美紗とお悩み相談【ゆずるう】

 指輪の問題も解決して、そのままぐっと仲の深まった私達は目が合うと自然に話し合う関係へと変わっていった。


 ...まだまだお母さんの事は忘れられないけど、それでも随分マシになった気がする。


 誰かと一緒に居ると、こんなにも幸せなんだなって


柚夏(こうやって、記憶はどんどん薄れて

   いくんだろうな...。)


 それが良いことなのか悪い事なのか分からない。でも、昔の事をずっと引き出す訳にもいかなかった。


美紗「あ、居た。柚夏ー!!」


柚夏「美紗?」


美紗「今からバイト?」


柚夏「バイトじゃないよ。今日は休み、

   他の人も始業式で午後は空いてるから。

   こういう日は結構人手が足りてるんだよ」


美紗「ならよかったー。じゃぁ今から流雨さんの

   所に会いに行くの?」


柚夏「...まぁ。そうだね」


柚夏(美紗と会うのも久々だなー。クリスマス

   以来だけど)


美紗「私も付いてっていい?私が居ると

   邪魔?」


柚夏「まぁ流雨は人見知りだけど...、人の事

   邪魔とか思うような子じゃないから」


 と、前から人が通り掛かる。それを避けるために美紗を内側に引き寄せた。向こうは此方に気付いてないみたいだし...


美紗「相変わらずイケメン力は健在だね、」


柚夏「...別に普通だよ。それに前見てなかった

   向こうも悪いだろうし」


美紗「え、と...。ゆずかーさん前からこんな

   感じだった...?」


柚夏「.....。」


柚夏「...最近さ」


柚夏「...言うより、...引き寄せた方が

   早いかなって思って...」


美紗「流雨さん...」


※スライド


 螺旋階段を登って流雨の教室に付く。もう2年生の教室に行くのも手慣れたもんだな


美紗「...常連感凄くない?」


柚夏「この学校結構服装が自由だから、見た目

   だけで学年分からないし」


柚夏「堂々としてれば他のクラスから来た

   くらいにしか思われないから。まぁ...私は

   文化祭のせいで、一年生って知れ渡ってる

   けど...」


柚夏「あそこに居る人も一年生だし、そこに

   居るのは三年生だし...。わりといるん

   だよ、他の学年の人も」


美紗「へぇ...。よく覚えてるね」


流雨「....他の人。」


美紗「流雨さん、こんにちはー」


流雨「........?」


柚夏「一緒に美紗も連れてきたよ。

   多分覚えてないと思うけど...」


流雨「...そう、...柚夏の友達」


美紗「あ、覚えててくれたんだ。」


流雨「橘さんに似てる...」


流雨「別学年の場所は緊張すると思うけど...、

   緊張しなくても誰も捕って食べたり

   しない...」


流雨「と思う...」


柚夏「と思う」


流雨「ううん、どんな人がいるか分からない

   から0とは言えない。違う意味で

   食べる人は割といると思うけど...」


柚夏「違う意味...?」


美紗「あは、は...。確かに、逆に緊張してたら

   食べられちゃうかも。でもそんな人

   いたら即退学ですよ」


流雨「女子高ではそういうの多いからね」


流雨「...そういう意味じゃなくて、

   二年生の教室でご飯を食べるって意味...」


美紗「若干、食べそうな人がいるので...。

   2年生に...」


柚夏「まぁ二人が楽しいのなら私は

   それで良いけどさ...」


※スライド


柚夏「今週の金曜、大雪が降るんだって。

   アルバイト行くとき本当困るなぁ...」


美紗「大雪かぁ...。自転車だと滑るの怖いよね」


柚夏「ほんと、すごい怖いよ。信号の前で

   滑ったりしないよう気を付けないと

   いけないし」


柚夏「神経凄いすり減るよね。」


流雨「分かる」


美紗「...ねぇ、柚夏はさ。急に絵が描けなく

   なったときってある?」


柚夏「何?スランプ中なの?」


美紗「まぁ、そんな感じ」


柚夏「そりゃ...ね。逆にスランプにならない

   人の方が珍しいんじゃない?」


美紗「そういう時ってどんな時?」


柚夏「どんな時って聞かれても...。まぁ

   忙しい時とか 余裕がない時とかかな」


美紗「余裕が、ないとき...。」


柚夏「結局上手く描けない時って、大抵

   休みが足りてないんだよね。」


美紗「そういう時はどうするの?」


柚夏「私の場合は、時間を無理やりにでも

   抉(こ)じ開けて。珈琲飲んだり

   近所の子供達と遊んだりしてるかな」


美紗「ん”んー...。それが出来たら苦労

しないん だけどね...。」


美紗「私じゃなくて、雪音がスランプ中なの...」


柚夏「話して良いの??それ」


美紗「問題が解決するなら。」


柚夏「あの古池さんがスランプ中...?あの人、

   スランプとは縁がなさそうだけど...」


何でも出来るってイメージだし


美紗「でも、実際スランプ中だから...。」


美紗「"描かなきゃいけない"っていう状況が

   多分凄いプレッシャーになってると

   思うんだよね...」


柚夏「...まぁ、それだけ切羽づまった状況なら。

   描けなくなるのも無理はないと思うん

   だけど...」


美紗「柚夏 正月明けてから一皮剝けた??」


柚夏「どうしたの急に」


美紗「なんかそんな気がして」


柚夏「まぁ色々あったけど...。古池さんには

   流雨の事を助けて貰った恩もあるし...」


学生『な、...女同士なんて...!!』


古池さん『...それは、...杏里さんを恋人とする

     私への...宣戦布告』


古池さん『...そのように受け取って、

     宜しいのでしょうか...?』


柚夏(流雨だけじゃなくて私も...。)


古池さん

『そのような方に拳を振るうより、

 貴方にはもっとやるべき事があるのでは

 ないでしょうか』


古池さん

『...この世界は正義の鉄槌を振るった方が

 悪くなる世界ですからね。」


古池さん

『このような方に奮って"休学"、なんて馬鹿らしい

 ではありませんか』


柚夏「たまたまお父さんがお金持ち

   だっただけで、お金持ち自体を

嫌うのは違うのかなって...」


柚夏(流雨の家がお金持ちだったのも

   あるけど、美紗や流雨がお金持ち

   だからって私は態度を変えたりしない)


柚夏(お金持ちでも良い人はいる...。)


柚夏「だから今度は真剣にアドバイスするよ。

   古池さんと付き合うな、とかじゃなくて

   どうしたら二人が幸せになれるか」


美紗「柚夏...」


※スライド


 美紗は私と流雨にお正月にあった事や、古池さんが絵を描けなくなってしまった事...、


 それを直すために絵を描けない古池さんを責めてしまった事...。今まであった事を全部私達に打ち明けてくれた...。


柚夏「私達が居ない間にそんな事になってた

   んだ。」


美紗「どうしてもそのコンテストで優勝

   しないと駄目なんだ。そうしないと、

   雪音がどこか遠くに行っちゃう...」


柚夏「...強いね、美紗は」


柚夏「私は流雨がそんな状況になったら

   耐えられないよ...」


美紗「ううん...、全然強くないよ。私...、

   雪音が絵が描けないのにイライラ

   しちゃうし...」


美紗「今だって...雪音は態度に出さずに

   頑張ってるのに、私は...。雪音に何も

   してあげられない...、」


美紗「...絶対に大会に優勝しなきゃいけない

   のに。」


柚夏「古池さんもそれは分かってると思う。」


柚夏「スランプは人に言われて直る訳

   じゃない。スランプは自分の中で殻を

   破らないと意味がないからね」


美紗「だったら、どうすれば...!!!」


柚夏「取り敢えず落ち着いて。」


柚夏「...外国に行く、それ自体は別に悪い事

   じゃない。大事なのは、そこからどう

   するかだよ。」


柚夏「古池さんは頭も良いから留学っていう

   手もあるけど、私達にはそれがない」


美紗「雪音の事...諦めろっていうの」


柚夏「そうじゃない」


柚夏「遠くに行っても心は繋がってるって

   事だよ。」


美紗「遠くに行っても心は繋がってる...。」


柚夏「気持ちのすれ違いは誰にだってある。」


柚夏「私だって先日流雨とすれ違いが

   あったし」


柚夏「...それでも、そこから学べる事も多いの

   かなって。それがどうしようもない事

   なら」


柚夏「本当に古池さんの事が好きなら、

   絵を描けない事に苛立つんじゃなくて」


柚夏「今の古池さんに寄り添ってあげるのも

   手なんじゃないかなって」


美紗「....。」


柚夏「言葉にしなきゃ、分からない。どんなに

   好きな相手でも。相手の事を思ってても

   言わなきゃ伝わらない」


柚夏「だから、大事な人程ちゃんと言葉に

   しなきゃ駄目なんだよ。」


美紗「私ね、...本当は、雪音に絵を描いて

   欲しくないの...、雪音の絵好きなのに...

   っ、離れたく、ないのに、、」


美紗「"引っ越ししたくない"って、雪音は私に

   言ってくれたのに...、私っ...。雪音の

   事、」


美紗「どうでもいいって、思ってるの

   かなぁっ...、、」


柚夏「...どうでも良いなんて思ってたらそんな

   風に泣かないでしょ。...美紗が古池さん

   の事好きだからに決まってんじゃん。」


美紗「う”っぐ...、柚夏ぁ...」


柚夏「...古池さんの前で泣けないのなら、

   それ以外のとこで泣けば良いん

   だよ。...好きなだけさ」


美紗「...うん」


柚夏「今はお互い大変ですれ違ってるんだと

   思う。だからこそ、今は冷静になって」


朝乃「え~っと...芽月さ~ん...?」


柚夏「朝乃先輩...」


朝乃「本当、水差すようで、あれなんだけど

   ...、」


朝乃「...今、芽月さんが二年生の教室の前で

   一年生の女の子を泣かせてる...って凄い

   噂が広まってて...」


朝乃「しかも恋人(流雨さん)の前で振られた

   とか...。色々...」


流雨「...修羅場すぎて、草...」


柚夏「はぁッ!?、いや...ちがっ!?!?」


美紗「大丈夫...。私が、誤解...解く、から...」


 美紗は涙を手で拭いて、私に話すと朝乃先輩が慌てたように喋り出す。


朝乃「いやいや!!今の状態の美紗ちゃんが

   何言っても、周りの人には逆効果

   だからっ...!!」


美紗「でも...、」


朝乃「大丈夫、大丈夫。ゴシップにはゴシップ

   を使うのが一番効果的な解決作だから」


朝乃「典型的だけど、いつの時代もそれは

   変わらないんだよね」


柚夏「...策が、あるんですか?」


朝乃「噂が広まる前に美紗ちゃんと芽月さん

   は教室から出た方が良いかな、『普通

   に』ね。捏造(しょうこ)を作られちゃう前に」


朝乃「本人がいないときに第三者から言った

   方が誤解が早く解けるのって早いんだよ

   ね、」


柚夏(...なんか、手慣れてるなぁ...)   


 という朝乃先輩の咄嗟の機転により、誤解が広まる前に柚夏と私は急いで教室から出て下の階へと降りてった...。


※キャプション


美紗「二年生の教室だって事、忘れてた」


美紗「...ごめん柚夏、迷惑...かけて」


柚夏「まぁ、こういうのは慣れてるし」


柚夏「余裕がない時には仕方ないよ」


美紗「でも...。」


美紗「....」


美紗「...流雨さん、置いてきて良かったの

   かな。折角会えたのに...」


柚夏「私達は会おうと思えばまたすぐ会える

   から大丈夫だよ。」


美紗「...二人で歩いてたら尚更柚夏、

   誤解されちゃうかも。一緒に

   居ない方が良いよね...」


柚夏「良いよ。別に」


柚夏「...人の目ばっか気にしてたら、それこそ

   何も出来ないし」


柚夏「泣いてる親友ほっといてどっか行く

   よりよっぽど良いよ。誤解はいつでも

   とけるしさ」


美紗「......。」


美紗「...は~あぁ...ぁ...、もう、さ...」


美紗「...柚夏って本当、イケメン...、、

   こんなの流雨さんじゃなくても

   惚れるわ、」


美紗「...柚夏が親友で良かった。って思う、     

   ...ほんとに」


柚夏「...そりゃ、どうも」


柚夏「...全然、カッコ良くなんか

   ないんだけどね...」


柚夏「ただ独占欲が強いだけだよ。

   お母さんが居なくなったから中々美紗

   から親離れ出来ないだけ」


美紗「それでも今、それに助けられてるから

   良いんだよ。私としては役得。」


柚夏「...美紗の元気がないと私も落ち着かない

   んだよ。1年だけど、美紗とは長い付き

   合いだしさ」


柚夏「まぁ...、私も朝乃先輩が何とかして

  くれる事を願うしかないんだけどね」


美紗「だね、明日の学級新聞の大記事に

   柚夏が乗ってなきゃいいんだけど、」


柚夏「取材されたらちゃんと誤解だって

   言ってよ?」


美紗「分かってるよ、柚夏は流雨さんの物

   だもんね」


美紗「というか柚かーさんは恋人という

   より姉。」


柚夏「わかる。私も美紗は恋人っていうより

   妹だわ、」


美紗「というか誤解されないレベルでイチャ

   つけば良いじゃん」


柚夏「...プラトニックな関係なので。」


美紗「ヘタレかーさん...」


柚夏「...うるさい」


ブブッ...


美紗「雪音からかな、」


柚夏「なんて?」


美紗「「お待ちしてます。」だって」


美紗「...ねぇ、柚夏」


美紗「今の私って、...雪音のとこに行っても

   大丈夫?」


柚夏「取り敢えずは、ね。さっきより

   全然ましな顔してるよ」


美紗「そっか、...あの、さ。...もし私が雪音に

   嫌われても柚夏は友達でいてくれる、

よね?いや、親友...?」


柚夏「そりゃね、親友。」


柚夏「でも、どうするつもり?」


美紗「...雪音に嘘付こうかな、...って。」


美紗「題して、【1週間何も描かない作戦?】

   は、は...、...ほんっ、と...酷い、」


美紗「作戦...」


柚夏「....。」


柚夏「...古池さんのところに行く前に美紗に

   言っておきたい事があって、」


美紗「なに?」


柚夏「...本当に行くの?」


柚夏「古池さんの、とこ...」


美紗「うん。雪音も待ってると思うから。

   行ってくるね、柚夏」


柚夏「仮に駄目だったとしても、美紗は本当の

   意味で正しい事をしたから」


柚夏「もし、それを美紗が忘れそうになった

   時は」


柚夏「いつでも家(うち)に来なよ。お菓子と

   飲み物用意して、待ってるから。」


柚夏「...本当に、尊敬してる。って」


美紗「...頑張らないとね、」


美紗「かーさんの話も聞いた事だし。そろそろ

   行かないと本当の意味でやばいかも...」


柚夏「ほんとね。」


柚夏「...私はその選択肢を最後まで

   信じるよ。」


柚夏「美紗が選んだ、その選択を」


※キャプション


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