第2品「調理部の心配事」【なみじゅり】

樹理「ナミが最近ずっと黙ってばっかなんだ

   けど どうしたら良いと思う??」


狛「んー、僕は別に何も考えてないだけだと

  思うけど」


狛「樹理君が可愛くて嫉妬してるんじゃ

  ないかい??」


と自信満々に言う狛さん。嬉しいけど、やっぱりナミに悩みがあるなら直接伝えて欲しい


樹理(私はナミにとって頼りになる存在

なのかな...。)


樹理「それはハーフだからだよ...。私が

   普通の人だったら、ナミは見向きも

   しないと思うし...」


狛「ハーフじゃなくても。僕みたいに

  純粋な日本人でも人気な人は人気だよ」


狛「それこそ"何もない"のにね」


樹理「狛さんはなんで小栗さんにしたの?」


狛「ふふっ。それは愚問だね。でも、強いて

  言えば..."深い絆"で繋がってるからかな」


樹理「なんかロマンチック」


狛「僕がそうしてるからね。」


樹理(なんで狛さんはそんなに小栗さんが

   好きなんだろう...。)


樹理「...ほら、此処では金髪ってかなり珍しい

   でしょ?」


樹理「私の場合は...皆金色の髪が珍しくて、

   私の髪を引っ張ったり触ったりする子

   が多かったの」


樹理「それをナミが助けてくれたんだ。」


樹理「ナミは当たり前の事をしただけだって、

   言うけど」


樹理「...それが出来るのはきっとナミだけ。

   私は本当にナミに助けられて

   ばかりだな...。」


樹理「少しは大人に見られたいのに」


狛「何処でもそういう輩はいるよね。本当に

  目障りな事で」


狛「綺麗な髪なのに勿体無い」


と髪を丁寧に触りながら、髪の毛にキスする狛さん。それは親愛のキスだった


樹理「嫉妬して欲しいのは分かるけど、

   そういうのは良くないよ...///」


狛「僕は本当に好きな人しかこういう事は

  しないよ。僕はどこでも"自由"なんだ」


狛「それに、女性はこういうのが好きだろう?」


とお菓子作りに集中する。こういうことするから、誤解されちゃうんだよ小栗さんにも


樹理「ナミに誤解されちゃうから、違うから

   ね。ナミ」


奈実樹「あぁ、分かっとるよ」


奈実樹(狛はんなぁ...)


 女性好きで有名な人なんやけど、威風堂々と自分を貫いていて素直に凄いなと思う。


 うちにもそんな甲斐性があったら。樹理に振り向いて貰えるんやろか


奈実樹(うちも樹理に何かすべきなんやろか、

    でも...キャラやないな。ぶっちゃけ)


樹理「ナミ、あれなんだっけ」


奈実樹「"調理教室貸許可証"な。そうなると

    思って先に提出しといたで」


樹理「流石、ナミっ」


樹理「ナミ、これどうしたら良いと思う??」


奈実樹「忙しすぎて覚えとらんのか」


奈実樹「これはこうして、こうや」


樹理「凄い、私のと全然違う」


奈実樹(巣立ちとは違(ちご)うとか...)


奈実樹(でも、樹理が1人でこなそうと

    しとるのはなんとなく分かる。)


奈実樹「それはそこ、それだと時間掛かるから

    そのままでえぇ」


奈実樹「うちがなんとかしとくから」


樹理「...ナミは働き過ぎっ!!」


奈実樹「"働き過ぎ"言われてもなぁ...実家が

    旅館だとマジで時間がないんよ。朝

    早くから起きて夜中の仕込みまで...」


奈実樹「まぁ、"慣れとる"から」


樹理「...ナミの実家が旅館なのは分かるけど、

   もっと頼ってよ。後輩とか私にも...」


縁蛇「そうなのですよ!!、こういうのは後輩の仕事

   なのです」


奈実樹「と、言われてもなぁ...。」


奈実樹「うちがやった方が早いし、そんな

    華奢な手で重いもん持って怪我でも

    したらどないするんや」


奈実樹「縁蛇ならまだしも」


縁蛇「縁蛇の心配はなしですか!?!?」


奈実樹「いや、縁蛇は体力あるから」


樹理「私だって重いの持てるもん」


奈実樹「その慢心が命取りなんやで。」


奈実樹「うちが言わんでも気付いて欲しいん

    やけどな」


奈実樹「...樹理にはこんな仕事させたく

    ないんよ。」


奈実樹「机を拭いたり、掃除したりお風呂とか

    デッキブラシで擦ったり。檜風呂は

    乾燥させんとかんし」


奈実樹「看板娘の樹理には出来ん話や」


樹理「ナミ...」


奈実樹「樹理にはそんな重労働似合わん。

    もっと他にやることがあるん

    ちゃうか」


 樹理の夢を潰したくない。うちと料理をするより、樹理にはもっとお花屋さんとかそういうのの方が似合(にお)うとるやろ。


 ホテルやからパティシエとかそういうのならまだ分かるんやけど...なんかな。


奈実樹(つい、冷たくなりがちやけど)


 うちは樹理にもっと多くの選択肢をやりたい。うちの真似事なんかやなくて、本当にしたいことを樹理にさせてやりたいんや


奈実樹「樹理にはもっと良い人がおるはず」


樹理「ナミ以外やだよ...。」


奈実樹「じゃぁ、なんで敬語で話すんや。

    今までは普段通り喋っとったやん」


奈実樹「ネイルしたり。他の人から見られとる

    の知らんの?」


奈実樹(...ほんとはこないな事、言うつもりあら

    へんのにな)


樹理「それは...、ナミに綺麗って言って

   ほしくて」


奈実樹(もう充分綺麗やのにな...)


奈実樹「料理教室に基本ネイルは駄目やで」


奈実樹「そして爪切り」


樹理「うぅ...。」


と、後輩の元に行ってしまう樹理。


奈実樹(...そう。うちは樹理に相応しくないんよ。

    そうやって色んな可能性を広めて

    いって欲しい)


奈実樹(うちだけやなくて、他の人とも)


奈実樹(うちみたいに偏った知識やなくて、

    樹理にはもっと広い高原で走り

    去って欲しい)


奈実樹(そうすれば、"諦め"が付くから)


奈実樹「...まるで子を思う母親やな」


 そう、私の場合デートとかそういうのに興味がないというか...ぶっちゃけそれどころではないのだ。自分の時間が中々とれないというか


??「あなたが愚痴を言うなんて珍しいわね」


奈実樹「小栗はん」


小栗「幼馴染だと特にそう思うのかしら」


 と優雅に椅子に座る少女。彼女は生まれながらにして心臓に疾患があるから、栄養学を学びたいと料理教室に来てくれる常連さんだ


奈実樹「小栗はんはえぇなぁ。突然モテ男

   (お)に告白されたんやろ?」


奈実樹「うちは幼馴染やさかい...、そう思え

    へんゆうか」


奈実樹「距離が近すぎてな」


小栗「と言っても雨宮さんはたまにしか

   授業に出ないし、木の上に登ったり。」


小栗「まるで、少年みたい」


小栗「...の癖に、たまに寂しそうな顔をする

   時があって」


小栗「放っておけないのよ。」


奈実樹「それもまた"母性"やな」


「ナミ〜!!」


と噂をすればやって来る樹理。


奈実樹「なんや。早かったな」


樹理「ナミってあんまり笑わないよね」


奈実樹「これでも結構笑うとるつもり

    なんやけど」


小栗「微笑み笑いは結構あるわよね」


奈実樹「ほら、結構笑うとるやん」


樹理「私の前ではあんまり笑ってくれない...」


奈実樹「料理や洗濯もんしとる時ににこにこ

    笑ってするか?」


奈実樹「お客はんの前では笑うけど、基本的には

    せんな」


樹理「するもん、、音楽掛けて」


奈実樹「まぁ音楽聞くの好きやしな」


小栗「まるで"親子喧嘩"ね。」


樹理「ナミは全然素直じゃない」


樹理「可愛い子連れてるし」


小栗「えっ、私??」


奈実樹「小栗はんは病人やで。あんまり

    無理出来へんのや」


小栗「まぁちょっとくらいなら無理をしても

   大丈夫だと思うのだけれど」


小栗「奈実樹さんは栄養学科だから色々

   教えて貰っていたの。」


小栗「甘い物も基本禁止だし、色々制限が

   あってね」


樹理「そうだったんだ」


樹理「私、そんな事も知らずに...つい...」


樹理「ごめんなさい」


小栗「あら。どうして謝るの?」


樹理「お菓子とかよく作ったりするから...」


小栗「基本果実しか食べたことが無いから、

   お菓子の味ってよく分からないの」


小栗「寝たきり生活が多かったから。」


小栗「ドナーが見付かってようやく学校に

   通えるようになったの」


樹理「ナミ、この人と友達で良いよ」


小栗「あら。最初から友達だわ」


小栗「そうじゃないと面白くないじゃない。

   この人生」


奈実樹「面白いこと言う人やなぁ」


樹理「むぅ」


樹理「私にはそんな顔しないのに...」


奈実樹「...樹理も雨宮はんと話しとるし、

    うちが誰と話とってもえぇやろ」


樹理「ナミ、人気者なんだから。人が寄らない

   ように敬語で話してたのに」


樹理「...他の人がナミを見ないように。」


奈実樹「樹理はうちをひとり占めしたいんか」


樹理「独り占めしたい...。」


奈実樹「.....。」


奈実樹(この子はよく人前で、そういう

    事言えるよな。う~ん...。)


奈実樹「樹理はうちの自慢や。でも、時と

    場合があるやろ」


奈実樹「うちも気軽に友達と話したいんや」


小栗「邪魔しちゃったかしら?」


樹理「そんな事ないけど...」


奈実樹「樹理にも友達はおるやろ」


樹理「ナミ以外別に...」


奈実樹「そんな事言うたら、雨宮はんも

    困るんとちゃうか」


樹理「あの人は他の人にもそう接してるもん...」


奈実樹「別に論破したい訳じゃなくてな。

    うちは樹理に"自立"して欲しいんよ」


樹理「自立...?」


奈実樹「うちが突然居なくなったらどうする?」


樹理「そんなのやだ。まだ高校生なのに...」


奈実樹「うちだっていつまで生きてるか

    分からへん。高校生だからこそ

    良い人を見つけて欲しい」


奈実樹「休みは寝とるし、忙し過ぎてな」


奈実樹「樹理にはそんな思いさせたくないんよ」


奈実樹「包丁とか危ないし、そういうのは

    うちでえぇ」


樹理「包丁くらい握れるよ。基本はスイーツ

   ばかりだけど、指を怪我したりしない

   もん」


奈実樹「そういう台詞は林檎の皮をピーラー

    じゃなく、包丁で切れるように

    なったら言うんやな」


奈実樹「そんな華奢な手には似合わん」


 樹理にはその容姿を活かして こんな戦場じゃなく、もっとネイルリストやそれこそモデルを目指して欲しい


 恵まれた容姿をしとるし。それこそ御曹司の子や古池嬢とかもっとお金を持っとる人の方がうちよりもずっと幸せに出来る。


縁蛇「縁蛇は林檎の皮も好きですよっ!!」


奈実樹「まぁ、廃棄ロスよりましやな...」


樹理の事が本気で好きやから冷たくあしらってしまう。その恋心が分かるやろうか


 虫取りとか朝からセミを取ってた人間が純粋な恋愛なんて知るわけない。人から聞く分にはえぇけど、いざ自分がその立場になってしまうと


 どうしていいか分からないいうか、まぁ..."友達"がいきなり恋人に変わったら。見方が変わるのだろうか。


奈実樹「狛はんとは何の話をしとったん?」


樹理「普通の話だよ。普通のお話」


奈実樹「うちには言えん内容か」


こんな事しか言えへん自分が腹ただしい。


樹理「昔の話だよ。ナミが昔髪を引っ張られた

   私を助けてくれたって」


奈実樹「その話な...、」


奈実樹(昔はやんちゃしとったからなぁ...。)


樹理「嫉妬してるの??狛さんと話したこと」


奈実樹「嫉妬、、うちがか!?!?」


樹理「だって話の内容聞いてくるし」


樹理「顔が寂しそうなんだもん。」


奈実樹「顔が寂しそう!?!?」


奈実樹「海外の人は口元を見て喋るからな...」


因みに日本人は目を見て話らしい。まぁそんな知恵袋どうでもえぇんやけど


樹理「本音で話して」


奈実樹「....。」


奈実樹「...樹理の事は好きやで」


奈実樹「素直に可愛いと思うし、優しくしたい

    とも思うとる。でもうちには

    うちの世界があってな」


樹理「私のことは好きなんだね!?」


奈実樹(すっごいポジティヴぅ...)


奈実樹「ある意味、相性が良いかもしれん

    なぁ...」


と上を向いて目を閉じる。とお皿が割れてしまった


奈実樹「幸先悪いなぁ...。」


奈実樹「あっ、触ったらかんよ」


といつの間にか終わってる掃除。


縁蛇「片付けなら縁蛇にお任せなのですよ!!」


奈実樹「そんな所で変な才能見せられると

    笑うな。」


奈実樹「ふふっ」


縁蛇「自慢気にドヤ顔なのですよ」


代茂技「縁蛇ちゃん、勝手にやっちゃ...」


と、何か良い感じに仲良くしてる後輩を見て昔はそうだったなぁと思い出す。


奈実樹(樹理とうちも昔はそんな感じやった。)


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