麗夜編続き【みさゆき】

美紗(...誘拐犯は、晴華、さん...?)


美紗(晴華さん...なら...。もう...危なく、

   ない...、よね...?)


緊張の糸がとけて。腰が抜ける


晴華?「はっ、雪音お嬢様。」


晴華?「無断でお嬢様にクロロホルムを使用

   致しました事をお許し下さい...、

   私は今後のお嬢様の未来の為...」


雪音「私はこのような事態になった経緯の

   説明をせよと申しているのです」


雪音「これは一体、どういう事なの

   ですか...。椿様が貴女にそのように

   仰ったのですか」


晴華?「これは私の独自の判断で御座い

    まして...決して、椿様の御心では

    御座いませんっ...!!」


美紗「という事は...雪音は誘拐されない...?」


 安心したのか、頬からポロポロと涙がこぼれ落ちる


美紗「良かった...っ、...本当に、、」


雪音「...この光景を見ても」


雪音「まだ貴女は杏里さんが私に害を

   成す存在と言えるのですか」


雪音「...彼女の私に対する誠意は本物です。」


雪音「共に居た貴女よりもずっと彼女は

   私の為に行動をしています」


※スライド


雪音「家の者がとんだ御無礼を掛けて

   しまい...杏里さんには大変な迷惑を

   お掛けしました。」


美紗「ううん、...雪音が本当に危ない目に合って

   なくて良かった」


 そういって穏やかな表情で私の手を引き上げる雪音の瞳はどこか少し曇っていて


 雪音の方も今回のことについてかなり堪えているようだった。


美紗(いくら試すためとはいえ...、

   信頼してた人に誘拐の真似事みたい

   な事されたら落ち込むよね...。)


美紗(誘拐されそうになった雪音なら

   もっと嫌な事もあるだろうし...)


雪音「...下手な言い訳をするつもりは

   ありません」


雪音「此方の小切手にお好きな額を書いて

   下さればその分の額をご迷惑代

   としてお支払します。」


美紗「確かにそういうのも大事だけど」


美紗「今回のことで一番辛かったのは

   雪音でしょ。」


美紗「こんな美人な雪音に迷惑掛けられる

   ならむしろ本望っていうか、」


美紗「それよりも雪音に心配して抱き

締めて欲しいなぁ...、な~んて」


※イラスト


 って、冗談で言ったんだけど本当に抱き締めてくれる雪音。


美紗(凄い目で偽晴華さんがこっちを見てるけど今は何も考えないでおこう)


美紗「...お礼はこれで充分だよ」


美紗(雪音は全く悪くないのにこんな

   事までしてくれるなんて...、基本的

   に性格が良いんだろうな....)


美紗(...その場その場で適当に話して

   る私よりずっと、)


雪音「彼女が此処まで思い切った行動を

   起こすなどと考えてもいませんでした...。」


雪音「麗夜さん。後で杏里さんに胃薬を

   お渡しして下さい」


偽晴華「お嬢様の仰せのままに、」


 でも...さっきの雪音、私の為にすごい晴華さんに怒ってくれてたよね...。


 あの時はあんまり考える余裕なんてなかったけど


 私の事を心配して怒ってくれたんだ、それが今となってはちょっとだけ嬉しかった。


雪音「麗夜さんにも困った物ですね...。」


美紗「さっきから麗夜さん、麗夜さんっ

   て言ってるけど...」


美紗「麗夜さん?晴華さんじゃなくて...?」


偽晴華「...貴様も、初対面である私に

    向かってあの雌犬と同じく晴華などと

    愚弄するか」


美紗「え...?、...あ...す、すみません...。」


美紗(この晴華さん怖いなぁ...、、)


晴華?「私を晴華と同列に扱うな」


晴華?「私には橘、麗夜という椿様とお嬢様

   から頂いた名からも才しか感じ

   られない尊き名前がある。」


麗夜「椿様に命を助けて頂いた恩も忘れる

   者と同じにするなど、...言語同断だ」


美紗「麗夜さん...?...麗夜さんって、雪音

   のボディーガードで凄っい強い

   ...ムキムキな人じゃ...」


雪音「麗夜さんにどういった想像を

   なされていたのかは分かりませんが」


雪音「...彼女は見た目こそ晴華さん

   と同一人物に見えますが、」


雪音「杏里さんが知る晴華さんとは

   異なる人物です。」


雪音「彼女は私のボディーガード兼、

   執事」


雪音「...古池家では晴華さんは一応

   双子という事になっています。」


※キャプション


雪音「古池家の中でもご存知の方が

   少ない...かなりの機密事項ですので、

   麗夜さんの存在は杏里さんにも簡単に知られる

   訳にはいかなかったのです」


美紗「双子...!?」


美紗「...というか、晴華さん双子だった

   のっ!?!?」


雪音「彼女はとても強い方ですので、もし

   誘拐犯が私に寄ってきた場合

   撃退するために今までその事に関しては伏せていました。」


美紗(鉄パイプへし折ってるしなぁ...、、)


麗夜「....。」


 ここ最近の起こった出来事の中でも...、一番衝撃の事実かも...。


美紗「...って事はこの人は晴華さん、

   じゃない...?」


 ...だったら、今私の目の前に居る人は


 一体誰なんだろう。


...見ちゃ、駄目だって...


心の底では分かっているはずなのに...


 その瞳は自分の意思に反するように視界は徐々に上へとあがっていく...


麗夜「......」


 本当に、少し視界に入っただけなのに、


美紗「...っ、」


 恐怖の感情で私を蝕むには、その一瞬だけで充分だった。


美紗「...なんで、」


...なんで、私...。...この人を...晴華さんだって思ってたんだろう...、


 さっきまでこの人を晴華さんだと一瞬でも思っていた自分が...


...今はただ、信じられなかった。


美紗「...私、」


 確かに、意識して見みると目がもう全くの別人で...。フードの中を見た瞬間安全だってほっとした自分がいて


 ...でも、それは本当は全くの別人で


 いくら演技がうまいからといってこんなに、冷徹な瞳をしてる人が...いるだろうか...。


美紗「...、どうして...、気付かな

かったんだろう...」


雪音「...晴華さんの真似をなさるの

   なら」


雪音「彼女に迷惑を掛けないように

   と言われていたのではない

   ですか?」


麗夜「...はい、」


雪音「...麗夜さんは、杏里さんを

   騙すような真似をしたの

   ですか」


雪音「私はいつも貴女に申していた

   はずです。」


雪音「例えどんな相手だとしても、

   騙し打ちのような卑怯な真似は

   してはいけないと」


雪音「それは私を襲った誘拐犯と

   何も変わらない事だと」


麗夜「...ですが、ヒントは出して

   います。...Be careful

   (気をつけろ)と」


美紗「いや...でも...あれ、6月くらい

   だったし...。それにしても

   時間...経ちすぎじゃ...」


麗夜「......」


美紗「ご...、ごめんなさい...、、」


麗夜「...私が本物の誘拐犯なら」


麗夜「掴みかかる間際、真っ正面から

   襲うなどわざわざ顔が割れる

   ような馬鹿な真似はしない。」


麗夜「私が本物の誘拐犯なら背後から

   掴みかかり手を拘束した上で

   話すがな、」


麗夜「それに脅すならチェーンでは

   なく...小回りの利くナイフで

   脅している」


美紗「...誘拐、初心者ですみません...」


麗夜「...日が空いてしまった事に

   関しては」


麗夜「こちらにもそれ相応の事情と

   いうものがある。」


麗夜「私にとっての時間は、貴様の

   過ごすそれとは全く別物

   だからな」


美紗「ボディーガードのお仕事が

   忙しかったとかですよね...?、」


美紗「...気、気が効かなくて...

   すみません...。そんなの

   考えれば誰でも分かるって

   感じですよね...」


麗夜「...そんな弱音を吐く者が、

   雪音お嬢様を本気で守れるとは

   思えんな」


雪音「貴女が今、そうさせているの

   です。麗夜」


雪音「...杏里さんが貴女を晴華さんと

   間違ってしまうのも無理は

   ありません」


雪音「それよりも、彼女は私を命がけ

   で守ろうとしました。自らの

   命をも省みずに...」


雪音「私を...。彼女は...救おうと

   したのです」


雪音「...今は、その事を評価すべき

   でしょう。」


麗夜「...心がいくら強いといえども、

   お嬢様の命を守れぬようでは

   意味がありません。」


麗夜「自分の命よりも雪音お嬢様の

   お命の方が大事というのは

   当然の事、」


雪音「麗夜さん...。...貴女と杏里さん

   は同じではありません」


雪音「貴女が私と椿様を大切に思う

   ように、杏里さんにも大切な

   方々がいるのです。」


雪音「命を失う危険が迫れば誰しも

   自分の命の方が大切に思って

   当然です」


雪音「私はそれを恨むつもりも

   ありません。そのようにして

   種は保たれて来たのですから」


雪音「実際に本物の誘拐犯に出遭った

   ら私を見捨て、逃げる方の方が

   殆どでしょう」


雪音「ですが...それで良いのです。

   それが自然の摂理というもの」


雪音「...結果はどうあれ私は杏里さん

   の人柄をとても気に入っています」


雪音「私の命がいくら無事だったと

   しても貴女が居なくなっては

   意味がないのですよ。麗夜」


雪音「その点杏里さんの方がその

   事については分かっているようです。」


雪音「...だからこそ麗夜さん、貴女で

   は私の感情を取り戻すまでには

   至らなかった。」


雪音「...違いますか?」


麗夜「....お嬢様の意図を組み取れず、

   申し訳ございません。」


麗夜「胃腸薬を買って参ります。」


麗夜「...お嬢様、速度を優先致します

   ので...質の方はどうか御了承、

   下さい...」


雪音「えぇ」


美紗(...すごい...怖かったけど...、

   あの人も雪音の為を思って

   した事...。....だったん...だよ...、ね...?)


美紗(ううん、今はそれより...、、)


美紗「...雪音が、本当に無事で、

   良かった...!!」


 頬に温かい涙が零れて。ぎゅっと、雪音を抱き締める...、...本当に、本当に...、良かった...。


雪音「...私は、彼女と対等に話せていた

   でしょうか」


美紗「あの人が雪音が言った事を

   理解出来たのかは分からない

   けど、雪音の気持ちはちゃんと

   伝わったと思うよ」


雪音「...あのような目に遭ってまで

   麗夜さんの心配までなさる

   とは」


雪音「貴女にはいつも驚かされて

   ばかりですね。」


雪音「...もし、私が杏里さんの立場なら」


雪音「...私は麗夜さんを許す事が

   出来たのでしょうか...。」


美紗「やり方は確かにちょっと...過激だったけど」


美紗「...あの人も雪音の事を考えて

   起こした結果なんだなって、

   見てて思ったから...。」


美紗「それに雪音も私が麗夜さんの

   事を嫌いになって欲しくない

   かなって思って」


雪音「...貴女は本当に人の事をよく

   見ているのですね。」


美紗「惚れた?」


雪音「その一言がなければですね。」


美紗「...まぁ簡単に許すつもりは

   ないんだけど、」


美紗「納得は出来るのかなって。」


雪音「...彼女の代わりも、またどこに

   も居ないという事を彼女が知る

   日は来るのでしょうか。」


美紗「雪音に出来た事なら」


美紗「...きっとあの人にも出来るよ。

   だって、あの人は雪音のボディ

   ーガードさんなんだもん」


雪音「...貴女という方は本当に」


雪音「....、」


雪音「...分かりました。私にも覚悟を

   決める時が来たようですね」


美紗「....ん?」


雪音「杏里さん...」


雪音「......、.....。」


雪音「まずはその、お友達から...、

   ...初めてみませんか」


美紗「....」


美紗「.....えっ!?」


美紗「...えっと、その....、」


美紗「.....はい。...よろしく、...お願い

   、致します...///」


 そうして、この日。私は雪音と初めて本当の意味で友達になったのでした...。

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