⑤ご家族への挨拶編【みさゆき】


...あれから、2週間ぐらい経って。


 そして...。今週の土曜日に雪音のボディーガード兼、執事さんの麗夜さんと会う事が決まった...


美紗(...あぁ。凄っい、緊張する...、、)


雪音「....失礼します。」


??「どうぞお入り下さいませ、

   お嬢様」


 何時もの晴華さんとはどこか違う、真面目で低い、声。


美紗(...これが晴華さんなら

   良いのに、)


 いや、まぁ...本当にそうなったらそれはそれで困るんだけど...。


雪音「この部屋に麗夜さんが

   います。」


雪音「...覚悟はよろしいでしょうか?」


美紗(あれは...結局、全部演技だった訳だけ

   ど...。それでもあの人にとって私は

   ただの邪魔者には変わりない...)


美紗(...はぁ、...今から完全に敵意

向き出しの人に私、会わないと

いけない...んだ、なぁ...。)


美紗「う、うん...」


美紗(もう...っ!!さっきからずっと

   うじうじしてばっかっ...、、)


美紗(こっちは二週間前からずっと

   考えてんだって!!もう、

   来ちゃったもんはしょうがない

   っ!!)


美紗(もう、腹括るしか、、ないでしょっ...!!)


 雪音がドアを開けると...、そこには...。


※A「雪音に【緊張】を伝える」ルート


朝乃「どうも、美紗ちゃん」


美紗「あ、あれ...朝乃先輩...?」


と、ピンク色のワンちゃんのような髪をした朝乃先輩が


 晴華さんにそっくりなポニーテールの女性の前で紅茶を飲みながら椅子に座っていた。


雪音「えぇ、彼女が唯一麗夜さんのご友人

   との事でしたから。此方で

   お呼び致しましたところ」


雪音「快く引き受けて下さったの

   です。」


雪音「約束は、きちんとお守り

   しますので」


美紗「ゆ、雪音...///」


雪音「さぁ、どうぞ席にお寛ぎ

   下さい。」


麗夜「....」


美紗(ポニーテール...。...って、事は

   あれは本当に、麗夜さん...

   なん、だよね...。)


 ゴクリ、と...生唾を飲みこんで...。

私は雪音と一緒に空いている席に座る...、


美紗(うっわぁ...やっぱ、実際目の前

   にすると凄い、緊張するなぁ...)


朝乃「何よ...この紅茶、砂糖

   入ってないじゃない」


麗夜「ふん、文句があるのなら

   勝手に入れろ...、貴様は本来

   此処にはおらん人間なのだ。」


麗夜「そもそもは、だ。」


麗夜「貴様がこの場に同席しているの

   は、雪音お嬢様がどうしても

   貴様をお連れしろと仰られたため」


麗夜「本当にそれを分かっている

   のか?」


麗夜「客人としては些か(いささか)態度が過ぎるようだが、」


朝乃「はいはい、言わずとも分かって

   ますー。そんな事...というか

   それを言うなら、」


朝乃「私だって古池様にお呼びされ

   てる立場なのよ?」


麗夜「何が言いたい...。回りくどい

   回答は時間の無駄だ、直球に

   答えろ。」


朝乃「つまり、...私は古池様の

  【お客人】って事。あんたこそ、

   そこんところ分かってんの?」


麗夜「...」


 ボディーガードさんは少し考えるように左下を見ながら指で顎を触ってる...。


麗夜「...確かに、それは一利あるかも

   しれん。」


麗夜「だが、どちらにせよ雪音お嬢様

   の御心次第。貴様が選択する物

   ではない」


雪音「...麗夜さん、その方は私が

   急遽お呼びしたお客様の一人です」


麗夜「はっ、畏まりました。雪音お嬢様」


と、右手を胸に添えながら麗夜さんは会釈する。


 その姿は雪音の執事としてどこに立っていても恥ずかしくない、堂々としたものだった。


朝乃「との事よ。口を慎みなさい」


麗夜「...雪音お嬢様の銀河のように

   広いお心に感謝しろ、」


麗夜「とだけは申します。お客様」


 それからすぐにボディーガードさんは立ち上がって、まるで本物の執事さんかのように


 朝乃先輩の紅茶のカップにシュガースティックを物音一つ立てずにそっと添える。


朝乃「どうも、執事さん。」


美紗(...なんだろ、...物凄く緊張して

   部屋に入ったわりには...意外

   と、...平気?そう...?)


美紗「....」


美紗(二週間前は...、下手したら

   生きて帰れないかもって、

   思ってたけど...。)


 それがきっかけなのか分かんないけど、お父さんの事とかも結構、夢に出てきて...。


美紗(...でも。執事さん、さっき

   ちゃんと朝乃先輩のお話聞こう

   としてた...。)


美紗(あんな事しようとした人

   なのに...、朝乃先輩の前では...

   なんか、普通の人みたい...)


美紗(...麗夜さん。...出会い方が

   本当に悪かっただけで...)


美紗(思ってたより、そこまで冷徹

   な人...じゃ...ない、のかな...)


麗夜「....」


麗夜「...お嬢様、お紅茶でございます」


雪音「...お客様からお出しなさるのが

   礼儀というものは貴方もご存知

   のはずでしょう、麗夜さん」


麗夜「ですが、それではお嬢様の紅茶が

   冷めてしまわれます故」


雪音「...それはそうですが、私は貴方

   の入れた紅茶を何度も飲むこと

   が出来ます」


麗夜「雪音お嬢様に冷めた紅茶など、

   絶対に御出し出来ません」


と、麗夜さんは雪音のコップに3回に分けて丁寧に紅茶を注ぎ入れている...。


 執事さんはどうしても雪音に先に飲んで欲しいみたい


美紗(前から一応、分かってはいたつもり

   だったけど...。この人...普段から雪音

   第一みたいな感じなのかな...)


美紗(なんか...、好意が凄い裏目に出てる

   気がしなくもないけど...)


朝乃「普段から、こんな感じだと古池様も大変

   そうですね...。」


雪音「えぇ...、麗夜さんは...その...少々、

   過保護が過ぎるのです...」


朝乃「これで...少々ですか...?

...あんた、普段どんだけ

やばいのよ」


麗夜「雪音お嬢様は古池家のご令嬢だ。過保護

   過ぎるくらいが丁度良いというもの

   だろう」


朝乃「...ふぅ」


 紅茶を飲んでいた、朝乃先輩は溜め息を付いてから飲んでいたコップを置く。


朝乃「というか...。本物のお客様

   そっちのけでちょっと、それは

   ないんじゃない?」


朝乃「...ただでさえ貴重な休みだって

   いうのに、あんたのために

   わざわざ皆時間を作ってる

   っていうのよ?」


朝乃「美紗ちゃんもそう思わない?」


美紗「えっ...!?い、いや、えっと...そ、

   それは...。その...」


美紗「私は、平気ですから...、」


朝乃「そう言うから、これに何

   いっても大丈夫だろって

   思われるのよ。」


朝乃「舐められたら人生一貫の終わりよ?」


朝乃「ちゃんと言わないと

   本当にこいつ分かんないから」


朝乃「アホだし」


美紗(事実だとしても、はっきり物

   言うなぁ...。凄い...、)


美紗(それにしても朝乃先輩 執事

   さんと知り合いだったん   

   だ...。そっちのがちょっと驚きというか...)


美紗(朝乃先輩は怖くないのかな、

   その人握力ゴリラなんだけど...)


麗夜「ふっ...、貴様も私が居なければ

   大層楽だったろうにな」


麗夜「こんなめんどう事に付き合う事

   もなかっただろう。」


朝乃「...そんな事。一言も言って

   ないでしょうがっ!!

   この、あほ!!」


麗夜「あほとは何だ!!」


朝乃「あほだからあほって言ってん

   のよ、あほ」


美紗(さっきからずっと朝乃先輩と

   執事さん、喧嘩しあってるなぁ...)


朝乃「というか、あんたが紅茶入れる

   だけで済む話なの。」


朝乃「それをなんで、いちいち嫌がら

   せみたいに入れてあげない

   のよ」


朝乃「めんどくさくしてんのはあんた

   自身じゃない。」


美紗「私が自分で入れれば良い

   だけの話ですから、その...

   大丈夫です...。」


美紗「このポット、使えば良いのかな...わっ」


 と、配合から怪訝な顔をした執事さんがさっとティーポットを持ち上げる...。


麗夜「....」


えっ...、なんで...。


美紗「執事、さん...?」


麗夜「手袋も無しに素手で触れれば火傷

   する。客人を怪我させるなど、お嬢様

   の執事としてあってはならない」


麗夜「...古池お嬢様がただ、最優先なだけだ。

   紅茶を入れない訳ではない...。一応、

   客人として対応するようにお嬢様から

   お伺がいしてはしている」


美紗「.....あ。...は、はい...。」


朝乃「だから、そういう態度が...威圧してる

   んだっての...。何度言ったらあんたは

   分かんのかしらね...」


麗夜「生憎、それを教える者が側に

   居なかったものでな。」


麗夜「私はこういう話方しか知らん

   のだ。だから、早々に諦めろ」


朝乃「あんたはこう...、そうなんで

   いちいち偉そうなのかしら」


朝乃「直す努力を何処に置いて

   きたの。」


麗夜「そのようなもの、初めから

   ないと言っている」


美紗(初めから、ない...?)


朝乃「まぁ...、いいわ...。こんなんじゃ何時

   まで経っても話なんか終わりゃしない

じゃない...。そうね...」


朝乃「...こいつに慣れてないと絶対に話に

ならないと思うので、理不尽に感じたら

これに口出すだけだから安心して」


美紗「あ、はい...。すごく...、心強いです...、」


美紗(というか朝乃先輩、さっきから

   なんかすっごい不機嫌そう...?)


麗夜「本当に時間の無駄だったな」


朝乃「どの口が、それをいうかっ!!」


※スライド


麗夜「そろそろ本題に入りたい。」


美紗「...は、はい」


麗夜「...私の事が怖いか。杏里、美紗」


美紗「...怖くない、といえば嘘に

   なります。ですが...すみません...、」


美紗「それでも私はどうしても...。

   あなたと...お話、しなきゃ

   いけない事があって...此処に

   来ました。」


麗夜「...」


 執事さんはさっきから、ずっと 鋭い眼孔で私のことを見つめてる...。


 ...でも今の私には、雪音が居てくれるから。わりと大丈夫じゃないけど、まだ...大丈夫。


美紗(私は間違った事は何も、

   言ってない...、)


麗夜「私が貴様に問いたいのは...

   ただ一つ。...いや、もう一つ

   だけあったな。」


麗夜「個人的に問いたい事だ。

   ...それさえ分かれば私は元々

   去るつもりでいた」


麗夜「...だから安心しろ。杏里、美紗」


美紗「....」


麗夜「誘拐犯の言葉など信頼すべき

   ではない、か。全く以て

   その通りだろう。」


麗夜「...むしろ、その方が良いともいえる」


麗夜「では、私から質問させて頂く。

   貴様が考える雪音お嬢様の

   幸せとはなんだ。」


麗夜「私を愚弄してまで考える

   その答えを教えろ」


美紗(雪音にとっての、幸せ...)


美紗「....」


美紗「....それは、私には分かりません」


麗夜「...所詮はその程度の思いという事だ」


美紗「それは、雪音自身がそう感じる

   物だから。だから私には、

   ...分かりません」


麗夜「何を言い出すかと思えば...」


麗夜「...椿様のお考えになられる

   お言葉が...、間違っていると

   でも言うつもりか...。貴様は...!!」


 今すぐ、黙らせてやるといわんばかりの殺意の込もった瞳で私の事を睨らむ執事さん。


 前は瑞撫さんに無言で見つめられただけでも凄く怖かったのに、


 でも...。今は...執事さんが怒っているその様子をどこか遠くから眺めている自分がそこにいた。


美紗(雪音の約束を信じてるから...。

   どんな事を言っても、麗夜さん

   は私に手を出さない...。)


美紗(ううん、...出さないん

   じゃない。執事さんは手を...

   【出せない】んだ)


 執事さんにとって雪音のお母さんは神様みたいな人で、本当に尊敬している人で...。


 そんな人の言葉を否定されたと思って、怒ってるだけだから...。


雪音「麗夜さん...、...約束を忘れたのですか。」


麗夜「ですがっ...!!椿様のご意向にこの者は

   口出しを...!!古池の顔に泥を塗るような

   ような発言、許されるべき事では」


雪音「椿様が泥を塗られるような発言をする

   と、貴女はそうお考えになられるの

   ですか」


麗夜「...め、滅相も御座いません!!その

   ような事が椿様にあられる訳が御座い

   ません!!」


美紗(雪音も多分それに気付い

   てる...、気付いてないのは

   多分、...この人だけなんだろうな...。)


雪音「...私は椿様の人形なのでしょうか」


美紗「それは、絶対に違うよ。雪音、

   雪音は雪音っていう一人の

   人間。絶対人形なんかじゃない」


麗夜「....」


朝乃「何黙ってんの、...あんた。そこは

   すぐさま否定しなきゃいけないとこ

   でしょうがっ!!」


朝乃「あんた、古池様とは家族なんでしょ?

   私より何倍も、何百倍もお嬢様の事が

   大事なんじゃないの!?」


朝乃「こんな時ぐらいちゃんと否定なさい

よっ...!!ほんっと、最低だわ、あんた

   ...っ!!」


美紗「朝乃、先輩...。」


美紗(先輩、もしかして...泣いて、る...?)


麗夜「お嬢様は人形などでは御座いませ

   ん...。雪音、お嬢様は...椿様の一人娘

で御座います」


朝乃「...今の、残念だけどあんたがそう古池様

   の事思ってるようにしか...、私には聞こえ

   なかったわ」


麗夜「...そうか。」


朝乃「そうかって...、」


麗夜「次はそちらの番だ」


美紗「なんで...、貴女は雪音とおんな

   じ家族なのに。...雪音を、

   信じてあげないんですか」


麗夜「...私は椿様がいなければ、雨の中。ただ

   一人で凍え死ぬのを待つだけの子供

   だった。その娘である雪音お嬢様

   には大変感謝している...。」


麗夜「また雪音お嬢様は名もない私に名前を

   与えて下さったお方だ。お二人が仰る

   言葉なら、私は例え黒であっても白と

   信じるだろう」


朝乃「...はぁ、本当どうしようもないのね...

あんた...。あんたの事情を知らなかった

   ら、今すぐにでも私、あんたをひっぱた

   いてたわ」


朝乃「...麗夜。一回しか言いたくないし、言わ

   ないからよく聞いて。美紗ちゃんは」


朝乃「古池様が自分で幸せを見付けよう

   とするのをあんたは「これが幸せ」だって

   その手で選択肢の自由を奪ってんのって言ってんのよ」


朝乃「本当の幸せっていうのは...、人に与えられて

   貰うもんじゃなくて。自分で考えて

   行動して、そしてやっと生まれるもの

   なの」


朝乃「あんたのは古池様を幸せにしたい、って

   思ってるだけのあんたの幸せ。それ自体

   は何も悪い事じゃない。...でもあんたの

   幸せ=古池様の幸せじゃない」


麗夜「...」


麗夜「...最後に一つだけ、質問がある」


美紗「なんですか...」


麗夜「何故、私に会おうと思ったのだ」


美紗「...雪音が貴女の事をもっと

   信じて欲しいって、

   そう思ってたから...。」


美紗「だから...。貴女に会わなきゃいけない

   って、...そう思ったからです。」


麗夜「雪音、お嬢様が私を...?」


美紗「会って欲しいって最初に提案したのは

   私じゃなくて、雪音の方。雪音

   も麗夜さんの事...きっと大事な

   家族だって。思ってて...だから...」


雪音「...もう、良いのです。杏里さん」


美紗「雪音...」


雪音「もう下がって良いですよ、麗夜さん。

   ....貴女もそろそろ限界でしょうから」


麗夜「...畏まりました。雪音、お嬢様」


麗夜「失礼...、致します」


美紗(今ので少しでも麗夜さんが雪音の事、

   信じてくれるようになってくれたら

   良いな...。)


※キャプション


※B「雪音に【決意】を伝える」ルート


雪音が扉を開けると...、そこには...。


麗夜「どうぞ、雪音お嬢様。」


美紗(麗夜...、さん...)


と扉の前でずっと待機していたのか、雪音が扉を開くと同時にすぐさま邪魔にならないよう


 麗夜さんは壁を背にして扉を支えるように立っていた。


麗夜「....」


美紗(ポニーテール...。...って、事は

   本当に、この人が麗夜さん...

   なんだ...)


美紗「ど...どうも...。今日はよろしくお願い

   致します...」


麗夜「...あぁ、宜しくお願いする」


雪音「では、このまま立ち話をするのもなん

   ですから。座りながらお話しを初め

   ましょう」


 私はゴクリ、と...生唾を飲み込んで。

雪音と共に空いている席へと座った...。


美紗(うっわぁ...やっぱ、実際目の前

   にすると凄く、緊張する...

   かも...。)


麗夜「....シュガーは」


美紗「あ、....お願いします、」


 執事といったらこうでなきゃ、みたいな落ち着いた動作で麗夜さんは紅茶のカップに物音一つ立てる事なく


 雪音のティーカップに紅茶を注いだ後、今は私の背後に立って同じように紅茶を無言で注いでいる...。


美紗(....え?、めっちゃ...気まずくな      

   い...??)


 ダージリンの香りが部屋中に広まって、良い匂いがするけど....地獄みたいな空気の悪さ。


美紗(こんな状況じゃなかったら、普通にリラックス出来そうなのにな....)


麗夜「....」


麗夜「...お嬢様、茶葉の種類を別の物に

   お替え致しますか」


雪音「いえ...、そちらは結構です。...お客様か

   ら先にお出しするのが礼儀というものは

   貴方も存じていると思っていたのです

   が...。麗夜さん」


麗夜「ですが、それではお嬢様の紅茶が

   冷めてしまわれます」


雪音「...それはそうですが、私は貴方の入れた

   紅茶を何度も飲むことが出来ます。」


麗夜「雪音お嬢様に冷めた紅茶など、

   絶対に御出し出来ません」


美紗(前から一応、分かってはいたつもり

   だったけど...。この人...普段から雪音

   第一みたいな感じなのかな...)


美紗(なんか...、好意が凄い裏目に出てる

   気がしなくもないけど...。)


美紗(この人...、友達とかいな

   そうだなぁ...)


美紗(人のこと言えないけど)


※スライド


 気まずさに耐えかねて、お手洗いにちょっと逃げようかな...と席を立とうとした瞬間。


麗夜さんがその口を開いた。


麗夜「此方とて、時間は早い方が

   都合が良い。」


麗夜「よって、本題に入らせて頂くが

   宜しいだろうか」


美紗「...は、はい」


美紗「私もそちらの方が...、助かります...」


美紗(ま、まぁ...。黙って紅茶飲んで

   るだけの時間、ほんと地獄

   だった訳だし、ね...?)


麗夜「...私の事が怖いか。...杏里、美紗」


美紗「...怖く、ない...。...と

   言ってしまったら、嘘になります。」


美紗「ですが...、すみません...、

   それでも...私はどうしても...。」


美紗「あなたと...お話しなきゃ、

   いけない事があって、此処に

   来ました。」


麗夜「...その理由はなんだ、」


 執事さん、さっきから、ずっと鋭い眼孔でこっちを見てるけど...。


 でも...。今は私の隣には雪音が居るから...、


 睨まれてるのはわりと大丈夫じゃないけど、まだ...大丈夫だと思う...。...多分。


美紗(私は間違った事は何も、言ってない

   から...)


麗夜「私が貴様に問いたいのは...

   ただ一つ。」


麗夜「...いや、もう一つだけ...ある。

   私が個人的に問いたい事だ」


麗夜「それさえ分かれば

   元々去るつもりでいた」


麗夜「...だから安心しろ。杏里、美紗」


美紗「....」


美紗(ボディーガードさんが個人的

   に...、聞きたい事?)


麗夜「誘拐犯の言葉など信頼すべき

   ではない、か。全く以てその

   通りだろう。」


麗夜「...むしろ、その方が良いともいえる」


麗夜「では、私から質問させて

   頂こう」


麗夜「貴様が考える雪音お嬢様の幸せ

   とは一体、なんだ。」


美紗(雪音にとっての、幸せ...。)


美紗「....」


美紗「....それは私にも、...分からないです。」


麗夜「所詮は貴様もその程度の思い

   という事か、...ふん、下らん...。」


美紗「でも...それは、彼女自身が

   そう感じる事だから...です。」


美紗「だから、私には雪音の幸せは

   分かりません。」


美紗「...麗夜さんは、雪音の幸せに

   ついてどのように思って

   いますか?」


麗夜「何を言い出すかと思えば...、そんな

   事か」


美紗「そんな...、事...」


麗夜「...聡明で、博識。雪音お嬢様のお相手

   として、一切申し分ない許婚を椿様が

   お選びになられた」


麗夜「競争率が激しく、雪音お嬢様でなければ

   お逢い出来ないような御方だ」


麗夜「...犯罪者の娘と雪音お嬢様がお話なさる

   より、よっぽど。時間が有意義に使える

   事だろう。」


麗夜「貴様もそうは思わんか?

   ...杏里美紗」


美紗「犯罪者の...、娘...。」


美紗(そんな事言われたの初めてかも...、

   知らないお母さんの知り合いの人とか)


美紗(先生には大丈夫だからね。

   とか、言ってくれれば良かった

   のにとか...)


美紗(そういうのは聞いたけど...、)


美紗(犯罪者の娘かぁ...)


美紗(...というか...、私そのこと人に全く

   話した覚えないのに...何で、知ってるの

   ...??、この人...)


麗夜「椿様がいなければ、私はとうの

   昔に死んでいた。だからこそ、

   私は椿様の娘であられる」


麗夜「雪音お嬢様の幸せのためならば

   私は何をしても厭わ(いとわ)

   ない」


麗夜「それこそ自分の命よりもお嬢様

   の方が重いだろうな。」


美紗「...私だって、...そうです」


麗夜「私は、まだ貴様の事を認めては

   いない」


麗夜「...だが、貴様と出会ってからお嬢様が

   お変わりになられたのは確かだ」


麗夜「椿様はいつも仰っていた。結果は

   全ての道に繋がっている、と。」


麗夜「貴様が晴華を味方に付け、

   お嬢様の感情を取り戻しつつ

   あるのは紛れもない」


麗夜「...結果であり、それは明確な

   事実だ。」


麗夜「貴様はあの晴華だけでは飽きたらず、

   固く閉ざされてしまわれた雪音お嬢様の

   心までも、強く引き寄せた。普通なら

   そんな事は絶対にありない事だ...。」


麗夜「だが、...それは私の目の前で実際に

   起こってしまった。...結果は何があって

   も覆せん」


麗夜「それは、認めざる負えんからな...」


 窓から見える空を見つめながら、何かを思い出しているかのように麗夜さんは語る。


 ...この二週間、執事さんに関しては...正直、冷酷無情で残酷なイメージしかなかったけど...。


美紗(ちゃんと、人間らしいとこも

   あるみたいで ちょっとほっ、

としたかも...。)


麗夜「...それこそ貴様には、きっと目には

   見えない大きな力が働いているの

   だろう。そして、それは雪音お嬢様と

   釣り合う程の、大きな力だ」


美紗「雪音と釣り合うくらいの...、

   大きな力...?そんなの私には...」


麗夜「なかったら、貴様は今私の前には

   居ないだろうな...。杏里、美紗」


美紗「...。」


麗夜「きっとお嬢様が貴様を引き寄せたの

   だろう。だから、私からはもう今後

   直接貴様に手を出そうとは考えて

   いない」


麗夜「...要件は以上だ。私は命の恩人

   である椿様側にどうしても肩入れして

   しまう、だが貴様にはそれがないのだ」


 麗夜さんはそう言いながら立ち上がって、ドアの方へと歩いて行く...。


麗夜「...まぁ、今の貴様が出来る事といえば、

   お嬢様に後悔を少しでも残させぬようにする事。

   それだけだろうがな」


※キャプション


美紗(麗夜さん、思ってたよりも話は通じる

   人だったけど...。なんというか...、

   やっぱり結構堅めの人だったかも...)


美紗(...でも。勇気を出してでも

   雪音の事、話せて良かったな...。)


 お風呂から上がって、そのままリビングの方へと向かって歩いていくと


 愛犬のみゆと目が合った瞬間にそっぽを向かれてしまう。


美紗「お風呂上がりだから、匂いがしなく

   なって誰か分かんなくなっちゃった

   かな?」


くゆ「ううん、それはないよ姉さん。犬とか

   猫でもそうだけど...」


ミユ「クゥン、クゥン...」


くゆ「こいつら基本的に人みたいに顔で

   判断してるから、お風呂上がりでも

   普通に来るよ。こら...顔舐めんな」


と、くゆは器用に後ろ足で立ちながら首を必死に伸ばしてくゆの顔を舐めようとしている。いいなぁ...、いいなぁ...。


くゆ「口はもっと駄目...!!」


 くゆは立ち上がってから、怒ったようにみゆをじっと無言で見つめていると


 柴犬のみゆは耳をぺたんと下げてお利口になる。


美紗「よしよし...」


ミユ「ヴー...」


 と私が手を伸ばすと、尻尾を丸めて唸りながら後ずさるの。なんでかなぁ...?


美紗「あぁ、そっか...最初は匂いを嗅がせて

   から触らないと駄目だってテレビで

   やってたよね」


くゆ「唸ってる時の犬の前に手を出したら

   駄目だよ姉さん!?」


※スライド


 噛まれるすんでの所でくゆがミユを持ち上げた事により、私の指がミユの口の中に挟まる事は無かった。


くゆ「こら!!駄目だって言ってる

   でしょ!!ごめんなさいは!?」


ミユ「わんっ、わんっ!!」


くゆ「...はぁぁ、ほんっとあほ犬...。

   遊んでるんじゃないの!!人を噛んだら

   駄目!!姉さんも人!!」


くゆ「分かった?」


 さっきまで唸っていたのが嘘だったように、みゆは尻尾を千切れんばかりに振りながら


 くゆの方を笑顔でみつめている。


くゆ「...はぁ。ごめん姉さん...。でも、こいつ

   姉さんの事嫌ってるからあんまり触んない

   方がいいよ...?(私なら触って良いけど...ボソボソ」


美紗「そうかなぁ?...あ、そうだ。くゆ。そう

   いえば私くゆのお友達のお姉さんに

   会ったんだ」


くゆ「は?誰の...?」


 くゆが座っているソファーのスペースに無言で、腰を下ろす。


 ...するとくゆは隅の方へと少しだけ寄ってくれた。


美紗(学校とかだとこういうの一々

   教室に行って、聞かなきゃ

   いけないけど...。)


美紗(家族だとこうやって、お家で

   話せるのは良いよね。)


美紗(...えへへ、こういうのちょっと

   だけ憧れてたんだ、)


 それにくゆの隣に座ると、夢中で甘えて笑顔になってるミユが見れるんだよね...///


 少しでも柴犬のミユに近付けるのは私としても嬉しいし...///、


美紗「ほら、くゆがよくお話してるお友達の

   真菰さんって言う子の。その子のお姉

   さん」


くゆ「...は?みかげの?」


美紗「ん?」


 くゆは嘘でしょ?というような怪訝な表情をみせた後、


 すぐに眉間にシワを寄せて、冷静な顔をしながら何か考え事してる...。


くゆ「...あー。...もしかして、...もう一人姉

   がいるとか...?そんな事...。みかげから

   一切聞いてないんだけど...」


くゆ「そもそも、あいつと仲良くなろうと

   思ったのもそれが理由だったし...。

   でも、わざわざ嘘を付く理由も...」


美紗「みかげちゃんには別にお姉さんがいるの?」


くゆ「....はぁ、」


くゆ「....」


くゆ「...みかげの姉は、みかげが小学生の時に

   亡くなったんだって。...それが

きっかけになってみかげと知り合ったんだけど」


くゆ「本当にいけ好かない奴だけどさ、でも   

   あいつにも好きな人がいて...。それが

   報われない恋でさ...。」


くゆ「思ったより話が合う奴なん

   だなって...、思ってたんだけど...」


美紗「だったらさ、実際聞いてみたら?みかげちゃんにさ」


くゆ「姉さん...」


くゆ「もう聞いたよ、メールで。

   そして返信。今、帰ってきた。これ」


みかげ「「天才のみかげが嘘なんて付く訳

    ないのに。だーから、平民は

    見てて面白いねwww」」


みかげ「「わざわざwww聞いちゃう辺りww

     w、くゆちゃんって本当www

     可愛いwww」」


みかげ「「というか何で急にお姉ちゃんの

     事聞いたの?wwww。家系図

     見る?www正真正銘2人だよ

     ww」」


みかげ「「これで、安心した?ww」」


『うざい。というか何でもかんでもw付ける癖本当やめろよ、性格悪過ぎだから』とくゆの返事が一番下に書かれてる。


みかげ「「ま、大体その嘘付きさんの検討

     付いてるんだけどねwwwww」」


 と通知が来て。これ以上妹とお友達の会話を見るのもどうかと思ったから、くゆにスマホを返した。


美紗(でも、確かに性格悪そう...、

   今時の中学生って...、、)


美紗「でもお姉さん一人だって。

   良かったね、くゆ」


くゆ「まぁね...。心配して、凄い損した

   気分だけど...」


ブブッ、


美紗「ん?」


A『しっとり系(味優先)を多めに持ってく』


雪音『ハロウィン祭の時に頂いたお菓子ですが、大変美味しかったです。』


美紗『それは良かった。』


雪音『とても食感が良く、素晴らしかったもので』


雪音『これからもこういった物を

   期待していますよ。』


→B


雪音『文化祭の時に頂いたお菓子のお話です。』


雪音『...頂いたお菓子なのですが、砂糖と塩を間違えて入れていたようです。』


美紗『一瞬砂に見えてビックリした。』


雪音『砂は流石に食べません』


美紗『でもそれは、ごめんね。

   今度お菓子買って持ってくよ』


雪音『いえ、そのような典型的な

   間違いも珍しかったので

   良いですよ。』


雪音『残ったお菓子は晴華さん

   がスパイスとして料理して

   下さったので』


雪音『お菓子、楽しみに待っています。』


美紗(あ、でもやっぱり

   お菓子は欲しいんだ...、)


※キャプション





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