第14章「ペットな私と雪豹の飼い主、」【みさゆき】

奈実樹「茶道のマナーですが、和室に入る

    前に1つマナーがあります。」


奈実樹「まず、この様に正座をしてから

    襖を1/3程開け、」


奈実樹「少し経ってから左手を使い

    ながら...ゆっくりと襖を開けて

    いきます」


奈実樹「そのままの姿勢でにじり入り、

    90度回転して」


奈実樹「襖をゆっくりと閉めます。

    ...今回、扇子の使用は省略

    させて頂きます」


奈実樹「では、どうぞ」


 奈実樹さんから教わった通り、少し開けてから左手で襖を開けて座った姿勢のまま入って。


 身体の向きを変えてからゆっくりと襖を閉める...、


美紗「...これで、良いですか?」


 次の人を待たせたら悪いし、すぐさま立ち上がって私は奈実樹さんの傍に移動する。


奈実樹「それだけやれれば十分やと

    思うよ」


雪音「失礼致します」


 雪音は迷うことなく、一つ一つ丁寧にまるで息をするが如く奈実樹さんから教わった事をやってのけた。


美紗(流石雪音、凄い自然...。まるで本に

  乗ってる茶道のお手本みたい...)


美紗「ただ...この姿勢、ちょっとキツい

   ですね...」


奈実樹「まぁ慣れてへんとそうやろね。

    慣れたら気にならんくなるよ」


美紗(皆上手いなぁ...、)


 最後の人まで和室に入り終わるのを待ってから、しばらくすると奈実樹さんが動きだす。


美紗(...というか、皆の見てて思ったけど)


美紗(茶道知らないの私だけじゃ...)


 というか縁蛇さんがそういうの得意なのはすごい意外だった。


 多分調理部で何回かやったんだろうけど普段の縁蛇さんからは想像できないくらい上手だったから...、


縁蛇「慣れですよっ!!」


縁蛇「昔はよく自分で作って飲んで

   ましたからねっ。まぁ、お客様用

   なのでめっちゃ怒られました

   けど!!」


縁蛇「抹茶の泡が良いんですよねー。」


縁蛇「団長にバレて、そんなに抹茶が

   好きなら50杯作って全部飲み終わる

   まで出しませんって言われてから

   流石にやめましたけど」


美紗「逆によくそれで嫌いにならなかった

   ね...」


美紗(団長...?)


縁蛇「流石にあの時は抹茶を見るのも

   辛かったのですよっ、飲みきれな

   かった分は翌日団長が抹茶オレ

   にして飲んでました!!」


美紗(仲良いな...、)


美紗「今は抹茶好きなの?」


縁蛇「普通に好きですよ?」


美紗(というか団長って多分お母さんの

   事だよね?なんで団長呼び...?)


奈実樹「移動する際は、畳の濃い色の部分

    を踏まないよう注意して

    ください」


美紗(茶道体験初めてだし、)


美紗(奈実樹さんの話しもちゃんと

   聞かなきゃ)


美紗(折角だからこの際、色々聞いて

   みようかな)


美紗「どうして畳の濃い部分を踏んだら

   駄目なんですか?」


奈実樹「それは、」


晴華「その部分は畳によって針金みたいに

   尖ってる素材が混ざってたりする

   事があるから」


晴華「すっごく危なくて、運が悪いと、

   踏んだら怪我しちゃうんだよねー?」


奈実樹「...畳には諸説あるからなぁ。」


美紗「そうなんですか...?頑丈にするため

に古いのとかはそういう作り方する

んですね...。」


美紗(...昔はそれが常識でなんちゃって

  お嬢様は怪我して当然みたいな?)


美紗(古い物のが価値が高いっていう

   し...、今もその伝統が残って

  たりするのかな...?)


晴華「っていう、覚え方をすると忘れない

   よー」


奈実樹「敵避けにそういうのが作られてる

    可能性も0とはいえんよ。まぁ、

    畳の縁踏むのは普通に失礼

    やしな」


美紗(...嘘なんですかいっ!!結構良い線

  いってたと思ったのにな...、)


美紗「...確かに忘れられなくなりました

   けど。むー...橘さんまた、嘘付き

   ました?」


美紗(瞳を見てもよく分かんないし...)


晴華「美紗ちゃん可愛い反応してくれる

   からつい、ねー...」


晴華「でもあながち全部嘘って訳でも

   ないんだよ?」


晴華「さっき奈実樹さんが答えてくれた

   みたいに、1%でもその可能性が

   ある限り一概には嘘だって言いきれ

   ない」


晴華「それが例え事実とは異なる物だった

   としても本当になるときなんて

   いくらでもあるからねー、」


美紗「...まぁ、確かにそうですけど...。

   また同じような事したら、橘さん

   の事もう信じないですからね?」


晴華「ふふ、それは困っちゃうかなー」


美紗「...もぅ、本当に困るんですか?」 


 ...どう見ても、そうは思えない。けど...この人が一体私になにを期待してるのかが分からなくてモヤモヤする...、


美紗(雪音が関係してるのは分かるけど、

   私橘さんに何かした?)


美紗(雪音にされるならまだ分かるけど

   そんな知らない人にこういう事

   されると凄いモヤモヤする

   なぁ...、)


雪音「晴華さん...。杏里さんにあまり

   そのような意地悪をするものでは

   ありませんよ」


と雪音が口を挟む


 そう言った雪音は少し不機嫌そうな瞳で橘さんを見ていた。


晴華「ゆっきー?」


雪音「温厚な貴女が理由もなくそこまで

   するとは私は思いません。...お母様

   の差し金でしょうか?それとも...」


晴華「ゆっきーのお母様は関係ないよー。

   それに私はゆっきーの味方...

   だけどー...、」


晴華「...麗夜には嘘付きたくないし、

   ねー。せめて少しでも私を警戒して

   貰わないとー...」


雪音「やはり彼女が原因ですか...、」


雪音「だからと言って...私の人間関係に

   まで手を出されるのはあまり良い

   気はしませんね」


雪音「貴女の気持ちも理解出来ますが...

   弱いものいじめは惨めとしか言い様

   がありませんよ。」


美紗(...弱いものいじめ!?)


美紗(私雪音に弱いもの扱いされて

  たんだ!?)


晴華「...美紗ちゃんなら分かるかなーって

思ってー。麗夜もそれならもしかして

   認めてくれるかもしれないし...」


雪音「...私に対して少し過保護過ぎでは

   ありませんか?」


美紗「えーと...、」


美紗(雪音が急に不機嫌そうにしてると

  思ったら、弱いもの扱いされて

  て...、えっと...)


美紗(私ってそんな弱く見える...?)


美紗(まぁ...雪音に比べたらそんなに

   強くないけど...メンタルには

   結構自信あったのにな、)


 なんだろう...、これって意地悪された事に対して怒ってくれてるっていうより...。


 橘さんが私に弱い物虐めしたことに対して...怒ってるよね?


 つまり雪音にとって私は...物語に出てくる王子様というよりは...むしろ...、


美紗(...ペット?)


...あ、すごいしっくり。


美紗(しっくり、じゃないよねぇ!?私雪音

  に全く頼りにされてないうえに、対等

  とさえ思われてないんじゃ...)


美紗(...というか、さらっと言われたけど...

  橘さんが居なかったら...この事ずっと

  知らないままだったのかな...、)


美紗(それはそれでつらいッ!!!)


晴華「あのねー、さっきの話はねー」


 と、雪音と話していた橘さんが急に私に話掛けてくる。


美紗「え?はい...」


晴華「畳の話なんだけど、私が言った会話

   覚えてるー?」


美紗「えーっと...」


晴華「畳によって針金みたいに尖ってる

   素材があったりする事があるから」


晴華「すっごく危なくてー。運が悪いと、

   踏んだら怪我しちゃうんだよねー

   って話ー」


美紗「あぁ...さっきのですか」


晴華「気難しい人だったりすると失礼だー

   って怒らせちゃって、心に傷を追う

   事もあったりするからー」


晴華「「「踏んだら危ない、怪我を

   する」」っていうのは嘘じゃないよ

   ー。それと針金は気難しい人の隠喩

   だったとしたらどうかなー?」


美紗(それって、つまり...、)


「畳(その場)によって針金みたいに(神経質な人)が混ざって(居たり)する事があるからすっごく危なくてー(気をつけた方がいいよ)」


「運が悪いと(神経質な人が居たら)、(地雷を)踏んだら怪我(心に傷を追ったり)しちゃうんだよねー」


美紗(...こういうこと?)


美紗(わかりづらい事この上ないっ!!!!!)


美紗「...あー、なるほど...確かに嘘は

   言ってませんね...。」


美紗(ヒントなしでそれ分かれって言う

   方が無理あるよ...、)


晴華「流石、美紗ちゃんだねー。詳しい

   説明はしなくても理解出来てそう♥️」


美紗(...今の文章、確かに聞いたらどういう

  意味かぐらいは分かるけど...。)


美紗(...橘さん。もしかして私の事、雪音に

  相応しい人物なのか試してる?...

  だったら、これからはそれを踏まえて

  話聞いた方が良いのかな...。)


晴華「んー。麗夜の事ばかり気を取られて

   たら、ゆっきーの機嫌悪くさせ

   ちゃった...。」


晴華「私はゆっきーの人間関係に口出す

   つもりはないよ、私も美紗ちゃん

   みたいな人なら良いと思うし、」


雪音「私がそのような姑息な手段を使うの

   が嫌いだと知っての行動でしょうか」


晴華「違うよ、機嫌直して、ねっ?

   ゆっきー、ゆっきーに嫌われたら

   私つらいよー、」


晴華「針金の隠喩表現は美紗ちゃんに

   分かって欲しかったんだけどね

   ー...。」


晴華「ゆっきーの選ぶ人だからそのくらい

   出来るかなって、だから弱いもの

   いじめじゃないよー、」


美紗(...あー。この人、...雪音より口が上手

  いから雪音も口答えしようとしない

  んだ...、)


※キャプション


奈実樹「因みに先程の回答とさせて頂き

    ますと、畳の縁を踏んでは

    いけない理由は諸説あります。」


奈実樹「現代では痛みやすいという理由が

    一般的ですが」


奈実樹「その昔、畳の縁には家紋があり、

    それを踏むという行為はその家の

    主を踏みつけると同義だった、

    ともされています。」


美紗「家紋って徳川さんとかの門について

   たっていうあの模様ですか?」


奈実樹「その認識であってると思およ」

    

縁蛇「そして畳の縁は結界を表していると

   も言われてるのですよっ!!」


美紗「結界?」


縁者「そうなのですよ!!昔は結界を越え

   ると刺客者から狙われる事もあった

   ようですね!!」


縁蛇「こう、日本刀でスパッと...!!」


 日本刀を持っている真似をしながら、切りつけるようにエアー抜刀でドヤ顔をキめてる縁蛇さん。


美紗(...いつも思うけど、縁蛇さんって

  ネガティブとは無縁の存在だよね...)


晴華「痛そうな話は聞きたくないよー...、」


 橘晴華さんは意外にもグロテスクな話が苦手なのか、話が聞こえないように耳を塞いでる。


奈実樹「ふふ。では、お待ちかねの茶道

    体験...の前に、和菓子体験を

    始めましょか」


美紗「あ...和室で作るんですね」


奈実樹「こういうんは雰囲気が大事やし、

    出来るだけ和の心を楽しんで貰い

    たいからな、」


奈実樹「...では皆はん、どうぞ座って

    下さい」


 奈実樹さんの言葉で皆座り始める。というか、皆普通に正座してるけど足痺れないのかな...?


奈実樹「ふふ、慣れんと痺れへんか?

    崩してえいよ」


 足を何度も組み替えているのに気付いた奈実樹さんが声を掛けてくれる。


美紗「奈実樹さん...。...すみません、

   普段は全然正座をしないので...

   助かります」


美紗(何気ない気遣いが出来る人って

   ほんと凄いよね...、)


 足を崩すと、代茂技さんも私に合わせてくれたのか足を崩し始める。


樹理「今日は練りきりから和菓子を作って

   いきますね。簡単ですから、是非

   覚えて帰ってくれたら嬉しいな、」


樹理「まず材料が全部あるか確認するね。

   白あんが170g、こしあんが

   170g、白玉粉が2g、」


樹理「水が小さじ1g、

   食紅は水で溶かした物を...」


美紗(...それにしても、樹理さん...さっき

  奈実樹さんに注意されたのがよっぽど

  堪えてるのかな。敬語がとれかけて

   る...)


 一つずつ樹理さんと一緒に同じ材料があるか確認していく。


樹理「うん。皆ちゃんと揃ってて

   良かったー、」


樹理「えーっと、まずは白玉粉と水をよく

   混ぜ合わせて、少量の白あんを

   入れてから、またよく混ぜてね」


美紗「へぇ...和菓子ってこうやって作るん

   ですね。水とたった四種類の材料

   で出来るんだ」


雪音「えぇ。ですので、美紗さんのご家庭

   でも簡単に作る事が出来ますよ」


美紗「そうなんだ。...くゆに教えて

   あげたらきっと喜ぶかも」


美紗(和菓子大好きだから...、)


晴華「くゆちゃん?」


 雪音の隣で白玉粉を練っていた橘さんが首を傾げて此方を見詰める


 真っ赤な瞳が蛍光灯に当たり、まるでルビーのように光っていた。


美紗「あっ、くゆは私の妹です、浮気

   とかじゃないですよ?!」


 何に対して弁解してるのか分からないけど...、というか何で私くゆの話で浮気を弁解してるんだろ...。


晴華「美紗ちゃんはお姉ちゃんだったん

   だねー。美紗ちゃん落ち着いてる

   し、マイペース思考だから一人っ子

   だと思ってたよー」

   

美紗「...妹がいるようには見えない

   ですか?」


晴華「ううん、そういうのじゃなくてー。

   私もお姉ちゃんがいるからねー、

だから妹さんもきっと嬉しいだろう

なーって思ったんだよー」


美紗「雪音以外にもお姉さんが

   いるんですね。」


美紗「...喜んでくれるでしょうか、」


晴華「絶対喜ぶよー!だって、私が麗夜に

   教えて貰えたらすっごく嬉しい

   もん。麗夜は料理しないみたい

   だけどねー」


 あん全体が混ざり終わり、残りの白あんも入れてまんべんなく混ぜる。


 混ぜた生地をボウル全体に広げるようにへばりつかせた。


樹理「それからレンジで600Wで5分

   加熱してから、また混ぜて2分加熱

   するよ」


 出来た白あんを混ぜていると、どんどん重みが増してひっついていく。


美紗「おぉ...ひとまとまりになった、」


樹理「3分の2くらいは白色として残して

   おいてね。今回は黄色のクチベニの

   食紅で着色するからよく見てて」


 白いあんがみるみる黄色に染まっていく。和菓子でよく見るあの黄色はこうやって出来てたんだ...。


美紗「おー、なんか、粘土みたいですね」


 自分の分も着色料を入れ、黄色く染まっていくあんを見詰めながら均等に染まるように混ぜ合わせていく。


 肌の触感というか、見た目もなんか粘土みたい。これが食べられるなんてお菓子って分かってても不思議な感じ...、


美紗「これだけでも美味しそうだね、

   雪音」


雪音「...杏里さんは粘土を召し上がる

   のですか?」


美紗「流石に食べないよ!?」


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