第??最終章「誘拐犯の正体、」【みさゆき】


美紗「はっ、...はぁっ...」


 此処まで走ったのはいつぶりだろう、そんなことすら忘れてしまうくらい


 メモに書かれたあの場所へと私は全力で走っていた。


美紗「はぁ...はぁっ...、」


 足が...凄く、痛くて重い...、それに今向かったら 見付かったら殺される可能性だって...


 ...それでも、


 雪音は私よりもっともっと、怖い目にあってるからっ...、


??「やった...、やったぞっ!!ふふ、

   はははは!!これならどれだけ

   身の代金が手に入るのか、」


??「今から楽しみだ、」


 あいつの声がすぐ側で聞こえる、


 私はすぐに物陰へと隠れて耳を立てながらメールを急いで晴華さん宛てに


美紗「はっ、はっ...、、」


 SOSのメールを送信、した...。


美紗(晴華さん...、私はどうなっていいか

   ら。...お願いっ、雪音を...助けてっ...!!)


ヴヴッ※スマホのバイブSE(事前に奪って置いたのか、何故か誘拐犯が晴華さんのスマホを持ってる)


??「...無事に金鶴を運んでくれ

   て感謝するよ」


??「ちゃんと約束通り誰にも言わなかった

  ようだな、」


??「...とでも言うと思ったか?」


??「誘拐犯相手にそんな事が罷り

 (まかり)通るとでも?」


??「メールは情報漏洩にならないと、」


??「本気で思っているのか?」


??「...そんなトンチが誘拐犯

  に効くと思っているとしたら」


??「随分、舐めた真似をして

   くれたな。...クソガキが」


 ゆらりと立ち上がる誘拐犯


美紗「お、お願いです...!!雪音を...、

   ...雪音を返して下さいっ!!」


??「...一旦、痛い目に合わないと分から

  ないようだなァ」


《怯えてんじゃねぇっ!!!、、死ぬ気で

やんねーから覚えられないんだろ?》


??「お前は今...自分の置かれてる立場を

  全く理解していない。」


??「俺が本気を出せばいつでもお前を

  殺せるんだぞ?」


《一回、本気で刺さないと分かんないか?》


 怖い...っ、、心臓がバクバク言って体温が上がる。


 今すぐにでもこの場から走って、逃げ出したい...、、


 あの時の光景が。頭の中で何度も何度も、出てきて...足が震えて、涙で視界がぼやける


??「...あっはははは!!足が震えてる

   ぞ」


??「ただの臆病者が誘拐犯相手に何が

  出来る?お前はただ俺の言うことを

  聞いてれば良かったんだ」


??「そうすりゃ死なずに済んだのになァ...、本当に馬鹿なガキだ。」


美紗(落ち着け、落ち着け、、落ち着け

   ...っ!!、、恐怖にうちひしがれるな...、、)


美紗(私が一人で泣いてても、この状況で

   誰も助けてくれる人なんて、いない...!!、)


美紗(追うのに夢中で、護身用の武器

   とか持ってきてないし、、)


美紗(あー!!、、ほんとに死にに来た

   ようなもんだよっ!!!!、、)


 首をふるって恐怖を無理やり追い払い払おうと涙を拭った瞬間、


 隅にあった鉄パイプがはっきりと視界に写った。


??「今更、逃げても無駄だ。...お前は

   今此処で殺されるんだからな」


 鉄パイプに向かって、私は必死に縋るように走る。


 どんなにカッコ悪くたっていい、どんなに惨めだって良い、、鉄パイプなんて振るった事も握った事だってない。


美紗(錆びてて手が、痛い...、、)


 でも


 それで雪音が助かる可能性が万に一つでもあるのなら、私は...!!、、


 今此処で誘拐犯と戦うっ...!!、


美紗「...ッ、」


 錆びた鉄パイプを私は白ずくめの誘拐犯に向けた。


 ...そうするしか、...もう、


 私も、雪音も助かる道なんてないっ!!、、どんなに、怖くても...っ、


 もう、やるしかないんだ...っ!!


美紗(雪音を、守る...ためにっ!!)


美紗「う、うぅあぁぁぁぁっ!!」


 私は錆びた鉄パイプをブンブンと振り回し白ずくめに攻撃する。


 けど、一度も人と戦った事なんてないそんなただの高校生活しか送って来なかった私が振るった武器なんて


美紗(当たれっ、当たれっ、当たれっ!!!、、)


 マンガや映画の主人公のように簡単に当てられるはずなんて、あるわけもなくって


 まずい...、まずいまずいまずいっ...!!まったく...当たんない...!!


美紗(お願いだからっ、当たれ....!!、、

   当たれっ、当たれっ!!

   当たれっぇぇえええっ!!)


??「...そんなお粗末な武器で私に勝てる

   と思ったか?笑わせてくれるな...。」


??「...良いだろう、」


 真っ白いフードから唯一、見えていた唇が不気味に微笑んだかと思うと


 誘拐犯は錆びた鉄パイプを白い手袋を付けた手で受け止め


 ...バキッ


 と、...いとも簡単に


...握っていた、鉄パイプを握り潰した...。


美紗「えっ...?、」





??「...望み通り、終わらせてやる」


??「...遊びはこれまでだ。」


雪音「....えぇ。遊びは」


雪音「...此処までです」


??「...なっ、」


??「お目覚めになられるのにはまだ

  時間が...まさかっ、、」


美紗「やあっっっっぁぁぁあっ!!」


 と、...白ずくめが怯んだ瞬間。


 ...私の振るった鉄パイプが、誘拐犯の白いフードに


 まるでスローモーションのように...当たって...、


??「...くっ、、」


 それを避けようとした...、誘拐犯のフードがずれて...真っ白い髪がぶわっと...中を舞った。


美紗「....せ、」


美紗「...晴、華...さ、ん...?」


美紗「...ッ」


 白いコートを被った晴華さんは怒りの籠もった瞳で私の首を握る。


晴華「...如何なる場合も誘拐犯相手に、気を

   抜くなっ!!」


晴華「誘拐犯は残虐非道だ、本来ならこの瞬間、貴様とお嬢様は殺されていたんだぞ...?」


晴華「例え血の上繋がらない親族であっても、警戒を怠わるなど以ての外...」


晴華「何故、貴様が雪音お嬢様と

   恋仲になっている」


晴華「大方、お嬢様の弱みでも握ったの

   だろう?」


晴華「この御方はなっ、お前みたい

   な下民が付き合えるような御相手

   ではないんだぞ...、、」


晴華「このような軟弱者が雪音

   お嬢様を愚弄するなど、...この私

   が、断じて、認めぬっ!!、、」


美紗「...せ、晴華...さん...、」


雪音「今すぐ」


雪音「...その手をお離しなさい。...麗夜

   (れいや)。」


雪音「次期古池の当主である私からの

   命令です」


雪音「...即刻に現状の説明をお聞かせ願います」


 ...雪音の今までにないくらいの殺気の籠もった声に、私はただ息を飲む事しか出来なかった。

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