第二十四部「ファミレスデート?」【ゆずるう】

柚夏(...商店街の喫茶店って勝手が分かんない

   し、最終的にファミレスの方が結構

   落ち着くんだよね)

柚夏(下見に行く時間も無かったし、だから

  と言ってそれ以外の曜日も無かったし...。

  (日曜はバイト)


流雨「ファミレス...?」


 丁度近くにあったから、食事を食べるのなら打ってつけだと思ったけど...どうだろう?


柚夏「ファミレス。ケーキとかピザとか安く

   で買えるし 女子高生のたまり場所って

   言ったら此処...?」

柚夏「あんまり行ったことない?」


流雨「...ん。...家にいる事が多いから...」


柚夏「そうなんだ、まぁ外食って結構

   お金掛かるし 家で食べれるならそっち

   の方が良さそう」


流雨「...良いのかな。」


柚夏「え?」


流雨「外に行けば嫌な人に会うでしょ??」

流雨「家(うち)の両親は仕事以外に基本的に

   興味ない人だから」

流雨「...寧ろ私が居ることでお金が

   掛かってる」


柚夏「...そんな事ないよ」


 心配して貰えないって事か。引き籠もっても何(なん)の違和感も感じない家族


柚夏「お金を払って貰ってるって事は、

   少なくとも『死なれたら嫌』って

   思ってるって事だから」


 私のお母さんは小さい頃不安な事があるとすぐに気付いてくれた。だからお母さんの事は凄い大好きだった


 そんなお母さんに憧れて 私もそういう人になりたいと思った。もう、死んでしまったけど...


 将来は人の心に安らぎを与えられるようなそんな仕事に就けたら良いなって思ってる


柚夏「...よしっ、なら今日は流雨の初めての

   ファミレス記念にしよう。」

流雨「ん...?」


※スライド


カランカラン...。


柚夏「こっちだよ」


流雨「ん...」


流雨の手をとって、テーブル席に座る。


柚夏「此処で待ってて。水汲みに行ってくるから」


柚夏(まぁファミレスでイキるのも

あれなんだけど、)


 慣れた手付きで透明な硝子のコップに氷を入れ、軽く水を注いでテーブルに戻ると 流雨は隣にいるカップルの様子を眺めていた。


流雨「...生のカップル。...こういうところにも

   いるんだね」


柚夏(そんな"珍動物"みたいな言い方、)


柚夏「クリスマスとかにシフト入れていると

   あちこちで見掛けるけど...。流雨に

   とっては珍しい?」※先輩に聞いた


流雨「...相手はお金持ちが良いって、

   よく聞くね...。」

柚夏「でも。やっぱりお金より生活能力

   じゃない??いくらお金持ちでも性格が

   嫌な人はやじゃん」

流雨「確かに恋愛は難しい。めんどくさい

   人を見付けないようにしないと...」

流雨「それに比べて...柚夏はモテそう。」

柚夏「モテたいの??」

流雨「別に...。でも"皆から好かれたら"

   嬉しいなって思う」


注文表を取り出し、流雨の前で開く。


流雨「気遣いが凄い。」

柚夏「これくらい普通だよ。一緒に食べた方が

   美味しいと思うし、」

流雨「そういう人がモテるんだろうな...。」

柚夏「寂しがり屋なだけだよ」

流雨「柚夏のお嫁さんになる人は幸せ者だね。」

柚夏「...まぁ、お嫁さんにするなら。確かに

   可愛い女の子の方が良いけど」


 女だからって威張ってる人じゃなくて、女性でも見下さずに最後まで愛してくれる人。


 そんな人が相手だったらもっとまともな人生を送ってたんだろうな...。


柚夏「流雨は何食べる?」

柚夏「時間、場所違ってたし。お金は出すよ」


流雨「...ううん。それくらいは自分で出す。

   今までのお弁当もタダじゃない

   から、500円くらい出そうと思う」

流雨「それでもちょっと安いけど」


柚夏「別に支払わなくても大丈夫だよ、私が

   好きで作ってるだけだから」

柚夏(というか普通に余り物なんだよな。

  流雨の為に作ったご飯が私の夕飯になる...)

柚夏(お陰で私の食生活もしっかりしてるし)


流雨「それでも私は柚夏の時間を取ってる」

流雨「柚夏とは対等な関係でいたいの。

   だから...」

柚夏「じゃぁ...、...380円で。」

柚夏「今までの分は無しでいいよ。」

流雨「分かった...。...それでも安すぎるけど」

流雨「柚夏の料理は普通に美味しい。お金

   出してまで支払う価値はあると思う」

柚夏「....」


 お母さんってこんな感じなのかな、って勝手に娘にご飯あげてるみたいな気持ちで作ってたけど


柚夏(本当に流雨のためを思うなら

   お金は貰ってた方が良い...。)


 別にそこまでしてお金が欲しい訳じゃないんだけど、(密かな楽しみだったからそれがお金の関係になると思うと...。


流雨「私の我儘で嫌な気持ちにさせて

ごめん...」

流雨「それが嫌なら身体で払うしか...。

   キスとかすればいい??」

柚夏「誰かが誤解するような発言は

   やめよう!?!?、、、」


 私は別にお金が払えないようならキスさせるような変態じゃない。向こうがどうしても払いたいと言うなら...


柚夏「ただ私は...家族が出来たらこんな感じ

   なのかなって、...思ってただけだから」

柚夏「お母さんはこんな気持ちで作ってた

   のかなぁって...」


流雨「『お母さん大好き』とか言えば

   良い...??」

柚夏「別に高度なおままごとを求めてる訳

   じゃないから、、ただ将来流雨みたいな

   娘が居たら楽しいだろうなって」


私と違って。流雨には"可愛げ"があるから。というか見た目からしても可愛い


流雨「そう言ってくれるのは嬉しい。でも

   一方的な愛は良くない...、私達は

   恋人でも何でもない」

流雨「それだけじゃ 柚夏と一緒に居て良い

   理由にはならない...。」

柚夏「...」

柚夏「"誰か"から言われたの??」

流雨「...気付かなかった私も悪いから。

   言われても仕方ないと思う」


→A「...優しいね」

→B「気にしないでいいと思うよ。」


→A「...優しいね」

流雨「別に優しくなんかないよ。本当に

   優しかったらこんな事言われてない」

柚夏「そう思ってるのが"優しいん"だよ」

柚夏(私だったらそいつにどうやって言い返す

  しか考えない...)


→A「気にしないでいいと思うよ。」

   好感度10%↓

流雨「.....。」※気にしてます



流雨「どちらか一方が得する関係じゃなくて。」

流雨「お互いが得する関係でいたいの。一方的

   に柚夏から私が施しを貰うのは違うと

   思う」


柚夏「私がしたいって言っても?」

流雨「私がそう思っても...他の人はそう

思わない。イケメン女子にタダ飯を

   毎日貰ってたら嫉妬するのはしょうがない」

柚夏「嫉妬する方もする方だと思うけど...。」

柚夏(まだ流雨にあげれるだけ良いけど...)


 折角お互い良い感じにいってたのに、第三者が嫉妬したお陰で流雨が遠慮するようになってしまった。


 というか私は別に誰の物でもない。私が良いって言ってたら良いんだし、それを他人に言われる筋合いもない


流雨みたいに可愛くなってから出直せ。


柚夏(はぁ...。自分がしたいことをするのに

  も、人目を気にしないといけない

  なんてなんて辛い世の中...。)


柚夏(そういやまだ珈琲頼んで無かったな...)


柚夏「流雨は食べたいもの決まった?」


流雨「これ...。」


柚夏「チョコレートパフェだね。主食は

   どうする?此処のスパゲティーとか

   美味しいよ?」


流雨「...そんなに食べれない」


柚夏(朝食べて来たのかな。お昼ご飯にパフェ

  っていうのもなんか将来が不安になる

  けど)

柚夏(こんな空気だし...、好きな物食べて

  貰った方が良いのかも。)


どんな奴か分からないけどお陰で流雨との空気が悪くなった。これだから真正面から来ない人は...


柚夏「分かったよ、今日だけ特別。...でも、

   ちゃんと食べないと駄目だからね?」

流雨「柚夏は私のお母さんよりお母さん

   っぽい。」

柚夏(美紗からもよく言われるけど

  そんなに...??)


 注文をしようとベルを鳴らそうとしたところで、手を止める。


柚夏(すっごい見てる...。あー...もしかして、

  ...ベルも見たことない?)


柚夏「流雨、これ真ん中の白いボタン押して

見て」


流雨「ん...?」


ピンポーンという音が店内に響く。と同時に驚いたのか流雨の瞳孔が少し大きくなった。


柚夏(...あ、今の凄い可愛いかった。)


流雨「こういう形のもあるんだ...。」


 音を聞き取った店員が此方に駆け寄ってくる。その頃には、流雨はいつも通りのしょんぼりした流雨に戻っていた。


柚夏(この垂れ目が凄い可愛いいんだよな...)


柚夏「チョコレートパフェと珈琲で

お願いします。」


店員「かしこまりました、チョコレートパフェ

   と珈琲で宜しいでしょうか?」


柚夏「はい。」

流雨「柚夏は良いの...?」

柚夏『私は金欠なので、...家で食べます』


 と言うわけにもいかず 取り敢えず「今はダイエット中」と言っておいた。


店員「少々お待ち下さいませ」


注文を終えた店員は厨房へと去っていく。


流雨「...柚夏...人のこと言えない...」


柚夏「ダイエット中だからね...。今は

   お腹減ってないし」


柚夏(本当は節約の為なんだけれど...、

   明日は賄料理が食べられるから...)


流雨「...柚夏はなんであの人と友達に

   なったの?」


柚夏「美紗の事?」


流雨「...うん。」


 流雨から話題を話し掛けてくれるなんて...珍しい...。いや、珍しいどころか...


柚夏(初めてかも)


柚夏「そうだね...。あれは確か、中学生の頃

   ...家庭科の先生に柚夏さんは料理が

   上手だから教えてやれって言われて...」

柚夏「その時はあんまり乗り気がしなかったん

   だけど」

柚夏「親が結構有名なシェフみたいで、

   上手く作る為に先生に頼んだらしくて」


柚夏「料理上手な人の子供とは思えない

   くらい本当に不器用でさ。涙目になり

   ながら」

柚夏「この世の終わりみたいな顔してて」

柚夏「それで料理を作ったら懐かれたんだよ」

柚夏「それが始まり。」


柚夏「まぁ...今は、ちょっとギクシャク

   しちゃってるけどね...」


店員「お待たせ致しました。チョコレート

   パフェと珈琲です。ごゆっくりどうぞ」


 バニラアイスにたっぷりのチョコレートの乗ったパフェが流雨の手前に置かれる。


 不思議とそのパフェを食べたいと思わないのは


 私にとって、その思い出が甘すぎるからなのだろうか...


柚夏「ありがとうございます。」


※イラスト


流雨「......!!」


柚夏(目がキラキラしてる...。...可愛いなぁ...)


流雨「...」


 流雨は好物を見るようなうっとりとした目で大きなスプーンを右手で握り、崩れないよう慎重にパフェにスプーンを入れてる。


柚夏(これだけ嬉しそうに食べてくれると

   奢った甲斐もあるなぁ。)


 私と違って感情的で、流雨を見てると嫌な事も忘れられる。本当に解消しなきゃいけないんだけど


その様子をまったり観察しながら 私は熱く黒い珈琲を少しだけ喉に流し込む


柚夏(...幸せそうな顔。)


柚夏「...美味しい?」


流雨「ん...。...柚夏も食べる?」


柚夏「いいよいいよ、私は別に甘いもの

   好きって訳じゃないから」

柚夏「流雨が全部食べな。」


柚夏(...私が食べても多分そんな顔には

   ならないだろうから)


流雨「ん...甘い」


柚夏(...流雨もこんな顔もするんだな、)


柚夏「パフェはあまり食べたことない?」


流雨「...普段はあんまり食べない」


柚夏「このくらいなら多分、簡単に出来そう

   だし。...今度作ってみる?」


流雨「...作る?」


柚夏「アイスとかも付けてさ。丸いチョコの棒

   とか刺しても良いかも」

柚夏「手作りなら色々アレンジ出来るよ」

柚夏「苺とか 自分の好きな量に調節 」

柚夏「"好きな量に出来るし"」


流雨「...美味し...そう」


柚夏「流雨はさ、...どんなパフェが食べたい?」


流雨「...チョコが好きかな。」


柚夏「...ならチョコを沢山入れて。チョコ

   クッキーを砕いて...、それを生地に

   して生クリームにチョコとか混ぜてみる?」


流雨「...うん」


柚夏(女の子は皆甘いものが好きだな)


流雨「でも甘いの好きじゃないんじゃないの...??」

柚夏「知り合いに好きな人がいるから。

   人と料理を作るのが好きなんだよ」

流雨「あんまり料理出来ない」

柚夏「知らないと知ってるとでは、知ってる

   方が良いよ」

流雨「んん...」


猫ってたまにそういう声出すよね。否定でも肯定でもなくただ「んん...」


柚夏「バイトのシフトが決まり次第流雨に

   伝えるよ。その日を楽しみにしてるね」


流雨「...ん」


柚夏「じゃぁそろそろ16時だし、帰ろっか。

   良かったら送るよ?」


流雨「ううん...大丈夫...すぐ側...」


柚夏「そっか、車には気をつけてね。」


柚夏(...無理に着いていく必要もない、か。)


柚夏(...でも、今日は流雨に本音が言えて

   良かった。流雨だとなんか本音言いやすい

   んだよね)

柚夏(...否定されないのが分かるって

  言うか)

柚夏(私がこんなめんどくさい奴なんて、

   流雨も知らぬまい...。)


柚夏「...ありがとう。流雨」


カランカラン、


 去っていく流雨の小さな背中...。距離はどんどん遠ざかり 流雨は道の角に曲がっていった


柚夏「...」


 流雨の姿がすっかり見えなくなり、私は学校の寮へと向かって歩き出す。...やっぱり一人になると寂しいな...。


柚夏(...家に帰ったら、どうしようかな。)


柚夏(まずは金曜日の授業の復習して、...それと

   ...店にも寄らないと)


 流石に仲直りの印をケチる訳にもいかないので、(安くで売ってるか分からないけど)そのまま私は買い物に向かっていくのだった


※キャプション


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