第八部「体験談と経験談」【ゆずるう】
1時限目から美術室での授業なので 1-Bの教室に寄り 鞄から教科書を出す。
そして教科書の入った鞄を机の横に引っ掛けてから廊下を出た
そう。今日は待ちに待った合同授業の日。
途中で別室にある縦長のロッカーから定規やらキャンバスやらがまとめて入っている自分の器材を持って、私はまっすぐ美術室へと向かう
柚夏「...流雨、もう来てるかな。」
柚夏(同じ教室か分からないけど
時間があったら行ってもいいかも)
なんか敢えてそんな楽しみにしてないよ的な感じでちょっと遅めに来たんだけど(というか、普通の時間)
流石に全クラス一二年生集まって授業する場所がないということで。毎年恒例の事なのでくじ引きで授業の場所を決めるらしい。
一週間前にクラスごとクジを引いてたんだけど...美術室だった。結構知らない人いるなぁ...
流雨「...んむ」
柚夏「あ、流雨」
流雨はいつも通り机の上で姿勢を崩すように猫が横に倒れるようにぐたーっと横たわってる。...なんかいつも凄い疲れてない?
晴華「やっほー柚ちゃん」
柚夏(普通におる、、)
柚夏「...どうも」
丁度隣の席が空いてるから座るか。なりたくてもなれない人もいるというのに
絶対私じゃないでしょ
柚夏(寧ろなんで此処だけ空いてるんだ...、
ヘタレ共め、もっと隣にいるのに
相応しい人いるでしょ)
柚夏(そんなんだと一生お近付きに
なんてなれないぞ)
だからと言って私がお近付きになられても困るんだけど、その席には昨日のモデルさんとピンクい犬の先輩がいた
柚夏(別に嫌って訳じゃないけど。その席は
どう考えても私じゃないだろ感)
柚夏(というかなんで流雨の横に
(前に)座ってるんだこの人...)
柚夏(...あれだけ雰囲気作っておいてこれか)
流雨「一緒のクラスなんだね。『運命』
というか... 他の人もいるし...」
朝乃「ジャ・ジャ・ジャ♪ジャーン、、」
流雨「それはベートーベンの『運命』」
柚夏(この喋ったと思ったら 言いたいことを
言い切った感 凄い良いよね...。
絶対タイミング狙ってる)
柚夏(普通もっと相槌とかなのに。)
普段は落ち着いててクールなのにやる事が面白いもん、やってる事が凄い子供っぽくて可愛い。なんか急に猫が喋ったみたいだよね
それに近い雰囲気ある
というか体制は普通に聞いてなさそうなんだけど...、誰よりも話をちゃんと聞いてる気がする
そうしないとこんな返しなんて出来ない。ただ敵を作らないように愛想の良い返事をしてるだけの私とは違う
流雨の近くにいれば、"その正体"に近いものを得られるかもしれない。私が目指してる『面白い人』に
??「あー、ほんとに浮かない表情(かお)してるね。
教頭先生が言ってた子って君??」
私「...ほっといて下さい。自分の母親が自殺
して死んだ事もないくせに」
??「確かに私と貴女の過去は違う。でも
貴女も私の過去を知らないでしょ?」
??「帽子の中を見てご覧。ワン、ツー...」
コンコン、とその人が杖の先でシルクハットを叩くと
バサバサッと沢山の白い鳩が一気に空へと羽ばたく、その瞬間だけは。
自分がまるで別の世界にいるような気がした
朝乃「"他の人"です。おはよう神」
柚夏「"それ"はもう良いですって、」
朝乃「というか良かったわね。一緒の席で
というかクラスで?知り合いが居る
だけで安心感が違うもの」
朝乃「特に一年生なんてそうじゃない?
知らない先輩の前で声掛けられなくて
後で残った人同士仲良くなるのよね」
柚夏「体験談ですか」
朝乃「もうやだなぁ、経験談だよ」
柚夏「経験談じゃないですか」
キーンコーンカーンコーン
始業の授業が始まり、立っていた人達がそれぞれの自分の近い席に座っていく。今回は合同授業なので来た人から好きな席に座っていく方式
柚夏(というか美紗も同じ教室じゃなかった
っけ? なにかあったのかな...)
そろそろ来てもおかしくないんだけど、美紗の姿が一向に見当たらない。
いくら違う人と組むからってやっぱり美紗がいないとちょっと気になる...彼女は私にとって他の人と違う"特別な人"だから。
別に"恋仲"とかそういうのじゃなくて 恩があるとかそういう意味で
柚夏(体調不良...?でも、別にそんな様子
なかったよな...。)
柚夏(そういえば...くじ引きで決めたから
流石に大丈夫でしょ って今回は教室の
場所教えてなかったけど...)
柚夏(いや...、まさか ね。)
ガラガラガラ...。
美紗「ま、、間に合った...。すみません...」
始業時間、ギリギリ間に合ったのかよくわからない時間帯に教室の中に入って来る美紗。その後、急いで一番端っこの席に座る
柚夏(...あの子、勇気は結構あるんだけど、
意外と抜けてるとこあるんだよなぁ...。...
これは場所、、間違えたな?)
※スライド
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