第二十五部「大和撫子な人と美紗」【ゆずるう】


 学校の下駄箱の前で、美紗に向かって全力で頭を下げる。


柚夏「美紗、金曜日は無視して

   本当にごめんっ...!!」


 私は朝学校に着いてから美紗が学校に来るのを待っていた。というのも、朝から美紗の好物のガトーショコラを作っていたからだ  


柚夏(...すぐに取り出せる位置にある)


 朝起きてすぐに作ったこれを...どうしても美紗に渡したかったから。


 バックの中のガドーショコラの様子を何度も確認しながら、少しだけチャックの開いたショルダーバックを引き寄せる


美紗「…ううん。私こそ…柚夏に嫌な事

   言っちゃったみたいで、ごめんね…」


 少し経って美紗の返事が聞こえた。悪いのはどう考えたって私の方なのに...事情を知らない美紗からしたら


 何で私が怒ってるのか分からないんだから。実際は気に入らないお金持ちの人に告白されて悶々としているなんて...。


柚夏(どう説明したら良いんだ、というか

  完全に私の束縛でしかない。めんどくさい

  彼女かな...??)


美紗「教室でも良かったのに、

   …わざわざ、私が来るのを待って

   くれたの?」


 持っていたショルダーバックの中からガドーショコラの入った包みを取り出し 美紗に手渡す。


柚夏「…美紗に少しでも早く謝ろうと

   思って。それと…これ、美紗に…」


美紗は驚いたように私から包みを受け取る。


美紗「...私が開けて良いの?」


柚夏「まぁ...、そのために作ったから...」


美紗「なんかバレンタインのチョコみたい

   だね。もう過ぎたけど」


柚夏「中身は合ってるよ」


 そう言ってリボンを解く美紗。...箱の中身を開けた瞬間、美紗はぱっと輝いた瞳で私の顔とガドーショコラを見ながら


 大好物を目の前にしたハムスターのように本当に食べて良いの!?!?とばかりに私の目を交互に見る。


柚夏(ほんとに好物なんだなぁ。)


美紗「ガドーショコラっ!? 食べて良いの!?」


美紗「わぁ...懐かしい、これ柚夏と

   初めてあったとき作った奴だよね。」


 想像した通りの美紗の顔に少しほっとする自分が居る。...目の前に居たのは何時もの変わらないあの、美紗だったから。


柚夏「仲直りのお詫びとしてさ...。昨日の内に

   材料買って朝起きて作ったんだよ。」

柚夏「だから出来立てなんだけど...」


 美紗の大好きなアーモンドを丸ごと一個ふんだんに使ったバターたっぷりのガドーショコラ 、甘味好きには堪らない一品だろう。


 その上これでもかというレベルでたっぷりと蜂蜜を掛けた美紗のベタベタの好みに合わせたものだ。


美紗「それに、出来立てっ!!」


柚夏「上にはたっぷりの蜂蜜バター、中はアーモンドが...」


 ...こうやって、美紗に作ったお菓子を自慢気に話すのもなんだか凄い久々に思える。


美紗「...いただきますっ!!」


柚夏「今此処で...!?」


美紗「だって出来立てでしょ、今食べ

   ないと勿体無いよ」


 そう言って美紗は私の作ったガドーショコラを口の中に放り入れた。ガリッガリッっとアーモンドを砕く音が聞こえる。その姿は完全に


柚夏(...餌を手に入れたハムスター)


美紗「はむはむ...何、これ...」


美紗「....これっ、めっちゃ美味しいっ!!」


 ふわっと石鹸の匂いが鼻を抜ける。ガトーショコラの美味しさに比例して、ぐっと身体を抱き寄せる美紗


美紗「柚夏、結婚しよう。」

柚夏「しないよ」


柚夏「というか嫌(や)だよ。完全に食べ物目的

   だし 古池さんに告白したばっかり

   でしょ。浮気症の相手はこっちからごめんだ」

美紗「ツンデレだなぁ」

柚夏「いや、普通に当たり前の事言った

   だけなんだけど」


 気にしてたのは私だけか。夢の中で門番さんに言われた事が分かった気がする


柚夏「…美味しかったなら良かったよ。それに

   しても…相変わらず感想が、…子供

   っぽいね...。」

美紗「でもそういうとこが好きなんでしょ?」

柚夏「"時と場合"による」


 それから私は頭に乗せていた手を軽くぐしゃぐしゃっと親指で掻き分ける。私がこんな謝ってるのにふざけた真似するから


美紗「柚夏のが酷くないかな!?、髪ぐしゃ

   ぐしゃになるからっ」


柚夏(...こんな美紗が選んだ人なんだから、

  相手が誰であろうと 応援するか。まだ

  完全に許した訳じゃないけど...)

柚夏(それでも、美紗が信じる相手を信じても

  良いのかな)


柚夏「お母さんを捨てて 離婚したお父さんが

お金持ちだったから」

柚夏「あんまりお金持ちの人と付き合って

   欲しくなかった。またお金持ちの人に

   好きな人を取られる気がして。」


柚夏「私の方が美紗とは長く居たのに、ぱっと

   出の古池さんになんで取られるんだろう

   って」

柚夏「理不尽に思った...。本当に美紗の事を

   思っていれば、古池さんと付き合えた

   ことを祝ってあげるべきだったのに」


美紗「.....。」

美紗「それを言うならお互い様だよ。柚夏の

   方が私より早く流雨さんと仲良く

   なってるんだから」

美紗「雪音と仲良くなったのはほんとに最近

   だよ。しかもまだ言う程仲良くない」


柚夏「付き合ってるじゃん」

美紗「本当の意味で仲良くなるのには時間が

   必要なんだよ」

柚夏「許して貰えそう??」


美紗「そもそもそんな、喧嘩してたつもりも

   ないしね。それにこんな美味しいガトー

   ショコラ貰っちゃったら」

美紗「ちょっとの嫉妬くらい」


美紗「...でも、 私の方も...ごめん。多分、

   私のした話が悪かったんだよね...?」


柚夏「あー...、その話はもういいよ。

   家の母さん...もう死んじゃってるから」

柚夏「私に家族はいないし」


美紗「...え」


 美紗はまるで初めて聞いたようなそんな声で私の言葉に耳を傾ける。


柚夏「美紗はそれでも私と仲良くして

   くれたから…本当に感謝してるよ」


柚夏「母さんが自殺した事は結構有名

   だったし、噂くらいは聞いたこと

   あるでしょ?」


柚夏「小6の時。父さんの不倫が原因で両親が

   離婚して、それから母さんは少しずつ

   鬱になっていって...。」


柚夏「そして中学生だった私を置き

   ざりにして、一人で死んでったん

   だよ。死んだのは夏くらいだけど」

柚夏「中学生一人残して何してんだよって

   話だけど」


美紗「ううん、知らなかった...。初めて

   聞いた。」

美紗「そうだったんだ...。それなのに私...

   親に払って貰えないのなんて言って...」


柚夏「...まさか本当に知らなかったの?」


 てっきり、私は美紗が知ってて近付いてきたとばかり...。


美紗「…うん。私もその時...ちょっと色々

   あって学校休んでたから…」


柚夏「え、お母さんが死んだ事知らな

   かったのに 私に懐いてたの...?」


柚夏「私普通に冷たい人だったでしょ」


美紗「…そうかな? 柚夏は優しいし、

   私って本当に何にも出来ないから」

美紗「逆に柚夏みたいな人のが安心するよ。

   "分かりやすくて"」

美紗「皆が言うほど怖くなかったし。

   あんまり気にならなかったよ」


 美紗の言葉に強い"違和感"を感じる。あの時の私は周りからは『冷たい』や『近寄りがたい』といったイメージをもたれていたからだ。


少なくともあの状態で近寄って来ようなんて普通の人なら思わないはずなんだけど...


美紗「ん?」


??「お連れはんとは、仲良うなれたみたい

  やね」


※キャプション


美紗「あ、奈実樹さん。」

美紗「おはようございます」


??「一昨日は樹理に付き合ってくれはって

  おおきにな。樹理も昨日は大分元気に

  なっとったよ」


柚夏「うわ、...すごい美人...」


柚夏(京都美人だ。)


 料亭の女将さんのように雅でおしとやかな女性が美紗と話していた。横目でこちらを見る姿勢もおっとりながらでも気品があって凄い


柚夏(いつの間に美紗はこんな人と仲良く

  なったんだろう...。いかん、いかん

  また嫉妬しそうになってる...。)


 美紗が誰と付き合ってても私には関係ないでしょ、こんなんでいちいち嫉妬してたらキリがない


 私も良い加減『美紗離れ』しないと


奈実樹「ふふふ、お上手やね」


 和服がとても似合いそうな女性は口元に手を当てて大胆不敵に微笑む。京都弁って初めて聞いたけど、なんというか方言というより


 先にすっとした気品さがあるというか。この人自身の人柄と言うか...


柚夏「...あ、いえ...」


小栗先輩とはまた違った独特な雰囲気を持つ女性。でもこっちは余計なとこを全部剥ぎ取ったそれこそ大和撫子って感じ


 1〜2年しか年が離れてないとは思えないほどの姿勢で女性は私と美紗を見ていた。


柚夏(なんかこの人とは仲良くなれそう...)


 私がいると知って話に入っていけるようにしてる。初対面の私でも会話に入っていけるようなそんな空気感があった。


美紗「あれ? 奈実樹さん、今日は樹理先輩

   と一緒じゃないんですね」


柚夏「"ジュリ"って、この学校の副会長??」


 ジュリと言ったら、ハーフで綺麗な金髪が目立つ副会長の事だろう。まぁ、こんな美人ならあの人とも釣り合いそう


 任期の時に挨拶してたけど...どちらかというと、名前より見た目の印象の方が強かった


柚夏(...確か、ジュリ・シェリー・ルシェル

  だっけ...。名前が凄い印象的だったから

  覚えてる)

柚夏(美紗ならそっちの名前で呼びそうなのに

  "ジュリ"先輩なんだ)


奈実樹「その認識であっとるよ。樹理なら

    今日は生徒会のお仕事やね」


奈実樹「樹理は美紗はんの事 特に気に入っとる

からなぁ。今日はうちしかおらん

    けど、堪忍してな」


美紗「いえ! 奈実樹さんも、充分綺麗です

   から。あっ、そうだ。私も柚夏に

   お菓子作ったんだよ!!」


柚夏「美紗が?」


 あの時のお世辞にも綺麗とは言えない美紗のガドーショコラを思い出す


柚夏(味はまぁ、甘かったけど...。)


美紗「奈実樹さんと樹理先輩に教わったんだ。

   開けてみて」


 美紗に急かされ、受け取った小包を開ける。前より綺麗に包装されてるけど...


 箱を開けるとそこには真っ白な梅の和菓子が入っていた。


柚夏(可愛い...///。白い梅の花だ) 


柚夏「可愛いけど...」


柚夏「これ、美紗が作ったの?」


 あのガドーショコラからは想像出来ないくらいの完成度で正直とても驚いていた。作り手を疑ってしまうくらい


美紗「奈実樹さんや樹理さんに教えて

   貰いながらだけどね」


柚夏「...へぇ...凄いなぁ。...後で写真撮って

   もらっていい?」


 こんな綺麗な見た目なのに、食べるのは少し勿体ない気もするけど、でも...和菓子か...。


洋菓子よりは甘くないけど和菓子も結構甘いからなぁ。でも親友が仲直りのために作ってくれたんだ 贅沢は言ってられない


柚夏(流雨が喜びそう。このシベは、...ザルで

  こしたのかな...)


美紗「うん。いっぱい撮ってあるし、...そうだ! ついでに紙に印刷して渡すね。ほら、だから」


美紗「食べてみて」


柚夏(食べるのは別に良いんだけど...。んー、甘ったるそう...、、)


 ...最近甘いものをあまり食べなくなってから、味がより濃く感じるようになって来たんだよね。


 節約の為もあるけど、それよりも慣れないパートで頑張って働いてるお母さんの前で一人だけ甘い物を食べる訳にもいかなかったから。


 まさかそれが原因で甘い物が苦手になるとは思わなかったけど


柚夏(食べてると"幸せ"だった時を思い出す

  から...。)


 美紗の期待に満ちた眼差しを受け止めながら、取りあえず 一口 だけ噛んでみる。


柚夏(...あれ? ...思ったより、甘くない)


柚夏「...あ、...しつこくない、 優しい味。

店のより美味しい。好みかも...」


美紗「でしょ? 土曜日に頑張って

   作ったんだ」


柚夏「...これなら、毎日でも食べたい。

   美紗の作った奴だからよりよく感じるの

   かな」

美紗「それ私以外の前で言ったら駄目だよ」

柚夏「なんで」

美紗「惚れるから」

柚夏「??」


 ...豆から作ってるのかな。これは砂糖というより、...豆本来の甘さが引き立ってる味だ。こんな美味しい和菓子食べたことない。


柚夏(実際こういうの買ったら高いんだろう

  なぁ。美味しいけど...オーダーメイドだし)


美紗「はぁぁぁぁぁぁ...でも、柚夏と仲直り

   出来て良かったー...。柚夏すごい怒って

   たから、どうしようか迷ったよ...」

柚夏「そんな殺気立(だ)ってた??」

柚夏「色々考える事があったんだよ」


美紗「お母さんの事とか...??」

柚夏「お母さんが死んだのは美紗のせい

   じゃないし、美紗は知らなかったん

   だからしょうがないよ」


柚夏「それにお父さんがたまたまお金持ちだった

   だけで、お金があるから別の人に変える

   って事もないと思うから」

美紗「柚夏は私の事を心配してくれたんだね。」

美紗「でも私の好みはちょっと他の人とは

   違うんだよね」

美紗「私は追いかけるより追う方が向いてる

   っていうか」

美紗「自分にも良く分からないけど」


美紗「その人の事を知るにしても。まずは自分が

   その人の事を知らなきゃ、何も始まら

   ないと思う」

美紗「柚夏も最初は"鬼の柚夏"なんて

   呼ばれてたけど全然そんな事なかったし。

   噂なんてものは宛にならないよ」


 私の人を信じれない心を、付き合わせてしまって申し訳ない気持ちと。背も高くて怖じ気づかない私よりも


 こうやって、今隣で堂々と自分の言葉で喋ってる彼女の方がずっと頼もしいとすら感じる。やっぱり一人より二人の方が強い


 私はずっとそれを覆して欲しかったんだ


美紗「かーさんは心配し過ぎだよ」

柚夏「美紗なら火山に手突っ込んだとしても

   心配し過ぎだよとか言いそう」

美紗「どんな例え!?!?」


 色々あったけど、無事にこうやって美紗といつも通りに話す事が出来て本当に良かった。


??「うちはお邪魔みたいやね。」


 美紗と話していた女性は雰囲気が悪くなったら口を挟もうと思っていたのか


 無事会話が終わると、立つ鳥後を濁さずの姿勢でそのまま何事もなかったように去っていく。


美紗「あ、待って下さい。良かったら奈実樹さん

   もガドーショコラどうぞ」


奈実樹「最後の1つやけど」

奈実樹「えぇんか?」


美紗「はい!! また柚夏が作ってくれますから!」


柚夏(いや、それ何度も味見するの結構キツいん

  だけど...というか材料結構高いんだよ、それ)


柚夏「材料費が結構掛かってるので頻繁は

   ちょっと困りますが...。...でも、私も

   是非食べて頂きたいですね」


奈実樹「...では、お言葉に甘えさせて

    もろおて」


奈実樹「...。...ふふふ、」


柚夏(私を基準にすれば胸焼けレベルなんだけど、

  ...どうなんだろう)


奈実樹「いんや、これ樹理に食べさせたら

    どんな反応するんやろ思うてな」


奈実樹「...あんさん何者なん? これ、素人の

    味付けやないよ」


柚夏(あ、結構大丈夫そうで良かった...)


 あのあんこを作った人に褒められたと思うと凄く嬉しい。バターとか美紗には多分、分かってないだろうけど...手作りした甲斐あったなぁ。


柚夏「えっと..."普通に"作ったのですが...」


奈実樹「...これが"普通"なぁ。...才能って

    ほんまおもろいなぁ」


奈実樹「うちは両親が旅館を経営しとうてな。

    舌にはちょいと自信がある方なん

    やけど...」

奈実樹「ふふ、樹理が食べたら、嫉妬しそう

    やね。ごっそうさま」

奈実樹「樹理にあげれんのが残念やわ」


柚夏(え? あれ...)


柚夏「...えっと。"旅館経営"って、

   朝乃先輩が言ってた...確か、

   "なみねぇ?"」


奈実樹「うちの事を知っとるゆうのは、朝

    ちゃんのお知り合いさんやったか。」

奈実樹「確かに朝ちゃんとうちは従姉妹の

    関係やで。朝ちゃんえぇ人見付けた

    な」

奈実樹「まさかこんな料理が上手い人やった

    なんて」


柚夏(まさか向こうからも私の事聞かされて

   る...??)


 私の知らないうちにどんどん噂が広がってく...


柚夏(結構、ベクトル違うから朝乃先輩と知り

  合いとは気付かなかった...。...そういえば、

  血が繋がってないって言ってたような...)


奈実樹「...っと、お楽しみの時間は此処まで

    やな。時間は止まってはくれへん

    からなぁ、...ほな、さいなら?」


奈実樹「また会えたらえぇね」


 女性はそう微笑みながらそのまま三年生の教室の方に急ぐように向かって走って行った。


美紗「奈実樹さん、美人だよねー。和風

   美人って感じ。…私もあんな風

   になれたらいいなー」


柚夏「...美紗はそのままの方が私は良いと思う

   けどな。美紗は美紗の良いところが

   あるから」


美紗「急にどうしたの? 今まで好きとか

   そういうの絶対に言わなかったのに、」


美紗「...なんかイケメンに磨きが掛かった

   感じだね。」


なんかちょっと引いてない??


柚夏「…私も一応女だからね。…まぁ、ちょっと

   最近変な夢見たから」


柚夏「それから…もっと自分に素直に

   なるべきなのかなって」


美紗「私も金曜日の夜にくゆと同じ夢を

   見たんだけど、夢に出てきた子が

   『ガドー☆ショコラ』って言う女の子でね」


 確か、くゆの方が美紗の妹の名前。美紗の家はみゆっていう黒い柴犬も飼ってて 妹の名前と凄い酷似してるから紛らわしい


たまにちょっと分からなくなる時がある


美紗「それで今日、柚夏にガトーショコラ

   貰ったから。凄く驚いたんだ」


柚夏「へぇ...。ガトー、ショコラ...」


柚夏(...ん? ...ガトーショコラ?)


...何か、凄い嫌な予感がする。同じ夢を見たとかは言わないけど なんか凄い似通ってない??


柚夏(...いやでも、あれは夢...)


美紗「その子が魔法少女みたいな格好

   してて…、凄い可愛かったんだよ。」

美紗「犬の獣人で。身体のサイズくらいある

   大きな尻尾が凄い印象的だった」

美紗「もふもふしてすりすりしたい」


柚夏(...ん?????)


...百歩譲ってあの夢が美紗と同じ人がいる夢だったとしよう。美紗がMっ気があるのは分かる。


柚夏(いや、流石に私がお化け苦手とか

  わかる訳ないし鬼って呼ばれてたのに

  幽霊が苦手とか)


 美紗は話すのを一旦止めて何か考えるように目を閉じる。そして何か閃いたように手の平の平に握った拳を置いた


美紗「...あっ、思い出した」


柚夏「何を?」


美紗「この前私が夜中にお風呂に

   入ってたらなんか急に...」


美紗「『う゛ぅ...う゛ぅ...』って声が聞こえて

   外を覗いて見ると、ぼんやりと白い...」


柚夏「なるほど。青鷺が居たんだ」


美紗「いや、幽」


柚夏「"幽霊"なんていない。」


 美紗を壁に追い込んで、腕を置く。辺りの視線が一斉にこっちに向くけど...今ははっきり言って、それどころじゃない。


柚夏「あれは白い煙がたまたま幽霊に見えた

   だけで そもそも科学的根拠がね??

   無いわけじゃん、」

柚夏「あれは"幻覚"の一種で。疲れてた人とか

   酔っ払いが脳の錯覚で勘違いして

   見たんだよ」

美紗「でも夜中に人影みたことあるし...」


バン、と壁ドンする。


美紗「そんな幽霊苦手なの!?、、」


 お風呂入るとき何か居たらどうするの。本当に家には私一人しか居ないんだよ?


柚夏「...美紗がお化けになってみる??」


柚夏(...塩...そうだ。塩だ、塩を用意すれば

  良いんだ。あと竹刀と物理に幽霊は

  効くのか、、竹刀に塩塗っとこう)


美紗「今の柚夏のがお化けよりよっぽど

   怖いよ!?!?、、、」


柚夏(今日の夜、本気でどうしよう...)


 美紗には私がお化けとか、幽霊とかそういう怖いのが駄目なのがバレなかった事を祈りつつ。


 ...取り敢えず、今日は寮に帰ったら塩を大量に買う予定が出来てしまったのだった。


柚夏(節約中なのに...、、)


※キャプション


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る