を逸らす新聞部部長


部長「ちゃんと掲載の許可は取ってますよ...??」


部長「具体的な事は言ってませんけど、」


柚夏「これ知ってるのかなぁ...彼女」


 と、なんとなしに新聞を見てみると結構真面目に描いてあって 作品自体としては正直悪くないんだけど...相手がかなり悪い。


柚夏「これ漫画部と共同してるんですか」


部長「はい、時々印刷にきますよ。

   写真とかもめっちゃ売れてます」


柚夏「そういうのは本人には隠そう?」


藤奈

「流雨さんは柚夏さんのもの、柚夏さんは

流雨さんのもの。あの事件を目撃してた人が結構いて反響を呼んだんですよ」


藤奈「...私が全面的に悪いんですけどね。」


藤奈「それを漫画部が描いて...」


藤奈「...なんか気付いたら、流雨が相手じゃ

   なくて雨宮さんに変わってたんですよ」


柚夏「変わってたんですよじゃなくて、」


藤奈「流雨にはせめてもの償いにマグロの

   おにぎりを全部買い占めときました。」


地味に迷惑なやつだ...


柚夏「それで許されたの??」


藤奈「前よりは仲良くなれたかなぁと思って

   ます。やっぱり食べ物は偉大(いだい)

   ですね」


部長

「噂によると柚夏さんは料理が作れるという

 じゃないですか。料理も出来るイケメンは

 かなり貴重なんです、絶滅危惧種ですよ」


部長「御生下さい。お願いします」


と、とても綺麗な土下座をする部長さん


柚夏(...慣れてるな、この人)


部長「このまま発行を止めたら、芽月一揆が

   起こってしまいます」


芽月一揆ってなんだ。


部長「本当に写真映えするんですよね。

   柚夏さん」


柚夏「そこまで言うなら良いですけど...、一歩

   間違えれば犯罪ですからね。これ」


部長「豆雲先生に許可取ってあるんで大丈夫

   です。パンフにもいれたいんですけど

   良いですか」


柚夏「よりによって一番駄目な先生に...」


柚夏「というか、パンフ??」


部長「パンフレットのことです」


柚夏「いや、パンフの意味は分かるけど...。

   パンフレットって 晴華さんとかに

   して下さいよ」


部長「ブラックウルフがもう超人気なん

   ですよ。晴華さんの方ももう撮らせて

   頂いたので、後は柚夏さんや」


部長「古池様辺りですかね。」


柚夏「あー...まぁ目立つのは嫌だけど、就職に

   関係するのなら」


柚夏(あんまり気乗りはしないけど...。)


部長「という事で1名様、許可頂きました

   ーー!、」


柚夏「そんな一万円入りましたーみたいな」


部長「しゃっ、、」


と部長はガッツポーズをしてる。


柚夏「常識の範囲内ですよ」


部長「分かってますって」


部長「そこもうちょっと右で」


部長「そう、そこ!! ゴミを見つめるように!!」


柚夏(ゴミを見つめるように!?!?)


部長「私をゴミだと思って下さい!!、、

   そう、その角度!!」


柚夏(撮り方に癖ありすぎるでしょこの人、、)


パシャパシャパシャパシャ


柚夏「ちょっと撮りすぎじゃないですかね...」


とそこで写真を何枚か撮られて終わった。


※スライド


部長「いやーほんと髪降ろしても格好良い

   ですねぇ。柚夏さん」


柚夏「他にも良い人が居たんじゃ...」


部長「いいえ、柚夏さん以外にありえません。

   だから私は写真を撮ったんです。」


部長「写真を撮られる程にあなたは魅力的

   でしたから」


柚夏「そんなに...??」


柚夏「って流雨、」


柚夏「声掛けてくれても良いのに」


流雨「たまたま来ただけ。仲良さそうだね...」


と言う流雨は少しつまらなそうな顔をしてる。


柚夏「"同人誌"の事でちょっとね。何故か

   それから、パンフレットの表紙に

   抜擢されたけど」


流雨「柚夏が出ていって中々帰って来ない

   から、多分ここかなって」


それって...


柚夏「私の事...心配して探しに来てくれたの?」


流雨「苛めも解決してくれたし、藤奈との

   仲も取り持ってもらったから」


流雨「だから柚夏が本気で好きなら

   付き合っても良いと思う...」


柚夏「本当に...?」


流雨「でも、私は凄い独占欲が強い...。」


流雨「柚夏は私の憧れだから。何も出来ない

   私とは違う。柚夏は本当に格好良くて、

   可愛い...」


流雨「皆から頼りにされて、

   パンフレットまで撮られて...」


流雨「まるで、アイドルみたい...。」


流雨「...藤奈とのいざこざはあくまで私達の

   問題で、柚夏にはあまり関係ない事

   だったから。」


流雨「柚夏にはあまり不快な気持ちになって   

   欲しくなかったの。でも、怒れない

   私の代わりに怒ってくれた...」


流雨「それが"当たり前"だったのに。」


流雨「私の人生はそれで大きく変わった。」


流雨「柚夏は私の命の恩人。」


流雨「...本当に大好きだから。」


流雨「今だって他の人と話して欲しくない。

   特に...藤奈とは仲良くなって欲しくない」


流雨「柚夏を"奪われる"かもしれないから」


流雨「友達に対して...そんなドロドロの感情が

出てきてしょうがないの...。さっさと

   許せばいいのに。」


柚夏「流雨...」


藤奈「あー、私が流雨の王子様を取って

   たんだね...正直。今の推しは古池様

   だから、安心してって言っても出来ないと

   思うけど」


藤奈「私達はそういう関係じゃないですよ」


藤奈「確かに最初は邪な気持ちで、柚夏様に

   近付いたけど。...それは流雨に私を

   裏切った事を証明して見せつけるため」


藤奈「あの時は流雨が煩わしくて仕方

   なかった。でも、今では普通に流雨を

   応援してるよ」


流雨「藤奈...。」


藤奈「確かに柚夏様は顔は良いけど、

   そういうのじゃなくて。ただ単に

   仲良くなりたいと思う」


藤奈「...柚夏さんと付き合うのは私じゃない。

   本物の柚夏さんと付き合うのは...、流雨

   しかいないって」


藤奈「他の人が撮った動画を見て思ったの。」


流雨「...」


流雨「柚夏と本気で付き合ったら、何が変わると

   思う...?」


流雨「機嫌が良い時は何でもするし、機嫌が

   悪いときは何もしない。...私はそういう

   生活が一番良いと思ってる」


流雨「私は、恋人を作るのに向いてないの...。」


流雨「性格もインドアだし、柚夏とは全く

   違う」


流雨「柚夏もそういうの嫌でしょ。人形なんて

   いくらでもあげられる、でも苛めを

   止められる人は中々いない」


流雨「私は柚夏に何を返せば良いの...。」


流雨「お弁当だってただ、食べて返すだけ」


流雨「洗ったりもせず柚夏から貰った物を

   一方的に返すだけ」


流雨「藤奈の方が恋人に向いてるんじゃない

   かなって。藤奈女子力あるし」


柚夏「流雨...」


柚夏「不安にさせてごめん。でも流雨との関係が   

   依存症だって思ったら、...流雨とあんまり

   関わっちゃ駄目なのかなって。」


柚夏「そのたびに、一人で悶々としてた。

   流雨の言葉は正論だったけど、」


柚夏「私にとっては、"どうすれば良いか分から

   なかった"。」


柚夏「だからこれからは二人で考えよう」


柚夏「流雨は依存されるのが嫌だ。じゃぁ、

   私はどうすれば良いと思う?」


流雨「...そんなこともできないの?って思う事が

   自分の特技だって言うけど、」


流雨「柚夏は人に頼り切りじゃない趣味を

   見つけた方が良いと思う。」


柚夏「人に頼り切りじゃない趣味??」


柚夏「人に頼り切りじゃない趣味...料理や、

   マジック。...は趣味って言うのかな。

   あれはただ子供の頃に憧れた職業で...」


柚夏「師匠から教えてもらった、ただの趣味

   だから」


流雨「それも立派な特技だよ」


流雨「私はゲームや動画を見たりするのが

   好きなんだ。」


流雨「何かに使えたり、人様に堂々と言える

   趣味じゃないけど...」


流雨「でも、見てる時は凄い楽しい」


流雨「ゲームを見てるとね。まるで私が

   主人公になったように思えて...」


流雨「凄い幸せな世界で過ごせるの」


 流雨がいつも堂々としてるのはそれか、私も流雨みたいに自由に生きたいと思うけど


 自分の趣味はちゃんと自分で見つけないと意味がないんだ。


柚夏(私の趣味ってなんだろう、私の"好きな

   事"...)


※キャプション

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る