第3章「特別なカンケイセイ、」【みさゆき】


 気がつくとオレンジの丸い玉の簪が似合う日本人美人の人が綺麗にお皿に料理を盛り付けて下さっていた。


美紗「...」


 仕草の一つ一つが綺麗で思わず見とれてしまう。


 えっと...こういうの...なんていうんだっけ...、


...人妻っぽい?


雪音「優雅ですね」


美紗「...そうだね、」


全然違った。


??「緊張せんでも大丈夫やよ。調理部

   副部長の鐘鏡 奈実樹(しょう

   きょう なみき)申します」


美紗「あ、どうもご丁寧に...その、」


??「んー?」


美紗「綺麗な動きで思わず見とれちゃい

   ました。凄いですね。しょ...しょう

   きょ」


奈実樹「ふふ、ややこしい名前やもん

    なぁ。奈美樹で構へんよ。

    そして、こっちのアリスはん

    は...」


樹理「私は樹理・シェリールシェル。

   アリスじゃないからね?私はこの

   部の長というやつをさせて

   貰ってるんだよ」


 えっへんと胸に手を当ててそらせるポーズもすごく可愛くて、違和感が一切ないところが凄い。


真秀場「ところで副会長、この子も試食会

    に参加させて頂いてもよろしい

    かしら?」


 と雀さんにくっついていた書記さんはいつの間にか奥に用意されていた和室部屋に座っていたのだった。


隙間から少しだけ、中の様子が見える。


美紗「副会長さん!?え!?」


奈実樹「そうやよねぇ...。部長より、

    生徒会副会長の方を説明した方が

    凄いと思うんやけんどもねぇ」


樹理「だって私はナミと一緒に料理を

   作れる調理部のが好きなんだ

   もん...//」


奈実樹「....樹理はずっこいなぁ、なんで

    こんなえぇ子が地味なうちなんか

    好いちょうくれるんかほんまに

    分からんよ」


美紗「えと...」


樹理「返答は勿論だよ。良いよね?ナミ」


奈美樹「ふふ、断る理由もあらへんから

    ね」


 奈実樹さんが障子を開けると、意外と中は広い。


 畳の良い匂いがする...、


 掃除をしている縁蛇さんと代茂技さん以外の全員が正座で畳の上に座りはじめる


 その様子を見て私も慌てて正座で座った。


美紗「畳だ、すごーい...」


雪音「...時々なのですが、このように

   生徒会で試食会を行う事も

   ありますね。」


樹理「今回の場合は料理教室の試食会

   だから、良かったら食べていって

   くれる?」


美紗「料理教室...?」


樹理「うん。と言っても試作を作る予定は

   明日だけど、午前は筑前煮と和菓子

   作り体験!!」


樹理「その後の午後からは、皆で作った

   和菓子を使って茶道体験っ!!

   っていうのを考えてるんだ。

   なんだけど...」


美紗「どうしたんですか...?」


樹理「本番はもう予約が埋めつくされ

   ちゃってる状況で、ちょっと難しく

   って...」


樹理「明日なら...練習で先行体験させて

   あげられるんだけど....どうかな?」


美紗「い、行きます、行きますっ!!

   行きたいです!!」


 両手の平を畳につけ、身体を軽く仰け反らせた状態のまま返事する。


 ルシェルさんとも仲良くなれるかもしれないし、それに雪音ともっと色んな話が出来るまたとないチャンスだ


樹理「用事が出来たら無理しないでね?

   ...はぁ、...良かったー!!私も明日

   頑張れるよ!!」


奈実樹「けんど、ラッキーやね。樹理は

    すごい人気やから1日で参加人数

    がオーバーしてまうんよ」


奈実樹「来月の予約ももう全て埋もうて

    しもうてるんよね...」


美紗「え?そんな人気なのに先行体験

   なんて...良いんですか...?」


樹理「うん、私達はそういうのは気にして

   ないけど...ね?ナミ」


奈実樹「そういうのウザいけんどね、

    しょうもないけど気にしてはる

    先生方もいらはるね」


美紗「....雪音がいるから、...ですか?」


真秀場「好意は素直に受け止めてくれると

    嬉しいものですわ」


真秀場「そのようにネガティブに感じ

    取らず真摯に受け取りましょ

    う。」


 書記さんの落ち着いた言葉が負の雰囲気をピシャリと切り裂いた。


 書記さんのその、一歩も引かないその姿勢に...決意のようなものが強く感じられる


雀「今のは惚れちゃいそうなくらい格好

  良かったですよ。」


雀「...大好きです、先輩」


真秀場「....。...ちょっ、...ちょっと待っ

て...///....録音するからもっかい、

    もっかいだけ...//」


雀「はい、分かりました。無理です♥️」


真秀場「...うぅぅぅ!だから現実は、

    ロードもないからクソ仕様

    なの!!そもそも1日24時間

    とかマジで短すぎだし、」


真秀場「バックアップできないとか

    イミフ...、、」


雀「先輩って本当に人生楽しそうで

  羨ましいですね。...さっきのは二度と

  言いませんけど、元気出してくださ

  い」


雀「現実はうまくいきません。ドンマイ

  です」


雀さんは書記さんにトドメを刺していた。


雪音「杏里さんは特別です。」


 ずっと閉じてた雪音の口が開く


雪音「...杏里さんはこのような事というの

   はお嫌いでしょうか?」


雪音「そのようでしたら、お付き合い

   なさるのはあまりおすすめ致し

   ませんが」


 そういう事は今に始まった事ではないと言うように語る雪音。タイミングが少しおかしい気もするけど...


美紗(雪音にとって、あくまで「付き

   合う」っていうのは「あなたの自由

   ですよ」って感じなのかな...。)


美紗(...セルフサービスなのは嬉しいん

   だけど...ドリンクバー(感情)も

   セットでお願いしたいな...)


 雪音はなんというか...自分の意思が無い感じがするんだよね...


 こうしたいとかあぁしたいとかそういうの。


美紗(良い意味でも悪い意味でもあんまり

   人に興味持ってないのかな)


 なんていったらいいかよく分かんないけど...まるで一番無難な言葉を選んで...抜き取ってる...そんな...


美紗(...そんな、気がする。)


美紗(あの時は焦って告白しちゃったけど、

  ...私は雪音と付き合って何がした

かったんだろう?)


 雪音に好きになって欲しい?...うーん、そうなったら、そうなってくれたらで嬉しいけど...


 特別扱いされるのが嫌だから別れようっていうのは...ないかな。


美紗(...うーん、なんて答えよう)


→A「書記さんの意見に賛同する」


→B「雪音が本気で嫌だって思ったら

   別れる」




→A「書記さんの意見に賛同する」


美紗「確かに依怙贔屓(えこひいき)って

   言えば依怙贔屓(えこひいき)に

   なるけど」


美紗「それだけ雪音が凄い実力を持ってる

   人だって先生にも認められてるって

   事なんじゃないかな、」


雪音「...お上手ですね。」


美紗「折角だからさっき瑞撫さんも言って

   たみたいにポジティブに受け

   取っても良いのかなって。」


美紗「普通は出来ない事をさせて貰え

   る訳だし、出来るならやっぱり

   楽しんでやった方が絶対いいよ」


美紗「それで私だけやったー、とは流石に

   思わないけど。そのくらいで

   雪音を嫌いになったりはしないよ」


雪音「私とお付き合いなさる事によって

   杏里さんを不快にしてしまわれる

   だけでしたら、」


雪音「無理をなさって杏里さんがお付き

   合いなさる理由もないかと思い

   まして」


美紗「雪音が私と付き合うのが嫌だって

   言うなら話は変わってくるけど、」


美紗「雪音は私と付き合うのは嫌?」


雪音「...付き合う事自体が嫌だとしたら、

   初めからお断りしていますよ」


雪音「ただの言葉程度で意見が左右される

   関係なら端から興味はありません」


雪音「私はこう見えて結構性格が悪い

   方だとは思いますので、」


雪音「いかに好きだ好きだと仰る方を...

   現実に引き戻すという事を生業と

   して生きています。」


雪音「私にもビジネスパートナーを選ぶ

   権利はあると思いますから」


美紗「ちゃんと確認するのって大事ですよ

   ね...、」


美紗「でも、さっきの言い方は拒絶された

   みたいでちょっと悲しかった

   かな?」


雪音「そうでしたか。でしたら、今後は

   別の伝え方をする事に致しま

   しょう」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



→B「雪音が本気で嫌だって思ったら

   別れる」


美紗「雪音が本気で嫌だって思ったら

   別れるよ」


 皆が驚いたように私を見詰める。


勿論その中には雪音も入っていた。


雀「...古池様と別れても良いとおっしゃる

  のですか?」


美紗「そりゃ、折角お付き合い出来たので

   出来れば別れたくはないですけど」


雪音「.....。」


美紗「私がしたいのはあくまで普通の

   恋愛なので...、」


私は立ち上がって、雪音の横に座る。


美紗「...それに、認められてこそ恋愛って

   感じがしますし、そんな物みたいな

   扱いって嫌じゃないですか。」


雪音「...物みたいな扱いを私がされて

   いるとお思いですか?」


雪音「随分思いきった事を仰いますね」


 想像もしていなかった言葉に、雪音は目を細めて少し無礼に感じとったのかプレッシャーを放ってる。


美紗「自由が制限されるのは事実だと

   思うよ。」


美紗「雪音だからそういうのが許され

   ちゃうっていうのはあると思うし」


美紗「皆と違う立場を求められるっていう

   のはやっぱり辛いと思うから...」


雪音「財力と才能に恵まれた家に生まれた

   私の事を『辛い』と表現します

   か、」


美紗「え、えっと...なんていうか、先生と

   かに気を使われちゃって大変だな

   って...」


雪音「生まれに恵まれた私の事を可哀想

   だと仰る方もいらっしゃるのですね」


美紗「も、もぅ!!真剣に考えてるの

   に...、笑うなんて酷いよ。」


美紗(雪音凄い機嫌良さそう...、)


雀「あの厳格な古池様が...」


真秀場「...雀ちゃんの浮気者ー、」


雀「今は瑞撫先輩だけですから。それに

  先輩以外考えられ...」


ーーーーーーーーーーーーーーーーー




雀「.....、」


雀「...っ、...すみません...ちょっとだけ...、

  抜けます...」


真秀場「雀ちゃん?」


雀「...すぐに、戻ってきますから」


と、雀さんは急にどこかに行ってしまった。瑞撫さんは少し迷ってからそれを追い掛けて和室から出てく。


美紗「大丈夫かな?」


雪音「.....。」


雪音「...自分でも、よく分かりません

   ね。」


美紗「でも流石に先行体験ただでさせて

   貰うのもあれだし」


美紗「来月分のチケットを先行体験分の

   チケットとして取りに行っても

   良いですか?」


樹理「うん、勿論良いよ、」


樹理「学年ごとに人数制限が決まってる

   から場所が近い三年生だけって

   事はないから安心してね、」


美紗「三年生で定員埋まるくらい人気

   なんですか...?」


奈実樹「回数ごとに増えてっとるからな。

    初回はそこまでおらへんかった

    けど、樹理人気が兎に角凄まじい

    んよ」


奈実樹「回ごとで着てる服も違うしな」


美紗(樹理さん可愛いからなぁ...)


奈実樹「そやなぁ...、今度は夏休み開けの

    昼にチケットを販売する予定

    やからくるならその時やね。」


美紗「夏休み明けのお昼ですね」


美紗(夏休み明けっ、と。スマホにメモ

   しとこ)


→なみじゅりルートでやります

 (夏休み明け忘れないで筆者)


奈実樹「戦場やけどまぁ、頑張ってな」


美紗「戦場...、ですか...」


奈実樹「そりゃもう。バーゲンセール前の

    奥様方のごとくな」


美紗「が、がんばります...。」


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