⑮雪音の夢野編~中盤~【みさゆき】


雪「此方です。」


 バスに乗って、図書館前に着くと職員さんの一人が雪さんの姿に気付いたのか


 慌てた様子で図書館の中へと入ってく。


 すると、すぐに館長らしき人が出てきてさっきの職員さんと一緒に雪さんに向かって深く頭を下げるのだった。


館長さん「お疲れ様です、雪音お嬢様」


雪「お勤め御苦労様です。佐々木原様」


館長さん「いつもお世話になっており

     ます、本日はどのような

     ご用件でご来館をなされたの

     でしょうか?」


雪「いえ、少しの間 私用でホワイト

  ボードのある個室をお借りした

  いと思いまして。ただそれだけ

  ですよ」


館長さん「会議室のご利用ですか。

     了解致しました、すぐに

     お使い頂ける部屋がござい

     ますので」


雪「それと、以前ゴーレムのプレ

  ゼンテーションを行った際に

  配布したゴーレムの資料の件

  なのですが」


雪「まだ其方に資料が残っているはず

  ですので、そちらを一部頂いて

  も宜しいでしょうか?」


館長さん「ええ、勿論です。すぐに資料

     と会議室の鍵をお持ち致しま

     すので此方の席でお待ち下さ   

     い。」


雪「座って待っていて良いですよ」


美紗「ううん、大丈夫」


 そして客室らしい部屋に通されて、待ってる間立ちながら凛々しい顔で遠くを見つめる雪さん。


雪《何故、現実世界には時間カットという

  機能が存在しないのでしょう

  か...。》


雪《事前連絡もしていませんし...普通の

一般客と同じ対応で良かったのですが...、》


雪《やはり中々そうはいかないよう

  ですね...》


美紗(相変わらず顔面偏差値高いなぁ...

   目蓋も透明感があって...、もう顔

   だけである程度の支持率ある

   と思うんだよね。)


美紗(雪さんの選挙ポスターなんて出

   た日にはもう、"美人過ぎる女王様"

   として会話の話題で真っ先に出てきそう)


美紗(え、この人政治家なんだ。

   で、何となく電車に乗ってる時

   名前を思い出して検索まである絶対、)


美紗(はっ...、)


美紗(此処でなら...雪音のグッズが

   公式で、買えるのでは...、、)


コンコン、


 館長さん「お待たせ致しました、此方

     がゴーレムの資料となって

     おります。」


美紗「あ、どうも...、」


 そういって渡された資料は、ご丁寧にもクリアファイルの中に入ってる。


美紗(...なんかこういうの。すごい社会

   人、って感じだなぁ...、)


館長さん「鍵は此方をお使い下さい、」


館長さん「7階の2号室でしたらいつ

     でもお使い頂けます。」


雪音「ありがとうございます。場所は

   分かりますので、案内はなくて

   も構いません。」


館長さん「畏まりました、其方のエレベ

     ーターを使って頂いたらすぐ

     ですので、」


館長さん「何か御座いましたら内線で

     気軽にお声かけ下さい。」


ピコン、※エレベーターの音


美紗「会議室、借りたの?」


雪「この図書館は実質。国が管理してる

  図書館ですので、管理者である私は

  特にその利用権限が優位にありま

  す。」


雪「ですから、優先的に会議室が

  使えるようになっているんで

  すよ」


美紗「へー、」


美紗(女王権限ってやつかな?)


雪「といっても国の税金によって建て

  られた建物ですので。」


雪「予約さえ取っていれば、一般の企

  業の方にも問題なくご利用頂ける

  ようになっています。」


雪「人の出入りが多いのもそういった

  理由です。大事な会議や別企業

  とお話がしたい時など、」


雪「此処はそういった方々に向けて

  作られた施設なんですよ。」


雪「事前に連絡をとっていればもっと

  スムーズに事が進んだのですが、

  何せ急でしたからね。」


ガチャッ、


 雪さんに付いていくように会議室の中に入ってみると、ネットとかで検索するとまっさきに出てくるようなそんな感じの


 ほんとにイメージしたまんまの小洒落れたオフィスがそこにあった。


 壁の上からはプロジェクターが引っ張ってあって その横には詳細を細かく書くためなのかな、ホワイトボードもある。


美紗「綺麗ー、就職したらこんなところ

   で働きたいなー...、」


雪「良い部屋での業務は従業員の

  やる気にも深く関わってきます

  からね。」


雪「勿論、すべてが無料で御利用

  頂けます」


美紗(雪音のドヤ顔やっぱ好きだな

ぁ...)


雪「以前プロジェクターで説明した

  ばかりですので、講習の内容に

  ついてはあまり心配ありません。」


 パソコンを開いて、データを入れる雪さん。確か前先生に用意した時は周りを暗くしなきゃいけなかったんだけど...


 このプロジェクターはちゃんと文字が見えてる。


雪「驚かれましたか?」


雪「このディスプレイは周りが明るく

  てもこのように、ちゃんと写る仕様

  となっているんですよ。」


雪「出力光源プロジェクターがあるのも

  この図書館の魅力の一つと

  いえます」


雪「暗所だと不安を感じる。暗いと従業員が

  どうしても眠くなってしまう、といった

  方々等から相談がきていて」


雪「そこで今年このプロジェクターが導入され

  たのですが」


雪「どうせ作るのならより良い

  ものをという事で、『誰にとっても

  使いやすいプロジェクター』を」


雪「コンセプトにして開発された物が

  このプロジェクターになります」


雪「主電源さえ入れて頂ければ

  あとは簡単なリモコン操作だけ

  ですので、」


雪「お年寄りの方にも安心してお使い

  頂ける仕様となっています。」


雪「『大』のボタンを押して、文字を見

  やすくしたり、『色』のボタンを

  押す事で文字の色調なども好きに変更

  出来ます。」


美紗「色も変えれるんだ、」


雪「これは何のためのボタンか分かり

  ますか?」


美紗「自分の好きな色にする...とかじゃない

   よね。流石に、」


雪「流石に違いますね」


美紗「流石にね、」


美紗「...画面の色がシアンっぽいから

   色盲の人のためとか?」


雪「色盲の方の為に作られたのは"正解"

  です。ですが もう少し欲しいですね、この

  プロジェクターで何が出来るのか」


美紗「光の強弱を付けて見やすくする...?

   緑と赤を使ってないとか?」


雪「それは普通のプロジェクターでも

  出来るじゃないですか、」


美紗「そのプロジェクターじゃないと

   出来ない事ね...、んー...」


雪「ヒントは補調です。」


 とホワイトボードに明朝体で補調と書く雪さん。それにしても文字綺麗過ぎない?


美紗「補(おぎな)って調整?...って事は、

   赤と緑でも見えるようになる

   ってこと?」


雪「その通りです、人によって認識

  出来ない色は異なるのですが」


雪「三原色の内どれか一つがグレースケ

  ール(モノクロ)に見える事を

  色盲、二色以上が見えない事を

  弱盲といいます。」


雪「このプロジェクターを使えばその

  "三原色の認識がより鮮明に出来る

  ようになります"」


雪「実際に何度か軽度の方の早期発見に

  繋がった事例もありますし、原色の

  光の量を調節する事によって、」


雪「色盲の方だけではなく、弱盲の方

  にとってもより快適な空間を作る

  事が出来るのです。」


美紗「へー、」


美紗「...って、えっ、それかなり凄く

ない...?だって色が分からない人の

   色が分かるんでしょ?」


雪「そうですね、色彩眼鏡があるので

  二番煎じなのですが 私は作って

  良かったと思っていますよ。」


雪「皆と違うというのはやっぱり寂しい

  と思いますから」


美紗(こんな良い人を、なんで皆税金泥棒に

   したがるんだろう...。不祥事が多い中で

   雪さん程ちゃんとした人いないよ)


美紗(やっぱ反論出来ないからかな...)


 雪さんがこの国の女王で 皆と違う立場だからこそ、そういった目線に立てるのかもしれない


 国の代表(かお)でありそれをとりまとめるのが女王の役目だから。おいそれと自分の意見を通したり出来ないんだろう


雪音『一人の犠牲で済むのなら

   それに越した事はありません』


 人目もあるんだろうけど、こんな風に誰かの為に作った物を自慢気に話す雪さんの姿は誰も知らないんだろうな...って


美紗(そんな優しい雪さんの事を

   応援してくれる人達がきっと

   どこかにいるはずだから。)


雪「今回はこのプロジェクターを使って

  授業を行っていきたいと思いま

  す。」


美紗「おー、お願いします、雪先生!!」


雪「ではリモコンをお渡ししますので

  使った感想を教えて下さい。」


美紗「私普通に見えるよ?」


雪「こういうのは普通の人からの意見も

  大切なんです。今後の参考になる

  かもしれませんから」


雪「無(ゼロ)から1は生まれませんが、1から

  10が生まれる事を海老で鯛を釣る

  と言います。」


美紗「私が海老とは限らないけど...

   でも、気付いたら何か言うよ。」


雪「まずゴーレムというのは、ユダヤ教

  の伝承に登場する"自動で動く泥人形"

  の事を言います。」


美紗(回転ってなんだろ?)


 回転ボタンを押すと、ゆっくりと赤文字が回転する。一回で止まると思いきやずっと回転してるゴーレムと"自動で動く泥人形"の文字。


美紗(あ、止まらないんだ...)


美紗(いや...、印象には残るけど...

   これしてるのバレたら絶対

   ふざけてるようにしか見えないよね、、)


美紗(これ 教える側が操作するやつじゃ)


 そうして私は雪音から貰ったリモコンをそっと、そのまま机の上に置いたのだった。


美紗(...というか雪さんの話に集中出来

   ない)


※スライド


※絵で解説します


 不意打ちの口元を隠すように 回転スイッチを切る雪さん。いや、止め方が分からなかっただけなんです


雪「...ですが、基本的に作った主人の命令

  だけを忠実に実行する召し使いか

  ロボットのような存在だと思って

  下さい。」


雪「ですので、生き物のように"危険を

  感じて身を守ったりする"といった

  生理的な行動はまずないと言って

  いいです」


雪「"警戒"や、"威嚇"など。ましてや"襲って

  きたり"といった事はそのゴーレムを

  作った術者が命令でもしない限り」


雪「そういった危険性は"かなり低い"と

  みて良いでしょう。同行していた

  専門家もそのように証言していま

  す。」


雪「「ゴーレム」とはヘブライ語で

  「胎児」や「未完成」といった

  意味があるように、」


雪「基本的に複雑な命令は理解出来ない

  とされており」


コンコン、


雪「...どうぞ、」


??「お久しぶりです、古池様。」


雪「黒沢さん。」


美紗(あ、和ゴスのメイドさん...)


黒沢「いらしたのなら声くらい掛けて

   下さっても良かったのに、」


 この人は瑞撫さんのお店に行ったとき瑞撫さんの隣にいた和服メイドのコスプレをしてた人...。


 今は司書さんの姿だけど、雪さんとは知り合いなのかな?


黒沢「資料を作った時以来ですね。

   ゴーレムについて何か進展は

   得られましたか?」


雪「貴女も知っての通り、進展という

  進展はありませんよ。」


雪「最近は法律の決議案で忙しかった

  ですから そんな暇すらなくて...」


黒沢「女王様だと何かと大変でしょ

   う。丁度お茶菓子を持って来て

   いた事ですし、休憩がてら」


黒沢「如何でしょうか?お友達の方も。」


美紗(司書さんになってもメイドさん

   らしい所は変わってないけ

   ど、思ったより明るい人なの

   かな。)


 雪「今日はそのために来たのではなく

  ゴーレムの事を彼女に教えたいと

  思いまして」


黒沢「...貴女もゴーレムに興味がおあり

   なのですね、こう見えて私(わた

   くし)ゴーレムの事は結構"詳しい

   ん"ですよ。」


 黒沢さんは急須(きゅうす)でお茶を注ぎながら熱烈にゴーレムの事を話してる。


黒沢「何でも願い事を叶えてくれる宝箱

   なんて、ロマンですよね。」


 そう言って。私の椅子の上にもたれる和メイド(今は司書)さん


雪「彼女は考古学のスペシャリストで

  ゴーレムの研究に携わっている

  第一主任ですので」


黒沢「私よりもゴーレムについては

   彼女の方が詳しいですよ。この

   資料を作ったのも彼女ですし」


雪「とても聡明な人で、仕事が早いと

  一目置かれている方です。ご謙遜を」


黒沢「"雪音様"と比べればまだまだです

   よ、少し教えただけで古代語

   も完璧にマスターしてしまわれますし」


黒沢「ゴーレムの事を私と同じ時期に

   学んでいれば私よりもっと凄い学者に

   なっていたと思います」


黒沢「それに古池様がいなければその

   資料も学会に発表出来ません

   でしたから...、」


 雪さんがここまで褒めるってことは 本当に凄い人なんだろう。もしかして博士号とかとってたり


雪「...黒沢さんは別世界から自分の事を

  知ってるという方が、急に現れたら

  信じますか?」


 私の顔を見ながら雪さんはそう言う、


黒沢「そういう夢でも見たのですか?」


雪「そんなところです、」


黒沢「...そうなってみないと分からない

   ですね、どういった行動をとるか

   どうかは。」


雪「そうですか。良かったら黒沢さん

  もお話を聞いていかれますか?」


黒沢「お話を聞きたいのは山々ですが、

   此方もまだやらなければいけないこと

   が残っていますので」


黒沢「また後日、お聞かせ下さい。

   その時を"楽しみ"にしています、」


黒沢「此方はおまけです 貴女と会える日を

   心待ちにしてたんですよ。」


 と、最後に烏の和菓子を添える黒沢さん。湯呑みの横に置かれたお菓子で出来た烏はじっと此方の事を見詰めてる。


美紗(この和菓子、カラス...?凄い可愛

   い...///こういう動物の和菓子とか

   好きなんだよねぇ...///、)


 こういう和菓子で作ったお菓子を見てると柚夏と仲直りしたこと...思い出すな。


黒沢「お友達の方もお気を付けて」


美紗「はい。あの、お菓子...!!ありがと

   うございます、」


黒沢「喜んで頂けて何よりです。では

   そろそろ仕事の方に戻らせて

   頂きますね」


美紗(...素敵な人だったな、あぁいうの

   が出来る人なんだよね。)


雪「飲みながら聞いても良いですよ。

  冬は喉も乾燥しやすいですからね」


美紗「でも凄い人だったね、黒沢さん」


雪「彼女は出来る側の人間ですからね。

  孤児出身とは思えませんよ」


美紗「え、孤児...? あの人が...?」


雪「彼女があれ程までに優秀なのは

  引き取り手が関係しているそうですが」


雪「普通の人よりも優れているのに、

  出自が違うというだけで。差別される

  というのは間違っているとは思いませんか?」


雪「彼女が学会に出せなかったのも、産まれの

  親の身元確認がとれなかったためです。」


雪「優秀な彼女に対しての嫌がらせなんだと

  思うのですが」


雪「...私はあぁいう方を救うために女王

  になったんですよ。国民に嫌がらせを

  するためではありません。」


美紗「そういう人が少しでも減ると

   良いのにね」


雪「減って貰わなくては困ります。」


美紗「そうだね、」


美紗「雪さんも普通に飲んで良いんだよ?

   お茶」


雪「大人相手だと中々、そうもいかない

  事も多いですからね。会議中に

  水を飲まないのも慣れました」


雪《人によっては凝視する方なども

  しますしね...飲まない方が楽に事

  が運ぶ事が多いですから、》


雪「...学生相手だとそういうところが

  気楽で良いのかもしれませんね。」


 館長さんが途中で持ってきたお茶を飲みながら、雪さんの話を聞く。


美紗(雪音も授業してる時は凄い乗り気

   だったけど、やっぱ基本的に

   解説するのが好きなのかな。)


雪「ゴーレムは」


雪「運用上厳格な制約が数多くあり

  それを守らないと狂暴化するとも

  言われていますが、」


雪「例えば命令に背くような行動を

  『発見』した場合には」


雪「それを『阻止』するかのような

  事例が多く目撃されています。」


 プロジェクターに映る写真には範囲内に近づいた人達をゴーレムが撃退する様子が映し出されてて、そのどれもに宝箱が一緒に映ってる。


美紗(あれがゴーレム...。)


 初めて見るリアルのゴーレムは思ったよりも外装は陶器みたいな質感で、でも陶器とは違って すぐに壊れなさそうなイメージ...


 ゲームで出てくる石で出来た恐いモンスターっていうより


 どっちかというと...人の手によって作られた"ロボット"に近い感じだった。


美紗(ユニニャーサルスタジオアトラ・

   クッションにおいてありそう)


美紗(目が赤くなってびかっと光って

   動くやつ)


美紗(柚夏はこれのどこが"危険"と

   思ったんだろう...、あんまり行った

   事なさそうだもんなぁ...)


美紗(見た目もそんなに怖くなそうだ

   し、別に武器を搭載してる訳でも

   ないのに...)


 ノイズの印象が強かったから、もっと壊れて理性を失ったようなのを想像してたけど...


 これならあの時向こうに行っても良かったのかもしれない。いや でも雪さんの嬉しそうな顔を拝めたから無駄足ではないはず


美紗(安全に越したことはないけど...、

   私機械とかよく分かんないからなぁ...)


美紗(謎の錬金術で出来た魔法生物、

   というよりなんか...思ったよりも

   簡単に解決できそうな試練で)


美紗(なんであそこまで門番さんが

   心配してたのか分からないくら

   い、)


美紗(いやまぁそれでも凄いんだけど...

   ゴーレムが動く時点で)


 ...だとしたらあの不快なノイズはなんだったんだろう?


美紗「ゴーレムは、宝箱を守るように

   命令されてるの?」


雪「命令の内容を把握してる訳ではない

  ので断言こそ出来ませんが、その

  可能性は"極めて高い"といえます。」


雪「宝箱の半径10mから離れる事はありませ

  んでしたし、挟み撃ちをすれば

  宝箱ごと持ちあげていましたから」


美紗「でも単純な命令しか聞けないん

   だよね?」


美紗「複雑な命令は理解出来ないって

   言ってたから、もっと頭が悪い

   イメージだったけど」


美紗「...充分頭良くない?」


雪「ゴーレムの高さだと人間には届かな

  いですからね」


雪「宝箱を『守る』事を優先したから

  こそ、そのような行動をとったの

  でしょう。」


雪「大変...興味深い結果です。AIに

  よる収束の可能性をひしひしと

  感じましたよ」


美紗(私にはよく分からないけど、)


美紗(雪さんが楽しそうならそれで

   良いです、現実の雪音も機械とか

   好きだったりするのかな...?)


指示から独立した答えを生み出し


雪《行動する様は健気で若干、愛着すら

  覚えますが、此方にも事情があり

  ますからね...。》


雪《目的はあくまで宝箱を開ける事

  ですから》


雪《皆が望む理想郷を私自身がこの手

  で作りあげていくと、お婆様に約束

  してから》


雪《その事を一度たりとも忘れた

  事はありません。》


雪《"誰も犠牲にならずにすむ世界"を...

  かつて、お婆様が描(えが)いたような

  理想を受け継ぐために、》


雪《私は何としても宝箱を開けねば

  ならないのです》


 雪さんはそう言ってるけど、雪さんだってなるべくゴーレムを傷付けたくないはずなのに...


 それでも雪さんは皆の平穏のために宝箱を開けようとしてる。本当の"理想の街"を作るため


 隣街の人からあんなに邪険に扱われても 雪さんはそれさえ受け止めて心の底から街を良くしたいと思ってる。


 なんで雪さんはそんなに頑張れるんだろう。どうしてそこまで人の為に頑張れるんだろう


 私ならそんな人のために、頑張れない


美紗(雪さんは恐くないのかな...、)


美紗(...無理し過ぎてないといいけど。)


美紗(出来るだけゴーレムを傷付

   けずに宝箱を開ける方法、かぁ...、)


美紗「ゴーレムに命令してる人に宝箱

   を開けてもらえるようにお願い

   出来ないの?」


雪「質問としては良い線ですが、その

  主人が誰なのかも分かっていない

  状況なのです。」


雪「ゴーレムはある日、突然砂漠に

  現れましたから。"何かの切っ掛け"

  で地面から掘り起こされたのか、」


雪「それとも"ゴーレム自身に何らかの

  目的があって"出てきたのか」


雪「そもそも、作った人物が今も存命

  しているのかどうかさえ怪しい

  かと...。」


雪「我々が分かっている事といえば、

  ゴーレムが宝箱を守ろうとしている事、

  そして」

  

雪「ゴーレムが守る秘宝は"開いた物

  の望みを叶えてくれる"と言われて

  いる事ぐらいでしょうね。」


美紗(思ったよりも情報少ないな...)


美紗「それはどこで知ったの?

   やっぱり王家に伝わる古文書?」


 昔の人は今ほど科学や医療が発達してなかったから、色んな物を妖怪とか宇宙人に見間違えたりする。祈祷師も居たぐらいだし...


 伝言ゲームのように世代が何世代も離れてると伝わってる内容が結構変わってたりするんだよね。


雪「古くから伝わる伝承ですよ。その箱

  には"鍵"がなく、"希望の鍵を持つ物

  の手によってのみ"開かれると。」


雪「また、その箱を開けた者には約束

  された未来が訪れるとも言われて

  います」


雪「写真に写っている宝箱には全て鍵

  穴が写っていません。ですから、

  宝箱を持ち帰り調べて解読する事で」


雪「宝箱を開く手がかりを見付けたい

  と思っています。宝箱に何か文字の

  ような物が書かれていますよね?」


 確かに、宝箱に目を凝らしてよくみると、何か記号みたいなのがうっすら見えるのが分かる。


美紗「ほんとだ、うっすら文字が

   見えてるね。...何て書いてある

   か分かんないけど、」


雪「どれだけ高画質にしても

  文字は霞(かす)れて読めません

  でした。」


雪「きっとそういう"仕掛け"が施されて

  いるのでしょう。昔の人の技術というの

  は、それだけで目を見張る程の価値が

  あります」


雪「かつての技術力では到底無理とされて

  いるような代物でも」


雪「物を通して実際に"残されている"の

  ですから。」


雪「過去、理解されなった技術を未来人

  である我々が解明出来る程名誉な

  事はありません。」


雪「ですから、直接宝箱を見て解明

  します。ほんの少しでしたら古代語

  も読む事が出来ますから」


雪「美紗さんにはその"お手伝い"をして

  頂きたいのです。」


雪「伝承が本当なのか、宝箱の中には

  何が隠されているのか。」


雪「それだけ知れれば私としては

  大満足なので」


雪「安全面を考えるならゴーレムの

  行動を制限したいのですが」


雪「何か良い案はないのでしょうか?」


 つまり、雪さん的にはゴーレムをなるべく傷付けることなく


その場に留めさせる方法を知りたいと


 何度か宝箱を取ろうと挑戦はしてるけどそれすらも難しいという事、まずはそれを打開する方法を考えないと駄目かな


美紗「最初からそのつもりでいたから

   良いけど...」


雪「けど?」


美紗「...いや、"向こうの世界に帰る"のが

   願いを叶える事なら。どうしよっかな

   って...、」


雪「その時はそちらを優先して下さい。

  私の願いは自力でも叶えられるもの

  ですから」


美紗「ごめんね...」


《国の幸セヨり、ソイツの幸セの

 ガ大事カ、、あンタハ、この国

 ノ女王、失格だナ》


《ソノ人の事ヲ叶えるナラ住厶場所を失ッた

 私達ノ事を考エテヨ》


美紗(ッ、また...、この声...、、)


 確かに雪さんとは、今日初めて会ったばかり、だけど


  雪さんが今まで"私利私欲のために"何かした事なんて一度もなかった。


 此処にずっといるわけじゃないから、分かんないけど 少なくともその全てに理由があって、今だって自分の事より


 "国の幸せを思うため"に宝箱を開けようと頑張ってる。


美紗(そんな人が女王失格なら、

   いつまで経ってもこの国に"良い

   女王"なんて生まれない。)


美紗(自分が同じ立場なら同じこと言える??

   ただ頼まれて来ただけなのにふざける

   な?って)


美紗(絶対言うんじゃないの?そんな事言う

   人達に雪さんをとやかく言われる

   筋合いはない。)


 確かに雪さんの発言が切っ掛けで街から追い出された人達は増えたけど、だからといって雪さんが"実際に追い出した訳じゃない"


 雪さんの名前を利用して、下民と住むのがやな奴が住民を追い出しただけだ。


 怪我をして、お金が稼げなくなった人達にとっては雪音がその選択をしたからこそ 安心して治療に望める人だっている。


 恨むならその人達の前で言えば良い、言いやすい人に言って『実際に追い出した人には何も言われない』なんてそれこそ、"愚か"としか言いようがない。


美紗(お前らが障害者として生まれて来たん

   だから自業自得だろ、俺達の税金を

   使うな、って、)


美紗(実際その人達の前で言ってみなよ。)


美紗(動画とって拡散したるから)


美紗(...遠回しにそう言ってるのに、なんで、

   気付かないんだろう...、)


 自分の事じゃないから。人は考える事が出来ない


 逆に私を見捨てたら見捨てたでノイズはきっと"こんな冷たい女王が女王で良いのか"、とか言ってくるんだろうな...。


美紗(...じゃぁ、あんたらが王になれば

   良いじゃん。どうせ出来もしない

   のにそう言ってるんでしょ、)


美紗(...本当(ほんと)に、言うだけ...。)


美紗(なってないって事は結局そういう

   なんだよね、自分の能力のなさを

   他人にぶつけるな)


美紗(それに、雪さんならそんな宝箱の

   力を使わないでも良い国に出来

   る。雪音にはそれだけの能力がある。)


美紗(雪音に対しての信者力が足りんわ、

   私を見習え、告白して玉砕

   しまくったんやぞ、舐めんな。)

   ※二回告白失敗してます、の上に

    お友達から始めましょう


美紗(ふん...)


美紗(絶対に雪さんに宝箱を開けさせて、

   皆に認めさせてやる)


美紗(雪さんはちょっと舐められ過ぎ。)


美紗「ゴーレムって、弱点とかあるの

   かな。ゲームとかでは結構

   固いイメージあるけど」


美紗「やっぱり"水"とか?」


美紗(消防車で足元だけ水掛けたら

   崩れたりしないかなー、)


雪「...あるにはあるのですが、」


雪「ゴーレムはemeth(真理、真実、

  英語ではtruthと翻訳される)という

  文字を書いた羊用紙を人形の額に

  貼り付けることで完成します。」


雪「ゴーレムを"壊す"時には(emeth)

  の( e )の頭文字を消し」


雪「meth(死んだ、死、英語では

  deathと翻訳される)にすれば

  ゴーレムは崩れると。」


雪「"試した事"はありませんが、

  諸説ではそう言われています」


美紗「意外と簡単そうに見えるけど、

   でも、それだとゴーレムが崩れ

   ちゃうよね。」


美紗「出来れば壊さない

   ようにしてあげたいけど...」


美紗「ゴーレム自体は何も危害加え

   てるわけじゃないし...、」


美紗「生みの親(作った人)の命令を

   聞いてるだけでしょ...?」


雪「私もそう思っています。ですが、

  "万が一"という事もありますからね。

  知っていて損はないかと」


美紗(万が一、ね...。起こって欲しく

   ないけど...これ、フラグとかそういうの

   じゃないよね?)


美紗(って、言う事によるフラグ潰し

   したから大丈夫かな。)


雪「そもそも、ゴーレムは背が高く、

  人間の手ではまず額にすら届かない

  のですが。」


美紗「あ、確かに」


雪「そこで、とある男性はゴーレムに靴を

  を脱がせるように指示をする事によって。

  ゴーレムの額の文字を消そうとしました。」


雪「ゴーレムが"しゃがめば"額に手は

  届きますからね」


雪「ですが、男性は"崩れたゴーレムの

  大量の泥によって圧死してしま

  った"のです。」


美紗「バットエンドすぎない...?そんな

   方法知ってても誰も使わないよ、」


雪「方法次第では上手くいきそう

  ですけどね...。今まで誰も宝箱を

  開けられなかったのです、」


雪「そう簡単に上手くいくとは思って

  いませんよ。それこそ、手探りで

  探っていくしかありません。」


雪「...ゴーレムを穴に落とした状態で書けば

  まだ勝機はありそうですが、問題は

  "どう転ばせるか"ですね。」


雪「杭を周りに用意して、紐を括らせる

  なども試してみたいところです」


美紗「本物そっくりの宝箱にすり替えるとかは?」


雪「試してみたけど駄目でした。偽物かどうかは

  すぐ分かるみたいです」


美紗(良い案だと思ったんだけどなぁ...、

   ゴーレムが賢くないって言ったの誰だよ...)


 その瞬間、一冊の本が目に止まる。


美紗("ゴーレム"効果の... 重要性...?)


美紗「雪さん、あれゴーレムの本じゃな

   い?」


雪「ゴーレムの本ですか?」


美紗「ほら、あれ」


雪「おかしいですね、検索にはゴーレム

  関係の本は今とても人気で」


雪「全部『貸し出中』に引っ掛かかって

  いたはずですが...」


美紗「でも"ゴーレム効果の重要性"って、

   書いてるよ?」


雪「あぁ...、"ゴーレム効果"の事ですか、」


美紗「ゴーレムと違うの?」


 本を手にとって。パラパラと読む。


雪「それは"ゴーレム"とは付いていますが、

  ゴーレムとは全く関係ない本ですよ。」


 ゴーレム効果によってもたらす大きな損害とパワハラより褒めて伸ばす方が


 従業員のやる気も上がって結果的に"より良い会社になる"、みたいな事がざっと書いてある。

  

雪「"ゴーレム効果"というのは心理学の

  効果の内の1つで」


雪「ある人物に対して周囲の期待が

  "低い"場合、その人物は周囲の期待

  通りに"パフォーマンスが低下して

  しまう"」


雪「そういった心理学効果の事を、

  ゴーレム効果と言います。」


雪「その逆で、期待によってパフォー

  マンスがあがる事をピグマリオン

  効果と呼んだりもするのです

  が...」


雪「少なくともその本にはゴーレム

  関連の事は乗ってないかと...、」


美紗「そうなんだ。んー...ゴーレムの

   本が見付かったと思ったんだけ

   どなぁ...、残念、」


美紗「でも、ゴーレムって宝箱に近付

   かなければ危険じゃないんだ

   よね?」


美紗「土で出来てる大きな人形って

   どのくらい大きいんだろ。写真

   だけじゃよく分かんないし...」


雪「...見てみますか?」


美紗「見てみる って言ったって、

   どうやって?」


雪「勿論、決まっています」


雪「ゴーレムがいる場所へ、実際に

  向かうのですよ。」


※スライド


ビュォッ


美紗「わっ、さむっ...、」


 外に出ると、思ったよりも辺りが暗くなり始めてて 冬だからかさっきよりも肌寒く感じる...。


 というか、近くが思いっきり橋なので 普通に冷たい風がこっちに向かって思いっきり直当たりしてくる


 自然が豊かなのはいいけど、やっぱり此処は"日本じゃないんだなぁ"って、


美紗(確かにこの寒さは身体にこたえる、、

   雪さん居なかったら本当に死んでた

   かも、)


雪「プロジェクターを使った感想は

  どうでしたか?」


美紗「集中して雪さんの話を聞きた

   かったから今回は使わなかった

   けど、」


美紗「回転機能はちょっと気になった

   かな?」


雪「印象に残りませんか?」


美紗(そりゃ印象には残るけど...!! 、)


雪「ピィィィ...」


美紗(...犬笛?)


 雪さんは外に出ると首に掛けていた笛を徐(おもむ)ろに取り出して、ふく。微妙に聞き取れるか聞こえないかの音だけど...、


雪「...馬は人間の5割増しで音が聞こえる

  んです。この距離ならすぐに」


ビアンカ「ヒヒーンッ!!」


雪「流石は我が愛馬ですね、優秀

  です。こんなに早く来てくれるとは、」


 ビアンカは雪さんの期待に応えるかのように首を下ろして、身体を雪さんに預けながら軽く頬擦りをする。


ビアンカ「ブルル...、」


 背中には温かそうな防寒着も巻いてあって いかにビアンカが雪音にとって大切な存在なのかがそれだけで伝わってくる


美紗(ビアンカも雪音に似て、凄い美人さん

   だもんね。真っ白でたてがみも

   綺麗だし 足だってすごい立派だし...)


美紗「でも、私ビアンカに嫌われてる

   けど大丈夫かな、」


ビアンカ「.....。」


雪「この方も乗せていっては貰えません

  か?」


 ビアンカは私の事を横目で見ると、雪さんの顔を交互に見る


 まるで"見定める"かのような馬とは思えない凛々しい瞳。


 その一瞬が時間にしてどれだけのものだったのかは分からなかったけど...


 ...最後に、雪音の頼みなら仕方無いといった様子でビアンカはただコクンと頷いた。


ビアンカ「.....」


雪「乗って下さい、良い子なので

  大丈夫ですよ。」


美紗「...あ、うん」


 あっという間にビアンカに跨がる雪さんの手をとって、


 思ったより遠心力を感じる中、ビアンカの上に跨がると まるで視線が一気に上がるかのような感覚に陥る。


美紗「おぉ...、」


美紗「すごい...高い、」


雪「ちゃんと後ろで捕まってて下さい

  ね。結構、揺れますから」


雪「私の事は女王だからと気にせず、

  もっと身体を密着させてしっかり

  と離れないようにして下さい。」


雪「時速80kmは出ますからね、落ち

  たら骨折どころの騒ぎではあり

  ませんよ。」


美紗(...結構、ガッツリ捕まってるけど

   良いのかな、、)


美紗(別に女王だからくっつきにくい

   訳じゃないんだけど、まぁ...

   ...雪さんだもんね。)


美紗(同じ性別でもこんなドキドキ

   するくらい魅力的なのに、本人

   にはその自覚すらないんだも

   ん、)


ビアンカ「ブルル...、」


 パッカパッカと、蹄の音を立てながら一方ずつ歩き始めるビアンカ。


美紗「わ、わ...、」


美紗(ちゃんと捕まってないと、思った

   より揺れる...、)


美紗「二人乗りだけど...大丈夫?」


雪「ビアンカはそれほど柔(やわ)

  ではありませんよ。名馬ですからね」


 背中が揺れるから少しお尻は痛むけど、雪音の背中に掴まりながらの散歩は純粋に嬉しい...、、


美紗(ちょっと、照れるけど...///、)


美紗「...もう外もだいぶ暗いね。」


美紗「図書館で思ったより時間が

   経ちゃったのかな。星が綺麗、」


雪「冬ですからね。娯楽施設が封鎖

  してから電灯が少なくなったので」


雪「...その分、星が綺麗に見えるように

  なったんです。それがせめてもの

  救いでしょうか...」


この美しい星を見ていると


雪《お婆様が空から励ましてくれている

  様な気がするんですよね、》


美紗「今は私がいるじゃん、」


雪「ふふ、そうですね。」


 青くなった水に少しだけ黒が混ざったかのような深い綺麗な藍色の中で、輝り輝く満天の星空は


 まるで神様が大きなその手で大切な宝物を空に散りばめられたかのよう。


 光り輝く白や黄色の星達は 色褪せる事すら忘れるかのよう何処までも真っ直ぐに続いてる


美紗「きれー...、」


雪「此処は貴女も綺麗ですよと

  言うところでしょうか?」


美紗「そういうのはいいよ、雪さんの

   が綺麗だし、」


雪「私はシンプルなくらいが丁度良いと

  思いますけどね。」


雪「星の数と同じくらい。好みは人

  それぞれ違いますから」


美紗「.....、」


美紗「さっきはあんまり気付かなかった

   けど、この街って至るところに

   翼の生えた女神像があるよね」


美紗「でも一人一人違う」


美紗「羽があったりなかったり...

   なんでだろ。」


それに顔つきや体格も石像によって違うし


雪「あぁ、あれは『愛の女神様』を

  モチーフにした石像だからですよ。」


美紗「"愛の女神"?」


雪「有名な神話ですよ」


雪「『愛の女神像』伝説」


雪「万物の知識を司る女神像を作ると

  "その女神様の知識が受け継がれる"

  と言われていて」


雪「今は観光地として有名な場所

  ですが」


雪「昔は今よりも信仰に熱心な方が

  大勢いて、その影響もあってか 多くの施設

  に女神像を作る職人がいたそうです」


雪「今では職人もめっきり減ってしまい

  ましたが、」


雪「それでもまだ数多くの女神像が

  残されているのですよ。」


 よくみると石像だけじゃなくて、ドアプレートとかにも女神様を型どったシルエットのようなのもある。


美紗「今では年をとった人しか信仰

   してないみたいな感じなのかな?」


雪「若い人でも信じてる人はいますけどね。」


雪「時代の流れというのはそういうもの

  です。私はお婆様に聞かされて

  いたので、知っていますが」


雪「今の人はあまり知らないのでは

  ないのでしょうか」


雪「"愛の女神様"はかつて、神の使いで

  神々の命を果たすため。各地を転々と

  飛びまわっていたそうです」


雪「その女神にはとても"美しい翼"が

  ありました。」


雪「ですが、神の使いであった彼女は

  禍々しい悪意との戦いの末、片翼に

  激しい怪我を追ってしまいます。」


雪「翼を負傷した女神は、バランスを崩し

  たまま人間界へと落ちてゆくの

  ですが」


雪「人々は人間と違う彼女の姿を恐れ、

  傷付いた彼女を誰も助けようとは

  しませんでした」


雪「まだ差別も少なくなかった時代に

  女神様は森の中で、一人の若者と出逢い

  ます。」


雪「人の見た目とは違う傷付いた彼女を

  可哀想に思った若者は担いで家に連れ

  帰り、差別する事なく献身的に看護し

  続けました」


雪「その事に感銘を受けた女神は自らの

  風切り羽を若者の為に折り、"穢れのない

  世界"と決別する事により」

  ※穢れのない世界は愛の女神様が

  作っていた


雪「"その地の繁栄"と此の地で"若者と共に

  添い遂げる"事を神に誓いました。」


雪「若者の愛に答えるかのように女神は

  若者に"知恵"を与え、若者はその女神の

  思いに応えるように」


雪「若者は女神によって与えられた"知識"を

  使い街を豊かにした後。」


雪「二人はまるで"最初からいなかったかの

  ように忽然と姿を消した"とされています。」


美紗「素敵なお話だね」


美紗「女神様と若者がどこに行っちゃった

   のかは気になるけど、」


美紗「私の世界で聞いた女神様の話とは

   ちょっと違うね」


美紗「あっちのは伝承っぽかったけど

   こっちのは本当に神話っぽい」


雪「なので、石像の片翼がどこかしらに

  怪我を負っている物も多いんですよね。」


雪「そちらの話は知りませんが、」


美紗「こっちのは希望の鍵がどうこうってやつ」


美紗「なんか破壊の邪神に気を付けろって」


雪「あぁ、そちらは壁画の方のお話ですね。」


美紗(こっちでは壁画の話になってるのか)


 羽があるのは怪我をする前の女神様ってことかな


美紗「でも、お話から実際に物が作られるの

   って凄いよね」


美紗「顔は少しずつ違うけど、髪型は大体同じ」


雪「良(よ)いところに気付きましたね。

  "不思議な事に"背丈も格好も似通った点が

  多いのです」


雪「まるで"本当のモチーフが居たかのように"」


雪「人の手によって石像を作ると、どうしても

  人によって顔付きが変わってきてしまうの

  ですが。背丈はあまり変わらないんですよね」


美紗「王族が権威を示すために作った神話に

   しては、"出来すぎてる"よね。職人も

   そんなにいないと思うし」


美紗「実際に"本物"がいて、それにあやかりたい

   から作ったって感じしない?」


美紗「羽の質感もやけにリアルだし、想像と

   また違う」


雪「実際目の前で見たとしか思えない

  作りなんですよね」


雪「本当に"愛の女神様"がいらっしゃる

  なら。是非、この目でお逢いしてみたい

  ものです」


雪「私達の悩みなんて、"大した事がない"と

  悟った目で説いて貰えそうで。」


美紗「女神様と人間は違うからね」


美紗「私達の悩みなんて神様に比べれば

   本当にちっぽけな物だと思うよ」


雪「...私のする話は、学生の美紗さんに

  とって退屈ではありませんか?」


美紗「どうしたの急に?」


雪「いえ、高校生と言ったらお化粧や

  お洋服と言った話の方が楽しいかと

  思いまして」


雪「歴史の話より」


美紗「そんなことないよ。私も服は

   どっちかというとお母様、じゃなくて

   "お母さん"に任せっぱなしだし、」


美紗「お化粧はいずれしなきゃいけないん

   だろうけど...、と思ってるけど、

   まだしたことないし...」


そういう話はよく聞くんだけどね、


美紗「今はそれより、翼の生えた"愛の

   女神様"の話とか"ゴーレム"の話の方が

   気になるかな。授業の話より全然

   楽しいよ」


美紗「元からそういう話が好きだから」


美紗「それに雪さんの声って聞き取り

   やすいし。声も綺麗だから、もっと

   聞きたいというか...」


美紗「喋り方とか、1/fゆらぎボイス

   は聞いてて落ち着くよね」


雪「あまり自分の声に良いという自覚は

  ありませんが、」


雪「特に女性の方は美容の話に

  興味を持たれる方の方が多いので」


雪「歴史にはあまり興味がないものかと...、」


雪《よく皆さん、新作の化粧品のお話を持ち

  かけられる事が多いので》


にこにこしながら聞き流してるのかと


美紗(それは人による)


雪《やはり、同世代の方とお話するのは

  大事ですね。新しい発見があります》


美紗(雪さん今何歳?)


美紗「でも、確かに女性は化粧品好きな人

   多いよね。私はたまたま興味ない

   だけだよ」


 可愛いとは思われたいけど、それは男性にモテたいとかじゃなくて


 ただ好きな人に可愛いって思われたいだけで


美紗「そこまで意識高くないし」


雪「"意識"が高い...?、ですか...?」


美紗(雪音は、"呟きったー"とかやってない

   から!!!!、、※自分の中の雪音)


美紗「あー...。雪さんには無縁、の

   言葉かな、」


雪《という事は"普通の女子高生が

  よく使っている"言葉という事

  ですね、》


美紗(なんで此処で食い下がる??)


雪《それを覚えたら 同年代とももっと

  話を合わせられるかもしれませ

  ん。》


美紗(雪さんなら案外いけそうな気はする...)


雪さんの対抗心に火がつく。その一方で純粋無垢な雪さんに対して、なんでそんな事言ってしまったのか、


 女子高生のトレンドに飢えてる雪さんがそんなの聞いたら食い付くに決まってる。


 そんなこと、ハムスターサイズの脳みそしか詰まってなくても、分かるというのにっ!!!、


 いつもは私を冷めた雪豹のような目付きで見てる雪音も今は純粋無垢な白豹なのだから!!なのだからー、なのだからー...!!※エコー


雪「知りたいです」


美紗(んー...、うまい 説明...)


美紗「"意識高い"っていうのはお洒落や

   服装に気を使ってる、向上心が

   高い人の事を言うんだけど...」


美紗「...皮肉的な意味合いのが強いから

   あんまり使わない方がいいよ」


美紗(どっちかというとネット用語、一人だけ

   真面目に頑張ってる人とかにも言うよね)


雪「さきほどの館長さんは...、"意識が

  高い部類"に入るという事でしょう

  か?」


美紗「うん。今私が言った事全部

   忘れよう、」


美紗(雪さんには、似合わない...。)


雪「そこまでですか...、」


 女王様の雪さんにとって、そういう言葉はちょっと気になるんだろうけど


 本場のお嬢様である雪音は絶対、使わない方が良い。逆ならまだ分かるけど その逆は、ダメ、絶対。

   

美紗「それに、そんなお金があったら

   本を買うかな。服とかメイクより」


雪「参考書ですか?」


美紗「真っ先に"参考書"が出てくる辺り本って言って

   良かったよ」


美紗「ラノベ小説。」


雪「たまに先生が持ってきますけど、

  あまり読んだ事はないですね」


雪「『異世界転生した新しい狼余生、

  異世界チートで俺つぇぇえして

  生きてく』は読みましたが」


雪「あまり慣れてないので物語のイメージが

  付きづらく、そういった分野も気には

  なるのですが」


美紗「今度おすすめのやつ読む?」


雪「良いのですか?」


美紗「私も結構 親が厳しい人だった

   から。小さい頃はゲームとか

   買って貰えなくて、」


美紗「その代わりに本を読んでたの。

   漫画だと怒られるからラノベ小説」


美紗「お陰で今もゲームをするより、本を

   読んでるときのが多いかも。」


美紗「あと"絵本は何故か"普通に買って

   貰えたんだよね」


美紗「外国の本なんだけど、毎日読んで

   も飽きないくらい大好きな本が

   あってね」


美紗「"その絵本みたいなお話"が描きたい

   な、って」


雪「それはどんなお話なのですか?」


美紗「"氷の中に閉じ込められたお姫様

   のお話"。子供向けとは思えないくらい

   凄いイラストが綺麗なんだよ」


美紗「ある日お姫様は急にお姫様が嫌に

   なって、自分で自分自身を凍らせるの」


美紗「『本当に私の事が必要なのでした

   ら、この氷を溶かして下さい』って」


美紗「王様は氷を砕く機械をもってくる

   けど氷が固すぎて、機械が壊れて」


美紗「お妃様は『出て来なさい』ってずっと

   お姫様に言うけど 結局お姫様は出て

   こなかった」


美紗「皆が諦めてお姫様に興味を失う中で、

   次のお姫様になった子だけはお姫様の事を

   ずっと心配してた」


美紗「『それでは駄目に決まってま

   す。どうして誰もお姫様を"必要"

   だと言わないのですか、』って」


美紗「実際お姫様と同じ仕事をした次のお姫様

   だけが、どれだけそのお仕事が大変だったの

   か分かったの」


美紗「『お姫様の気持ちが分かるから、

   あなたの好きなことも嫌いなこと

   もわかるから』」


美紗「『二人で一緒に抜け出そう』」


美紗「『"お姫様"の代わりなんていくら

    でもいる、けど"貴女の代わり

    はどこにもいないの"』って」


美紗「そして、お姫様が氷を触る

   とすぐに氷は砕けたの。『私は自分の

   仕事に誇りを持ってる』」


美紗「『だけど、誰もそれを分かって

   くれないからそれが"悲しかった"の』」


美紗「『私の"冷たい心"を貴女が

   溶かしてくれたから』」


美紗「『私はまた頑張れる。』って、

   "ありがとう"私の心を助けて

   くれて、貴女は『太陽のお姫様』

   なのね。」


美紗「って、そういう話なんだけど、」


美紗「子供ながらに 口調が大人っぽい

   その氷のお姫様に恋したん

   だよね。可愛いし」


雪「"新しいお姫様の方"ではなくて

  ですか?」


美紗「雪さんはそっちの子のが好き?」


美紗「確かに次のお姫様も良いと思うけど、

   どっちかというと」


美紗「あの頃の私は"氷のお姫様"の方が

   好きだったから」


美紗「本当に絵が上手で、泣きそうな

   顔で氷付けになってる氷のお姫様

   の表情がもう見ただけで可哀想

   でね。」


美紗「今の私はこんな気持ちなんだな

   って」


雪「それほど凄い絵だったんですね。」


美紗「うん。その手の本では結構有名な

   人だったみたい、」


美紗「その絵本のお陰で今の私があるし

    雪さんにも見せてあげたい

   くらいだよ」


雪「でしたら、美紗さんが元の世界に

  戻った際にその本をもう一人の私に

  見せてあげて下さい。」


雪「もしかしたら "そちらの世界"にいる私

  から」


雪「杏里さんのお話が伝わるかも

  しれませんから」




??『ゴギャアァァァアアアッッ!!!!!ッド

  ッドッド』※電車の発車音(レ●ギガス)みたいな




 その瞬間、凄い金切り声が響く。


美紗「なに、今の...?」


ズドンッ...!!、、、


美紗「えっ なに、何の音...?、」


美紗「向こうで何かあったのかな...。」


 まるで巨大な何かが落ちたみたいな大きな音、隕石が急に落ちてきたみたいな"やな"予感がする...


 流石に考えすぎだと思うけど...、結構振動来てるし


雪「...流石に今の音から何が起こったのか

  までは推測出来ませんが」


雪「砂漠で何か起こったというのは

  間違い無さそうですね、」


雪《あれだけ大きな音ですと、ゴーレム

  が現れた時と同じように砂漠から

  何かが現れたのでしょうか...》


雪「...少し様子を見に行ってきます。」


美紗「え、」


 例えば震災が起こったとき、まだ成人してない同世代の女の子が急に「ダムが崩壊していたら危ないので


 危険かどうか見に行ってきます。」って先生が言うならともかく、女子生徒が言ったら誰だってえ、ってなる。


 大人ならともかく子供が行くのはどう考えても危険だ


美紗「いくら女王だからって、雪さん

   まだ15歳でしょ、そういうのは

   自衛隊が動くと思うし、」


美紗「自衛隊か警察か分かんない

   けど...、」


雪「彼等は"人命救助レベル"でないと

  すぐに来ませんよ。」


雪「助けを待っても良いですが、助けを

  望んでいるのが自分の家族だった

  場合。貴女は本当に同じ事が言えますか?」


雪「...結局は自分で行った方が早い

  んです。そっちの方が確実に助かる

  可能性は高い」


雪「下手な専門家より私の方が詳しい

  ですし、最終的に行き付く先に

  変わりはありません」


雪「ただ、遅いか早いかの違いなら

  早い方が断然良いでしょう」


美紗「でも、雪さんは怖くないの?あんな

   音がなったところに行くの...、」


雪「...普通の女の子ならそう思う

  でしょうね。」


雪「誰かが確認する事によって、皆が

  安全に暮らせるのなら」


雪「それはそれで良いじゃないですか、」


美紗「...それって、本当に雪さんの

   言葉?」


雪「....」


雪「例え、怖いと言ったところで国民は

  それを許してはくれないでしょう」


雪「"高い税金を取っておいて、国が危険な時

  は自分だけ逃げるのか?" "どれだけ

  国から金をとってると思ってるんだ"」


雪「"国民を守るのは国の義務だろ"、国民を

  護るために一生懸命頑張っているのに」


雪「"ちゃんと仕事しろ"と...貴女は

  言われた事がありますか?」


美紗「....」


雪「高校生には少々、酷な質問でしたか。」


雪「その人が居なければ何十人もの

  被害が起こっていても」


雪「その事故が実際に起きて、一人救出をする

  方が絶賛される世の中です。孤児だって

  ...私がどうした所で」


雪「不幸になる人が完全にいなくなる

  訳ではありません。」


雪「他の要因で不幸になる人

  だって沢山います、」


雪「...私が行かない事で、全員が幸せに

  なれるというのなら。いつだって辞めて

  良いんですよ。」


《 助ケタ人ニ味方シテホシイ 》


《モウ、女王ナンテシナクテ良イ。"ソレハ

 根モ葉モナイ噂デ" 実際ハ違ウ》


《貴女ヲ助ケタノモソウイウ理由》


《"誰カニ"タダソウ言ッテ欲シイダケ。》


《"貴女"デアル必要ハナイノ》


《ソンナ事言ッテクレル 都合ノ良イ存在

 ナンテイナイ》


《人ヲ助ケルナンテ、ソノ"ツイデ"ニ過ギナイ》


美紗(例えそうだとしても。雪さんに

   助けられた人はいる)


美紗(私だって、他人任せにしようとした

   のに...それでも雪さんは前に進もう

   としてる)


美紗("女王様だから"じゃない。"雪さん"だから)


美紗(私の世界の知識が知りたくて、本当に

   助けてたとしても...それでも

   "騙された"とは思わないよ)


美紗(あの人は自分の為にやってない)


《 "門番サン"トノ約束ハモウ忘レタノ? 》


美紗(貴女は...)


《....》


雪「...それに、」


雪「私が逃げたらそれこそ誰が責任を

  取ってくれるのですか」


雪「今まで、そう思い込む事で私はこの

  世界に"生きる価値(きぼう)"を見出だして

  きました。」


雪「それが例え他の人から見て、おかしい

  事だと分かっていても」


雪「今更...、変えられないんです。」


雪「"古い生き方しか出来ない"人間ですから」


雪「...例え点数稼ぎと思われても、私

  にはそれしか生きる術(すべ)がない」


雪《"神"でも"女神"でもない、私は"それしか

  出来ない"。私はいいですが

  私を産んだ椿様やお婆様まで》


雪《迷惑を掛けるようでは、それこそ

  "生きている意味がない"じゃない

  ですか》


 そのまま、雪さんが遠いどこかにいっちゃうような気がして...


雪「....、」


 私はただ、ぎゅっ、と雪さんを抱き締める事しか出来なかった。


雪「.....。」


美紗「私は、」


美紗「...ただの女子高生だし、実際に

   『税金を払ってるんだからちゃんと

   やれよ』とか、」


美紗「目の前で言われてる訳じゃないから...」


美紗「...本当の意味で雪さんの気持ちは

   分かってあげられないけど、」


美紗「...もう、大丈夫だよって。

   こうやってぎゅっとするくらいは

   出来るから...、」


雪「.....」


雪《...この人が私の代わりに何か出来る訳

  じゃない、》


雪《でも...。凄く "心が付き動かされる"。

  ...私が本当に欲しかったのは》


"代行者"でも、"それに代わる人"でも


なんでもない、


雪《ただ...こうやって、本当に辛い時に

寄り添い合ってくれる人だったのかも

  しれません。》

※なんだかんだ言って、雪音は女王

(古池家の娘)である事に誇りを

 持っています。ただ誰にも分かって

 貰えなくて辛かっただけです


雪「これだけの事をして頂いても...、

  私は仕事の事しか考えられない

  人間ですよ」


美紗「...雪さんは何でも出来て。凄い

   人だけど この世は悪い人ばかり

   じゃないから、」


美紗「だから...。」


美紗(...。)


→『この世界で雪さんを支えてく』A


→『流石にくゆとお母さんをおいて

  けない』B




→『この世界で雪さんを支えてく』A


美紗「...私、この世界に残るよ。」


 誰からも必要とされない辛さは痛いほど、分かる。雪さんが本当に心から愛せる人を見付けるまで 私はこの世界に残ろう


門番さんには怒られると思うけど...、


 だからと言って、雪さんをこのまま一人で置いていくわけにはいかなかった。


美紗「雪さんに信じられる人が居ない

   なら。私が雪さんを守る盾になる」


美紗「だから、"宝箱のお願いも本当の

   理想の街"を作って下さいって

   お願いにしよう」


美紗「そしたらもう"誰も"文句なんて

   言わないよ」


雪「本気で...、言っているのですか、」


雪「...そんな、事...。」


雪《美紗さんには大事な家族だって

  いるのに...、適当な事を言って

  誤魔化さないのですか...、》


美紗「こんな事、本気じゃなきゃ

   言わない」


雪「....、」


??《いつか、雪ちゃんにも本当に頼りになる人

  が出来る...。雪ちゃんが本当に信頼したい

  と思う人を信じなさい...、きっと》


??《"その人が貴女の力になってくれる

  人だから"》


??《 そんな不安そうな顔をしないで、

  ◆◆◆◆◆の勘はいつだってよく

  当たるのよ。だから感情が戻らなくても

  大丈夫》

  

??《だって、◆◆◆◆◆には愛の女神様が

  付いてるんだから。 》※雪音の門番さんが

  予言の力を持っている理由。

   生前の予知にも似た"勘の良さ"が

 限界突破して門番さんの能力になりました。


  ◆→お婆ちゃん 

  門番さんの存在が薄れ掛かってるので

  モニョモニョしてます。


雪「....、」


雪「....」


雪《...このような事はもう、とっくに

  慣れていたはずなのですが、今更

  こんな事を思うだなんて...》


ビアンカ「...ブルル、」


雪「...すみません、ビアンカ。待たせて

  しまいましたね。」


雪「ゴーレムの居る場所へ向かい

  ましょう...、」


ビアンカ「ヒヒーンッ!!!」


パカッ、パカッ...。



→『流石にくゆとお母さんをおいて

  けない』B


雪「....。」


雪《...あまり彼女を危険な目に合わせ

  たくなかったのですが、》


雪《怯えている女の子をこのまま一人で

  置いていく訳にもいかないですし、

  このままビアンカに乗っていたら

  揺れで落ち着きますかね...。》


雪《...このような事はもう、とっくに

  慣れているはずなのに》


ビアンカ「...ブルル、」


雪「すみません、ビアンカ。」


雪「彼女を振り下ろさない程度に、

  音のした方に向かって下さい」


ビアンカ「ヒヒーーンッ!!」


※キャプション


ビアンカ「ブルル...、」


 目的地にたどり着いたビアンカがようやく足を止めると...そこは、辺り一面砂に覆われたような砂漠地帯


 真っ二つに分かれたような黒い空と白い砂山がどこまでも続くように広がっていた。


美紗「凄い...、エジプトだ」


雪「イタリアです」


美紗(海のない海岸がずっと続いてる

   みたい、空飛ぶ絨毯とかどこかに

   飛んでたりしないかな。)


美紗(...確かにこれだけ広かったら、

 下からゴーレムが出てきても

   おかしくないよね、)


雪「音が聞こえたのはこの辺りですね、

  お疲れ様ですビアンカ。少し

  休んでいて下さい」


雪「ビアンカも二人乗りにはあまり

  慣れてはいませんので、此処で降り

  ます」


美紗「ありがとう。ビアンカ、」


ビアンカ「ブルル」


 雪さんの後に続いてビアンカから降りると、ポサっという柔らかい音がする。


雪「砂漠は珍しいですか?」


美紗「うん、日本にもあるにはあるんだけど...

   どっちかというと干上がった海岸

   みたいな感じだから」


美紗「実際の砂漠はこんなに綺麗なんだね。」


雪「此の土地がこれ程までに美しく

  残っているのにはそれなりの

  理由があるんですよ。」


美紗「何かしてるの?」


雪「どちらかと言うとその逆です。」


雪「代々、この地域では 人間が踏み入れら

  れないような場所にはそれ相応の

  理由があると考えられていまして」


雪「特にこの『夢ノ原砂漠』では」


雪「私達が生まれるずっと前から神様や

  精霊様が住んでいる土地として信じられ

  てきました。」


雪「ですから、特にご高齢の方々に

  関してはその土地に住んでいる神様

  の怒りに触れぬよう」


雪「細心の注意を払って此の地に足を

  踏み入れていたそうです。その伝承が

  いまだ尚受け継がれているんですよ」


美紗「そんな神聖なところに、入って

   きちゃって良かったの...?」


雪「王族は "怪我をしていた女神を救った

  一族"とされていますので」


雪「王族の認めた方は余程の事をしない

  限り大丈夫かと」

  

美紗「それってさっきしてたお話の?」


雪「...はい。ご先祖様がなさった

  偉業なので、私自身はあまり

  自覚はありませんが」


雪「それでも 先人達の思いの詰まった

  この美しい自然を守っていきたいと

  思っているんですよ」


 すぐ側にある一台の車を見ながら

そう答える雪さん。


 真っ白な砂漠のキャンバスの上にそこだけ後から上書きされたような車の跡や人の足跡が、...その全てを物語っていた


美紗「もしかしてさっきの音って、

   ...神様が怒った音だったりする

   のかな、」


美紗「破裂音っていうより...何か金属

   が擦れあったみたいな音だった

   けど...」


雪「ゴーレムが発見されてから

  地震はかなりの頻繁で起こっています

  からね。私が把握しているだけでも」


雪「片手で数えるくらいはあります」


雪「...仮にその話が本当だとすれば、

  "神様がそう思ってしまう"のも

  無理はないのでしょう。」


 砂漠にはゴーレムの宝箱を求めて勝手に人が入ったような跡がある


 煙草の吸殻や、飲み掛けのペットボトル。凄い見やすいところにゴミの入ったゴミ袋が置いてある...捨てた本人が取りに来る事はまずないだろう。


美紗「ここ...私有地だよね?(国の」


雪「そうですよ」


....。※悲しそうな顔


美紗(雪さんのお母さんがなんで法律を

   作ったのか分かる気がする...)


雪「...音の原因も気になりますが、」


雪「この車の持ち主が、"ゴーレムの守る

  宝箱"を目的としているなら」


雪「武器を持っていないとも限りませんし」


雪「ここは無暗に動かない方が

  良(よ)いかと」


雪《"許可のない夢野原砂漠の

  不法侵入"は厳罰の対象ですから》


雪「自棄(やけ)を起こした犯人が襲ってこない

  という可能性も0ではありません」


美紗(なんか警察みたい...、)


美紗「どうするの?」


雪《一応、護身用の拳銃は持って

  いますが...相手がちゃんとした

  銃だった場合》


雪《ほぼ勝ち目はないといって良い

  でしょうね。》


ナイフなら勝てます


美紗(絶望的じゃん、、)


雪「一応リロードしておきましょう」

 ※一見頼りに見えるが実は結構部が悪い雪さん


雪《音の原因の調査は車の持ち主が

  捕まった後でも遅くはないはずです。

  まずは身の"安全が第一"ですから》


美紗《雪さんは、そういうのに慣れす

   ぎだよ、、》


雪「すみませんが、状況写真を撮って

  おきたいので。何か証拠になりそう

  な物を捜して頂いても良いですか?」


雪「その間に車の持ち主が戻って

  こないかを見張っていますので」


雪「ビアンカも音がしたらお願い

  しますね」


 コクコクと二回頭を下げて了承するビアンカ。それだけじゃ足りないと思ったのか、彼女は頬を雪さんに擦り寄せる。


美紗「分かった、証拠になりそうなの

   捜してくる。」


美紗(何を調べよう?)


→『黒い車』

→『白のフェンス』


→『黒い車』


美紗「ナンバープレートは大事だよね。

   それと...、調べるなら」


→『車の中かな』

→『車の外かな』



→『車の中かな』


美紗「というか、勝手に覗いて良い

   のかな」


雪「王族権限で許可します」


美紗「便利だね。王族権限...」


雪「"見たのは"美紗さんですし、」


美紗「見てからのそれはズルいよ!!」


美紗(雪さんの事だから、冗談

   だと思うけど...、)


 車の中を覗くと、助手席に薄ピンクの女性物のバックと運転席の方にビールの缶が置いてあるのが見える。


美紗「飲酒運転かな、あれ多分お酒

   だよね...。」


雪「....。」※女性物のバックに見覚えがある


美紗「どうしたの?」


雪「...いえ、」


雪「こちらも念のため写真に撮って

  おきましょう。見張りを交代して下さい」

  

→『車の外』


雪「少し暗くて分かりづらいですが、

  大きい足跡が二つに...女性物のスニーカー

  の足跡が一つですね。」※見張り交代中


雪「男二人と女一人といったところ

  でしょうか、」


この靴の足跡は...、


雪「"特に女性の方"はゴーレムの事をよく

  分かってるみたいです」


...いえ、きっと私の杞憂でしょう


美紗「なんか今の私達、探偵みたいだね」


雪「推理小説での定番ですね。」


→『白のフェンス』


雪「この車の持ち主が入った

  のでしょうか。フェンスの鍵も

  壊されていますね、」


美紗「って事は今も中にいるのかな」


雪「車を置いて逃げる必要もない

  ですからね」





 ビアンカが物音に気付いたのか顔をあげる。


美紗「...人影?」


「う、うわぁぁあ!!""」


「.....」


「.....」


 ピタリと途切れる...、悲鳴。


美紗「...中で、何かあったのかな」


 夜の暗闇の中でも"はっきりと分かるくらいに大きくて、黒い"『何か』...


シュゴォォォ...、※蒸気っぽいSE


 それは見てるだけで私達を不安の海へと駆り立てるようだった。


美紗「...雪さん、あれ...、何か

   分かる...?」


美紗("あれ"にはあんまり近付かない方

   が良いって、"身体全体"がそう、

   いってる、)


雪「あれは... "破壊の、邪神"...」


美紗「破壊の、邪神...?」


 雪音が話してた "破壊の邪神"ってもしかして、あれの事...、


雪「いえ、確証は持てないのですが...、

  それにしても 凄い"プレッシャー"ですね...。」


雪「此処からでも近付くのが躊躇(ためら)

  われます。」


美紗「"ゴーレム"とは違うの?」


雪「私の知っているゴーレムはあそこまで

  大きくありません、ですが...あの姿には

  "見覚え"があります」


雪「...壁画に描かれている"断罪の

  神の兵器にそっくり"なのです。」


雪「私の見立てが正しければ...、あれは

  『破壊の邪神』と呼ばれる"浄化装置"

  の一部」


雪「壁画に掛かれていたものと"大きさ"は違い

  ますが、」


雪「"人間の欲"に長く触れられた"神"はたまに  

  欲の波に呑み込まれてしまう事があり」


雪「一部の人間だけを残し、"新しい世界を

  創る"とされています」


雪「それこそが、..."神の選別"」


雪「そこに"大人も子供"も関係ない。

  ただ"そこにる神"がそれを決めるのです」


雪「元がゴーレムなので...本体はもっと

  大きいと思います。


...今は、まだ"不完全"な状態では

ないかと」


美紗「不完全な状態でこれってことは、あんなの

   がもし...、"動いたり"でもしたら...、、」


雪「...この街は間違いなく『壊滅する』と

  言って良いでしょうね。」


美紗「壊滅...、」


雪「"善ある者"だけが残されれば良いですから...。

  "整地する世界の事"なんて考えていません」


雪「だからこそ、『"破壊"の邪神』なのです」


美紗(雪さんの街が...。跡形もなく

   なくなっちゃうんだ)


雪「ゴーレムの封を解いた犯人に

  問い質(ただ)せねばなりません。何故、

  このような愚かな真似(まね)に至ったのかと...、」


雪「何が目的かは分かりませんが」


雪「被害が大きくなる前に早急に

  手だてを打たねば、"街は壊れる

  一方です"」


《 怖イ...、行キタクナイ...、、 》


雪「...すぐに逃げられるよう、ビアンカ

  も連れていきます。」


《 デモ...、行カナキャ 》


美紗「...行くの?」


美紗(最初はただ宝箱を開けるだけの

   だったはずなのに、なんでこんな

事になっちゃったんだろう...。)


美紗(もしかして...私が"この世界に

   来たせい"...?)


美紗(...私が来ることでこの世界が

   "変わる"なら、なんで門番さんは

   私をこの世界に連れてきたんだろう)


美紗(...恐くても、やっぱりどうにかする

   しかないんだよね、、)


雪「怖いのなら 逃げても良いんですよ。

  貴女には戦う資格はないのですから」


美紗「雪さん一人置いてけないよ。」


美紗(雪さんだって、怖いはずなのに。)


《 コンな街ノ人間、助ケる価値なンてアるノ?"ソレ"は貴女が一番ヨク知っテルはず 》


《 いッソ、消エてシマエば良イ。 》


《 貴女モソレを "望ンでいる" ンデショ? 》


《 だっテ、貴女ハ"◆"ナんダカら 》


雪「....。」


雪「どんな小さな犯罪でも、美紗さん

  は今までに侵した事はありますか?」


美紗「ううん。...ないよ」


雪「貴女を信じます。」


美紗(何か、策があるんだよね...

   きっと、)


 そう言って黒い巨大な影にビアンカで近付く雪さん。影(あのゴーレム)の正体に雪さんは何か心当たりがあるみたいだけど...、


美紗「何か、捕まってる...?」


 そこに"居る"のは、目の前にいるだけで"強い不安感"と"不気味さ"が襲ってくる、巨大な"影"で出来た...『ナニ』か。


美紗「あれは、"ゴーレムなんか"じゃない...、、」


 全身黒一色で埋め尽くされた巨大な"ヒトガタ"は、赤ん坊が物を口に入れる直前みたいに四つん這いの状態で左手で人を握ってる。


 暗闇の中で一部だけ不気味に光る"赤い瞳"がまるで笑っているかのようにゆらいだ、


美紗「.....、」


 "一目"見ただけで、分かる、今まで聞こえてきた不快なノイズ音...。これは"この黒い化け物"が発してたんだって。


黒い影の巨人《グガァァァァアアオオ

        オオオォォォッッッNNNNNN!!!》


 ビリビリと怪物が発した声の振動が此処まで伝わってくる、いくらなんでも"大きすぎる!!!"、、


男「金ならいくらでも出すッ!!!!、お前

  だって会いたい人の一人くらいいるだろ

  う!!」


??「...そんな人が居れば良かったん

  ですけどね。生憎私は"そのお金

  欲しさ"に売られた身なので、」


??「"お嬢様の方"は違うと思いますが」


男「や、やめてくれ...!!勝手に宝箱

  を開けようとしたのは悪かったっ!!

  違う奴に脅されたんだ、たす、」


男「た、助け...、」


??「...これからは奥さんと一緒の所に

  いられますよ。良かったじゃない

  ですか、会いたい人に会えて」


 男性は私の目の前でゆっくりと、"黒い影で出来たヒトガタの巨人"の口の中に飲み込まれていった...。


雪「...何を、...して、いるのですかっ!!!、」


雪「"黒沢さん!!"、」


黒沢「"お勉強"はもう宜しいのですか、

   王女様」


雪「貴方は此処が立ち入り禁止区域だと

  分かっているはずです、何故、此処

  にあなたが居るのですか!!」


黒沢「やだなぁ...、私は研究費を負担

   してくれると言われたので"彼"のお手

   伝いをしただけですよ。」


黒沢「その依頼者は もう"食べられて

   しまいましたが"」


黒沢

「《国民の願い》を叶えるのは"女王の

 義務"なのでしょう?私はその『お手伝い』

 をしたまでですよ、王女様。」


黒沢「それにしても、《ゴーレムの力》は

   本当に"素晴らしい物"ですね。」


黒沢「"使い方さえ間違わなければ"、貴女の

   描く"理想の国?"を『創る』のさえ夢

   ではありませんよ」


黒沢「"理想の国なんてないのに"」


雪「そんな事のためにゴーレムの

  封を、とったのですか!!」


黒沢「"そんな"事...?」


黒沢「...貴女にとっては、"そんな事"

   でしょうね」


黒沢「だから、『私の事』も『美紗さんの

   事』だって」


黒沢「心の中では信じきれて

   ないんですよ。」


黒沢「本当は《ゴーレムの声が聞こえる》

   のに、"変な人に思われたくないから "

   嘘付いて」


黒沢「本当は、"この街の事だって"壊される

   のを知って」


黒沢「心の底では『ほっと』してる癖に」


黒沢「なにを今更。」


雪《私が...、街を壊される事で"ほっと"

  してる...?》


黒沢「"本当"でなければ『嘘ではない』と

   でも思っているのでしょうか」


雪「...皆(みな)の期待を裏切った貴方に、

  私の何が分かるというのですかっ、、」


黒沢「ふふふ、」


黒沢「期待...?」


黒沢「...最初から、"期待"なんて

   してないのに?」


黒沢「『何も知らない女王様』」


黒沢「だから、貴女には《友達》が

   いないんですよ。」


雪「どうして、そこまで私を恨んでいるの

  ですか」


黒沢「...."どうして"って、」


黒羊「.....」


黒沢「それを"貴女"が私の口から言わせ

   ますか...、」


黒沢「貴女がもっとしっかりしていれば

   『亡くならなかった命』もあるん

   ですよ。」


黒沢「"亡くなる"より"もっと酷い"。」


黒沢「...いずれ"嫌"でも分かる時が来ます

   よ。私が貴女を《嫌う》理由も、

   "付け狙う"理由もなにもかも」※胸元のネクタイを握ってる


黒沢「ですが、『仕方なかった』事とはいえ。

   確かに"私有地"に勝手に入ってしまったのはちょっと

   あれだったかもしれません」


黒沢「どうですか。」


黒沢「...その代わり、と言ってはなん

ですが 貴女に良い事を教えて

   差し上げます」


黒沢「私は"美紗さんが此処に来ていたの

   初めから知っていました"。」


黒沢「では何故、その事を知っている

   のでしょうか、」


黒沢「...美紗さんはずっと自分だけが

   女王の心を読めると思っている

   ようですが」


美紗「え、」


黒沢「私も貴女と同じように、《美紗さん

   の心の声が聞こえていた》んです

   よ。」


黒沢「...ずっと、ね。」


黒沢「ですよね。"美紗"さん?」


雪「...ほんと、なんですか...、美紗さん」


美紗「....え、っと、」


黒沢「結構、下心丸出しでしたね。《顔が

   良いとか、罵って欲しい》とか。

   そういうの好きなんですね」


美紗「えぇ...っと...」


黒沢「"目が泳いでいますよ"、杏里

   さん。」


黒沢「好きな人にも隠し事して、好きな相手

   にも隠し事されて。...本当に"哀れな

   お姫様"」


黒沢「ですが...、《杏里さんが心から貴女の

   事を心配していた》のも事実

   です。」


黒沢「でも、貴女はその期待を"裏切った"」


黒沢「...さて、貴女は今この発言を聞いて」


黒沢「『裏切られた』と真っ先に思って、少し

   安心したんじゃないですか。"疑心

   暗鬼"な貴女の事ですから。」


黒沢「だから 貴女は"現実でも

   あんな絵"しか描けないんです

   ですよ」


黒沢「...だから、"誰も貴女を愛さない"。

   そして、《大事な物》を失って

   やっと自分のした過(あやま)ちに気付く、」


黒沢「これで分かったでしょ。貴女に

   味方する人なんて"この世界に

   いない"」


黒沢「知っていますか?ゴーレムは"王族

   の人間の言うことしか聞かない事"

   、ゴーレムの封印を取れるのも」


黒沢「...また"王族"だけだという事を」


黒沢「貴女は所詮『偽物』なんですよ」


黒沢「何にもなれない"半端者"」


黒沢「貴女は、《神》にはなれないんです。」


黒沢「そんな『人間不信』な王女が、《完璧な

   世界》で居られるには"そういう世界"

   を創るしかない。」


黒沢「"かつて破壊の神"がこの街を

   《素晴らしい街》に創り変えた様に、」


黒沢「 私は、新世界の『神』になるのです。 」


黒沢「この世界には、"罪のない人間"なんていない」


黒沢「"こんな街"があるから、"本当に救われ

   なきゃいけない"人が死ぬことに

   なる」


黒沢「"こんな狂った世界、消えてなくなれば

   いい"」


黒沢「罪深き罪人(ざいにん)に、今こそ

   裁きの鉄槌を下す時。"新しい創造主"の

   命(めい)に従いなさい!!、"ゴーレム"、」


黒い影の巨人

《螂ウ逾槭r隶?∴繧医?∝・ウ逾槭?諢乗?

 晏鋤縺阪@閠?↓遐エ螢翫r遉コ縺��》

※女神を讃えよ、女神の意思に叛きし者に破壊を示せと言っています。文字化け翻訳すると微妙にでる。完全にバグってます


黒い影の巨人《"女神"ハ、コノ世界ノ醜い"欲"を

      最モ嫌っタ。ダが、女神は

      "穢レタ世界では生きラレナ

      かった"》


黒い影の巨人《"神"ハ、求ム。欲ナき世界

      ノ"創造"を、私ハ"此の世界"ヲ"浄化"

      スベキだと、―理解― スる。》


雪「....。」


美紗「逃げよう、雪音っ!!」


美紗「此処にいたら "踏み潰される!!"」


 雪音の手を掴んで、全力で走る、、、


 あの巨体で本気で追い掛けられたら私達なんてすぐ捕まる、とにかく今はあの影から逃げなきゃ、


黒い影の巨人

《神は言ッタ。汝、"知識"を付けよ、

 "穢れぬ心"を糧にして"忍耐"を似って、

 "節制"を心がケヨ。》


黒い影の巨人《女神ハ言ッタ。"正義"を

      かざし、"希望"を似ッテ"愛"

      を示せ》※7つの美徳


美紗(あれ...、追って 来ない...?)


黒沢「破壊の邪神は『悪しき物』を選別

   する神ですよ。」


黒沢「最大の被害者である貴女を

   "神"であるゴーレムは襲いません、」


黒沢「...雪音があの時聞いたのは犯罪者

   しか襲わないのを知っていたから

   です。」


美紗(なんで、そんな事教えてくれるん

   だろう...、向こうにとって私達

   は"邪魔"な存在のはずなのに...、)


黒い影の巨人《"破壊の邪神"ハ嘆く、理想

     ノ国等、何処にモナい。愛す

     る女神ハモう、"此処ニ居な

     い"》


黒い影の巨人《今コソ、審判の時来タ

     る。"破壊の神"ノ名ガ、女神ニ

     届かン事を、》


 黒い影の巨人は、その大きな巨体で


フェンスをベキベキ潰しながら街へ向かっていく。


雪「.....」


雪「"7つの美徳"...、それに準じないもの

  を全て"無に返す"という事でしょう

  か、」


美紗「だから、私達には見向きもしなか

   ったのかな。」


雪「....。」


美紗「街の人に知らせなきゃ、

   雪さんはビアンカに乗って街の

   人に伝えて」


雪「いいえ、私は...」


雪「...ビアンカには、"美紗さんが乗って

  下さい"。」


美紗「え、私が...?」


雪「先程の話を聞いていなかったの

  ですか、私は..."貴女の事を少しも

  信じてなかった"のですよ、」


雪「そんな私が行ったところで...。国民

  が"本気で信頼してくれる"とは思って

  いません。」


雪「それに、あの方が言ってる事は"全部本当

  "の事なんです」


雪(...男性が飲み込まれているのを見て、

  "恐ろしい"と 同時に《自業自得》だと

  思う自分がいた)


雪("どんな時でも国民の味方"でいるのが

  『女王』なのに、私は...)


雪(彼女が言うように...私はこの国に

  対して"疑心"を持ってしまった。)


雪(本当に、私は『国民を守りたい』と

  本気で思っているのでしょうか...、)


雪(本当は"街が壊れる事"に対して、私は

  何とも思っていないのでしょうか...)


雪(..."彼女の言う通り"、私は本当の意味

  で一人で居た方が良いのかもしれま

  せん。)


雪「..."私のような人間"ではなく、誘拐

  に合う事なく、..."心の底から人を

  愛せられる"...。そんな美紗さんこそ」


雪「"この国の女王に相応しい"です。世間

  に望まれているのは...きっと、貴女

  のような方でしょう。」


美紗「.....。」


 信頼してた人に裏切られて、どうしても人を信じる事が出来なくて。街の人達にあんな風に思われてたら心が折れるのも当然だ


 でもこのままじゃ、雪さんの街は"破壊の邪神"によって滅ぼされて元の形を失ってしまう


美紗「私は雪さんの街好きだな。」


美紗「初めて入った街だけど、本当に綺麗な

   所だと思った。それだけ一生懸命皆

   頑張って綺麗にしてきたんだと思う」


美紗「...雪さんが本当にこの国が好き

   じゃなかったら、」


美紗「なんで、見ず知らずの私にパンフレットを

   わざわざ描いてまで色んな人に

   渡してたの?」


美紗「雪さんはこの街が"好き"なんだよ」


 そういう雪さんをぎゅ、っと引き寄せて。髪をゆっくりと撫でる。


雪「...道に捨てられてましたよ、」


雪《私がいくら頑張っても...、何を

  しても"意味なんてない"のだから。

  ..."頑張るだけ無駄"なんです、》


私がどれだけこの街を愛していても。


雪《...私は"人を信じられない冷徹な税金

  だけ食べている"人物なのには

  かわりありません、》


美紗「"本当に冷徹な人"はそうやって

   悩まないんじゃないかな。」


美紗「...私はね、雪音が疑った

   事に関しては何も思ってない

   よ。」


美紗「私だって隠してた。」


美紗「人が人を疑うのは"当たり前"。誰だって

   傷付くのは怖いし、好きになった人を

   手放したくないって思う」


美紗「勝手に心の中を覗かれたら誰

   だって恐いし、...私が最初から

   そう言えば良かったよね、」


美紗「だから、ごめん。言えなくて...、

   ごめんね」


雪「.....」


雪《...何故、貴女が謝るんですか、

  疑ったのは私の方なのに、》


美紗「怒らせたのは"事実"だから、」


雪《貴女が"そんなに優しいから"、私は

  貴女を疑って...》


雪《"こんな人間不信な人間"と一緒にいたくなんか

  ないでしょう、私何かといても、全然楽しく

  なんてない。》


誰も、思わない、


美紗「雪さんはそう思ってても。

   私はそう思わないよ。」


美紗「相性って結構あるし、私は別に雪音

   みたいなタイプは嫌いじゃないし」


美紗「むしろうじうじしてる人のが嫌いかな」


今の私はそうですけど...


美紗「雪さんはわりとまだ良い方だよ。

   柚夏のがもっとうじうじしてる」


美紗「まぁイケメンだから良いんだけど」


美紗「私だってずっとあんな態度とられてたら、

   いっそ"こんな国滅んじゃえば良のに"って

   思うよ。でも、」


美紗「"この国を助けたい"っていう気持ちも

   雪さんの"本当の気持ち"でしょ?」


雪「.....、」


美紗「嫌(いや)な人だっている。嫌(きら)い

   な人だっている、それでも雪さんがこの街

   を救いたいって気持ちは『本当』なんだよ」


美紗「その気持ちまで悪い人のために"消して

   ほしくない"」


雪《...私にも、美紗さんの声が聞こえれ

  ばよかったのに、、どうして"彼女"

  に聞こえて、私は...、》


雪《どうして...、私には....、、"貴女の声が聞こえ

  ないのですか"...。》


??《お前には人質になって貰う、

  動くな!!誰かを呼んだりでもして

  みろ今すぐ殺してやるッ!!》


.....っ、、


美紗「殺させないよ。」


美紗「...私は雪音の事を《傷付けない》。

   だから安心してって言うのも

   あれだけど、」


美紗「信じられなくても。"信じたい"って

   思えるようになったらそれで

   良いと思う。《今すぐ》じゃなく

   ても」


美紗「そう思ってれば、いつかそうなる

   時が来るはずだから」


雪《...""知りたい""、彼女の気持ちをもっと、

  ""知りたい""。例え美紗さんにどれだけ

  酷い事を思われてても、》


雪《"本当の意味"で、貴女の事が""知り

  たい""...、、》


美紗「....」


美紗《雪「言葉だけなら何とでも言え

   ます、誠意を示したいのなら私の

   前で靴を舐めてみせるくら

   い」》


美紗《雪「誠意を示めせられないもの

   ですか、下僕の自覚が足りて

   いませんね。美紗さんは...、」》


美紗「...雪さんの顔見てると

   理不尽な事も気にならなくなる

   から、」


雪「...。」


雪「...真面目な話をしている時に貴女は

  何を考えているのですか、」


美紗「え、むしろそういうのが

   好きって、、伝わった?」


美紗("あわよくば"言って欲しいとか

   思ってる事も...?、)


雪「この気持ちを見せられて、堂々としてられる

  貴女を尊敬しますよ...隠したいとか

  思わないのですか、」


美紗「誤解が溶けたなら、それでヨシッ!!」


美紗「人の考えてることなんてそんなもんだよ」


雪「貴女がそれで良いのならそれで

良いですけど...言いませんよ...」


美紗(えっ、)


雪《"逆に言って貰える"と思ったのです

  か》


美紗(えっ、、)


黒沢「..."早く止めないの"?」


黒沢「こうしてる間にも街は徐々に破壊の一歩を

   辿(たど)っていくよ。」


黒沢「まぁ止めさせる気はないけど」


雪「...これだけの事をしでかしておいて、

  随分他人事のように言うのですね」


黒沢「他人事じゃないよ。此処からが本番

   だから」


黒沢「怒る暇があったら早くゴーレム

   を止めに行ったら?」


黒沢「ただ、"その人"を連れてくのは

   あまりお勧めしない」


黒沢「"一般人"を危険な目に合わせる気?」


雪「言われなくとも...。」


美紗「...私は馬もないし、隣街の人に

   伝えて来るよ」


 こうしてる間にもひとつ、またひとつと街は"影の黒い化け物"の手によって跡形もなく"消えていく"。


雪「...貴女も、危険だと思ったら

  すぐ逃げて下さい。」


美紗「雪音も頑張って、」


雪「逃げて下さい!!ゴーレムが街を

  襲っています!!被害が拡大する前

  に、皆さん、早く逃げて下さいっ!!」


雪《こんな事をしてても"間に合わない"、

  "放送局でラジオを流せば"、ラジオ局

  なら、此処からはそう遠くないはず、》


街の人の声「クソッ、女王がっ!!!!一人だけ

      馬に乗りやがって!!」


街の人の声「この国の女王は何をやってるんだ!!

     この街は"安全じゃなかったの

     かよ"!!理想の街だろ、、なんとかしろよ!!」


街の人の声「あんた、女王でしょ。早く

      あの怪物なんとかしてっ!!」


街の人の声「女王なのに、国民を置いて

      逃げる気!?」


ビアンカ「....ブルルゥ!!」


雪「ビアンカ、『私の事は大丈夫』です。

  早く行きましょう」


 その瞬間、ゴーレムは頭を押さえるようにしてカナキリ声で悶えるように叫びながら。右手で家を凪ぎ払う、


 私にはその姿がまるで"癇癪を起こした人間"のように見えた。


《もウ、"無理だ"》


《コノ街は"駄目"だ、》


《この街は""終わる""、》


《何ガ、理想郷の国だ、誰も守って

 くれないじゃないか!!》


美紗「この、声は...、」


美紗「街の人の...、声...。」


 沢山の不安な声が、"色んな場所"から聞こえてくる...、まるでその言葉をかき消すかのようにゴーレムは暴れ回る。


ゴーレム《GGGGゴャョァァァオオオオオ

     ォォNNNNNNNN!!!!》


 もしかして...、"街の人達が雪さんの事を《悪く思えば思うほど》"、ゴーレムの力は徐々に増してってる...?


 街の人達が逃げ回ると同時に、凄い"巨大で狂暴"になった。今ではもう、家が手の平サイズだ


 目が血走った人間のように口を開いて呼吸してる"ゴーレムだった"もの


美紗「...分かんないけど、それが"もし

   本当なら"、試してみる価値は

   あるかも、」


 "ゴーレムを危険にさせてる"のは街の人達だなんて、誰も思ってない。


 でも、もしそれがゴーレムが暴れてる"理由"だとしたら...?


美紗(よく見たら足が弱い人とか怪我し

   てる人には全然手を出して

   ない...、)


 あんなに苦しんでるのに...、誰にもその声は届いてない...。


私...、しか...、


ゴーレム《Gu、Gu、G、G、Gォォウォルルル

     RRR...!!!、、》


まるで、癇癪を起こした"子供"。


黒沢「..."全部最初からにしたい"って

   気持ち。"貴女"なら分かるでしょ」


黒沢「本当に"この街を消えてしまえば

   良い"と思ってるのは私だけじゃ

   ないって事、」

 ※切っ掛けは黒沢さんだが、

  ゴーレムは《王族である》雪音の意志で

  動いてる。雪音が壊したいと"微塵も

  思ってなければ"壊れない。

 黒沢("意志"が弱いので勝った)>雪(雪さんの世界なので、実はこっちのが継承権が高い)


黒沢「私は"貴女さえ助かれば"どうでも良いもの」


黒沢「雪音の《心》なんて知らない」


黒沢「"貴女にとってこの街は何も

   関係ない"でしょ。何があっても」


黒沢「彼女に"何が起ころうとも"

   その時は雪音を見捨て

   逃げなさい」


美紗「そんな事...」


黒沢「あの子は死なないから」


美紗「...貴女は、あのゴーレムの

   正体に気付いてたの?」


黒沢「"怒りの感情"という物はずっと

   抱えてれば、誰だって爆発します」


黒沢「行き場のない、"溜まりに溜まった

   その感情のエネルギー"は一体何処に

   消えてしまうのか、」


黒沢「それがわからなかった方々の

   末路、と言った所ではないでしょ

   うか。...この光景は」


黒沢「...今まで彼らは"身勝手な都合"で

   雪音を苦しめてきたのですから」


黒沢「彼女は、その事については無自覚の   

   ようですけどね。」


黒沢「流石、"無能"」


美紗「雪音に関しては本当に口悪いね。」


キキキィィィッ!!


黒沢「"煩い"ですね。」


美紗「"柚夏っ"、」


 バイクに跨がった柚夏が、斜めに思いっきりカーブをきらしながら目の前で止まる。


柚夏「街の方でゴーレムが暴れてるって

   聞いて、どこにいるかと思えば!!

   なんでこんな所にいんの!?」


美紗「えっ、店長さん。私の為にわざわざ

   捜しに来てくれたの?」


柚夏「温度差っ!!、そりゃ、あんな

   デカいのが街で暴れてたら

   くるでしょっ!!」


 と、ゴーレムを指差して言う柚夏。


柚夏「"あんた"はこの街の事何にも知らな

   いし、私が来なきゃ誰も助けに

   来てくれない。」


柚夏「ほんと、中継見てビックリした

   よ。店でテレビを見てたらあんた

   が写ってんだもん」


柚夏「ほら、早く逃げるよ。」


美紗「黒沢さんはどうするの?」


黒沢「私は此の世界の"大罪人"ですよ。」


黒沢「そんな私にかまけている暇が

   あるなら、一刻も早く逃げる

   べきです」


黒沢「..."ただの人間がゴーレムに敵う

   はずなどないのですから"」


↑此処で黒沢さんはチョーカーを

 ぎゅっと掴んでます。※雪音の癖


美紗「黒沢さん...、」


 柚夏が私の手をとって、バイクに向かった。


柚夏「"犯罪者"の言う事なんて

   気にする必要ないよ。」


柚夏「あいつがゴーレムを動かして、

   街を破壊してる事は変わんない

   し、」※テレビに写ってた


柚夏「そんな事より逃げる方が優先だ」


柚夏「..."私達が一体何した

   って言うんだよ"、、」


柚夏「"街を追われて、やっと何も言われ

   なくなると思ったら 次は街で

   ゴーレムが暴れて..."、」


柚夏「....本当に、何のために生まれ

   てきたんだよ、」


美紗「.....」


美紗「.....。」


 ゲームなら主人公が死んでもまたやり直せる。でも"現実の人間"はどうだろう、


 街の人 一人一人に命があって、その一人一人に"別の人生"があって、..."誰だって死にたくない"って思う。


柚夏「いくよ、」


 ...いざ"現実にゴーレムが現れたら"、ゴーレム相手じゃ人間は"手も足も出ない"。


 『自分の家が壊されても』、"命があるだけましだ"と諦めるしかない、


 "自分の家が壊される"って分かってても、黙ってそれを受け入れるしかない...


私が来た街は...そんな"絶望しかない街"だった。


《何故...、私ハ此ノ街ヲ破壊シテイルノダ

 ロウ...、アノ方ガ願イヲ込メタ"街"...、》


《"街ガ"、"私ノ手ニヨッテ崩レテイク"...

 "破壊"、サレテイク...、...私ハ、

 "破壊の邪神"、ナノ、カ...、此の手デ、

 "街ヲ"、私は...、》


《...チリン》


美紗「.....、」


美紗「......柚夏っ、聞いて、」


美紗「あのゴーレムっ。好きで

   あんな事やってない!!」


美紗「""こんな事したくない""って、

   言ってるんだよ!!」


柚夏「...あんたも、あいつの意見に賛同

   するつもりなの?」


 バイクに跨がって、ゴーレムから離れるように柚夏は隣街に背中を向けて走っていく、


柚夏「『ゴーレムが世界を救う』って、

   "あんな街をぶっ壊してる奴"が

   "神様に見える"なら神なんか、居ない

   方がましだっ!!!!、」


美紗「私も"あれ"が神様とは思って

   ないよ、ただ、このままじゃ柚夏

   の店も潰れちゃう!!」


美紗「黙って見てるだけでいいの!?」


柚夏「...良い訳っ、、」


柚夏「ないっ、だろ...、あんな小さな店でも

   "それなりにやっていけてたんだ"、」


柚夏「生活は苦しかったけど、私の料理

   を『うまいうまい』って皆食べてくれ

   た、本当に、大好きな店なんだよッ!!」


柚夏「...でも!!!、しょうがないだろっ!!」


柚夏「"命"があれば、また建て直せる、

   "時間が掛かっても"。子供のあんた

   には分かんないだろうけど」


柚夏「『命』より"大事な物なんて、ないんだよ"。」


美紗「.....、」


美紗「......」


美紗「....柚夏が行かないなら私一人で

   行く、だから"おろして"」


柚夏「冗談だろ...、"あんなのが暴れ回ってる"

   とこにまた戻るっていうのか!?」


柚夏「いい加減大人になれよっ!!、死んじ

   まったら元も子もないんだぞッ!!」


柚夏「外から来たあんたにとっては、

   "どうでもいい街"だろうが!!!、、」


美紗「...私はこの街に来たばかりだけど

   さ、それでもっ、"好きな人が

   必死に愛した街"を見て、」


美紗「この街は"本当に良い街"だなって、

   思ったんだ。"沢山の人が頑張って作った

   のが見ただけで分かるくらい"」


美紗「凄い『綺麗な街』だった、」


 バイクが止まると同時に、私は無理やり柚夏のバイクから飛び降りる。


美紗「なんで、来たばっかの奴に、昔から

   住んどったあんたらが""負けとん

   だよっ""!!」


柚夏「.....、」


美紗「"悔しくないの"!?、自分が住んでた

   大事な街、壊されて、"何もしない

   で尻尾巻いて、逃げて"!!」


美紗「『大事な街』なんでしょ!?だったら、

   死ぬ気で、"護れよ"!!何で誰も

   守ろうとしないの!?」


美紗「何もしないで、うじうじうじ

   うじ...ッ、結局、柚夏は、壊された

   言い訳がしたいだけでしょ!?」


美紗「"自分自身で未来を切り開かなき

   ゃ"、"街なんて絶対、守れない"!!」


美紗「...そんな人生、生きてて死んでる

   ようなもんでしょ、、」


柚夏「.....、」


柚夏「.....。」


 そういって私は 柚夏から離れて、つまづきながら街に向かって走ってく。


 私にだって、何か出来る事が絶対ある、雪音だって皆を守るために一生懸命ビアンカに乗って頑張ってるんだ、、


美紗(こんなとこで、一人だけ、

   逃げれるかぁっ...ッ!!)


美紗「はぁっ、...はっ、はっ、」


 息が苦しい、全力で走って身体が熱い、それでも...、私は彼女の元に戻るんだ、"もう...二度と大事な人を裏切りたくないっ"、、


※↑美紗の前世は戦争により脚を怪我した影響で早くに亡くなってしまいました。(当時は医療は今より発達しておらず、不衛生で悪化しやすい環境にあったようです)それともうひとつの要因が考えられます。次回のお話は分かりやすいかも?


美紗(雪、音...ッ、、)


 その瞬間、誰かの"影"が映る。雪音にそっくりな誰かが、そっと私の手を握った。...汗だらけの、私の...手....、、


美紗「みぞ...、れさん...?」


??「みぞれ...?」


??「おいッ、しっかりしろ!!」


美紗「...えっ、」


美紗「あ...、柚夏...、」


 酸欠で倒れた私の手を握ってくれていたのは、さっきまで一緒にいた柚夏だった。


柚夏「...私もついてく。走るのより

   バイクで行った方が絶対早い

   から」


美紗「でも、怖いんじゃないの...?」


柚夏「そんな姿見て、そんな

   事言う奴なんかいるかよ、」


柚夏「街に来たばかりの女の子が、

   逃げる道を引き返してまで」


柚夏「どうにかできるかもしれない...

って、頑張ろうとしてる。」


柚夏「...痛感したよ。自分の"心の弱さ"

   を、言われて...心の底から、

   自分の"弱さ"に気付かされた、」


ドッ、ドッ、ドッ、ド...


柚夏「運転は任せて少し休んどけ、

   何処に行きたい?あんたが言う

   とこ何処にでも連れていってやる」


柚夏「取りあえず砂漠に戻って何があ

   るか調べるか?」


 そういって、私にヘルメットを着けてくれる柚夏...


 ...何処の世界に行っても、柚夏はやっぱり私の頼りになる"一番の親友なんだ"、、


美紗「ううん、一つ試したい事がある

   の」


柚夏「試したい事?」


ブロオォォォッ....、


美紗「まずは雪さんに会いに行きたい

   "放送局"って...分かる?」


柚夏「放送局ね、」


柚夏「待ってろ 

   すぐに連れていってやる。」


ブォンッッ!!!


 そして、柚夏のバイクに乗って私はゴーレムが向かっている場所へと急いだのだった。


※スライド



 


 



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